新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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プロローグ3 天王星うずめ

 ここはアメリカのとある州の地方都市。

 ある大企業の所謂企業城下町として中々に発展しているこの街では、ビルの谷間の往来に老若男女が行きかい、数え切れない車が走っている。

 夜ともなれば、ビル群の明かりとネオンサインで不夜城の様相を呈するだろう。

 

 そんな都市の無数に存在する街角の一つを、一人の少女が青いスクーターに乗って走っていた。

 服装はミニのプリーツパンツをサスペンダーで吊り、羽織ったワイシャツの第二ボタンのみを留めてオレンジのネクタイを締めているという、かなり露出の高い恰好だ。

 頭にはハーフタイプのヘルメットを被りゴーグルを着けているが、それでも口元などから顔立ちが整っていることが分かる。

 ヘルメットから漏れた暗めの赤色の髪は、長く伸ばして二つに締められ風にたなびいていた。

 

 ではスクーターの方はというと、随分と年期の入った物であちこち塗装が剥げている。

 目を思わせる二つの大きなヘッドライトが特徴的で、後部には荷物を載せるコンテナを牽引していた。

 

 やがて少女は街の一角にある古びた雑貨店の前でスクーターを止めて降りると、ヘルメットを外しスクーターの座席に置く。

 すると髪に三角形のヘアピンを二つ着けていて、大きな瞳が濃いオレンジ色をしているのが分かる。

 

「こんちわー! ばあちゃん、お邪魔しまーす!!」

「あら、うずめ。いらっしゃい」

 

 店の木製の扉を潜って少女が明るく声を出すと、レジに座る年配の女性店主が老眼鏡を直しながら出迎えた。

 うずめと呼ばれた少女は、店内を見て回り買い物籠の中に食糧や日用品、それにペットフードを放り込んでいき、それをレジまで持ってきた。

 店主は機械的にリーダーでバーコードを読み取りながら、うずめに声をかける。

 

「またケイドさんのお使い? 住み込みとはいえ大変だねえ」

「アハハ、俺はイエーガー機械修理店の唯一の従業員だからな! これも仕事の内さ!」

「しかし大丈夫かい? ほら、あの人男ヤモメだし娘さんも家を出てしばらく経つだろ? 若い娘と二人っきりってのもねえ……」

「心配いらないって! ケイドのオッサンはそんな奴じゃないよ。……それに、()()()()()()()()()()

 

 若干邪推気味ながらも心配そうな店主に、うずめは快活な様子で答えたが、最後の方は小さな呟きで女性には聞こえなかった。

 

 買い物を終えたうずめが店を出てスクーターのコンテナに荷物を載せると、突然大きな破壊音が聞こえた。

 

 慌てて見回すと何処からかパトカーのサイレンが聞こえ、煙が上がっているのが見える。

 

「あらやだ。また例の暴走車? 最近多いわねえ」

「ばあちゃん! ありがとう、また来るよ!」

 

 ヒョッコリと扉から顔を出した店主に叫ぶと、うずめはスクーターに跨りエンジンを懸けて走り出した。

 

 

 

 

 

 街の大通りを一台の車が爆走していた。

 なんてことないセダンだが、誰も乗っていないにも関わらず一人でに動き、そこらへんの街路樹や別の車に体当たりを繰り返しながら走り続けている。

 パトカーがサイレンを鳴らして追いかけているが、暴走車は止まらない。

 

「ええいくそ! だから機械は嫌いなんだ!!」

 

 警官隊を率いる警部が毒づくが、それで状況が好転するワケもない。

 

「いいから、州兵でもなんでも呼んでくれ!! 無理なら重火器を使わせろ! セオリー通りにやれ? 馬鹿言え、車のハンドルに手錠かけろってのか!? 運転手なんざいないんだ、ぶっ壊すまで止まらないんだよ! 」

 

 無線で上層部に応援を要請するが、返事は芳しくなかった。

 何台かのパトカーが先回りして動きを封じようとするが、暴走車は人の多い歩道に突っ込もうとする。

 スマートフォンで呑気に写真や動画を取っていた市民も、さすがに泡を食って逃げ出すが、一人の子供が取り残された。

 

「! まずい!!」

 

 警部が声を上げるが、その瞬間には恐怖のあまり凍りついたように動けない子供に向けて暴走車が真っ直ぐに向かっていく。

 

 そして、子供が暴走車に撥ねられる寸前、何処からか一条の光が降ってきたかと思うと、暴走車は粉々に吹き飛んだ。

 

 恐る恐る子供が目を開けると、そこにはレオタード状の衣装を着たオレンジ色の髪の少女がいた。

 頭の両側で渦のように髪を巻いた独特の髪型で、猫の耳のようにも見える帽子を被り、背中には光の翼がある。

 青い瞳には、電源マークのような紋様があった。

 

 この少女が、上空から飛んでくるや振り下ろす拳の一撃で暴走車を破壊したのだ。

 

「危なかったね。でももう大丈夫だよー」

 

 オレンジ髪の少女は子供を安心させるようにニッコリと笑う。

 随分と、間延びした声だ。

 

 子供はその姿をボウッと見上げていたが、やがて遠巻きに見ていた人混みの中から母親と思しい女性がやってきて子供の手を引いてオレンジ髪の少女から離れる。

 母親の目には、得体のしれない者に対する恐怖が浮かんでいた。

 

 オレンジの少女は少しだけ寂しそうに微笑むと、空へと飛び去っていった。

 

 すぐに警官たちが、周囲を封鎖しだす。

 

「また……助けられちゃいましたね」

「ふん、余計なことをしてくれる」

 

 感傷的な部下の言葉に、警部は鼻を鳴らす。

 人助けだろうが何だろうが、得体の知れない輩など信用できない。

 まして、あんな格好でうろつく奴は特にだ。

 スーパーヒーローなど、現実にいればただの厄介者に過ぎないのだ。

 

「それよりも……CS社の方は何と言ってきてる?」

「相変わらず、原因の究明に努めている、と……」

「どうせあそこの導入したコンピューター制御のせいに決まってんだ! 他に何がある!!」

 

 イライラと騒ぐ警部。

 その視線の先では、暴走車の残骸から()()()()()()()()()が漏れ出していた……。

 

 

 

 

 

 オレンジの少女は人に見つからないように路地裏に入る。

 その身体が光りに包まれてうずめの姿に戻ると、奥の暗がりからスクーターが一人でに現れた。

 

「なんだよ、スクィークス?」

 

 うずめがまるで人間にするようにスクーターに問い掛けると、スクーターは非難がましく電子音を鳴らした。

 

「分かった分かった。目立たないように、な。分かってるって!!」

 

 軽く言ったうずめは、スクーターに跨ってエンジンをかける。

 と、その左手首に着けている腕時計のような機械……今時珍しいヴィジュアルラジオに通信が入った。

 

『うずめ、聞こえるかい?』

「海男か。どうしたんだよ?」

 

 聞こえてきたのは、男性の声だった。

 深く渋い大人の男を想起させる、まさに美声だ。

 

『帰りが遅いから心配でね。……何かあったのかい?』

「……ああ~、特には、万事問題ないぜ!」

『その様子では、また何かあったようだね。例の暴走車かい?』

 

 誤魔化そうとしたうずめだが、声が上ずっていてすぐに見抜かれる。

 どうも、嘘は苦手なようだ。

 観念したうずめは、白状する。

 

「まあな。つい、助けちまったよ」

『うずめ、いつも言っているだろう? 俺たちは人目につかないように行動しなければならないんだ。でなければ、破滅を招きかねない』

「分かってるって……でもなあ」

 

 理性的な調子の海男なる男の声に、うずめは納得いかないようだ。

 通信の向こうから、溜め息を吐くような音が聞こえた。

 

『まあ、終わってしまったことをグチグチと言っても仕方ない。それが君の良い所なのも確かだしね。それじゃあ、()を回収して帰ってきてくれ。多分、いつもの所だ』

「了解! ……ありがとな、海男」

 

 軽い口調ながらも心からの感謝を伝えてから通信を閉じ、スクーターを走らせて路地を出る。

 そのまま街中を抜け、街の横に流れる大きな河に架かったやはり大きな橋を、この街のシンボルである女神像を横目に渡る。

 

 橋を渡ると民家はなく、鬱蒼とした森と山が広がっていた。

 うずめを乗せたスクーターはより山奥へと入っていく。

 やがて道の舗装もなくなり、ほとんど獣道となった山道を構わず進んでいくと、やがて山の合間に流れる渓流が見えた。

 

 その脇の岩の上に奇妙な影が腰かけ、清らかな川に釣り糸を垂らしていた。

 

 黒を基調とした人型の機械で、座っていてもうずめの倍は背丈がある。

 所々入ったオレンジ色が、鮮やかだった。

 肘や膝の部分に車のタイヤのようなパーツがあり、背中には甲虫の羽根のようにドアが配置され、胸の部分は特に車のフロントを思わせる造形をしている。

 目が大きく、独特の愛嬌がある顔立ちだった。

 

 それがパイプで作った釣竿を手にジィッとしている。

 

 うずめは適当な所にスクーターを止めると、そのロボットに声をかけようとするが、そこでロボットは釣竿を勢いよく振り上げた。

 

「よーし! 釣れた!」

 

 釣り糸の先の釣り針には、大きなバスが食いついていた。

 喜色満面でピチピチと身をくねらせる魚を慎重に手に取る。

 

「はっはー! こいつは大物だぜ!!」

「良かったな、ホット・ロッド」

「ん? おお、うずめ!」

 

 ホット・ロッドと呼ばれたロボットは、声をかけられて振り向くや大きな目を笑みの形にする。

 

「見てくれよ、このバス! こいつはきっとこの川の主だぜ!!」

「相変わらずホット・ロッドは釣りが好きだなあ」

「へっへっへ、海男の奴には内緒だぜ? あいつ魚にシンパシー感じてるから」

 

 楽しそうなホット・ロッドにうずめも快活に笑うが、そこでスクーターから急かすような電子音が聞こえた。

 まるで早く家に帰ろうと言っているかのようだ。

 

「分かったよ! 帰ろうぜ、ホット・ロッド!」

「ウィ、それじゃあ行くか!」

 

 バスをリリースしたホット・ロッドは立ち上がると……そうすると、うずめの三倍はあった……ギゴガゴと異音を立てて変形し、黒いスーパーカーに変形した。

 イタリアの有名自動車メーカーの創設者生誕100年を記念して製作されたスーパーカーだ。

 うずめもスクーターに跨ると、スーパーカーと揃って走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 もちろん、彼らがここにいるのは理由がある。

 今から数年前のこと、ホット・ロッドとうずめこと天王星(てんのうぼし)うずめは、ある研究機関に囚われていた。

 何故かも、いつからかも、分からない。

 

 彼らは一切の記憶を失っていたのだから。

 

 そこには同じように囚われた者たちがいて、研究対象にされていた。

 来る日も来る日も繰り返される実験とデータ取りを、誰もが苦痛に思っていた。

 

 ある日、限界を迎えた彼らは一致団結して脱走。

 幸いにして囚われていた者の一人、海男が立てた計画は完璧だった。

 我武者羅に逃げて逃げて、研究施設が何処にあったのかはもう分からない。

 彼らは追手を撒き、逃亡生活を続けてこの街に流れ着いたのだ。

 

 以来、ケイド・イエーガーという口と運は悪いが腕と気風は良い男の下に厄介になりながら、息を潜めて生活しているのだった。

 

 しかし、その日常も終わる日が近づいていた。

 

 街の近くの山の上、暗くなり始めた空に、雲もないのに一筋の稲妻が走った。

 それは遠い世界からが来訪者が現れたことを示していたが、そのことに気付いた者は、誰もいなかった。




すまぬ、すまぬ……この作品の主役は『ホット・ロッド』と『天王星うずめ』なんだ。
もっと言うとホット・ロッドなんだ。

ずっと書きたかったんだ、ホット・ロッドが(っていうかホット・ロディマスが)主人公の話を……!
ずっと出したかったんだ、うずめ(と海男とか)を……!
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