新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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第20話 出会い

 急にうずめが空から落ちてきてから一か月ほどの時間が経った。

 ホイルジャックら科学者たちの懸命な努力の甲斐もなく、相も変わらずサイバトロンと連絡が取れず、表面上は穏やかなものの徐々にトランスフォーマーたちの間に不安が広がっていた。

 

 そんな中、ネプテューヌとオプティマスは、プラネタワーの一室でアイエフ、コンパらと共にホイルジャックからの報告を受けていた。

 

『つまりだね。今回の異変の原因は、バリアなどの物理的な物でも、次元の歪みなどでもないワケだね。もちろんビヴロストの問題でもない! まるで『サイバトロンと連絡が付かない』という現象が、理屈も原理もなく起こっているようだ!』

「過程をフッ飛ばして結果だけが残る!みたいな感じ?」

 

 スペースブリッジ『ビヴロスト』の管制室にいる老人のような姿のオートボット、科学者にして技術者のホイルジャックは、ネプテューヌの言葉に通信越しに頷く。

 

『まさしくだ! ひょっとしたら、ことは我々の科学力の領分を超えた事態が起こっているのかもしれん!』

「そんなの、どうすれば……」

 

 途方に暮れるアイエフだが、ホイルジャック言葉を続ける。

 

『それでも『過程』はなくとも『原因』はあるはず! それを突き止めることができれば……』

「そのために、今イストワールが過去の記録を調べてくれている」

 

 厳かなオプティマスの言葉に、一同の視線が机の上でジッとしているイストワールに向えられた。

 本の上に腰掛けた姿勢のまま、うつむき深く目を瞑った妖精のような少女の姿は、一種の置物のようにも見える。

 しかし、口から微かに漏れる「検索中……検索中……」という呟きが、彼女が生きていることを表していた。

 

「もう、何日もあの調子ですぅ……」

「かなり前の記録まで調べてるみたいね」

 

 不安げなコンパの肩に、アイエフが手を置く。

 原因究明の鍵が自身の蓄えた記録にあると考えたイストワールは、リソースのほぼ全てを検索に費やしていた。それこそ眠ったように動かなくなるほどに。

 おかげでネプテューヌが本腰を入れて仕事をする事態に至り、教会職員一同これはただ事ではないと冷や汗をかいていたのだった。

 

『……それはそうと、ネプギア君は今日も、あの記憶喪失の彼女のトコかね?』

「うん、ホット・ロッドやビーと一緒にね」

 

 姿の見えない自分の弟子のことをホイルジャックがたずねると、ネプテューヌはやや苦笑気味に答えた。

 

「まだ記憶が戻らないですが、だいぶ明るくなったです。最初のころは本当に不安そうで……」

「ホント、同じ記憶喪失でもネプ子とは大違い」

「あー、アイちゃんヒドーイ! わたしだって記憶がない間は結構不安だったんだからね!」

 

 コンパとアイエフの言いように、ネプテューヌは僅かにむくれる。

 かつてこの三人が出会ったころ、紫の女神は記憶を失っていたのだが、本人は持ち前の明るさもあって全く気にしているようには見えなかったものだ。

 

「うずめが元気を取り戻したのも、ネプテューヌやネプギア、それにホット・ロッドの献身があればこそだ」

『なーるほどねえ。げに美しきは友情かな……んん?』

 

 静かに言うオプティマスに同意するホイルジャックだったが、不意に顔をしかめた。

 

「ホイルジャック、どうしたんだ?」

『ああ……いや、どうやらちょっと、困ったことになったみたいだ』

 

  *  *  *

 

 プラネテューヌ郊外の山中にある川縁。

 大きな岩の上で、ホット・ロッドは胡坐を組んでボケーッと釣り糸を垂らしていた。

 元々は逃亡生活の頃に、仲間たちの腹の足しになればと始めた釣りだが、今ではすっかり趣味になった。

 特に、悩みがある時には走るのもいいが、無性に釣りがしたくなる。

 

 その悩みとは、もちろんうずめのことに他ならない。

 彼女が現れた時、本当ならホット・ロッドは記憶の有無に関わらず彼女と距離を置くつもりだった。それを拒否したのはうずめ自身だ。

 

『いやだ……いかないで。一人にしないで』

 

 そう言って、引き留められた。

 心細そうに涙を流しながらの懇願を、どうして拒否できようか。

 ならばと、彼女が元気を取り戻せるようにと尽くして、早数か月。

 うずめは表面上元気になったが、やはり前とは違う。

 地球にいたころよりも物静かになり、口調や仕草も大人しい物になり、時折酷く寂しそうな顔をする。

 それに……。

 

「ロディ! こんな所にいたのかい」

 

 呼ばれて振り返ると、当のうずめが立っていた。

 今の彼女は、ホット・ロッドのことをロディと呼ぶのだ。

 複雑な内心を全て硬く封印し、ホット・ロッドは快活な笑みを浮かべた。

 

「うずめ、どうしたんだ? こんなトコまで」

「いやだな。忘れてしまったのかい? 今日はぎあっちたちと一緒にドライブにいく約束だろう」

「そういやそうだったな、ごめんごめん」

 

 呆れた様子のうずめに謝り、ホット・ロッドはチェンテナリオの姿に変形して彼女を乗せる。

 向こうでは、すでにバンブルビーとネプギアが待っていた。

 

 

 

 

 

 そのやや下流の川縁には、ハウンドが腰掛けて釣り竿を握っていた。

 しかしハウンドの竿に、魚がかかる様子はない。趣味でも見つけようかと竿を垂らしてみたが、あまり向いていないらしい。

 

「釣れますか?」

「……?」

 

 急に声をかけられて脇を見ると、いつの間にか黒髪に赤いカチューシャの少女が立っていた。

 学生服の上から赤い上着を着た、緑の瞳が大人しそうな雰囲気の可愛らしい少女だ。

 しかしながらハウンドは、自分に気付かれずに接近してきた少女がただ者ではないと感じた。

 そもそも、ここはそれなりに街から離れた山中だ。こんな軽装の少女がいるのは不自然だろう。

 

「いいや、まったく釣れないな。場所が悪いのかね?」

「そうかもしれませんね。向こうの沢の方がよく釣れますよ」

「おう、ありがとな」

「いえいえ、困った時はお互い様です。それじゃあ失礼しますね」

 

 そう言うと、少女は踵を返す。その一瞬、ハウンドは少女の上着の内側に大振りなサバイバルナイフが隠されているのを目敏く見つけた。

 さらに歩き方も軍人か、少なくとも戦場を歩く者のそれだ。

 

「嬢ちゃん、ハイキングかなんかかい?」

「いいえ、狩りです。手作り料理を人に振る舞うので、どうせなら新鮮な素材が欲しくて」

 

 振り返った少女の手には、息の根を止められた蛇が握られていた。

 少女が森に消えた後で、ハウンドは彼女の言っていた沢に移動し、初めての釣果を得たのだった。

 

 

 

 

 

 ホット・ロッドたちは峠の上までやってきた。ここからだと、プラネテューヌの街が一望できる。

 ネプギアは持参したシートを地面に広げ、手作りサンドイッチの入ったバスケットを置く。

 

「はい、うずめさん。お弁当ですよ!」

「ありがとな、ぎあっち。……うん、美味しい」

 

 穏やかに笑い、うずめはサンドイッチを齧る。

 

「それにしても、ぎあっちたちには感謝してるよ。オレ一人でこの世界に投げ出されたら、どうなっていたか……」

「ふふふ、前は私たちがうずめさんに助けてもらいましたから、お相子です」

「オレは覚えてないけどね……でも本当、良かったよ。この時間がずっと続けばいいのに……でももし、新しい敵とか出てきたらどうしよう」

 

 急に、うずめの声が気弱な物になったかと思うと、瞳が潤みだす。

 周囲にはズーンという擬音と共に黒雲が立ち込めているようにさえ見える。

 

「う、うずめさん?」

「きっと恐ろしい奴が現れて、ゲイムギョウ界を滅茶苦茶にして……うずめ、また独りぼっちになっちゃうんだ……そんなのヤダよぉ……!」

「大丈夫ですよ! もしそんな悪者が出てきても、みんなで力を合わせればきっとやっつけられます!」

 

 メソメソと泣きべそをかくうずめの肩を、ネプギアが抱く。

 前と違って、今のうずめには情緒不安定な所があり、こうして不意にネガティブな考えに囚われてしまうことがある。

 ホット・ロッドは二人の前に跪き、視線を合わせてから宣言した。

 

「うずめ、大丈夫だ。俺が君を守る」

「……ホント?」

「本当だ。約束するよ」

「ありがとう……」

 

 うずめを守る。

 悩みはあれど、それがホット・ロッドの変わらぬ行動指針だった。

 

 この時、ホット・ロッドもうずめの背中をさするネプギアも皆を見守るバンブルビーも気付かなかったが、うずめの伏せられた顔には、誰かに向かって勝ち誇るかのような、暗い笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 そこからほど近い森の中では、クロスヘアーズが標準的なドラゴン型モンスターを相手取っていた。

 迫る牙をヒラリと躱し、頭部に銃弾を撃ち込むと、悲鳴を上げドラゴンは地に伏せた。

 

「へッ! 呆気ねえな! このクロスヘアーズ様にかかりゃあ、ドラゴンもイチコロよ!」

「どうかな?」

 

 得意げにガンスピンをしてからコートの下に銃をしまうクロスヘアーズだが、突然聞こえた声に顔をしかめた瞬間、ドラゴンが立ち上がって飛び掛かってきた。

 

「せやあああっ!!」

 

 が、次の瞬間には横から飛び込んできた影の繰り出した飛び蹴りを頭に喰らって今度こそ絶命した。

 ヒラリと着地した影は、茶色い髪を腰まで伸ばし、白いレオタードの上から青い上着を着て青いベレー帽を被った大人の女性だった。

 開いた胸元から見える谷間と、黒いタイツに包まれた足が、なんともセクシーである。

 

「横取りごめんごめん! 私もクエストでコイツを狩りにきてさ!」

「チッ、余計なことしやがって」

「そんな言い方はないんじゃないかな? せっかく助けてあげたんだから……おっと! それより剥ぎ取り剥ぎ取り♪」

 

 舌打ちするクロスヘアーズにさして不愉快そうな様子も見せず、女性はドラゴンの死体に近寄る。

 本来、モンスターは倒すと粒子に還ってしまうのだが、そうさせないなんらかのコツがあるのだろう。

 そして、女性は手刀でドラゴンの角を叩き折った。

 ギョッとするクロスヘアーズに構わず、楽しそうに牙やら鱗やら削ぎ落していく。

 

「いやあ、これぞ狩りの醍醐味だね!」

「……この世界の女は、おっかねえのばっかりだ」

 

 聞こえないように小さく呟いたクロスヘアーズは、そそくさとその場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 山中の岩の上に胡坐をかいて、ドリフトが瞑想していた。

 精神を統一し、限りなくクリアすることで雑念を振り払い……。

 

「いっやほー!」

「バンブルビーより、はやーい!」

「そんなことありませんよー! ビー、頑張って!」

「よっしゃあ! もっと、飛ばすぜ!」

 

 しようとした所で、近くを通ったホット・ロッドたちの上げる爆音に気を乱される。

 

「ええい、イカレ暴走族どもめ!! 戻ってこい、そっ首刎ねてやるッ!!」

 

 激怒して立ち上がり、背中から刀を抜く。

 以前は二刀流だったが今は一刀のみなのは、二刀を振るうことがオートボットとディセプティコンの間で揺れる自分の不安定さの象徴のように思えたからだ。

 

 侍ドリフト。相変わらず形から入る男であった。

 

「我、未熟……む!」

 

 瞑想に戻ろうとするドリフトだったが、岩の上にはいつの間にか一人の女性が胡坐をかいていた。

 短く切った銀色の髪で、臍を出した黒いパンツルックを着込み、左耳にはイヤリングをつけている。

 全体的に冷たくも何処か男性的な雰囲気のある女性だった

 ゆっくりと開かれた目は、垂れ目がちでルビーのように赤かった。

 

 その色が、否応なしにディセプティコンのアイカラーを思い起こさせ、ドリフトの中に嫌な物が湧き上がる。が、さすがにそれを表に出すような失礼な真似はしない。

 

「瞑想か……あまり意味はないな。こんなことで悩みが晴れるのなら、苦労はない」

 

 女性はドリフトの方を見もせずに立ち上がって去ろうとする。

 その態度が気に食わず、思わず言う。

 

「……心を清廉に保つことで、見える物もある」

「興味ないね」

 

 気障ったらしい仕草で前髪をかきあげ、女性は去っていった。

 なんて失礼な女だ、と思いながらドリフトは瞑想に戻る。

 

 やはり、答えを得ることは出来なかった。

 

 

 

 

 

 バンブルビーとホット・ロッドは競うようにして走っていく。

 運転席の窓から顔を出したうずめとネプギアは笑顔だった。ホット・ロッドとしても、やはり皆で走っているのは楽しい。

 しかし、急に通信が入った。

 

『付近で行動中のオートボットに継ぐ。繰り返す、付近で行動中のオートボットに継ぐ。こちらはオプティマス・プライムだ。ハネダシティの付近にいる者は応答せよ』

「司令官?」

『ビーか。緊急事態だ。ビヴロストがハッキングされた。目的はおそらくスペースブリッジのデータだろう。幸いにしてデータ抜き取りは阻止したが、犯人はハネダシティに潜んでいるようだ。すでに警備兵を向かわせたが、念のため急行してほしい』

「なんでオレたちが……あなたが直接出向けばいいじゃないか」

 

 うずめがあからさまに不満そうな顔をする。ドライブを邪魔されたので不機嫌なようだ。こういう所も前と違う部分だ。

 バンブルビーが咎めるようにクラクションを鳴らすが、ホット・ロッドは明るい調子で諭す。

 

「そう言うなってうずめ。これもオートボットのお仕事さ」

『相手の目的がスペースブリッジだとすれば、マジェコンヌが利用した方も狙われている可能性が高い。我々はそちらに向かっている』

「ああそうか、そんなのもあったね、そう言えば……まあロディが言うなら」

 

 ホット・ロッドの言葉とオプティマスの説明に、うずめは不満げながら納得したらしい。

 

『ネプギアー! こっちはわたしたちに任せて、頑張ってねー!』

「うん! お姉ちゃんも気を付けてね!」

 

 短い会話をする姉妹に、バンブルビーは景気よく声を上げた。

 

「よっし、それじゃあ、気分アゲアゲで、出動しますか!」

『…………』

 

 ホット・ロッドは苦笑するような雰囲気を発し、うずめは微妙に呆れていて、ネプギアも苦笑いしていた。

 仲間たちの芳しくない反応に、バンブルビーは少し恥じ入った様子だった。

 

「決め台詞は、もうちょっと、考えるよ……」

 

 何はともあれ、一同はハネダシティに向けて走り出したのだった。

 

  *  *  *

 

 プラネテューヌ第二の都市であるハネダシティ。

 国内屈指の空港があることでも有名なこの街の中をパトカーが走り回り警備兵たちが駆け回っていた。彼らはハッカーを探しているのだ。

 

 サイレンが街中に響く中、ある路地裏を一人の男……もといネズミが走っていた。

 二足歩行の丸っこいデザインで、胸に割れたハートのマークがある。

 かつてディセプティコンに与し、女神やオートボットと敵対していた小モンスター、ワレチューだ。

 

「ちゅ……ちゅ……まったくなんでオイラがこんなこと……サウンドウェーブ監修のセキュリティとかなんという分かりやすい無理ゲー。そもそもオイラはハッキングとか専門外っちゅ」

 

 人目を避け、警備兵やパトカーに変形しているトランスフォーマー警官隊の追跡を上手いこと撒いたワレチューは、そのまま路地裏を通り抜けようとする。

 

「ちゅっちゅっちゅ。まあ、路地裏はオイラのテリトリー! そう簡単には捕まらないっちゅ……」

「それはどうかな?」

「ぢゅッ!?」

 

 しかし、目の前にホット・ロッドとうずめが立ちはだかった。同時に道の反対側をバンブルビーとネプギアが塞ぐ。

 

「むむむ、女神にオートボット……またしても邪魔するっちゅか」

「ここまでだ、ネズ公」

「観念してください!」

 

 バンブルビーとネプギアは、武装を見せて相手に降伏を迫る。

 一方でうずめはイライラしているのか手をボキボキと鳴らす。

 

「何者か知らないけど、さっさと片付けて警備兵に引き渡させてもらうよ……いや、ホントに何者だよ、君」

「ま、逃げられないだろ」

「ワレチューさん、またこんなことして……コンパさんが悲しみますよ?」

 

 余裕を見せるホット・ロッドと、自分も悲しそうなネプギア。

 ワレチューはコンパの名を聞いて、ウッと漏らす。

 

「こ、コンパちゃんの名前を出されると辛いっちゅ……でも仕方がないっちゅ。所詮、オイラは(ワル)、光ある世界には生きられない宿命(さだめ)っちゅ」

「まさか、またマジェコンヌさんが何か……」

「? なんでそこでオバハンの名前が出てくるっちゅ?」

 

 ネプギアの言葉に、ワレチューは怪訝そうな様子を見せる。どうやら、今回はマジェコンヌとつるんではいないらしい。

 

「おっと、出来れば戦闘は避けたかったけど、こうなったら仕方がないっちゅよ……ガズル! 出番っちゅよ!」

 

 ワレチューの号令に合わせ、アスファルトを突き破って地中から現れた何かがホット・ロッドに襲い掛かる。

 緑の鱗に覆われた鼻先に角のある二足歩行の恐竜型のモンスターだが、胸部などが機械になっており大きさもオートボットたちと同じほどもある。

 

「え!?」

「うずめ!」

「ガズル、そのまま抑えて、適当なトコで逃げるっちゅ!」

 

 ガズルなる恐竜モンスターの吐く炎から、ホット・ロッドは咄嗟にうずめを庇い、その隙にワレチューは彼らの脇を通り抜ける。

 

「うずめさん、ホット・ロッド!」

「ここは任せろ! それより奴を追え!」

「……はい!」

 

 ネプギアはうずめたちに声をかけるも、ホット・ロッドに言われて女神化して飛び立つ。バンブルビーは言われる間でもなく、大きく跳躍して取っ組み合うホット・ロッドとガズルを飛び越えた。

 

「ロディを離せー! 夢幻、粉砕拳!!」

 

 少しヤケ気味に、うずめはホット・ロッドに至近距離から炎を吐き掛けるガズルの腹に拳を叩き込む。

 

 往来に逃げたワレチューだったが、その先には警備兵やトランスフォーマーの警官隊が待ち構えていた。

 後ろからはネプギアたちも追いかけてくる。

 

「お前は完全に包囲されている、大人しくお縄に着け!」

「そう言われて大人しくする悪党はいないっちゅ! シズル、ジャビル、来るっちゅ!」

 

 それで諦めるワレチューでもなく、さらなる増援を呼ぶ。

 地中から両腕が鎌のようになった赤い昆虫型モンスターが顔を出し、上空からは青い猛禽類型モンスターが飛来する。

 二匹の吐く炎は、トランスフォーマーにすらダメージを与えた。

 

「ぐ、何という炎だ!」

「こいつらはそこらのモンスターとは格が違うっちゅ! さて今の内にシズル、オイラを連れて逃げるっちゅ!」

「ワレチューさん、待ってください!」

 

 ワレチューを背に載せて飛び去ろうとするシズルなる猛禽型を追おうとするネプギアだが、それをワレチューは嘲笑う。

 

「待てと言われて待つ馬鹿はいないっちゅ! バーカバーカぁああああッ!?」

『ええ!?』

 

 だがシズルとワレチューは、横合いから飛んできた光弾に撃ち落された。

 ネプギアとバンブルビーが光弾の飛んできた方向を見れば、ビルの上に人影があった。

 その影は、トウッ!という掛け声と共にビルから飛び降り、華麗に路上に着地するとポーズを決める。

 

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ! 悪を倒せとわたしを呼ぶ! 聞け、悪人ども! わたしは正義の戦士、プレスト仮面!!」

 

 プラスチックのような質感のある黄色い服を着て、金髪をピッグテールにし、白地に黄色いラインの入った帽子を着た、10歳そこそこの少女だった。

 だが身の丈より大きなバズーカ砲を担ぎ、目元を黒いドミノマスクで隠しているのは、どういうことか。

 

『……誰?』

 

 ネプギアとバンブルビーの声が重なる。

 一方、仲間を撃ち落されたジャビルは怒りの咆哮を上げて少女に向かっていく。

 

「そうは、させるか! 最後くらい、決めるぜ!」

 

 が、横からバンブルビーの蹴りと拳のコンボを喰らって昏倒した。

 同時に、気絶したガズルの鼻先の角を掴んでその体を引き摺りながら、ホット・ロッドが路地から出てきた。

 

「お、そっちも終わったか」

「…………」

 

 隣に並ぶうずめは、仮面の少女の姿を見て面食らっていた。

 その自称、プレスト仮面なる少女は目を回しているシズルの上に倒れているワレチューに人差し指を突き付ける。

 

「この正義のヒーロー、プレスト仮面の目の黒いうちは、悪の栄える道理はないのだ!」

「は、白昼堂々バズーカぶっ放すってどんなヒーローっちゅ……今更だったっちゅよね、ガクッ」

 

 ワレチューはブツブツと文句を垂れた後で、糸が切れたように意識を失った。

 呆気に取られていたネプギアだが、とにかくプレスト仮面に向かって頭を下げる。

 

「え、ええと、ご協力ありがとうございます。プレスト仮面……さん?」

「なんのなんの。では本来なら報酬は1000クレジットのところ、今回はねぷねぷからの依頼ということで特別に無料で……あ!」

 

 なんだかヒーローらしからぬことを宣いつつ、さりげなくネプギアの姉の愛称を言うプレスト仮面だが、胡乱げな視線を向けてくるバンブルビーに目を止めた瞬間、表情が変わった。

 

「わあ……うわあ! 本物だ、本物のバンブルビーだ!! すごいすごーい!! ……あ、こほん!」

 

 見た目相応にはしゃぎだしたプレスト仮面だったが、当のオートボットとその相棒の女神が目を丸くするのを見て、誤魔化すように咳払いする。

 

「で、では、わたしはこれで! これからも困ったことがあれば、このプレスト仮面を呼んでくれたまえ!!」

 

 言うや、トウッと掛け声と共に一跳びで建物の上まで登り、そのまま去っていった。

 

「……なんだったんだろう、いったい?」

『さあ……』

「……あれ? 彼女の出番はまだ先のはずで……あれぇ?」

 

 嵐のように過ぎ去っていったプレスト仮面の不可解さに、ネプギアとオートボットたち、そしてうずめは揃って首を傾げるのだった。

 

 




後書きに代えて、キャラ紹介。

天王星うずめ
突然、ゲイムギョウ界に現れた記憶喪失の女神。
記憶を失っているせいか、ホット・ロッドのことをロディと呼ぶ、大人しめながらボーイッシュな口調、ネガティブになりやすいなど前と性格が違う。
設定上、暗所及び閉所恐怖症。

なお、一人称が『俺』ではなく『オレ』なのはミスではなく仕様。


ワレチュー
ご存知、小悪党なネズミのモンスター。
相変わらずケチな悪事を働いているようだが、今回はマジェコンヌともディセプティコンとも関係がなく、何者かに雇われている。

なお、彼が呼び出したガズル、シズル、ジャビルの三匹は、超神マスターフォースに登場した(初登場から1分くらいで爆散した)スパークダッシュという連中がモチーフ。

自称、マスコット界で三番目に有名なネズミ。
猫と仲良く喧嘩してるネズミ「ほう?」
白イタチと戦ったネズミ「面白いジョークだ」
ラットル「オイラも知名度はそこそこだと思うんだけどなあ……」


プレスト仮面
いったい、何ーシャなんだ……。

次回は、オプティマスたちの方の出来事で、TFファンにも楽しんでいただける話……の、予定です。
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