新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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第13話 ダークメガミ

 うずめたちの暮らす街のシンボルである、女神像のある島。

 そこには今、緑色のレッカー車と黒塗りのサバーバン、錆塗れのトランスポルターが並んでいた。

 

 まるで、指揮官の到着を待つ兵士たちのように。

 

 レッカー車は後ろのクレーンで現金輸送車を無理やり牽引していた。

 そこへ、銀と黒のノーズフラット型のトレーラーキャブと、黒いパトカー、ネイキッドのバイクが橋を渡ってきて車列の前で止まる。

 トラックの運転席から銀髪の女性……マジェコンヌが降りてくると、トラックはギゴガゴと音を立ててガルヴァトロンの姿に戻った。

 すると、他のディセプティコンたちもロボットモードに戻り、上空からはニトロ・ゼウスも降り立つ。

 

「例の物は?」

 

 マジェコンヌが問うと、オンスロートは自分が引いてきた輸送車を視線で指した。

 その後部に回り込んだマジェコンヌはハッチを開くと、中には暗い紫色の毒々しくも怪しく輝く結晶が、透明なシリンダーに入れられて大量に収められていた。

 シリンダーは一つ一つが一抱えもあるほど大きい。

 その一つを手に取り、地面に置いて中から結晶を取り出す。

 

「ふふふ、これだこれだ……!」

「これがそうか。みな、ご苦労だった」

 

 結晶の表面を撫でながら、満足気に薄ら笑いを浮かべるマジェコンヌを見て、ガルヴァトロンは居並ぶディセプティコンたちに労いの言葉をかける。

 しかし、オンスロートは不満げな顔だ。

 

「これがいったい何の役に立つ? 正直、強力な兵器にはとても見えないのである!」

「まーなー」

「それよか、はよ暴れたいわ」

 

 ドレッドボットも同調するが、バーサーカーはどうでもよさげだ。

 ガルヴァトロン以外の他の者も、同様に懐疑的だ。

 しかしマジェコンヌは自身ありげにニヤリと笑った。

 

「まあ、見ているがいい。……これはな、ダークエネルゴンと呼ばれる物だ。この世界の連中はアンゴルモアとも呼んでいる」

「ダークエネルゴン?」

 

 聞いたことのない単語に、首を傾げるガルヴァトロンだが、マジェコンヌは構わず手の中に杖を呼び出して軽く振る。

 すると杖の動きに合わせるように、ダークエネルゴンが宙に浮き上がった。

 同じように何度か杖を振るうと、全てのダークエネルゴンがシリンダーを砕いて飛び出し浮かび上がる。

 

「これがあれば、最強の手下を作ることが出来る……!」

 

 マジェコンヌは一人ごちると何処の物ともつかぬ言葉で呪文を口ずさみ、すると本人の体も地面から離れる。

 空中に浮かんだ女性が杖を手に呪文を唱える姿は、宗教的な儀式を思わせた。

 

 呪文に合わせて、ダークエネルゴンはより強く、より妖しく輝きを増していく。

 そして、呪文の終わりと共にマジェコンヌが思い切り杖を振ると、ダークエネルゴンの結晶は流星群のように、女神像に殺到した。

 金属製の女神像に、次々と結晶が突き刺さる……というよりは、まるで水面に沈むようにして内部へと吸い込まれていく。

 

 同時に、女神像の表面に細かいヒビが入り、中からダークエネルゴンの物と同じ輝きが漏れ出した。

 

 異常を察知した警官隊が駆けつけるが、橋の中ほどで止まる。

 パトカーの運転席から顔を出した警部が、唖然と呟いた。

 

「なんだありゃあ……?」

 

 女神像がギゴガゴと異常な音を立てながら、ヒビに沿って細かいパーツに寸断され、組み変わっていく。

 街のシンボルである女神像が、何か……何か別の物に造り替えられていく。

 

 そうして現れたのは、やはり巨大な女性の姿をした何かだった。

 だが機械的な鎧を纏っているかのような姿で、背中には巨大な翼がはためいている。

 目元は真っ赤なバイザー状のパーツに覆われ、胸元と額には何故か真紅に輝く電源マークのような印があり、全身に紫に発光するパーツが配置されている。

 優に30mはある巨体は、見ているだけで圧倒されてしまうが、それだけはなく、異常なまでの禍々しさとある種の神々しさを同時に備えていた。

 

 まさしく、女神のように。

 

 

 

 

 オートボットたちは、後始末をするというサムを基地に残して、街への道を急いでいた。

 

「なんだ、あれは……!」

 

 しかし、山を越えたところで、遠目からも女神像が動き出すのが見えた。

 

「なんだか、女神化した時のお姉ちゃんに似てる気がする……」

 

 バンブルビーの運転席に乗ったネプギアの呟く通り、女神像の姿は何処か女神態のネプテューヌ、すなわちパープルハートに、何処か似ていた。

 

 

 

 

 

「あーはっはっは! これこそが、ダークメガミ!! 世界に終焉を齎す、暗黒の使途だ!!」

「おお、素晴らしい……!」

 

 哄笑するマジェコンヌに、痛く感心し興奮しているガルヴァトロン。

 後ろではディセプティコンたちが圧倒されつつも「いや、そのネーミングはどうだろう?」と考えていた。

 

「た、確かに凄いが、こいつは具体的に何ができるのだ?」

「ふっ……!」

 

 オンスロートの往年の軍人らしい冷静な疑問に、マジェコンヌは杖を振る。

 ダークメガミが恐ろしい咆哮を上げると、その体から紫色のエネルギーの波動が放たれた。

 すると、晴れていた空に急に黒雲が渦巻く。

 黒雲は女神像の立っていた島と警官隊が陣取る橋の上に被さり、その下は陰惨な空気の漂う異様な空間と化した。

 

 異変はそれに終わらない。

 

 ダークメガミの放つ波動に当てられたダークエネルゴンを載せていた輸送車や、警官隊の乗ってきたパトカーが、火花を散らしながら変形していく。

 ただの車だったはずなのにだ。

 

 しかし、変形して現れたのはディセプティコンたちと比べてもなお獣染みた、むしろ肉食昆虫を思わせる歪な姿の金属生命体だった。

 爪が長く鋭い者、左右非対称の姿の者、目や手足が多数ある者、いずれも理性や知性はなく、異常なほどの狂暴性だけがあった。

 

 ディセプティコンたちは、この事態に動揺する。

 

「こ、これはいったい!?」

「なんや、気色の悪い!」

「こいつらはテラーコン。ダークエネルゴンの力により、この世界の機械が変異した存在だ。本来ならこいつらには、あらゆる生命を滅ぼすという本能しかない。だが……テラーコンたちよ! 我が下に集え!」

 

 誕生したテラーコンたちは、狂暴性のままに周囲にいる人間やディセプティコンに襲い掛かろうとするが、マジェコンヌの声に従いその下に集まっていく。

 

 

 

 

「どうなってんだ、これは!!」

 

 警部は混乱していた。

 女神像の前に機械の怪物が現れたかと思えば、女神像が巨大な怪物と化し、パトカーまでもが怪物になった。

 怪物たちは、警官隊に襲い掛かろうとしてきたが、すぐに何かに呼ばれるように……十中八九あの女神モドキに……こちらを放って島に行ってしまった。

 さらに、街の方からさらに機械怪物がやってきて、橋を渡りあるいは河を超えて島に集まっていく。

 

 見上げるほどに大きい物、小人のように小さい物、二本足で歩く物、四本足で走る物、蟲のように這いずる物、泳ぐ物、飛ぶ物、とても数え切れない。

 

 警部たちに出来るのは、下手に怪物を刺激しないように端っこにジッと伏せていることだけだった。

 

「だから、機械は嫌いなんだ……」

 

 

 

 

 

「ダークメガミを介すれば、この通りだ。今は波動の効果範囲も街一つが限界だが、もっとダークエネルゴンを手に入れれば、ダークメガミを増やすことも、効果範囲を広げることもできる。……それこそ、地球全体を覆うほどにな」

 

 そうなれば、地球上のあらゆる機械がテラーコンにトランスフォームし、人間を一掃するだろう。

 今、この地球のどんな貧困国にも車が走って飛行機が飛び、どんな辺境にも冷蔵庫やテレビがあるのだから。

 人間たちが使う戦車、戦闘機、戦艦、あらゆる兵器が敵になるのだから。

 

「素晴らしい……奴らを滅ぼすのは、奴らの文明と言うワケだ」

 

 あまりの事態に困惑するディセプティコンたちの中にあって、ガルヴァトロンだけは明確に喜んでいた。

 そうしている間にも、黒雲は広がりその下にある車が、電子レンジや冷蔵庫が、コンピューターやスマートフォンが、次々とテラーコンへ変異していく。

 警察も消防もマスコミも、生活の中で頼りにしている機械が怪物になっていく、この異常事態に混乱するばかりだった。

 

 

 

 

 

「その何とかエネルゴンは、俺らに影響ないんだろうな!」

「安心しろ。このエネルギー波は、生きているトランスフォーマーには影響を及ぼさない。……死ねばその限りではないがな」

 

 ニトロ・ゼウスの悲鳴染みた声に答えたマジェコンヌは、ガルヴァトロンを見下ろして手を差し伸べる。

 ダークメガミの胸のあたりに浮かび、銀色の髪を風になびかせている姿は、皮肉なことに彼女が敵視し続けたゲイムギョウ界の女神たちを思わせた。

 

「ダークエネルゴンがあるのは、セクター7なる連中の本拠地、フーバーダムだ。……さあ命令を下せ、破壊大帝。お前が、その称号を継ぐのなら」

「ククク、はははは、あーっはっはっは!!」

 

 ガルヴァトロンは自身もマジェコンヌと同じ高さまで飛び上がり、唖然とするディセプティコンたち、続々と集結するテラーコンたちを見下ろし、そして右腕を掲げて命令を下す。

 

「ディセプティコン軍団! フーバーダムに向けて進軍を開始せよ! ……地球人どもに終焉を齎しに行くぞ!!」

 

 その号令を受けて、ダークメガミがゆっくりと動き出し、それに合わせてテラーコンたちも行進を始める。

 ディセプティコンたちも顔を見合わせつつも、変形して進み始める。

 

 死の大軍は、すぐ後ろの街を完全に無視して河を渡っていった……。

 

 

 

 

 

 街へと向かう橋に差し掛かったオートボットたちだったが、そこからダークメガミとその足元の無数のテラーコンたちが河を渡るのが、見えていた。

 

「おい、逃げちまうぞ!」

「馬鹿、ありゃこっちに気付いてないだけだ」

 

 クロスヘアーズの言葉にハウンドが手厳しく言い返す。

 バンブルビーはオプティマスの横に並び、指示を仰ぐ。

 

「追います、か?」

「いや、あの大軍に突撃しても無駄死にするだけだ。今はそれより街の人々の救助に当たろう」

 

 厳しく言うオプティマス。

 いくらなんでも、敵の数が多すぎる。

 あれと戦うためには、ちゃんとした備えが必要だ。

 

 今は勝てなくても、近いうちに倒す気でいるあたりがオプティマスのオプティマスたる所以だった。

 

「オプっち、あれってメガトロナスの……」

 

 ネプテューヌは恋人の脇に立ち、ダークメガミの足元で蠢く機械仕掛けのゾンビの群れを見て言う。

 かつて、堕落せし者(ザ・フォールン)、あるいはメガトロナスと呼ばれたプライムが、死したディセプティコンを操ったことがある。

 彼女の言う通り、あのテラーコンたちはそれに似ていたが、オプティマスはあれよりももっと根源的に悍ましい何かを感じていた。

 

 胸の内のリーダーのマトリクスが、警告を発するように疼いていた。

 




勇者ネプテューヌの発売が近くなってまいりました。
いやまさか、綺麗なマジェコンヌと幼女なマジックを公式がやるとは……。

ダークメガミ
マジェコンヌがダークエネルゴンと女神像を基に生み出した存在。30m以上の巨体を持つ。
長年敵対してきた女神への意趣返しか、その姿は女神、特にパープルハートに似る。
特殊なエネルギー波により、機械を狂暴なトランスフォーマー、テラーコンに変異させ、これを操る力を持つ。
また、他にも特異な力があるようで……。

この作品では、テラーコンの一種ということになる。

テラーコン
機械がダークメガミ……それが放つダークエネルゴンのエネルギー波によって変異した金属生命体。
理性、知性の類はなく、唯一の本能は『有機無機の区別なく、あらゆる生命ある者を殺すこと』
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