新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

31 / 75
第25話 大戦終結の日に

 ゲイムギョウ界には、四つの国がある。

 すなわち、西のプラネテューヌ、東のラステイション、北のルウィー、南のリーンボックスだ。

 海の向こうにはピーシー大陸などの別大陸や今は亡きセターン王国などの島国もあるが、ゲイムギョウ界と言えば基本的にはこの四カ国のことを指す。

 

 さてこの四つの国の地理的な中心に位置する場所は、プラネテューヌとラステイションの国境付近に当たり、かつてはこの辺りの海辺には海底油田があったが、この世界におけるオートボットとディセプティコンの最初の戦いで破壊された。

 

 戦争終結後、この場所にはゲイムギョウ界と惑星サイバトロン、さらなる別次元などを結ぶ固定式スペースブリッジ『ビヴロスト』が置かれ、それを中心に栄える空港ならぬ次元港、誰が呼んだかニューサイバトロンとなっていた。

 

 そして今、大戦(グレートウォー)終結記念日を祝う、人呼んで『終結祭』が大々的に行われ、サイバトロン式の金属と硬質クリスタルで出来た建物の間に広がる大通りには、人間やトランスフォーマー、さらにはモンスター系の市民でごった返していた。

 

 トランスフォーマーたちが移動販売車に変形して人間の子供たちに料理を売り、パワードスーツを着た人間がトランスフォーマーを接客し、モンスターたちも人間に混ざって飲み食いし、人造トランスフォーマーがその粒子変形を生かした芸を披露する。あちこちに置かれた遊具にも、サイバトロニアンが変形した物が混ざっている。

 彼らは数々の不安な出来事を、一時忘れてこの時間を楽しんでいた。

 

「はーいみんなー、はぐれないようにねー! 全員いるわねー!」

「アブネスせんせーい! 5分に一回確認するのは、いきすぎだと思いまーす! もっと僕らを信用してくださーい!」

「そういうセリフは5分に一回は迷子になるのを直してから言いましょうねー!」

 

 校外学習に訪れたアブネス率いるセンチネル孤児院の子供たちも、この祭りを満喫しているようだ。

 

「おじさーん、アイスちょうだーい! 『バンブルビーのレモン味』で」

「わたし、『ミラージュのラズベリー味』」

「はいよー」

 

 通りに並んだ出店の一つ、アイスクリームを売る店……というか移動販売車に変形したオートボットなので店舗兼店主……の前に、幼い双子の女の子の姿があった。

 十に届くか届かないかの年齢で、お揃いの服を着て、髪の色と瞳の色も同じ薄茶色とダークブルーだ。もちろん、顔もほとんど同じである。

 違う所と言えば、片方は髪を腰まで伸ばして胸元のリボンタイがピンク色で勝気な表情。

 もう片方が、肩のあたりで髪を切り揃えてリボンタイが青、表情は大人しそうだ。

 

 人間の店員からアイスを受け取った双子は、それを片手で持って舐めながら、もう片方の手を繋いで道を歩く。

 

「美味しいね、ロムちゃん!」

「うん、ラムちゃん。こっちも美味しいよ。……ちょっと食べる?」

「うん! それじゃあ、こっちも食べて!」

「へいへい、お嬢さんたち! 俺らとお茶しな~い? 一緒に楽しいトコ行こうぜ~」

 

 アイスを食べさせ合いっこする双子に、声をかける妖しい男……というかロボット。

 オレンジ色のずんぐりしたトランスフォーマーで、3mほどしか身長がない。丸い目が大きく出っ歯で、有り体に言えば不格好だ。

 双子の気の強そうな方、ラムはちょっとお高く留まった顔をする。

 

「いいけど……どこへ連れてってくださるのかしら?」

「いいトコだよ、ゲッヘッヘッヘ」

「いやお前ら何やってんだよ」

 

 ワザとらしい下卑た声を出すオレンジのロボットの頭を、その後ろに立つ緑色でよく似た姿形の……しかし背中にヘリコプターのローターを昆虫の羽根のように畳まれているロボットが叩く。

 

「いって! なんだよ、ちょっと事案ゴッコしてただけだろ! ほら、ホントにこーいうのに声かけられた時の練習に!」

「んだよ、事案ゴッコって……と、それはともかく二人とも探したぜ」

「急にいなくなんだもんな! 迷子になったらどうすんだ?」

 

 二体のオートボット……双子のスキッズとマッドフラップの言葉に、ラムはちょっとむくれる。

 

「もう、わたしたち子供じゃないんだから! 迷子になんかならないんだから!」

「えー? この前デパートに行った時は迷子になったじゃねえか」

「あ、あれは……ち、ちょっと気になるお洋服があって……」

 

 スキッズに痛い所を突かれて顔を赤くするラム。

 ロムはマッドフラップに肩車してもらって、それを眺めていた。

 

「マッドフラップ、わたしも迷子にならないよ?」

「ま、ロムはな。しっかりもんだかんなー」

 

 なんだかんだ仲良さげな双子たち。

 彼ら彼女らが、前大戦の英雄の一角であり、ルウィーの女神候補生と聞けば大抵の者は驚く。

 そして平時こそお子様集団な彼らも、事故や災害に際してはレスキュー部隊として活躍していることも、知れば大抵の者は驚く。

 

「おーい、ロムちゃーん! ラムちゃーん!」

 

 と、そこに駆け寄ってくる者たちがいた。

 ネプギアとバンブルビーだ。

 その隣には、ノースリーブの黒いワンピースを着た、赤い瞳で黒い髪をツーサイドアップにした少女と、銀色の背中にマフラーが四つ並び、足がタイヤになったオートボットの戦士は並んでいた。

 

 ラステイションの女神候補生ユニと、アイアンハイドの愛弟子サイドスワイプだ。

 

「ネプギアちゃん!」

「ユニちゃん!」

「二人とも、しばらくだね!」

「元気そうね!」

 

 かねてからの友達同士である四人の女神候補生は、輪になって笑い合う。ここのところ、忙しくて中々集まれなかったのだ。

 

「いよ! バンブルビー、おひさ!」

「おう、サイドスワイプ! 元気してたか!」

「うん、ひさしぶり。マッドフラップ」

「こっちは元気さ、スキッズ。レスキュー隊の噂は聞いてるぜ!」

 

 その脇ではオートボットたちも肩を叩き合っていた。彼らもまた、女神たちを支え共に激戦を潜り抜けてきた戦友同士だった。

 ネプギアは、友人たちの様子に笑顔を大きくする。

 

「みんな元気そうで良かった! あとはアリスちゃんだけど……」

「呼んだかしら?」

 

 いつの間にか、近くの建物の壁に少女が背を預けていた。

 緑と白を基調とした服を纏い、ウェーブのかかった見事な金髪を肩のあたりまで伸ばしている。

 垂れ目なのに眉は強気に吊り上がり、ある意味ユニやラム以上にツンと澄ました雰囲気だ。

 

「アリスちゃん!」

「ハーイ、ネプギア。みんなも相変わらずみたいね」

 

 クールな空気を纏ったアリスは、かつてはディセプティコンの兵士であり、有機生命体に擬態するプリテンダーとしての能力を生かしリーンボックスの教会にスパイとして潜入したが、極めて数奇な運命を経てベールの妹になった異色の女神候補生だった。

 

「来てくれたんだね!」

「まあ、ベール姉さんの付き添いよ」

「よく言うぜ、楽しみにしてた癖に」

「ちょ……! サイドウェイズ!」

 

 腕を組んでお高く留まっていたアリスだが、後ろに立つサイドウェイズの言葉に顔を赤くする。

 それを見て、ネプギアとロムはニコニコとしユニやラムはニヤニヤとする。

 

「私も楽しみだったよ、アリスちゃん!」

「アタシもよ、アリス!」

「わたしもわたしもー!」

「わたしも……」

「あーうー……もう勘弁してー!」

 

 女神候補生に四方から言われて、アリスは照れ臭さの余り耳まで真っ赤になってしまった。

 仲良さげな彼女たちを微笑ましく見守っているオートボットたちだったが、ふとスキッズが口を開く。

 

「そう言やバンブルビー! 聞いたぜ、異世界行ってたんだって? チーキューだっけ?」

「異世界転移って奴か! 剣と魔法のファンタジー的な!」

「いや、そういう、感じじゃ、なかったな」

 

 スキッズとマッドフラップの言葉に、バンブルビーはあの異世界、地球に思いを馳せる。

 惑星サイバトロンで生まれ育ち、このゲイムギョウ界に慣れた身からすると、あの世界は酷く混沌として見えた。

 まあサムやケイド、それにうずめたちと出会えたのは、良いことだったが。

 

 それはそうと、このゲイムギョウ界が剣と魔法と科学のファンタジー世界である(近年、ロボット分がマシマシになった)

 

「確か、その世界から一人こっちに連れてきたんだろ? ホット・ロッド……だっけか? オプティマスが気にかけてるって、アイアンハイドが言ってたけど」

「そうそう! 例の空から落ちてくる系ヒロインと組んでる奴な! 来てないのか?」

 

 サイドスワイプが自分の知っている情報を言うと、スキッズがそれを問いに変える。

 バンブルビーは少し困った調子で答えた。

 

「あいつ、なら……」

 

  *  *  *

 

「くらいな!」

「咆哮夢叫! うっわあああッ!!」

 

 そのホット・ロッドは、うずめと共にビヴロスト次元港から少し離れた所にある森でモンスターを蹴散らしていた。

 ホット・ロッドの剣が巨狼型のモンスターを両断し、うずめのメガホン越しの雄叫びが昆虫型モンスターを吹き飛ばす。

 

「へへ、こんなもんかな!」

「……なあ、ロディ。オレたちはなんでこんな所にいるのかな?」

 

 得意げに手作り剣を振って見得を切るホット・ロッドだが、うずめはあからさまに不満げな声を出した。

 

「なんでって……緊急クエストを受けたからだろう?」

「だから。なんで緊急クエストを受けたのかって話だよ。……今日は終戦祭だよ?」

「そりゃあ、他の皆が約束があって俺は手が空いてたし……そんなに祭りに行きたいなら、先に行けばいいって言ったじゃないか」

「そういう問題じゃない! ……なんで、よりによってこんな時に。()()()お祭りを楽しむ予定だったのに」

 

 当然とばかりに答えてくる年若いオートボットに、うずめは頭痛を感じたように額に手を当てて聞こえないように小さく呟く。

 そんな彼女に対し、ホット・ロッドはあっけらかんと笑う。

 

「な~に、モンスターは片付けた後でも、祭りを楽しむ時間はタップリあるさ!」

「……なら急ごう、G-1グランプリの決勝トーナメントが始まるまでには帰りたい」

 

 うずめが言うG-1グランプリとは、祭りの目玉となるゲイムギョウ界中の猛者が集い熱い戦いを繰り広げる武闘大会のことだ。

 このG-1グランプリ、人間はもちろんのことモンスターや女神、さらにはトランスフォーマーたちも参加している。本来なら、祭りの期間中に予選から決勝まで行うはずだったが、予想以上に参加希望者が多かったため、いくらか前から各国で予選を繰り広げていた。

 それで女神やトランスフォーマー以外にも結構な人間やモンスターが決勝トーナメントに勝ち進む当たり、この世界の何でもありな所が伺える。

 

「ま、俺は予選でビーに当たって負けちゃったけどな!」

「…………悔しくないのかい?」

「悔しいよ、すっごく。だから、次勝てるように頑張るのさ」

 

 次のクエストの場に移動しがらも、結果を気にしていなさそうなホット・ロッドに対し、うずめはあからさまに不満げな表情だ。

 

「ロディ、君はこんな所で燻ってるような男じゃない。今にきっと、誰もがアッと驚くような活躍をするはずだ。……オレは憶えていないけれど、地球では勇敢に戦ったそうじゃないか」

「買いかぶり過ぎだよ。地球にいたころだって、うずめや海男のおかげで何とか生き延びられたんだ。……さてと、あともう一か所モンスターが出るらしい。行こうぜ」

 

 静かに言った後、急に明るい声を出したホット・ロッドは森の木々の間を歩いていく。

 その背を見ながら、うずめは聞こえないように低く呟いた。言い知れぬ情念の籠った声だった。

 

「いいやロディ。君は勇者になるんだ。必ずなるんだ。……オレがそう望むのだから」

 

 

 

 

 

「遠くに来たものだ。妖精の一人も見かけないとは」

 

 そこから少し離れた森の中を、二人の少女が歩いていた。

 一人は長く伸ばして先の方で編んだ金髪にそれと同色の瞳を持ち、黒地に赤い飾りのある装束、足には具足、腰には剣を下げているという、女騎士然とした姿の少女。しかし、頭の上に王冠のような物が浮いている。

 王冠は騎士少女の頭に被さることなく、ゆっくりと回転しながら彼女の動きに合わせて動いている。

 

「それにしても、結構歩いたわね。ここいらで少し休まない?」

 

 もう一人は騎士少女よりもやや年下に見え、纏った黒い衣服や薄青の髪をツインテールに縛っているリボン、背中の羽根のような装飾などに菱形の意匠があり、薄紫の瞳をしていた。全体的に奇妙な透明感がある雰囲気を纏っており、何よりも少しだけ地面から宙に浮いているのが、妖精めいている。

 

「そうだな、お主も疲れているだろう」

「うわーーーっ!?」

「! 今の悲鳴は!!」

 

 妖精少女を気遣って柔らかい声を出す騎士少女だが、突然聞こえた絹を裂くような悲鳴に表情を引き締めるや、迷いなく駆けだす。

 

「あっ、ちょっと! 待ちなさいよー!」

 

 妖精少女も慌ててその後を追うのだった。

 

 

 

 

 

「あわわわ……」

 

 うずめはモンスターを前に後ずさっていた。

 目の前にいるのはキノコに手足が生えたような外観のマタンゴというモンスターの近接種であるらしい。

 それほど強いモンスターではないが、ある特徴があった。それは……。

 

「し、シイタケ……! シイタケのお化け……!」

 

 モンスターは、シイタケにそっくりな姿をしているのだ。茶色い傘にはご丁寧に十字の切れ込みまで入っている。

 

「ニモノー」

「く、来るなあ! なんでよりにもよってシイタケなんだぁッ!」

 

 そして、この反応を見れば分かる通りうずめはシイタケが大の苦手だった。その苦手っぷりはネプテューヌのナス嫌いに匹敵すると言えば、分かる人にはその凄まじさが分かってもらえるはずだ。

 このシイタケモンスターの姿を見るや、混乱したうずめは涙目になって逃げだし、ホット・ロッドともはぐれてしまって今に至る。

 

「バターヤキー」

「ひっ……!」

 

 涙目になって震えるうずめに、シイタケマタンゴが迫る。

 だが、斬撃音と共にマタンゴの体が真っ二つに切り裂かれた。

 

「て、テンプラー……」

「な!?」

「少女よ、無事か!」

 

 それは騎士少女の仕業だった。

 マタンゴが粒子に還ったのを確認すると、騎士少女は剣を鞘に納め、うずめに手を差し出す。

 

「あ、ああ、ありがとう。オレとしたことが、つい混乱してしまった」

「おーい、うずめー! 大丈夫かー!」

 

 うずめがその手を取らずに自分で立ち上がると、木々の向こうからホット・ロッドが駆けてきた。

 その姿にホッとしたのも束の間、うずめはすぐに不機嫌そうな顔をする。

 

「まったく……何をやっていたんだい?」

「ごめんごめん! うずめがシイタケが苦手なこと忘れてたよ!」

「もしも彼女が助けてくれなかったら、今頃はあの悍ましい菌糸類にどんな目に合わされていたか……」

「だから、ごめんって……っと、お嬢さん! うずめを助けてくれてありがとな! 俺はオートボットのホット・ロッド、こっちは天王星うずめ、君は?」

 

 ここでホット・ロッドは驚いた様子で自分を見上げる騎士少女に気付き、その前に屈んで視線を合わせ、頭を下げる。

 

「あ、ああ……いや、困っている者を助けるのも王の務めだ。わたしはミリオンアーサー! 百万人のアーサーの上に立つ、王の名だ!」

「王?」

 

 剣を手にポーズを決めての自己紹介に、ホット・ロッドは思わず首を傾げる。

 その時、さらに別の者が木々の合間を縫うようにして飛んできた。ミリオンアーサーと共にいた妖精のような少女だ。

 彼女はミリオンアーサーの前に降り立つと、呼吸を整える。

 

「はあ……はあ……やっと追いついた。もう! 休憩だって言った傍から走り出して! 置いていかれるこっちの身にもなりなさいよね!!」

「すまぬ。しかし少女が襲われていたのでな」

「どうせ、可愛い子だから助けたんでしょ?」

「当然! このような肌色率の高いけしからん恰好の美少女を、見捨てられるワケがなかろう! ……ハッ!」

 

 ジト目の妖精少女に対し、ミリオンアーサーは目を光らせるがすぐに咳払いして誤魔化そうとする。

 

「ご、ごほん! ……王たる者、先陣を切って戦い民を守らねばならぬ! それがどんな人物であろうと変わりはない!」

「はいはい……」

 

 呆れたように息を吐く妖精少女。

 露出の激しい恰好のうずめは自分の体を抱いて恥ずかしそうに頬を染めていた。

 

「ううう、こ、これは別にオレの趣味では……くそう、あの搾りかすめ、こんな痴女みたいな格好しやがって。いつかとっちめてやる……!」

「どうやら、その子も無事みたいで良かったわ。……初めまして、お二人とも。私はチーカマ。このアーサーのサポート妖精よ」

 

 頭を抱えて何やら小さくブツブツと呟くうずめを見てから、妖精少女はスカートの端を摘まんで軽く膝を折る。

 

「ええと、ご丁寧にどうも。俺はホット・ロッド、彼女は天王星うずめだ。……それで、アーサー?は王様で、チーカマは……妖精?」

「ああ、説明が足りなかったようだな。我々は『ブリテン』という、ここから遠く離れた島国からやってきたのだ」

「ブリテンだって?」

 

 チーカマの自己紹介に混乱するホット・ロッドに対しミリオンアーサーが説明してくれるが、出てきた地名に若いオートボットはさらに怪訝そうな顔をする。

 ブリテンとは、確か地球のイギリスという国の昔の呼び名だからだ。確か、アーサーというのはそこの昔の王様だっただろうか。

 

「うむ。『アーサー』というのは、ブリテンの王の候補者のことだ」

「候補者は全員、アーサーという同じ名で呼ばれているの」

「何ともややこしいな……」

 

 ミリオンアーサーとチーカマの説明に、いつの間にか調子を取り戻したうずめが、ホット・ロッドの後ろに隠れながらつ呆れた声を出す。

 

「確かにややこしい。だから所属している派閥やその者の特徴から取って、『傭兵アーサー』や『団長アーサー』などと呼ぶのが通例だな」

「現在、アーサーは百万人ほどいるわ」

「ひ、百万人!?」

「どういう数だい、それ……」

 

 突然出てきた途方もない数字に、ホット・ロッドとうずめは揃って面食らう。

 王様も百万人もいたら有難み何もありゃしない。

 

「そしてわたしは、百万人の頂点に立つ真の王! ミリオンアーサーというワケだ!! 気さくにミリアサと呼んでくれ!」

「……とにかく君たちは、ブリテンから来たということだな」

 

 なんとかついていける範囲で話を纏めるうずめに、ミリオンアーサーは頷いた。

 

「うむ。我々はこの地にいるという鎧を着た巨人の騎士たち……トランスフォーマー?だったろうか。彼らを束ねるという、英雄オプティマス・プライムに会うために来たのだ」

「オプティマスに? なんでまた?」

「それは……いや、すまないがそれは本人に直接言いたいのだ。ことは重大なのでな」

 

 口を噤むミリオンアーサーに、ホット・ロッドはまあ何か事情があるのだろうと納得するが、反対にうずめはムッとした顔をしていた。

 チーカマはとりあえず話を続ける。

 

「でも、色々と忙しいみたいでね。本人に会えずに教会で門前払いくらっちゃったわ」

「それで時間潰しと見分を広めることも兼ねて、クエストとやらを受けていたのだ」

「なるほど……最近、色々と大変だったからなあ」

 

 頷くホット・ロッド。

 未だサイバトロンと連絡もつかず、コグマンやステマックスの行方はつかめず、イストワールは回復してきているものの本調子ではなく、さらに祭りの準備……オプティマスがというよりはオートボットと各国全体が忙しかった。

 その上で、言ってははなんだが正式なアポイントメントもなさそうな異国人の話を聞く暇はとてもないだろう。少なくとも、彼女たちに直接応対した教会職員はそう思ったはずだ。

 

「でもそういうことなら丁度いいや! こう見えても俺はオプティマスの……なんだろ? 部下? 仲間? とにかくそんな感じだからさ!」

「その言い方だと死ぬほど胡散臭く聞こえるよ、ロディ。……まあ、オートボットや教会に顔が利くのは本当さ」

 

 適当なことを言って女子をナンパする不審者の如くやたらとフンワリしたホット・ロッドの言葉にツッコみつつも補足するうずめ。

 それを聞いて、ミリオンアーサーは驚くと同時に喜んだ。

 

「おお! 天の助けとはまさにこのこと! 頼む、我々をオプティマスに引き合わせてほしい!」

「いいぜ。丁度俺らも終結祭って祭りに行くトコなんだ。オプティマスはそこにいるはずだぜ!」

「終結祭……そうだ、終結祭だ! ええと……あー! もうこんな時間じゃないか!」

 

 喜ぶミリオンアーサーとホット・ロッドが話を進めていると、右腕のビジュアルラジオを確認したうずめが急に大声を上げた。

 ビクリとするブリテンから来た二人に構わず、うずめはホット・ロッドを見上げる。

 

「急ごう! もう決勝トーナメントが始まってる! せめて決勝戦には間に合わせないと!!」

「お、おいうずめ。そんなに楽しみにしてたのか?」

「もちろんだとも! 世紀の瞬間を見逃す手は……ご、ごほん。きっと面白い物が見られるよ。君たちも来るといい」

 

 興奮した様子から誤魔化すように咳払いし、落ち着き払った態度になるうずめに、顔を見合わせるミリオンアーサーとチーカマ。

 とりあえず、ホット・ロッドはビークルモードに変形する。

 

「よし、じゃあ三人とも乗ってくれ!」

「お、おお……何度見ても凄いものだな、このトランスフォームというのは」

「ええ。信じられない光景よね」

「さ、早く乗るんだ」

 

 まだ変形に慣れていないらしいブリテンからの客人たちだが、うずめに急かされて乗り込む。

 

 ちなみにホット・ロッドが変形したランボルギーニ・チェンテナリオは本来二人乗りなので、チーカマはミリオンアーサーの膝の上に乗ることになった。道路交通法違反だが、お目こぼしいただきたい。

 凄く恥ずかしそうなチーカマと反対に凄く楽しそうなミリオンアーサーを、うずめがリア充爆発しろとでも言いたげな目で見ていた。

 

「さあ、しっかり捕まってな! 飛ばすぜえ!」

 

 アクセル全開でエンジンを吹かし、地球はイタリアのスーパーカーはタイヤを回転させて走りだす。

 木々の密集した森をドライビングテクニックで抜け、草原に出ると後は加速するばかりだ。

 

「おおお! 速い、速いな! まるで風のようだ! ブリテンのいかなる早馬も、この速さには敵うまい!」

「でで、でも、かなり揺れるわね……! も、もっと安全運転で……」

「いや、このままでは間に合わない。ロディ、もっと速く頼む」

「OK! さらに飛ばすぜぇ!! イヤッホー!!」

 

 はしゃぐミリオンアーサー、怖がるチーカマ。しかしうずめの要求を受けて、ホット・ロッドはさらにスピードを上げる。

 

「おおーっ!」

「きゃああああッ!」

「急いでくれよ。……本当に本当に、この時を楽しみにしていたのだから」

 

 それぞれ歓声と悲鳴を上げるミリオンアーサーとチーカマ、そして爆走するホット・ロッドは、うずめが狭そうにしながらも、暗い笑みを浮かべていることに気が付かなった。

 

  *  *  *

 

 終結祭の会場の一角にある、特設ドーム。

 今ここでは、G-1グランプリの決勝リーグが行われていた……のだが。

 

 円形リングの上では二組の影が対峙していた。

 

 一組はみな光る翼と円に一本線を合わせた紋章が浮かんだ瞳を持つ女性たち。

 

 太刀を持ち、紫の髪を三つ編みにした黒いレオタードのパープルハート。

 純白の髪を長く伸ばし、黒い大剣を手にやはり黒いレオタードを纏ったブラックハート。

 水色の髪と赤い目が印象的で、幼い姿態を白いレオタードで包んだ、両刃の戦斧を持つホワイトハート。

 長い緑の髪を後ろで縛り、豊満な体をビキニのような衣装で強調した長槍持つグリーンハート。

 

 プラネテューヌ、ラステイション、ルウィー、リーンボックスの女神たちが女神化した姿だ。

 

 もう一組は全員が黄金に光る瞳を持った四人の女性。

 

「その勝負、ちょっと待ってもらう」

 

 一人は、学生服の上に赤い上着を着ているが、軍帽に右目を覆う眼帯、両手の銃に、背中のバックパックがあまりに物々しい少女。

 

「私たちが誰かって?」

 

 一人は、青いレオタードのような衣装に、茶色い長い髪、右腕にビーム砲のような物を装着し、機械で出来た蝙蝠の翼を背にした大人の女性。

 

「黄金の頂に君臨せし者……」

 

 一人は、片方だけの翼を背負い、手にはクリスタルの剣、頭には王冠を被った、黒い装束の男性的な雰囲気の女性。

 

「正義の味方! 救いのヒーロー!!」

 

 最後の一人は、金色の髪をピッグテールにした、身の丈ほどもあるバズーカを担ぎ背後に球形のビットを二つ従えた童女。

 

『ゴールドサァド、とでも名乗ろうか……!』

 

 四人の女性は、声を揃えて、そう名乗った……。

 

 

 




時間がなくてトランスフォーマークラシックまだ読めてないです……。
にしてもなぜか、書いてると○○めがどんどんポンコツ化していく……。

今回のキャラ紹介

ラステイション女神候補生ユニ
ノワールの妹であるラステイションの女神候補生。
姉同様に生真面目な努力家で、素直になれないのも一緒。最近はかなり素直になった。
銃の名手であり、ビームと実体弾を撃てるライフルを愛用する。またネプギアの影響もあってかなりのガンマニア。
姉に追いつき認めてもらうのが目標。ノワールとして自分を超えるつもり来てほしいらしい。
女神化すると何故か胸が小さくなるのが悩み。
オートボットのサイドスワイプとは、前作で恋人同士になった。

こういう名前だが、某星間大帝とは何の関係もない。

オートボット戦士サイドスワイプ
シボレーコルベット・スティングレー風のスポーツカーに変形する剣を得意とするオートボット。
アイアンハイドの愛弟子であり、オートボットの若手の中ではホープ的存在。
割と調子のいい若者的な性格だが、正義感は強く女神候補生のパートナーが集まった時には纏め役。
相棒のユニとは恋人同士だが、その性格故によくツッコまれる。


ルウィー女神候補生ロム
ブランの妹である双子の女神候補生、その姉の方。
大人しくおどおどして見えるが、芯はしっかりしている。女神化しても基本的な性格は変わらないが、やや強気になる。双子組の中では有事の肝の座り方は一番。
魔法が得意で、特に氷系の呪文に秀で、凍結に弱いトランスフォーマーたちにとっては天敵。
妹のラムとはとても仲が良く、一緒に悪戯をすることも多い(主な被害者はブラン)

ちなみに作者は原作アニメのマジェコンヌ編での天使っぷりにノックアウトさ(略)


ルウィー女神候補生ラム。
ブランの妹である双子の女神候補生、その妹の方。
強気で元気いっぱいの悪戯っ子。大人しいロムを引っ張っているが、末っ子だけあって甘えん坊な一面もある。最近ませてきた。
ロム同様に氷系の魔法が得意で、二人で力を合わせた時にはディセプティコンにとってさえも脅威だった。
女神化しても基本的な性格は変わらない。

ちなみに作者は原作アニメ一話での天使っぷりにノックア(略)


オートボット救助員スキッズ
伝令上がりの少年兵で、前作A軍レギュラー陣の中では最年少。マッドフラップとはスパークを分けた双子。
おちゃらけた性格だが、中の人補正もあって原作に比べ熱血漢。双子組の中では纏め役。
当初は不真面目で戦力外扱いだったが、ロムとラムを守るために強くなると決意しミラージュに師事。合体砲を編み出したりホログラム発生能力を会得して一端の戦力に成長した。
戦後はD軍のブラックアウトに師事し体を飛行型にコンバート。レスキューヘリに変形するようになり、レスキュー隊員として活躍している。


オートボット隠密マッドフラップ
伝令上がりの少年兵。双子のスキッズともども前作A軍レギュラー陣で最年少。
おちゃらけた性格で、スキッズに比べてもノンビリしている。
スキッズ同様ミラージュに師事し、いっぱしのオートボットに成長した。
意外にもスキッズより彼の方がミラージュの後継としての適性は高い。

スキッズとマッドフラップのうち、どちらが兄でどちらが弟かは本人たちのその日の気分による。
ロムラム姉妹とオートボットツインズは、お互いに自分たちの方が保護者だと思っている。


リーンボックス女神候補生アリス
元ディセプティコンのスパイで、元プリテンダーという異色の女神候補生。得物は弓矢。
ベールとは実の姉妹ではないものの、彼女を姉として慕っている……けど趣味にはついていけない。けど確実に妹萌えは伝染している。
ハードな半生を送ってきただけあってユニ以上にクールでドライな一面があるが、可愛い物やスイーツが大好きなど乙女らしい面も。
リーンボックスのアイドル、5pb.とは親友。D軍情報参謀サウンドウェーブは元上司。メガトロンには忠誠心と共に恋心に近い物を抱いていたが、現在は吹っ切っている。

原作から最もかけ離れたディセプティコンの一人であり、作者的にサムに合わせてみたいディセプティコン第二位(一位はメガトロン、三位はスタスク)


ディセプティコン斥候サイドウェイズ
元はディセプティコンの斥候だが、ひょんなことからルウィーの片田舎で生活し、色々あって軍を抜けた。その後は、仲間たちと戦う気も起らず世界を放浪していたが、同じく軍を抜けたアリスに付き合って戦う決意を固めた。
そのアリスとは訓練兵時代からの馴染み。上述のルウィーでの生活の時に親交を結んだョルトとは所属を超えた友達(でも出番はサイドウェイズの方が多い)
割と軽く飄々とした性格だが、アリスのためなら頑張れる。そんな彼に対するアリスの当たりはキツメ(憎く思っているワケではなく親しいが故だが)
狙撃手として確かな腕を持つが、D軍時代はあまり発揮できなかった。

こういう名前だが某星間大帝の眷属ではない。いやマジで。
でも両陣営の間を行き来したことは共通している。

ミリアサとチーカマの紹介はまた今度。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。