新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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※2018年11月30日 内容を少し追加


第24話 女神の敵(改稿)

 イストワールは、異変の解決方法を求めて自身の蓄えた知識を探っていた。

 視覚情報にすると、そこはどこまでも続く円形の縦穴のような感じだ。壁は全て隙間なく本が置かれた棚になっていて、それが上も下も霞んで見えないほどに聳え立っている。

 物質に縛られぬここではイストワールは普段の本に乗った妖精のような姿ではなく、妙齢の女性の姿で飛び回っていた。

 

「これじゃない……これでもない……」

 

 本棚の谷間を飛ぶイストワールは、これはと思える本……記憶を取り出して閲覧しては、元に戻す。

 

「『××年度国家予算』『マジェコン禁止法草案』『友好条約概要』『ネプテューヌさん成長日誌』と、これは……『美味しいカレーのレシピ』? 惜しいけれど、また今度で」

 

 彼女は何かに導かれるように、この知識の海の中に解決法があると感じていた。

 しかし何分、プラネテューヌの初代女神が作った人工生物であるイストワールが生きてきた時間の分だけ集められた知識は膨大だ。

 

「この辺りにはないようですね。もっと古い記憶を探ってみましょう……」

 

 さらに下へ下へとイストワールは降りていく。

 そのうち、奇妙なことに気が付いた。

 一部の本の文字……つまり記憶が、黒く塗りつぶされているのだ。

 

『にっき 11がつ27にち

■■■■■■のきょうかいで

■だいめの あたらしい ■■がたんじょう』

 

『■■がつ ■■にち

うまれたばかりの ■■を

わたしたちは ■■■ と名づけた』

 

『■■がつ ■■にち

■■■と あたらしいしょくいんの ■■■■■■が なかよくなった

ふたりは まるで しまいの ようだ』

 

『■がつ ■にち

■■■が あらたな ちからを おぼえる

おぼえた ちからを ■■ とよぶことに……』

 

『1がつ 31にち

■■■の ■■が つよすぎる ダメだ……

■■■にも わたしにも てにおえない!』

 

 そこから先は、全ての文字が塗り潰されていた。

 

「これは、いったい? ……ッ!」

 

 ページをめくろうとすると、不意に電気が走った。いや、何かが記憶を読まれまいと拒否反応を起こしているのだ。

 しかし、それで諦めるワケにはいかない。この異常こそ、この異変と関係はあるのかもしれないからだ。

 何とか本を開こうとするが、そのたびに強い拒否反応が起こるが、同時に記憶の一部が再生される。

 

『イストワール~!』

 

 少女の声、顔、姿……しかしはっきりとは分からない。

 自分はこの声を知っている、知っているはずだ。

 

「でも思い出せない……。あなたは……あなたは、誰なんですか?」

『イストワール、■■■ね……決めたんだ。この力をコントロールできないなら、いっそ……』

『止めろ! ■ず■、イストワール!!』

 

 映像にもう一人、人間が現れる。やはりはっきりとは分からないが、大人の女性だ。

 

『■■■っち……仕方ないよ。この力はみんなを不幸にするから。彼のことだって……』

『あれはお前のせいじゃない! どうして、お前がこんな目に遭わなければならないんだ!!』

 

 女性の悲痛な叫びに、少女は儚い笑みを浮かべた。

 

『イストワール、マ■■っち、■■めのこと忘れて、幸せにくらしてね……』

『駄目だ! 止めてくれ!!』

 

 不意に映像が消え、ノイズに交じって女性の声が聞こえた。

 

『イストワール……お前も私も、きっとあいつのことを忘れてしまうのだろう。しかし、私はいつか、必ずあいつのことを思いだす。そして、救い出してみせる。どれだけ時間がかかろうと、例え世界を敵に回したとしても、必ずだ』

 

 その言葉は深い嘆きと、悲壮な決意に満ちていた。

 

『邪魔をするなら、例えお前でも、女神でも、全て敵だ。……そう、私は女神の敵。あいつにあんな運命を強いた、世界というゲイムのルールを塗り変えてやる!』

「あなたは……!」

 

 女神の敵。

 そう名乗る者を、イストワールは知っていた。昔から、ずっと。

 

 瞬間、イストワールは弾き飛ばされ……ここは彼女の内面世界なので、つまり記憶に拒否され、その際にエラーが生じたのかフリーズしたように固まったまま、下へと落ちていく。

 

 繰り返すがここはイストワールの内面世界だ。

 故に、この縦穴に底などなく、彼女が戻ろうとしない限り無限に落ちていく。その先はイストワール個人の記憶の域を超えた場所……人が偏在的無意識、あるいは魂の世界と呼ぶ、未知の領域だ。

 

 だが、その遥か下から何かが浮上してきた。

 黄金の光によって形作られた神々しい人型のそれは、落ちてくるイストワールを優しく受け止めた……。

 

  *  *  *

 

「そんなワケで、何の成果も得られませんでした!!」

「なによ、唐突に……」

 

 プラネタワーの一室。

 丸テーブルに着いたノワールは、反対側にいるネプテューヌの言葉にツッコむ。

 

「いやほら、結局話がまるで進んでないし。話の展開が遅いのがこの作者の悪いトコだよね!」

「そーいう自虐ネタは引かれるから止めなさい。……で、その連中はスペースブリッジの起動コードなんて盗んで、何をしようっていうのかしらね?」

「起動コードなんて、スペースブリッジが無ければ無用の長物……というのはあまりに楽天的な考えね……」

「むしろ、その起動コードが有れば使えるスペースブリッジの当てがある、と考えるべきですわね」

 

 同じようにテーブルを囲んでいたブランとベールも意見を言う。

 後ろには女神たちの相棒であるオプティマス、副官ジャズ、古参兵のアイアンハイド、若手のミラージュがそれぞれ自分サイズの椅子に座って円卓を囲んでいた。

 

 どういうことかと言うと、オートボットたちが囲むテーブルの上に、女神たちが囲むテーブルが置かれているのである。

 最近のゲイムギョウ界では、割と見られる光景だった。

 

 それはともかく。

 

「現在、ワレチューはじめ件の下手人を捜索しているが、見つからない」

「どこへ隠れたんだか……」

 

 厳かなオプティマスの言葉に、頑強な体つきの黒いオートボット、アイアンハイドがヤレヤレと肩を竦める。

 白い女神の後ろに控えた両腕にブレードを備えた曲線的なシルエットの赤いオートボット、ミラージュが控えめながらも意見する。

 

「オプティマス、その連中が今回の異変に関係しているということは……いやすまない。そんなはずがないな」

「ま、明らかに人間がどうこう出来る範囲を超えてるな……むしろ俺は、奴らの一味にヘッドマスターがいたことの方が気にかかる」

「モージャス、ですわね」

 

 最初は軽い調子だったが、後半は真剣な口調のジャズに、その恋人でもあるベールが頷く。

 かつて二人は、国を裏切ってディセプティコンに与し、最終的にはそれさえ敵に回したモージャスという男と戦ったことがある。

 その時、彼が繰り出してきたのがヘッドマスターを模した機械だった。

 

「奴の一族で、一人だけ行方知れずの奴がいる。……偶然かもしれないが、俺は何か関係あると睨んでいる」

「では、その人物が復讐を目論んでいると?」

 

 総司令官の言葉に、副官は難しい顔をする。

 

「どうだろうな。モージャスはそいつの父親……腹違いの兄から、詐欺同然に資産と家の実権を奪い取ったらしい。その後、両親は貧困生活の末に病死……むしろモージャスの方が恨まれてるはずだ」

「動機はどうあれよ。もし本当にそいつが起動コードを盗んだ連中の黒幕で、今回の異変に絡んでるとしたらだ。まずはとっ捕まえて思い知らせねえとな」

 

 やや好戦的なアイアンハイドの意見に、ノワールは額に手を当てる。

 

「まったく、何一つ問題が解決してないっていうのに、次から次へと新しい問題が起こるんだから……」

「そういうこともあるって! ……で、話は変わるんだけど!」

 

 一同の真面目な空気など何処吹く風。

 今日も平常運転の紫の女神は、用意しておいたのだろうフリップを何処からか取り出して掲げる。

 フリップには、トランスフォーマーたちと人間たちが手を繋いでいる絵が描かれていた。

 

「今年もそろそろ、この季節がやってまいりました! グレートウォー終結記念日!! 前々から企画していたお祭りは、予定通りに行いたいと思います!!」

「なんか凄いデジャビュ……というかあなたね。こんな時に……」

 

 呆れた表情のノワール。

 もともと、前の大戦が終わった日に、四カ国共同でお祭りをするという予定はあった。しかし、この事態ゆえに当然お流れになったと思っていたのだ。

 他の女神たちも似たような物だが、ネプテューヌは自身ありげな顔をする。

 

「こんな時だからこそだよ! シリアス続きなんて国民も読者もまいっちゃうよ! ちょっと、元気の出るイベントをしないとね!」

 

 そう言ってさらに、いくらかの書類を取り出して女神たちに配る。

 かなり具体的に纏められた資料だ。

 

「ネプテューヌ、さすがに今は……」

「いえ……いいんじゃないかしら?」

 

 やんわりと紫の女神を諫めようとするノワールだが、ブランは乗り気な様子だった。するとベールもたおやかに笑む。

 

「ええ。こういう時こそ、皆の団結が重要ですもの。ネプテューヌにしては良いことをいいますわね」

「してはって何さ、してはって! ……でノワールはどうするの?」

 

 すっかり祭りをする流れにウッと言葉を詰まらせたノワールを見て、彼女と父娘のような関係を築いている黒いオートボットは少し困ったような顔をして、口を開いた。

 

「いいんじゃねえの? ガス抜きも必要さ」

「ま、まあアイアンハイドがそう言うなら……」

「相変わらず、ファザコンだなー」

 

 アイアンハイドの言葉にアッサリ意見を変えた……というよりは意見を変える理由をもらってホッとしているノワールに、ネプテューヌは茶化すような声を出す。

 

「のわっ!? ふ、ファザ……! べ、別に私は!」

「はいはい、ベタベタな反応どうも」

「ネプテューヌゥ!」

 

 ふざけるネプテューヌに、顔を赤くして怒るノワールと、それを苦笑気味に見守るブランとベール。

 概ね、いつもの四女神だった。

 

「やれやれ、こういう話になると俺らは蚊帳の外さね」

「仕方ないさ。戦ってばっかりの野郎どもは、こういうイベントには不向きなのさ」

「…………」

「とはいえ、もちろん我々も手伝うつもりだ」

 

 顔を見合わせて苦笑するアイアンハイドとジャズ。一言も喋らないが参加しないとも言っていないミラージュ、厳かに頷くオプティマス。

 これも、まあいつものオートボットたちだった。

 

「っていうか、これちゃんとイストワールに話を通してるんでしょうね!」

「あ、検索に入る前に話しといたから大丈夫!」

 

 至極当然のノワールの疑問に、ピースサインで答えるネプテューヌ。こんな時ばかりは手際が良い。

 

「それじゃあ、これからお祭りの具体的な内容について……」

『ねぷねぷ! 大変です!!』

 

 話しを次の段階へ進めようとした時、緊急通信が入り丸テーブルの中央に半透明のコンパの姿が浮かび上がった。

 必死な様子の看護師に、女神たちやオートボットたちは何事かと押し黙る。

 

「こんぱ、どうしたの?」

『いーすんさんが、いーすんさんが! 目を覚ましたですぅ!!』

 

 

 

 

 

 プラネタワーの医務室。

 長い検索を終えたイストワールは心身ともに疲弊しており、ここに運び込まれていた。

 

「鍵……四つの鍵を、見つけなければ……」

 

 ドールハウスにあるような、なんとも可愛らしいサイズのベッドに身を横たえたプラネテューヌの教祖は、うわ言のように同じ言葉を繰り返していた。目を開けてはいるが、表情は虚ろだ。

 

「四つの鍵……四つの鍵を……大いなる、危機に、立ち向かうために……希望を継ぐ者が、鍵を揃えないと……」

「目を覚ましてから、ずっと同じことを繰り返してるですぅ」

「『四つの鍵』『大いなる危機』『希望を継ぐ者』……本人にすら、何のことは分からないようだ」

 

 ナース服のコンパと、医務室の主であるラチェットの説明に、ネプテューヌ以下女神たちは心配そうに小さな教祖を見た。

 

「鍵……四つの鍵……大いなる危機が、迫って……」

「いーすん……」

 

 うわ言を繰り返すイストワールに、ネプテューヌは平時のふざけた調子は抜きで、本当に心配そうな顔をしていた。

 一方で、オートボットらの中央にいるオプティマスは腕を組んで黙考していた。

 

『希望を継ぐ者』

 

 そういう意味の名を持つ者をオプティマスは知っていた。

 このプラネテューヌに伝わる古い御伽噺の主人公、星すら喰らう邪神を打ち倒した英雄、そしてそこから名前を取った……。

 

「ロディマス、か……」

 

 オプティマスが考え込み、皆がこれからどうするか話し合う中、イストワールが小さく呟いたことに気が付いた者はいなかった。

 

「いや、忘れたくな……ごめんなさ……マジェ……」

 

  *  *  *

 

 プラネテューヌの首都近くの海岸。

 海に突き出した岬の先に、トランスフォーマー用の刑務所がある。

 厳重な警備が敷かれる、その名もアバーッシリ刑務所である。

 

 その一角にはオンスロート、ドレッドボット、バーサーカー、ニトロ・ゼウス、モホークらが囚われていた。

 本来彼らは軽犯罪者が収監されるここではなく、サイバトロンにある監獄にコールドスリープ状態で収監されるはずだったが、サイバトロンとの行き来が出来ない今、とりあえずここに入れられているのだった。

 

「お前殺―す! お前も殺―す! 憶えとけよー! 本気だぞー!」

「お前らの顔は覚えたぜ! 家の場所も知ってるからな! ……おーい、聞いてる?」

「ここから出さんかいワレェ!!」

 

 特殊合金製の鉄格子のある独房に別々に入れられ、そこからさらに手足と胴を拘束された状態でも元気に喚いているモホークとニトロ・ゼウス、そしてバーサーカー。

 

「俺が遅い(レント)? 俺がスローリー? ……おのれ、次こそは」

 

 一方、ドレッドボットはクロスヘアーズに早撃ちで負けたのがよほど悔しいらしく、ブツブツと恨み言を口にしている。

 

「落ち着くのである。サイバトロンに連行されなかったのは運がよかった。何とか脱走の手立てを考えるのである」

 

 他よりも体が大きい故に独房で狭苦しそうにしているオンスロートが冷静に言うが、他の囚人たちは止まらない。

 

「うっせー、この薄らデブ! そう言い続けて、もう一か月以上たっちまってるじゃねえか!」

「頭脳派気取っとるんやろう! なんか脱走のアイディアはないんかい!」

「そんな物があればとっくに脱走しているのである! っていうか我輩はデブではない、ポッチャリ系である!!」

 

 ニトロ・ゼウスとバーサーカーに言われて、オンスロートが激高する。

 そこからは、ギャーギャーとくだらない喧嘩になる。

 これが、今や彼らの日常だった。

 

「止めろ、騒々しい!!」

 

 見かねた看守が独房の外から注意するが、もちろんそれで止まるならず者たちではない。

 

「お前殺―す! 見てやがれよー!」

「ここを出たら、たっぷり礼をしてやるぜ!!」

「おどれの脳ミソ啜ったるわ!!」

 

 怒声を上げて看守を脅そうとするディセプティコンたちだが、拘束された状態では文字通り手も足も出ない。

 看守は恐怖を感じた様子もなく、呆れたように息を吐いて歩き去っていった。

 

「おい、戻ってこいや! ぶっ殺したるわ!!」

「必ずここから抜け出してやっからなー! そして、あの愛しのトサカの君に……」

「奥さんにも挨拶に行かせてもらうからな!! ……あ~あ、ボス助けにきてくれないかなー」

 

 何処までも平常運転のバーサーカーだが、モホークは何処か遠い目をし、ニトロ・ゼウスは一頻り吠えた後で嘆息する。ボスとはもちろん、異空間に消えたガルヴァトロンのことだ。

 その内容を聞いたオンスロートはせせら笑う。

 

「助けになぞ来るワケがないであろう。だいたい、あの狂人と関わったおかげで、このザマである!!」

「まーそうだけどよー……」

 

 ニトロ・ゼウスもその言葉を認める。

 それはガルヴァトロンがほぼほぼ死んでいるだろうという他に、欺瞞の民の精神性故でもあった。

 彼らの考えではディセプティコンというのは……オートボットとの和解を受け入れていない()()()()ディセプティコンというのは、仲間を助けるという発想が欠落している物なのだ。

 

「ああ愛しの君、貴女の瞳は夜空に瞬く綺羅星の如し。貴女のことを想えば、この冷たい独房でさえ、宇宙船の動力炉のように暖かく美しい物に見える……」

 

 囚人たちが懲りずに言い合いを再開する中、モホークは異世界で出会ったヒヨコ虫という生き物に向けて、物理的に届くはずもない愛の言葉を吐き続けるのだった。

 

  *  *  *

 

 夜。

 

 プラネテューヌ首都郊外にある、とある廃工場。

 その敷地内に、一台のパトカーがやってきた。

 フォード・マスタングというゲイムギョウ界には存在しない車種の、そのパトカーの車体後部には、黒地に白抜きでこう書かれていた。

 

 To punish and enslave(罪人を罰し服従させよ)

 

 崩れかけの建物の前で停まったパトカーは、ギゴガゴと音を立てながら、人型に変形する。

 もはや説明するまでもないだろう。異次元に消えたはずの、バリケードだ。

 

 バリケードが胸の部分にあるパトカーのヘッドライトで建物の中を照らすと、そこには何台かの廃車が積み重なっていて、一人のディセプティコンがそれに腰掛けていた。

 

 銀と黒、青からなるカラーリングの大柄な体に、二本の角。

 真紅に輝く二つのオプティックと、胸のディセプティコン・エンブレム。

 

 パトカー型のディセプティコンは、その名を呼んだ。

 

「……ガルヴァトロン」

「バリケード、すまないが顔に光を当てないでくれ。……それで報告は?」

「すまん。……秘密結社とかいう新顔が、何やら動いているようだ。見た顔もいた。ネズミだ」

 

 顔に手をかざして光を遮る若き破壊大帝の声に、バリケードは言われた通りにヘッドライトの明かりを落としてから答える。

 どうやら、どこからかハネダシティでの事件を観察していたらしい。

 

 果たして、如何なる方法で異空間に取り残されたはずの二人が帰還したのだろうか?

 

「それと、ホット・ロッドがいた。天王星うずめも一緒だ」

「…………そうか」

 

 報告に努めて平静を保とうとしているガルヴァトロンだが、二本の角の間に小さな稲妻が走っている。

 

「落ち着け、ガルヴァトロン。我々がここに来た目的はうずめを倒すことではないのだぞ」

 

 闇の中から、女の声がした。

 バリケードは鬱陶し気な表情と共にヘッドライトをそちらに向けると、立っていたのは看守服姿の男だった。

 ディセプティコンたちの言い合いを止めようとしていた、あの看守だった。

 

 ガルヴァトロンは激情を抑え込むために、強く拳を握る。

 

「ああ、分かっている。分かっているとも……それで、オンスロートたちの様子は?」

「相変わらずだ。呆れるほど何も変わっていない。……警備情報も手に入れた。やはり予定通りの日時に決行するぞ」

「その日でなければ駄目か?」

「その日、その時刻、その瞬間でなければ駄目だ」

 

 看守の言葉に難しい顔をするガルヴァトロン。

 当然ようにため口で会話していることや、やり取りからして、二人は表面上でも対等な立場であることが分かる。

 

「この手でゲイムギョウ界の平和を乱さねばならんとは……」

「この世界が滅ばないための、必要な犠牲だ。王とはな、時に冷徹な計算の上に成り立った、残酷な決断をせねばならない物だ……少なくとも、メガトロンはそうだった」

 

 メガトロンの名が出ると、ガルヴァトロンは深く瞑目し、やがて発声回路から声を絞り出した。

 

「分かった、お前の言う通りにしよう。……マジェコンヌ」

 

 看守の姿が揺らぎ、女性の姿に変わる。

 銀色の髪を長く伸ばし、アイスブルーの瞳を持った美しい女性だ。

 女神の敵を自称し、ゲイムギョウ界を革命せんとする者、マジェコンヌは何処からか取り出した中折れ帽を被り、鍔を指でつまむと、口元に笑みを浮かべた。

 

「さあ、世界というゲイムのルールを塗り替えるとしようか……!」

 




IDWのトランスフォーマー・ケイオスを読みました。
いやあ、これで一件落着……してないんですねえ(その後も続くシリーズ内でのゴタゴタに思いを馳せながら)

今回のキャラ紹介。

ラステイション女神ノワール
ご存知ツンデレ女神。またの名をブラックハート
工業大国ラステイションの女神であり、非常に生真面目な性格で、素直に感情を表すのが苦手。
統治者としての能力は優秀で、四角四面な部分もあったが大分軟化している。
実はアニメの声優に憧れていたり、コスプレが趣味だったりという一面もある。
アイアンハイドとは、父子のような関係を築いているが、若干ファザコン気味。
四女神中、唯一恋人がいない。

アノネデスとか、ガルヴァ(幼)とか、今作から登場予定のあの子とか癖のある人物に好かれやすい模様。


オートボット古参兵アイアンハイド
ご存知赤組筆頭(黒いけど) ピックアップトラックに変形する。
メインキャラとなるオートボットの中では最年長で、幾多の戦いを潜り抜けてきた大ベテラン。血の気が多く頑固だが、仲間を思いやる気持ちは強い。
ノワールとは当初は反目し合っていたが、今では恋人のクロミア共々彼女の理解者として家族のように思い合っている。若干親バカ気味。
前作終盤でコズミックルストに感染し、新しい体(アルティメットアイアンハイド)にスパークを移植した。

この作品では貧困層の出身で、かつては過激な反体制グループに参加していたが、オプティマスに出会って改心したという裏設定がある。


ルウィー女神ブラン
ご存知キレ芸女神。またの名をホワイトハート。
魔法国家ルウィーの女神で、読書が好きで大人しく無口な性格だが、いったん怒り出すと狂暴な性格に豹変する。
相方のミラージュとは恋人だが、お互いあまり素直ではないので中々進展しないのが悩み。
貧乳を気にしていたり、腕白な妹たちに振り回されたりと地味に苦労人。

ノワールよりツンデレっぽい。


オートボット諜報員ミラージュ
フェラーリ風の赤いスポーツカーに変形する。姿を消すステルスクロークや精巧なホログラムを発生させる能力を持った、奇襲や諜報のプロ。
前作の最後の最後でブランに告白し、恋人になった……のだが相変わらずつかず離れず。
相方と違って、本当にクールで無口。
前作ではスキッズとマッドフラップを弟子に取り、彼らに技術を叩き込んだ。そのせいで『ミラージュ流忍法』なるよく分からない忍術流派の開祖ということになってしまった。

前作序盤は粗暴なキャラ付けだったが、すぐに相方との兼ね合いでクールキャラに落ち着いた。


リーンボックス女神ベール
ご存知お色気女神。またの名をグリーンハート。
海に囲まれた軍事国家リーンボックスの女神で、気品ある言動の美女……なのだが、色々と残念。
重度のゲーマーであり、ネットゲームを好む。また百合やBLも大好き。
妹がいないのが長年の悩みだったが、前作で色々特殊ながらも妹が出来た。しかし、今だネプギアたちを妹にするのを諦めてはいない模様(前より冗談、持ちネタとしての意味合いが強くなったが)
ジャズとは初期から惹かれ合い、順当に恋人に至った。

地味に優遇されてた人。


オートボット副官ジャズ。
ご存知副官。
ポンティアック・ソルスティス風のスポーツカーに変形する。体術を得意とし、速さに重きを置いている。
音楽とダンスを愛しオートボット一の伊達男を自称するが、本気になった女性はベールが初めて。
副官らしくベールといないときはオプティマスの傍にいることが多い。
前作終盤で重症を負ってリペアし、その際にG1カラーになった。

ノリが軽く、いっそチャラいように見えてリアリスト……と設定したが前作では余り生かせなかった。
この作品では元はセンチネルの下にいたエリートガードだが工作員上がりで汚れ仕事もこなし、オプティマスにも最初は監視目的で近づいたと、後ろ暗い裏設定が多い(あれこれIDW版プロールでは?)
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