新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED 作:投稿参謀
ハネダシティの大通り。
女神とオートボット……あとプレスト仮面……に捕らえられたワレチューと配下のモンスターたちは、まとめてふん縛られて路上に転がされ、警官隊に囲まれていた。
「さてと、こいつらが、誰に、何の目的で、雇われてるのか、聴かないと……」
「お手柔らかにね、ビー」
気絶したワレチューを前に拳を鳴らすバンブルビーを、ネプギアが諫める。やるなとは言っていない。
「…………」
「うずめ、どうしたんだ?」
「……なんでもないよ」
一方、顎に手を当てて何やら考え込むうずめの傍に、ホット・ロッドは屈みこんでたずねると、うずめは軽く手を振った。
「おお! こんな所にいらっしゃいましたか!」
急に聞こえた声の方を見れば、やじうまをかき分けて一体のトランスフォーマーが現れた。
人間大で、銀色の細身の体に腹の円盤状パーツを始め金色の細緻な模様が入っている姿が、古く精密な時計細工を思わせる。まん丸い青色のオプティックを見るに、オートボットだろうか?
「探しましたよ。ちゃんと約束の場所に来ていただきませんと。おやおや、お昼寝ですか?」
「ちょっと、入っちゃだめだよ!」
辺りを封鎖していた警官が、そのトランスフォーマーを止めようとするが、ヒラリと華麗に躱される。
そのままそのトランスフォーマーは怪訝そうな周りの目を気にせずツカツカとワレチューに近寄ると、その頬を叩いた。
うずめはまた変なのが現れたと驚いていた。
「ぢゅっ!? 何するっちゅ! って、コグマン!」
「ほら、起きなさいな。約束の時間は当に過ぎておりますよ」
「起きてるっちゅ! 起きてるっちゅから!」
目を覚まさしたワレチューの体を乱暴に振るコグマンなるトランスフォーマー。どうもこの二人、知り合いであるらしい。
コグマンはワレチューを地面に落とすと、呆気に取られている一同に向かって優雅に会釈する。
「どうも、この度はわたくしどもの主人のペットたちが、失礼いたしました。何分、躾がなっておりませんもので」
「オイラをペット扱いするなっちゅ!!」
しぶとく立ち上がりがなるネズミを完全に無視し、話を続ける。
「それでは皆様、わたくしどもはこれで……」
「おいおい待てよ。誰だか知らないけど、そのネズミの仲間か? そいつは犯罪者なんだぜ!」
「おお、それはそれは……少々お待ちを」
ホット・ロッドが呆れたように言うと、コグマンの喉から古い電話のようなマイクが現れ、さらに肩から古めかしいデザインのワイヤー付きの受話器を取り出して耳に当たる部分に当てる。
「坊ちゃま。コグマンでございます」
『なんだ! ネズミは回収できたのか! ……それとその坊ちゃまというのは止めろ! 何度言えば分かる!!』
「大変申し訳ございません、
坊ちゃまの部分を強調するコグマンに、通信相手……明らかに大人の男の声……はイライラとした調子で怒鳴る。もちろん、通信は女神やオートボットたちには聞こえていない。
『だからどうした! さっさと回収……いやいい、ワシが出向いてやる! お前はそれまで時間を稼げ!』
「お言葉ですが、坊ちゃま……」
『命令だ!!』
一方的に通信を切られ、コグマンは大きく排気して通信装置を体内に収納する。
そして、ポカンとしているオートボットたちに向き合った。
「皆さま、大変失礼とは存じ上げますが、皆さまと戦わねばならなくなりました。心苦しいのですが、これも仕事ですので」
「いや、ワケが、分からん」
一同を代表してバンブルビーがツッコミを入れるが、コグマンは腰や腕を伸ばして準備運動をする。
その間に、警官隊がこの奇妙なトランスフォーマーを取り囲んだ。
うずめは呆れ果てた様子で、問う。
「戦うって……この数相手に、人間サイズの君一人でどうするんだい?」
「お嬢さん。世の中には、貴女の見識を超えることなど、いくらでもあるのですよ……来なさい! マイ、トランステクター!」
気取った態度を崩さないコグマンが腕を掲げて声を上げると同時に、何処からか一台の車が爆音と共に走ってくる。
かなり高級なシルバーのグランツーリスモのクーペだ。
そのグランツーリスモは、ギゴガゴと音を立てて変形しながらその反動を利用してやじうまを飛び越える。
「トランスフォーム!」
それに合わせて、コグマンも体躯からは想像も出来ないほどに高く跳躍し、体を丸めるようにして変形する。
グランツーリスモの方は肩や膝関節にタイヤが配置された人型になるが、何故か首から上が無い。
反対に、コグマンが変形したのは自身の顔そのままの大きな頭部だった。
「ヘッドオン!!」
着地したデュラハンの如き首なしのトランスフォーマーの体に、コグマンが変形した頭部が合体し、コグマンをそのままスケールアップしたような姿になるや、背中から抜いた大剣を振るってワレチューたちの拘束を解く。
「ちゅっ!?」
「さあ、あなた方にも手伝っていただきますよ」
「あ、頭に変形した? そんなのアリ?」
その非常識な変形を見て、うずめが面食らう。彼女はまだまだ、トランスフォーマーの非常識さに慣れていなかった。
バンブルビーは冷静にブラスターを構える。
「ヘッドマスター……」
「ヘッドマスター?」
「珍しい、種族。全滅したって、聞いたけど、生き残りが、いたのか」
「ええまあ、ここにこうして……さて、お喋りはこれくらいにして、始めますか」
オウム返しに聞くネプギアに、バンブルビーは答え、コグマンは表情を変えずに頷き、剣を構えると同時に斬りかかってきた。
その速度は、バンブルビーのセンサーでも捉えきれないほどだ。
「ッ!」
「反応されますか。さすがですね」
しかし、そこは歴戦の勇士たるバンブルビー。咄嗟に後ろに飛んでこれを間一髪躱す。
さらに斬り込もうとするコグマンの後ろから、ホット・ロッドが二丁拳銃から時止め弾を放つ。
「時よ止まれ!!」
「!」
しかし、コグマンは素早く屈んで弾を躱す。
時止め弾はコグマンに飛び掛かろうとしていたトランスフォーマー警官隊に辺り、その動きを停止させる。
「ッ! 最近、こんなんばっかりだな……」
「一芸特化とは、そういうものですよ」
周囲の警官隊も、オートボットたちを援護しようとするが、ワレチュー配下のモンスターたちが吐く炎が作る壁に阻まれる。
うずめも拳を握って殴りかかり、ネプギアは飛び上がってN.P.B.Lの引き金を引くが、しかしコグマンはその全てを軽い身のこなしでいなして見せる。
「この人、強い……!」
「というよりも、戦い方が上手い感じだ。……まるでニンジャだな」
「いえいえ、わたくしは一介の召使いでございますよ……体を動かすのは楽しい時間でしたが、どうやら迎えが来たようで」
呻くネプギアとうずめに律儀に答えるコグマン。
その時地面が揺れ出し、コグマンやワレチューたちのいる周囲の地面が割れて猛烈な土煙が巻き上がる。
「ッ! ……あれは!」
竜巻のように渦巻く土煙の向こうに、何かが蠢くのをホット・ロッドは見た。
ただの土煙ではなくチャフのようにトランスフォーマーのセンサーを狂わせる粉を含んでいるためハッキリとは見えなかったが、それは先端が鋭く尖った長い尾と、一対の鋏を備えた腕を持っているように見えた。
「サソリ……?」
資料で見たスコルポノックなるドローンに似ているが、それよりも遥かに大きくシルエットは角ばっているように見える。
「それでは皆さま、ごきげんよう。またの御縁があれば、お会いいたしましょう……」
コグマンのそんな言葉が聞こえたのを最後に土煙が晴れると、路面に大きな穴を残して、コグマンとワレチューたちの姿が消えていた。
穴は途中で塞がっており、追うことは出来そうにない。
「逃がした、か……」
「なんだったんだろう、あの人たち……」
バンブルビーが悔し気に呻き、ネプギアは急な展開に頭を振る。
周囲の警官隊もざわざわとする中、ホット・ロッドはふと思う。
(うずめの言ってた通りになっちまったか……)
さっき、うずめは『新しい敵が現れる』とネガティブな妄想を口にしていた。
そして実際、未知の敵が現れた。恐ろしい偶然だ。
(偶然……だよな?)
チラリと見れば、うずめは一人何かを考え込んでいるようだった。
「………マジェっちの仕込みじゃないのか? じゃあ、あいつらはいったい?」
その口の中での小さな呟きは、ホット・ロッドのセンサーを持ってしても聞き取ることが出来なかった。
ヘッドマスターではなく、ヘッドマスター
今回のキャラ紹介
執事コグマン
自身が『坊ちゃま』と呼ぶ何者かに仕えるトランスフォーマー。
大きな頭部に変形し、トランステクターと呼ばれるビークルと合体するヘッドマスターという種族。
一見すると落ち着いていて紳士的だが、実際にはエキセントリックでデンジャラスな性格。
マイケル・ベイ節の化身。
アストンマーティン・DB11風のトランステクターを持ち、原作映画では披露しなかった合体形態にもちゃんとなる。
むしろ、なんで原作ではならなかった。
坊ちゃま
コグマンやワレチューが仕える人物。
高圧的に話し一人称はワシ。
自分が出向くと言って実際に現れたのは、サソリのような何かだった。