新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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第10話 襲撃

『セクター7の基地を教えろぉ!?』

「そうだ、急いでくれ!」

 

 スマートフォンの向こうにいるシモンズを、サムは怒鳴りつけた。

 ホット・ロッドの姿が見えず、後を追ったバンブルビーやオプティマスは、地面の様子から彼が捕まったことを察した。

 そうなれば、やることは一つ。救出に動くことだ。

 

「まったく手のかかる坊やだぜ! ほっといていいんじゃねえか?」

「然るに。これも自業自得と言う物」

 

 グチャグチャと言いつつもコートの裏に短機関銃を仕込むクロスヘアーズに、ドリフトが同意する。

 そこで仲間たちに向かってオプティマスが静かに言った。

 

「彼が兵士なら……見捨てるという選択肢も有り得ただろう」

 

 もしもこれが戦争中なら。断腸の思いでホット・ロッドを切り捨てることもあっただろう。

 もしも彼は兵士なら、そのことを覚悟しておかねばならなかっただろう。

 

「しかし、彼は兵士ではない。故に助けなければならない」

「そういうこった! さあ、グチャグチャ言ってないで準備しな!」

 

 ハウンドの一喝に、ドリフトとクロスヘアーズもさっさと準備を済ませる。

 無論、彼らとて本気でホット・ロッドを見捨てる気など全くなく、こういう風に文句を言うのが一種のお約束だったからだ。

 

「オートボット名物、カチコミじゃー!」

「やり過ぎないようにね、お姉ちゃん」

 

 ネプテューヌもどこからか刀を取り出して闘志を燃やし、ネプギアがそれを宥めていた。

 

『本気でCIAと敵対する気か? 何もかも失うぞ』

「一度、全てを失った。……もう失いたくないからこそ、彼らと一緒に行くんだ」

『…………』

 

 電話越しではあるが、シモンズはサムの口ぶりから重い決意を感じ取っていた。

 これは止めることはできない。

 何よりも、何だかワクワクしてきた。

 

『すぐにセクター7の基地に移送することは、おそらくないはずだ。まず行くとすればおそらく……』

 

  *  *  *

 

 ケイドたちの住む街から山一つ越えた場所に、米軍の基地があった。

 荒野のど真ん中に存在するそこは、アメリカ国内の基地としてはかなりの規模を誇る。

 

 その一角では、街から見学にやってきたエレメンタリースクールの低学年の学生たち相手に、兵士が説明をしていた。

 逞しい黒人男性で、頭をスキンヘッドにしている強面だが、独特の愛嬌を感じさせる面構えだった。

 

「はーい、そんなワケで俺たちみたいなカッコいい軍人さんたちが、この国の平和を守ってるってワケだ!!」

「うそつけー! おれ知ってるぞ、軍は『じどうか』されて『きかい』が戦ってるって父ちゃん言ってたぞ!」

「あー……ほら、機械を使うの人間だから」

「ママは、戦争が終わったら軍隊は金食い虫のごく潰しのならず者だって!」

「……よし、お前のママ連れてこい。いっぺん話し合おう」

 

 子供たちの容赦のないツッコミに、ヒクヒクと頬を引きつらせる兵士。

 それでも子供たちは初めてみる本物の軍隊に興奮していた。

 

 騒ぐ子供たちを引率の先生に任せた軍人は、彼らから見えない場所に来るや疲れたように深く項垂れた。

 そんな軍人の肩を、別の軍人が叩く。

 精悍な顔立ちの男前で、無駄のない体を軍服で包んでいる。

 階級章から見るに、大佐であるらしい。

 

「しっかりしろ、エップス。いつものタフネスはどうした?」

「そうは言いますけどね、レノックス。こいつは軍人の仕事じゃないですよ」

 

 エップスと呼ばれた黒人の軍人は、レノックス大佐の言葉に力なく首を振った。

 階級差を感じられないやり取りから、彼らが古くからの戦友であることが分かる。

 

「いいじゃないか。アフガンやイラクで血と砂に塗れてるよりは」

「そりゃそうですけどね」

 

 溜息を吐くエップスに、レノックスは苦笑しつつも内心では同意していた。

 ここ数年と言うものの、米軍は四軍すべてがKSI社の開発した戦闘ロボット『ドローン』の導入を進めていた。

 

 ちょうど、子供たちがドローン群の周りではしゃいでいる。

 

 巨大な三角錐型のブラスター砲と、二対のキャタピラを備えたタンク・ドローン。

 二輪車型で、狭い場所などの敵を追い詰めるモーターサイクル・ドローン。

 オスプレイなどのティルトローター機に似ているが人の乗れる大きさではないエアロ・ドローン。

 

 これらのドローンは無人偵察機のような無線操縦ではなくAI制御によって自立稼働し、歩兵30人分の働きをするというのがキャッチコピーで、事実として戦地に投入された物は恐ろしい戦果を挙げていた。

 そのおかげで、様々な紛争を潜り抜けてきた歴戦の戦闘部隊であるレノックスと部下たちも、今では内地任務だ。

 

「あのガラクタども、気に食わなねえ。俺たち人間の兵士をお払い箱にしようって動きもあるって言いますぜ」

「……結構なことじゃないか。おかげで兵士の負担は減り、俺は家族との時間が増えた」

 

 そう言いつつも、レノックスの顔はムッツリとしていた。

 必死になって国のために戦ってきたのに、機械に取って代わられるのは癪だった。

 戦争の主役が剣を持った騎士から銃を持つ歩兵に移り変わった時の騎士たちは、こんな気分だったのだろうか?

 

「気に食わないと言えば……あれもだな」

「あれもっすね」

 

 二人の視線の先では、黒塗りのバンが何台も停車し、黒服の男たちがたむろしていた。

 彼らに護衛されるようにして、一台のトラックが基地の倉庫に入っていく。

 荷台には布が被せられ、荷物は見えなかったが、相当に大きい。

 

「何なんですかね、あいつら」

「知らん。国家機密だそうだ」

 

 不機嫌そうに、レノックスは答えた。

 あの連中はやたら横柄に振る舞っていた。

 しかし、こちらには機密だとかで何の情報も降りてきていない。

 

 国の秘密機関らしいが、まさかエイリアンを捕獲したワケでもあるまい。

 

「まあ、いいさ。俺は軍人だ。任務に従うだけさ」

「俺だってそうです。……でもなんて言うか、時々思うんですよ。俺の本当の居場所が、他にあるような気がするんです」

 

 顔に似合わずセンチメンタルなことを言い出すエップスに、レノックスは思わず吹き出してしまいそうになるを堪えた。

 と、その時、警報がなった。

 

 基地への侵入を知らせる警報だ。

 

 

 

 

 

 基地の門を突き破って、一台のトレーラーキャブが敷地内に侵入した。

 銀色と黒のノーズフラット型の大型トレーラーキャブだ。

 

 さらに後ろには、何故かパトカーが続く。

 共に運転席に無表情な男が乗っていた。

 

『そこのトラックとパトカー、止まれ! ここは軍の施設だ!!』

 

 そのトラックとパトカーは、基地の中央部まで来ると停車した。

 兵士たちとドローンが素早く展開し、二台を取り囲む。

 

『運転手、降りてこい』

 

 基地の放送で呼びかけるが、二台の運転手は降りてこない。

 やがてトラックの運転手の姿がまるでテレビのノイズのように歪み、やがて消えた。

 

 驚く兵士たちだが、本当に驚いたのは、その後だった。

 

 ギゴガゴと聞きなれない異音を立てて、トラックのパーツが寸断され、移動し、組み変わる。

 

「なんだ、これは……!?」

 

 基地の中にいる司令官がそう呟く間にも、トラックは全高10mもある機械の巨人へと姿を変えた。

 銀色と黒からなるボディに青い模様や発光部があり、下腿の外側や腕にタイヤが配置されている。

 二本の角と真っ赤な目が、地獄から来た悪魔を思わせた。

 

 右腕にはキャノン砲を思わせる武装が付いているが、これは何故か黒と銀のカラーリングでディティールがボディと異なっている。

 

「俺は、ガルヴァトロンだ!!」

 

 巨人は大気を震わす咆哮を上げる。

 見たこともない光景に硬直する兵士たちに対し、ドローンたちは機械ならではの躊躇の無さで攻撃を開始する。

 モーターサイクル・ドローンに備え付けられた機銃や、タンク・ドローンのブラスター主砲が火を吹き、砲弾と銃弾がガルヴァトロンに襲い掛かる。

 しかし、巨人の強固極まる装甲は、容易く砲弾を弾き返す。

 同時にガルヴァトロンは獣のような唸り声を上げると、キャノン砲から光弾を発射した。

 光弾が命中したタンク・ドローンが粉々に吹き飛び、モーターサイクル・ドローンが踏み潰される。

 たちまち、爆音と悲鳴が辺りに満ちていく。

 

 

 

 

 

「エップス、子供たちを避難させるぞ!!」

「了解! 餓鬼ども、こっちだ!! グダグダ言ってないで来い!」

 

 レノックスとエップスは異変を察知するや、真っ先に子供たちを避難させ始めた。

 安全な逃げ道を探すレノックスの目に、黒いバンに乗り込もうとする一団が見えた。

 

「おい、あんたら! この子たちも連れていってくれ!!」

 

 その一団の長らしいサングラスの男……サヴォイに声をかける。

 サヴォイは振り向くと、厳しい顔で言った。

 

「…………いいだろう、乗せろ」

 

 レノックスたちは、急いで子供たちをバンに乗せる。

 

 

 

 

 

「怯むな、撃て!!」

 

 誰かの指示と共に、兵士たちは攻撃を開始するがアサルトライフルの弾は金属の装甲に空しく弾かれた。

 重機関銃も、ロケットランチャーさえも効果がない。

 ドローンを次々と鉄くずに代えていく、悪鬼のような巨人に米兵たちはすでに混乱に陥っていた。

 

 ここで、精強極まる米軍の兵士が一方的に蹂躙されていることに疑問に思うかもしれない。

 ある平行世界では、ディセプティコンを問題なく倒している彼らが、こんな風に情けなく逃げ惑うことは可笑しいと言う者もいるかもしれない。

 

 しかし、彼らはこれが()()()なのだ。

 

 彼らは、この日、この時、この瞬間に、初めてトランスフォーマーと遭遇したのだ。

 

 無論交戦経験などあるはずもない。

 そしてこのディセプティコンは人間たちへの無限の憎悪に燃え、平行世界の同種族たちよりも強靭な肉体を持っているのだ。

 ガルヴァトロンは己の中の怒りを爆発させ、人間たちを攻撃しようとする。

 

「宇宙に沸いた癌細胞どもめが! この俺が除去してくれる!!」

「落ち着け、ガルヴァトロン! ここに来た目的を忘れるな!! 奴らを殺すことはいつでもできる!」

 

 後ろで同じように変形して立ち上がったバリケードが、慌ててガルヴァトロンを諫めた。

 ガルヴァトロンの頭のバチバチと走るスパークが収まり、冷静さを取り戻す。

 

「ああ、そうだったな。友よ……」

 

 落ち着きを取り戻した若き破壊大帝にホッとしつつ、バリケードは左腕をグルリと囲うように装着されたガトリング砲を適当に発射して人間たちを追い払う。

 

「まったく、何をやっている」

 

 ガルヴァトロンの右腕から女性の声がした。

 キャノン砲が腕から分離すると、腕から半月状ブレードが飛び出す。

 一方でキャノン砲はギゴガゴと音を立てて人型に変形した。

 ちょうど人間大で、全身が銀色の女性的な姿のトランスフォーマーだ。

 背中に四枚の翼のようなパーツがあり、これで体を包むようにして大砲に変形していたようだ。

 つぶさに観察すれば、その姿がかつてのメガトロンに何処か似ていることに気付いただろう。

 

 バリケードはその女性型トランスフォーマーをねめつけた。

 

「そういう貴様こそ、本当にここに目当てのデータがあるのだろうな?」

「フッ、抜かりはない。さあ、さっさとデータを吸い取れ。お前たちにしてみれば、餓鬼の使いより容易いだろう」

 

 強い口調で言われガルヴァトロンは、計画を進めるべく空に向かって叫んだ。

 

「ニトロ・ゼウス! 基地のコンピューターから情報を引き出してくれ!」

「アイアイ、ボス!」

 

 空からグリペンが降りてきたかと思うと、空中で変形して着地する。ニトロ・ゼウスだ。

 単眼の航空兵は踊るように動きながらも、両腕の武装から銃弾を振りまき、やがて基地の建物の傍まで付くと、屋根を毟り取り、屋内に手を伸ばす。

 慌てふためく中の人間たちに構わず、ニトロ・ゼウスはこの基地で使われているコンピューターの本体を掴んだ。

 

「おっほー! こいつはまた緩いセキュリティだぜ! まるで娼婦のアソコだな!!」

 

 下品なジョークを交えつつ、ニトロ・ゼウスはインターネットを通じて米軍とアメリカ政府のあらゆる情報を引き出していく。

 しかし、全ての情報を引き出すより早く、この基地の司令官が手斧で文字通り回線を切った。

 

「チッ!!」

「データは?」

 

 苛立ち紛れに中の人間たちを撃とうとするニトロ・ゼウスの肩を、バリケードが掴んで止める。

 ニトロ・ゼウスは舌打ちのような音をこれ見よがしに出しながらも、答える。

 

「例の物の場所は分かった。各員に位置情報を転送するぜ!」

 

 それを聞いたバリケードに目配せされて、暴れていたガルヴァトロンはいったん破壊の手を止めて何処かに通信を飛ばす。

 

「オンスロート、位置情報に沿って例の物を回収してくれ」

『はいはい、分かったのである……』

 

 通信の向こうから聞こえるオンスロートの声は酷く不満そうだ。

 当然のことながら、ガルヴァトロンに叩きのめされたことを根に持っているようだ。

 

「よし、後は……」

 

 ガルヴァトロンは、視線を巡らしてある倉庫に止める。

 黒服……サヴォイの隊が何かを運び込んだ倉庫だった。

 

 

 

 

 

「急げ、早くしろ!」

「さあ、この車に乗るんだ!」

 

 基地から逃げ出すべく、レノックスやエップスたちは子供たちをバンに乗せていた。

 幸いにして、今いる場所は金属の巨人たちからは死角になっているらしく、すでに何台かのバンは発進して何とか基地の外へ逃げている。

 

 意外にも、サヴォイは最後まで残っていた。

 一応にも隊長としての責任感はあるらしい。

 

「なんなんだあいつらは……!」

 

 男の子を抱えながら、エップスは呟く。

 あんな巨大なロボットは見たことがない。まるでジャパニーズ・アニメの世界だ。

 

「あれは何だ? KSIかサイバトロン・システム社のロボットか? 何処かの国の新兵器か? まさか、ターミネーターよろしく未来からタイムスリップしてきたワケじゃないだろうな?」

「国家機密だ」

 

 レノックスはサヴォイにたずねるが、けんもほろろにあしらわれた。

 この黒ずくめに何を聞いても無駄と察したレノックスは、軍人としての使命に従い民間人の安全を優先し、バンに乗り込もうとしていた引率の教師に向かって声を上げる。

 

「取り残されてる子供はいないな!」

「ええと……」

「はいはーい! 子供なら、ここに一人いまーす!」

 

 突然聞こえてきたやたらと陽気な声に、その場にいる全員の視線がそちらを向く。

 

 そこにいたのは、モヒカン刈りのようなトサカと、魚類か爬虫類のような異相を持った金属の人型だった。

 細長い腕に男の子を一人抱え、その首筋にナイフを押し当てている。

 

「いいたいこと分かるよな! 言うこと聞かないと、この子がR指定な目に遭っちゃうよ~ん!」

 

 恐怖に震える子供の顔に自らの顔を擦り付けるモホーク。

 その後ろの建物の影から、ニトロ・ゼウスも顔を出す。

 

「お! こんなトコにまだいやがったか!」

「ニトロ、こいつら連れてこうぜ! バリケードの奴が殺すなって言ってたし!」

 

 楽しそうに笑う二体に、サヴォイ隊の隊員が銃を向けようとするが、サントスに止められる。

 

「よせ! 子供に当たる!」

「糞が……!」

 

 毒づくサヴォイだが、それで状況が好転するワケもない。

 レノックスたちもサントスたちも、持っていた武器を捨てる。

 サヴォイですら、少し躊躇したものの懐の拳銃とナイフを地面に置いた。

 

「はーい、それじゃあ人間様一行、ご案内~!」

「多分、行先は地獄だけどな!!」

 

 人間たちを思い切り嘲笑するニトロ・ゼウスとモホークに武器を向けられて、レノックスたちは歩きだすのだった。

 




ガルヴァトロンの変形パターンは、ユナイトウォーリアーズ版モーターマスターを参照のこと。

そしてドローン軍団は、ビーストウォーズリターンズのヴィーコンがモチーフ。

今回のキャラ紹介。

ウィリアム・レノックス
アメリカ陸軍大佐。
原作同様に米国陸軍の軍人で、こちらでも大佐にまで出世している。
歴戦の勇士だが、軍の方針により内地勤務。
この世界では、対ディセプティコンのプロだった原作と違ってトランスフォーマーと戦うのは今回が初めてなため、逃げようとするので精一杯だった。

最近の悩みは娘さんが反抗期っぽいこと。

ロバート・エップス
レノックスの副官である黒人男性。
原作では一度退役しているが、こちらではずっと軍人。
内地勤務で燻っていたが、思いもかけずトランスフォーマーの戦いに巻き込まれる。

小説版によると、実は結婚していて子供も何人もいる。
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