新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED 作:投稿参謀
閑話『魔王』
東の山に魔王、在り……。
邪悪な心、邪悪な力を持ち、邪悪な姿と成りて……。
全てを憎む者
* * *
暗雲立ち込める荒野を、戦士たちは進む。その数たるや数万はくだらない。
白馬に跨った貴人、全身甲冑の武人、動物の毛皮を纏った無頼、戦乙女の如き麗人……老若男女、美醜貴賤の差はあれど、彼らはみな剣を携えていた。
両刃、片刃、両手剣、片手剣、大剣、細剣……形状も大きさもバラバラだが、その本質は等しく『王』のための剣であり、故に彼らはその全てが『王』足る者であった。
剣持つ王の後ろには、王を守る騎士たちが続く。
一人でも一騎当千の騎士たちが、万を超える王の数だけいる。ならば彼らは、何者を恐れる必要のない無敵の軍団だった。
彼らの向かう先は一つ。剥き出しの山肌も禍々しい岩山だった。
塔か城塞のようにも見える山の中腹は高台になっていて、そこに異形が群れを成していた。
背に被膜の張った翼を持ち蝙蝠に似た姿を持つ吸血鬼。
筋骨隆々とした牛頭のミノタウロス。
鰓や背ビレ、水掻きのある手足を持った半魚人。
滑りのある鱗に覆われたリザードマン。
複数の蟲の特徴を備えた昆虫人間。
……人に似た姿を持ちながら、人ではない、故に人に恐れられる魔の物たち。数え切れないほどのそれらが、武器を手に蠢き唸っている。
魔物たちの中で一際目を引くのは、大きな二本の角を持った鬼のような金属の巨人だった。
インフェルノカスと呼ばれるその巨人は、咆哮を上げて王たちを威嚇する。
王たちは剣を抜き、掲げる。王権を証明する剣の群れは、眩く光輝き闇を切り裂かんとするかのようだ。
しかしその時、岩山の頂から恐ろしい鳴き声と共に何かが飛んできた。
それは金属で出来た体を持つ飛竜で、腕と一体化した翼を羽ばたかせているが、全身が錆に覆われている。
飛竜の周りには、青白い半透明の幽鬼たちが飛び回っていた。幽鬼たちは朽ちかけた甲冑を身に纏い剣や槍を持った騎士の姿をしていて、顔は
魔物の群れのど真ん中に降り立った飛竜の背から、ヒラリと人影が地面に降りた。
その人影は大きな金属の体を持ちショットガンのような銃器を背負っているが、体に見合った大きさのボロボロの布をマントのようにして体に巻き付けフードのように頭に被っているので、顔は見えない。
しかし、このマントの影こそが魔物たちを率いる者であることは間違いなかった。
何故なら、吸血鬼も、ミノタウロスも、半魚人もリザードマンも昆虫人間も、幽鬼の騎士たちも、インフェルノカスでさえも、皆彼のために道を開けたからだ。
二つに割れた群れの間を堂々と歩むマントの影の後ろに続く少女……うずめは自問する。
ああ、なぜこうなったのだろう。
自分はただ、彼に勇者になってほしかったのに。
これではまるで……。
「ま、魔王ッ!」
王たちの中の誰かが叫んだ。
「魔王だ……!」
「魔王ッ!」
「魔王!!」
彼らの声に、瞳に、表情にあるのは、恐怖だった。恐れる物などないはずの彼らが、恐れ慄いていた。
ただ一人、黒地に赤い模様の装束に部分甲冑を身に着けた、金の髪の女性の王だけは違った。
「何故だ? 何故なんだ!? 言ったではないか、ブリテンの人々を守ると! 約束したではないか、この地に平和をもたらすと!」
悲痛なその叫びに、マントの影は応じない。
「お願いだ、答えてくれ! ……ホット・ロッド!!」
雷鳴が轟き、稲光がマントの奥の顔を照らす。
その顔は、まさしくオートボットの若き騎士だった。
魔物たちは崇め称えるが如く、武器や鈎爪のある手を掲げて『魔王』の名を唱和する。
ホット・ロッド! ホット・ロッド! ホット・ロッド!!
山その物が鳴動しているが如きそれに答えることなく、うずめを伴った『魔王』は背中からショットガンを抜いた。その姿は、彼の父親の別の世界における姿を想起させた。
そして『魔王』は、迷うことなく、ショットガンの引き金を引いた……。