新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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第23話 秘密結社

 ハネダシティからワレチューたちが逃げ去り、ステマックスがオプティマスたちから逃げ仰せて、それからしばらくして。

 何処かの広い部屋の中。

 白い壁に金と赤の装飾が、豪勢な……というのを通り越して露骨な成金趣味を感じさせる。

 調度品も石膏像だの瀬戸物だの高価であるという以外に統一感がなく、さらに壁には大きく『時は金なり』と書かれた紙が額縁に入れられて飾られているのだから、この部屋の持ち主の人格を伺うことが出来る。

 その持ち主は、部屋の奥に置かれた玉座のような椅子に腰かけていた。

 

 力強く、そして刺々しい巨体は4mほどの大きさだ。

 部屋と同様の白い装甲に黄金の装飾、体の所々と眼が赤く発光していて、背中に赤いマントのようなパーツがある。

 厳めしく憤怒に歪んでいるような顔は、果たして仮面かこういう顔なのか。

 一見すると金属生命体のように見え、見る者が見れば、あるいは破壊大帝を思わせるだろう威容だ。

 

 その前に、一瞬にして紫がかった藍色の忍者のような姿のロボット、ステマックスが現れる。

 

「アフィモウジャス将軍。忍者ステマックス、只今密命から戻ったで御座る」

「うむ、ご苦労。……して成果は?」

「はっ、これがスペースブリッジの起動コードで御座る」

 

 アフィモウジャスと呼ばれた白い鎧の巨人は椅子から立ち上がると、跪いたステマックスが恭しく差し出したディスクを受け取った。

 

「おお、確かに! 褒めて遣わすぞ!」

「ありがたきお言葉!」

「……と、形式ばったのはここまでにして」

 

 まさしく忠臣を労う悪の大ボスといった雰囲気だったアフィモウジャスだが、不意に纏う空気が柔らかくなった。

 

「いやあ、今回もすまないのお。まさか、あんなに早くハッキングがバレるとは……」

「けど、今回はほんとギリギリだったんで御座るよ。なんとオプティマスまで出てきたで御座る。総大将の癖にフットワーク軽すぎ」

「う~む、序盤のボスを相手にするつもりが、大魔王が出張ってきたようなものだな」

 

 一転、二人は気の置けない調子で会話を交わす。その様子から、この二人が親しい間柄であることが分かる。

 

「と、それはそうと将軍。さっきプラネテューヌの女神、ネプテューヌと会ったで御座るよ」

「なんと! まさか、女神化した状態ではあるまいな!」

「そのまさかで御座る。金髪でないのが残念なくらいのナイスバディだったで御座るよ」

「くぅ~、羨ましい!」

「でもやっぱり、オプティマスと仲が良いようで御座る……」

「おお……やっぱり、そうかぁ…………」

 

 馬鹿なことでテンションを上げていたステマックスとアフィモウジャスだが、急に意気消沈する。

 例えば好きなアイドルの恋愛スキャンダルを聞いた時のアイドルオタク的なテンションの落ち方だ(直喩)

 

「きっともう、ア~ンなことやコ~ンなことをしておるのだろうな……」

「あのボディをもう、イヤ~ンでバッカ~ンな感じに……グスッ」

「ええい、泣くなステマックス! やはりワシらはあくまでも金髪巨乳道を行くぞ!」

「無論で御座る! 女人はやっぱり……」

 

 涙ぐむ忍者ロボを励ましたアフィモウジャスに、励まされた本人もノリを合わせる。男のバカな友情がそこにはあった。

 

「金!」

「髪!」

『巨乳!!』

 

 フュー〇ョンのポーズを取るアフィモウジャスとステマックス。

 ロボ的な外観の二人がそうするさまは、呆れかえるほどにバカバカしい。

 

 と、急に何処からか通信が入ったことを知らせる着信音が鳴った。

 

 〇ュージョンのポーズを解いたアフィモウジャスは、何食わぬ顔でその機械の鎧に備わった通信装置に出るとネズミ型モンスターのワレチューが、視界に映る。

 

「ネズミか。どうした?」

『オッサン、デイトレーダーが来たっちゅ。また何か売りつけに来たみたいっちゅ』

「分かった、すぐに行く。待たせておけ。……ステマックス、お前もついてこい」

「御意」

 

 通信を切ったアフィモウジャスは、さっきまでのオバカっぷりは何処へやら。威厳たっぷりにステマックスを伴って部屋を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 先ほどの部屋と違い、武骨な造りの通路を抜けて二人がやってきたのは巨大な格納庫のような場所で、そこには何か大きな機械が置かれていた。

 格納庫の照明の暗さと大きさ故に全貌は分からないが、それはサソリのようにも見え、周りでは小さな、トランスフォーマーともモンスターとも違う、所謂()()()機械が作業していた。

 何かを運ぶ物、金属を溶接している物、ネジを回す物、大小無数の機械がせわしなく働いている。

 

 その脇のスペースに、待たせている二人がいた。

 一人は、御馴染みワレチュー。もう一人はトランスフォーマーだ。

 錆と油と泥とその他あらゆる汚れに塗れていて、髭面の中年男性のような姿だ。

 背負った何かのパーツや壊れかけの装置、古臭い武器などのガラクタは、本人の体よりも容積がありそうで、肩にはオートボットのマークがあるが、所属への無関心さを示すが如く擦れて消えかけていた。

 

「これはこれは、アフィモウジャスの若旦那。お元気そうでなにより」

 

 そのオートボットは白い鎧の姿を見とめるや、手を揉みながら近寄ってくる。

 アフィモウジャスは、余計な社交辞令や前置きを抜きにして本題を切り出した。

 

「デイトレーダー。それで、今日は何を持ってきた?」

「はいはい。まずはこちら、ディセプティコンの巡洋艦で使われる光子キャノン砲、すごい威力だよー。それとパワーユニットが二基、セットでお買い得。武器用コンソールとパワーチップ整流器もあるよ、今なら15%オフだ。オプティックセンサーは片方だけど健康な奴で、探すのに苦労したんだ。後はなんと言ってもトランスフォーム・コグ、これが無いとはじまらんね」

 

 背中から次々と機械部品を取り出して床に並べるデイトレーダーなるトランスフォーマー。だがその商品の中には、明らかに同族の体を構成していたであろうパーツも含まれていた。

 

「そして今回の目玉商品! 前の大戦で暴れたディセプティコンの兵士、マインドワイプの頭だ!」

 

 ドンと、かつて催眠術を操る蝙蝠を思わせる姿をしたディセプティコンの首だった物を床に置く。

 このデイトレーダー、時にトランスフォーマーの残骸を漁って飯のタネにしているらしい。

 

「オイラが言えた義理じゃないけど、碌な商売じゃないっちゅね」

 

 マインドワイプの首と目が合ってしまったワレチューはゲンナリとした顔をするが、アフィモウジャスはその首を持ち上げて、繁々と眺めた。

 

「……よかろう、ここにある物を全て買おう。支払いはいつもの通り口座に振り込むぞ」

「毎度あり! ……確かに、振り込まれたのを確認しましたと。いや若旦那は、金払いが良くて助かるよ。最近は俺みたいな廃品回収業者は肩身が狭くてね……」

「墓荒らしの間違いじゃないっちゅか?」

「それじゃ、またのご贔屓に」

 

 いくつかの電子的なやり取りを終えて、ほくほく顔のデイトレーダーはワレチューの皮肉にも動じずに、荷台にガラクタを満載したオンボロピックアップトラックに変形して走り去っていく。

 購入した部品を一つ一つ手に取っていたアフィモウジャスは、ワレチューに視線をやる。

 

「くくく、喜べネズミ。これで貴様の分のトランステクターを完成させられるぞ」

「えー、それ使うっちゅかー? オイラのような有能マスコットには、似合わないっちゅ!」

 

 あからさまに嫌そうな顔をする部下に、アフィモウジャスの目の部分が細くなる。

 

「我儘を言うな。というか貴様の何処が有能だ。このワシが回収してやらねば、今頃監獄の中ではないか。未完成のトランステクターを無理に動かしたおかげで調整にまた時間がかかってしまう」

「それは計画が杜撰だったからっちゅ。オイラにハッキングさせる方がどうかしてるっちゅ」

「…………まあいい。確かにワシの落ち度だった。そこは認めてやろう」

 

 言い返してくるワレチューに、アフィモウジャスは一応にも自分の非を認めると、彼らのやり取りに一切構わずに巨大サソリの周りで作業している機械たちを一瞥する。

 すると、その内の何台かがこちらにやってきてロボットアームで部品を持ち上げ、何処かへ運んでいく。

 アフィモウジャスが何かを操作したり命令したりした様子はない。

 

「しかし、いつ見ても将軍の精神エネルギーは便利な物で御座るな」

「まあな。お主のトランステクターも、ワシのエクソスーツも、この力あってこそ完成させることが出来たのだ! 我が結社『アフィ魔X』は、この力によってこそ成り立っておるのよ!」

 

 これまで会話に加わらず生まれついた影の薄さ故に誰にも気に留められなかったステマックスからの称賛に、アフィモウジャスは胸を張る。

 彼は精神エネルギーなる特殊な力によって、自らの意思を持たないあらゆる機械を操れるのだ。

 

「……む!」

 

 上機嫌だった結社の首領だが、不意に何かに気付くとそのまま身を翻す。それは身に纏う鎧、エクソスーツに仕込まれたセンサーの一つが反応したからだった。

 

「将軍?」

「おっさん、何処に行くっちゅ!?」

「ついてくるな! お前たちは少し休んでいろ! ワシは他の仕事を片付ける!」

 

 それだけ言うと、白い巨人は元来た道を足早に戻っていく。

 通路を戻り、最初にいた書斎のような部屋の、横の扉を開ける。

 

「コグマン!」

「おや、坊ちゃま。秘密結社ゴッコは終わったので?」

 

 部屋の中は、四方の壁に棚が置かれていて、そこに美少女フィギュアやらロボットのプラモデルやらが飾られていた。

 問題は飾られた品々に、頭に三角巾を被ったコグマンがはたきをかけていることである。

 

「貴様、この部屋には入るなと言っただろうが! ああ、限定品のフィギュアをそんな乱暴に叩いて……!」

「申し訳ありません、坊ちゃま。汚れていたもので」

 

 怒鳴られてもシレッとして掃除の手を休めないコグマンに、アフィモウジャスはさらにイライラとする。

 さっきまでの部下たちやデイトレーダーに見せた姿とは違う、刺々しくより子供っぽい態度だ。

 

「だから! この部屋はワシが自分で掃除をするから、いいと言うとろうが!!」

「そんなことを言って、掃除をした試しがないではございませんか」

「それは……おい、なんでワシの同人誌をビニ紐で束にしておるのだ!」

「チリ紙交換に出そうかと。同じ本が三冊もございましたから」

「それは観賞用、保存用、布教用に敢えて三冊買ったのだ! もういいから止めろ!!」

 

 何だか、オカンと反抗期の子供のようなやり取りだ。

 コグマンは手こそ止めたが、全く動じている様子はない。

 

「そう言えば坊ちゃま。話は変わりますが、このコグマン、老婆心から言わせていただきますと……」

「ええい、聞きたくない!! それにその、()()()()は止めんか!! ご主人様とか旦那様とか、他に色々あろう!!」

()()()()。言わせていただきますと、秘密結社ごっこはほどほどになされた方がよろしいかと。その御召し物も、言葉遣いも、あまりお似合いとは言えませんな」

 

 慇懃無礼な態度に、アフィモウジャスは怒りで体を震わす。

 この執事気取りが主人を頑なに坊ちゃまと呼ぶのは、彼を一人前の主と認めていないからだ。それは当のアフィモウジャスもよく理解していた。

 

「子供扱いしよって! 秘密結社()()()だと!」

「総勢3名……わたくしを勘定に入れても4名に、後は機械とモンスターの秘密結社など、ゴッコ遊びで十分でございましょう。……坊ちゃま、わたくし常日頃から申し上げておりますが、我がモージャス家には昔日より受け継がれし使命が……」

「使命だと! ハッ、そんな物は1クレジットの価値も無いわ!」

 

 滔々と語るコグマンを遮り、鎧の巨人は吐き捨てた。

 金属製の執事は、何とか主人を説得しようと試みる。

 

「しかし、お父上とお母上は使命を果たさんと……」

「父と母は、大間抜けだった! お人好しに付け込まれて妾腹の叔父に財産を奪われたのだからな! おかげでワシがどれほど苦労したか!! その日食う物にも困る有様だったのだぞ!」

「坊ちゃま、確かに赤貧に喘いだのは事実ですが……」

「その坊ちゃまは止めろ!! ワシはもう、腹を空かして泣く小僧ではない!! もういい、黙っていろ、これは命令だ!!」

 

 怒りに満ちた声に、コグマンはわざとらしく大きく排気してから押し黙る。

 アフィモウジャスは執事を捨て置いてそのまま部屋を出ると書斎に戻り、椅子に腰かけて机の上に置かれたパソコン……彼に見合ったサイズだ……を起動し、ある通信回線を開く。

 

『貴様か。何の用だ』

「ワシだ。例の物についての報せがある」

 

 画面に映ったのは、スーツ姿の貫禄のある眼鏡と白髪白髭の壮年男性……誰あろう、ハロルド・アティンジャーだった。

 陰謀を進める秘密組織コンカレンスの首領は、如何なる方法によってか秘密結社アフィ魔Xの首領と連絡を取り合っているのだ。

 

『それでは、スペースブリッジとやらは手に入らなかったと?』

「問題はなかろう。起動キーは手に入れた。後は例の場所から貴様たちをこちらに招く」

『大口を叩いたわりには、お粗末な結果だな』

 

 事の顛末を聞いたアティンジャーは、通信相手に負けず劣らずの傲岸不遜さを見せる。

 しかし、アフィモウジャスもさるもの。次なる手札を切る。

 

「それと、貴様の言っていたDC01とやら……見つけたぞ?」

『……ほう?』

 

 DC01という言葉を聞いた瞬間、アティンジャーの持つ空気が一瞬変わる。

 敏感にそれを感じ取った白い鎧は、ニヤリとしたような気配を見せた。

 

「奴についての情報は合流後に話す。……もちろん、報酬は上乗せしてもらうぞ。純度99%以上の(きん)を占めて5tだ」

『金の亡者が。…………いいだろう。報酬はそちらに到着し次第、支払ってやる』

 

 毒づいたものの、アティンジャーは少し間を置いてから頷いた。

 地球とゲイムギョウ界では当然通貨も違うので、金塊を使っての取引らしい。

 

「くくく、金の亡者はワシにとっては誉め言葉よ。では彼の地でな。くれぐれも金塊を忘れるなよ」

『そちらも、必ずこちらの部隊を誘導しろ。でなければ報酬は渡せんからな』

 

 お互いに念押しした後で、アティンジャーの映像は消える。

 もちろん、アフィモウジャスはあの異世界の男を欠片も信用していないが、それは向こうも同じだ。重要なのは、どれだけ利用できるか、何処で手を切るかである。

 

 アフィモウジャスは再び立ち上がると、部屋の中を練り歩く。

 棚に置かれた、夫婦らしい男女とその子供らしい男の子、そして真顔のままダブルピースをしているコグマンが写った写真の前を通り過ぎ、壁に飾られた肖像画の前に立つ。

 

 その絵には、覇者の威厳を持つ灰銀色のディセプティコン……破壊大帝メガトロンの姿が描かれていた。

 

「メガトロン、貴方は偉大な男だ。己の思うままに力を振るい、運命を切り開いたのだから」

 

 肖像画を見上げ、敬意と憧憬を口にする。

 彼はメガトロンに憧れていた。その己の力と意思のみを頼りに、世界と戦った生き様に魅せられていた。

 この刺々しいエクソスーツも、威厳ある口調も、破壊大帝をリスペクトした物だ。

 

「父と母は、愚かだった。一族に伝わる力と宝物(ほうもつ)、それを己のために生かそうとはしなかったのだからな……ワシは違う。あらゆる物を利用し、あらゆる手段を使って、唸るほどの金を、この世の富の全てを手に入れて見せるわ! ……ふふふ、フハハ、ハーッハッハッハ!!」

 

 両腕を広げて、たった三人だけの秘密結社の首領は高笑いする。

 その先に待ち受けるのが、栄光か、破滅か。それはまだ、誰も知らない……。

 




11月末に発売される、アメコミのトランスフォーマークラシックとヘッドマスターズ編が楽しみです。

今回のキャラ紹介

ジャンク屋デイトレーダー
廃品やジャンクパーツを売り買いして生計を立てているトランスフォーマー。
一応はオートボットだが、盗品や曰くつきの品を売ったり、足下を見て高く吹っ掛けたり、時には死体漁りにまで手を出すので他のオートボットからは嫌われている。
最近は秘密結社アフィ魔Xに前大戦で戦死したトランスフォーマーの部品を売っているようだ。

秘密結社首領アフィモウジャス
ゲイムギョウ界で暗躍する秘密結社アフィ魔X(総勢3名+α)の首領。
筋金入りの金の亡者で、直接的な戦闘、戦争よりも情報こそが金を生むという現実的な考えの持ち主。
一方で部下のステマックスとは、主従を超えた友情で結ばれている。

ステマックスの仕える『将軍』、そしてコグマンの主人である『坊ちゃま』の正体。
この作品の独自の設定として精神エネルギーによって自分の意思を持たない機械を自在に操る特殊能力を持ち、中型トランスフォーマーほどもある巨躯は、この能力によって操るエクソスーツであり中身は普通の人間。この設定はトランスフォーマー・リバース(海外版ヘッドマスターズ)のロード・ザラクがモチーフ。
メガトロンに憧れており、エクソスーツのデザインも彼をモデルにしているほど。

なお、前作に登場したオリキャラ、ゴルドノ・モージャスの甥っ子(父が腹違いの兄弟)
一応、前作書いてた頃から裏設定として考えてました。
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