新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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第11話 ホット・ロッドとガルヴァトロン

「ッ……!」

「大丈夫か?」

 

 強制スリープモードに入っていたホット・ロッドが目を覚ますと、最初に聞こえたのはそんな声だった。

 上体を起こすが、あのボルトの影響か、各種センサーに不具合が出ているようだ。視界も聴覚もはっきりしない。

 立とうとすると、よろめいてしまう。

 

「……大丈夫だ、ゆっくり自己診断と自己回復をするんだ」

「あ、ああ……」

 

 倒れそうになるのを支えてくれた誰かに優しく声をかけられて、その通りにすると少しずつ視界が戻ってきた。

 そして、最初に目に入ったのは、銀と黒、青のボディに二本の角と赤いオプティック。そして胸に刻まれたディセプティコンのエンブレムだった。

 

「ッ……ディセプティコン!」

 

 相手がディセプティコンであると気付き、ホット・ロッドはその場を飛び退く。

 背中に手をやるが、銃がない。視線を巡らせれば、ここは何処かの軍事基地のようだった。

 しかし、破壊しつくされ瓦礫や兵器の残骸が辺りに散乱し、煙が上がっている。

 

 敵愾心を剥き出しにするホット・ロッドに、そのディセプティコン……ガルヴァトロンは目を丸くする。

 

「どうしたのだ、ロディマス? 俺の顔を忘れたのか?」

「……ロディマス? そんな名は知らないな! お前が誰かもな!」

 

 なんとか隙を伺おうとするが、近くにはもう一体のディセプティコン……バリケードが腕を組んで立っていた。

 

「どういうことだ……?」

「そいつは記憶を失っているようだ。貴様のこともすっかり忘れているようだな。……貴様の話が真実なら、だが」

 

 怪訝そうに声を漏らすガルヴァトロンだが、半ば以上崩れた基地の建物から飛び出してきた女性型のディセプティコンの言葉に、沈痛な面持ちになる。

 

「なんということだ。……大変だったな、ロディマス」

「……俺とお前は、知り合いなのか?」

 

 ジリジリと後退しながらも、ホット・ロッドは聞かずにはいられなかった。

 

 ロディマス。

 

 そう呼ばれた時、確かに奇妙な感覚が過ったからだ。

 今名乗っているホット・ロッドという名前自体は、ホットロッドカーから取ったに過ぎない。

 

 ロディマス。

 

 それが本当に自分の名なのだろうか。

 

 ガルヴァトロンは、安心させるように穏やかな笑みを浮かべた。

 

「知り合いなんてものじゃないよ、ロディマス。この俺、ガルヴァトロンとお前、ロディマスは、たった二人残った兄弟なんだ。お前は俺の……弟なんだ」

 

 結論。

 こいつの言っていることは出鱈目だ。

 自分はオートボットなのだから。

 トランスフォーマーの兄弟はスパークを分けた双子しか有り得ない。

 そして同じスパークを持つなら、種族も同じなはずだ。

 

「いいや、ロディマス。俺たちの世代でオートボットやディセプティコンだなんていうのは小さな差だ。俺たちは同じ父と母の間に生まれたんだよ。……偉大なるメガトロンと、女神レイの間に」

「…………………俺が、メガトロンの子供?」

 

 有り得ない。出任せだ。

 だって、メガトロンの子供たちはまだ小さな幼体しかいないはずだ。

 前にネプテューヌが持っていた画像を見た。

 

 理屈ではそう分かっているのに、奇妙に視界がぐらつく。

 体が震える。

 ブレインサーキットが痛い。

 胸の内のスパークがざわついている。

 まだ、ボルトの影響が残っているのだろうか?

 

 ガルヴァトロンは、一瞬で距離を詰めると、震えるホット・ロッドを抱きしめた。

 

「大丈夫、大丈夫だ、ロディマス。俺が一緒にいる。最後に残った家族だからな。記憶なら、ゆっくりと思い出してゆけばいいんだ」

 

 穏やかな声と腕の力強さに、不思議と安心できた。

 だんだんと、ホット・ロッドはこのディセプティコンが本当に兄なのではないかと思い始めていた。

 

「それでロディマス。お前は……」

「ボス、ボス~!」

 

 その時、声がした。

 難しい顔をしたバリケードや女性型が顔を巡らせると、単眼の航空兵ニトロ・ゼウスと、人間大でモヒカン頭のモホークがやってくる所だった。

 彼らはいくらかの人間たちに武器を向けて無理矢理歩かせていた。

 脱出に失敗した子供たちと、レノックスやエップスを含めたこの基地の軍人たち、そしてサヴォイとサントスらセクター7の部隊の隊員だ。

 

「逃げようとした連中を取っ捕まえたぜ!」

「ああ、ありがとう」

「ボス、こいつらどうすんの? 殺しちゃう?」

 

 抱擁を解き朗らかに礼を言うガルヴァトロンだが、モホークは腕に抱えた男の子の首に手に握ったナイフを当てる。

 命じてくれれば、すぐにでも掻き切ると言いたげだ。

 たまらずレノックスとサントスが吼えた。

 

「子供に手を出すな! 殺すなら俺からにしろ!!」

「いいや、俺だ! 俺からやれ!」

「残念だが最初に死ぬのは……そいつだ」

 

 ニヤリと顔を冷酷に歪めたガルヴァトロンの視線に刺され、サヴォイが冷や汗を垂らす。

 しかしガルヴァトロンは自分では手を下さず、ホット・ロッドがセクター7に奪われた銃を、本来の持ち主に差し出した。

 

「さあ、お前がやるといい」

「ガルヴァトロン、それは……」

 

 止めようとするバリケードだが、ガルヴァトロンは聞かない。

 

「聞いたぞ。この男だろう? お前を酷い目に合わせたのは」

「…………」

 

 銃を手にしたホット・ロッドは、自然と銃口をサヴォイに向けた。

 サヴォイは憎々し気にオートボットを見上げる。

 

「殺すがいい、この化け物め……!」

 

 引き金に掛ったホット・ロッドの指に力が籠る。

 こいつのせいで、うずめも他の皆も、辛い目に遭った。

 積もった憎しみで視界が真っ赤になっていく。

 

「俺が死んでも、他の奴らが必ず貴様らを根絶やしにするぞ。貴様らはアメリカと人類を敵に回した……!」

 

 この期に及んでもサヴォイは命乞いするどころかギラギラと目を光らせる。

 褒めるべき胆力だが、それはこの場において火に油を注いだだけだ。

 

「不快な男だ……さあ、恨みを晴らすといい。こいつが死ぬのは、当然の報いだ」

 

 ガルヴァトロンの声に、ホット・ロッドは深く共感した。

 そう、当然の報いだ。

 

 本人は気付いていないが、この時ホット・ロッドのオプティックが清涼な青から、鮮烈な赤へと変わり、体のオレンジの部分が黒っぽい紫へと変色していた。

 

 湧き上がる憎悪のままに、ホット・ロッドは引き金を引こうとし……。

 

「パパ、ママ……」

 

 子供のすすり泣く声に気付いた。

 見回せば皆、恐怖に震えている。

 そして、不意に前に聞いたオプティマスの言葉がブレインに再生された。

 

(よくやった戦士よ。無辜の民を守るのが我ら、オートボットの務めだ)

 

 確かに、サヴォイのことは憎い。

 思い知らせてやりたいと、思った。

 しかしそれは、無関係な人間を……まして罪の無い子供を巻き込んでまでしたいことではない。

 

(例えば……例えば、人間が私の仲間たちを傷つけたとしよう、卑劣な裏切りや騙し討ちに遭ったとしよう。私はきっと人間のことを憎むはずだ。……しかし、それでも守るために戦うだろう)

 

(人が死ねば、ネプテューヌが悲しむからだ)

 

(オイラ一人の、感情で、戦争起こす気には、ならない。……ネプギアが、傷つくから)

 

(君にもそんな相手がいるはずだ。彼女を、悲しませないようにな)

 

 以前聞いたオプティマスとバンブルビーの言葉が頭を過る。

 それは驚くほどの強い決意をホット・ロッドに齎した。

 銃を下ろす決意をだ。

 

「ロディマス?」

「何してんだよ、お前がやらないなら、俺がやるぜ!」

 

 何時まで経っても撃たないホット・ロッドを怪訝そうに見るガルヴァトロンだが、業を煮やしたニトロ・ゼウスが、右腕のキャノン砲をサヴォイに向け撃った。

 

 その瞬間、ホット・ロッドはサヴォイとニトロ・ゼウスの間に割り込み、砲撃を体で受ける。

 目の色は青に、体の色は黒とオレンジに戻っていた。

 

「ガッ……!」

「な!? ロディマス!」

「お、俺のせいじゃねえ! こいつが勝手に……」

 

 弟の行動に一瞬愕然とするも、ガルヴァトロンはすぐに膝を突いたホット・ロッドに駆け寄り、ニトロ・ゼウスはオロオロとする。モホークも、思わず子供を放してしまった。

 だが、もっとも驚いていたのは庇われたサヴォイだった。

 何が起こったとのか理解できないという顔で、大口を開けている。

 

「ロディマス、大丈夫か!? なぜ、こんなことを……」

「そりゃ、こっちの台詞だぜ……!」

 

 自分を助け起こそうとする、ガルヴァトロンを睨みつけ、ホット・ロッドは吼える。

 

「確かにそいつは憎いよ。でも、この基地の奴らや、増して子供たちは関係ないだろう! なんでこんなことするんだよ、あんた!」

「子供もやがては大人になって、俺たちを狩るようになる。そういう生き物だ、地球人と言うのは」

 

 諭すように語るガルヴァトロンだが、表情と声の響きには、抑えきれぬ激情があった。

 

「あんたが地球人をどう思ってるのかは知らない。でも、地球人にだって良い奴はいる!」

 

(人間っていうのは馬鹿だからな。生きてる相手なら……助けたいって思っちまう)

 

(僕は君たちのためなら力を尽くすつもりだ……友達、正確には友達の友達だからね)

 

 ホット・ロッドのブレインに、ケイドやサムのことが思い出される。

 彼らは地球人だが、自分たちを受け入れてくれた。

 

 そしてうずめは、そんな彼らを守りたいと思っているはずだ。

 

「そんな物は見せかけだけだ! この糞蟲どもに生きる価値などない!! なあロディマス、正気に戻れ。……俺たちはな、地球人どもを殺すために、ここまで来たんだぞ。この悍ましい、蛆虫にも劣る最悪の生き物を……そして、奴らを扇動した女神、()()()()()()をな!!」

 

 目を鋭くして放たれたガルヴァトロンの言葉に、ホット・ロッドは確信する。

 このディセプティコンが本当に自分の兄なのか、本当に自分はメガトロンの息子なのかは分からない。

 

 しかし、分かった。()()()()()()

 

 バチバチと体に稲妻を纏うガルヴァトロンの後ろでは、女性型ディセプティコンが死ぬほど驚いた顔をしていた。

 まるで予想していなかったという風だ。

 

「うずめを……殺すだと?」

「そうだ! 我が怨敵、天王星うずめ!! 奴の四肢を切り落としてしから腹を裂いて臓物を引き摺りだし、その首を刎ねて晒し物にしてくれる!!」

 

 ついに怒りを抑えられなくなり、ガルヴァトロンは全身から放電しながら咆哮する。

 目の瞳孔が異常なほど収縮し、狂気が露わになる。

 しかし、ホット・ロッドは怯まない。

 

「それなら……俺は、うずめを守る! うずめが守る人間を守る!」

「ロディマス……お前、何を言っている?」

「俺はロディマスじゃない、()()()()()()()だ!!」

 

 高らかに宣言する若きオートボット。

 怒りに燃えるディセプティコンの両腕に、雷が溜まっていく。

 

「ふ、ふははは、あーっはっはっはっ!! この愚か者めが! 天王星うずめが、地球人が何をしたか忘れ……ああそうか、忘れているのだったな」

 

 哄笑したかと思えば激怒し、ついで急に平静になる。

 明らかにまともな精神状態には見えない。

 

「思い出せ、奴らは……」

「そこまでだ! ディセプティコン!!」

 

 ガルヴァトロンが何か言おうとした時、よく通る深い声が辺りに響いた。

 その声の主が、誰かは考えるまでもなかった。

 彼らが、来てくれたのだ。

 

「オプティマス……!」

「無事か、ホット・ロッド?」

 

 煙の向こうに、オプティマス・プライムが剣と盾を手に立っていた。

 




女性型ディセプティコン(?)のモチーフはヘケへけ版メガトロンだったりします(もちろん、あれよりかなり細身だけど)

今回のキャラ紹介(今回登場してないキャラだけど)

ディセプティコン破壊大帝メガトロン
ご存知、育児大帝。
ディセプティコン全軍を指揮するリーダーにして、同種族の指導者。
オプティマスの最大のライバルにして、昔からの親友。
前作でなんやかんやあって愛に目覚め、オプティマスと和解した。
本人曰く憎悪や野望を捨てたワケではなく、子供たちの未来やレイの方が大事というだけらしい。
オプティマスと組むとツッコミ担当になる。

前作で大暴れしたので、今作ではほとんど出番がない予定。

ディセプティコン女神レイ
太古の昔に滅んだ大国タリの女神。
ネプテューヌの最大のライバルにして年齢を超えた親友。
元々はキセイジョウ・レイと名乗っていたが、本人なりに過去と決別するためにレイとだけ名乗るようになった。
現在は様々な出来事を経て伴侶になったメガトロンや子供たちと共に、惑星サイバトロンで暮らしている。

前作で大暴れしてので(略)
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