新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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第26話 改変の時

 時間は遡る。

 

 ここは罪を犯したトランスフォーマーを収容しているアバーッシリ刑務所。

 終結祭の最中も、囚人たちを見張る看守たちに休みはない。

 その看守用の通路を、一人の看守が歩いていた。

 真面目な勤務態度と几帳面な性格で知られるその男は、予定通りに監視室に入る。

 声紋、指紋、網膜認証、パスワード、さらには最近導入された遺伝子認証システムを問題なくクリアし、監視室に入る。

 

「お疲れ様です。……囚人の様子は?」

「お疲れ~。相変わらずさ」

 

 先にいた先輩看守に挨拶して壁のモニターに目を移すと、ディセプティコンたちが騒いでいるのが見えた。

 

『出さんかい、ワレェ!! おどれら、しばき倒すぞハゲェッ!」

『お前ころーす! お前もころーす!! ……ああ、ボキャブラリー増やさねえとなあ』

『テメエの家は知ってるぜ! 電話番号とメールアドレス、それからご両親の家と娘さんの職場、息子さんの学校も……いや、ストーカーじゃねえから!』

クソ野郎(ミエルダ)! クソッタレ(カブロン)! ぶっ殺す(マタル)!!』

『お前ら、小物臭いからちょっと黙ってるである!!』

 

 オンスロートたちは、相変わらず元気そうだ。

 他にも問題を起こしたトランスフォーマーがディセプティコン、オートボット、はたまた人造トランスフォーマーの区別なく多く収監されていた。

 

「元気ですね、あいつら」

「まあな~……ああー、それにしても俺も祭りに行きたかったなー! 開催期間中、ずーっと当番だもんなあー!」

「なんなら、俺が一人で見てますんで、行ってきます?」

 

 後輩看守の言葉に、先輩看守は笑みを浮かべる。

 

「マジで? ……あ~、でもやっぱ止めとくわー」

 

 いうや、椅子から立ち上がった先輩看守は後輩看守の首筋にスタンガンを押し付けた。

 

「ガッ!?」

「悪いな。こいつの本物はお寝んねしてる」

 

 意識を失い床に倒れた後輩看守を見下ろす先輩看守の口元に酷薄な笑みが浮かぶ。

 するとその姿が陽炎のようにぶれ、別の人間の姿に変わった。

 

「さてと……そろそろ時間だな」

 

 元の姿に戻ったマジェコンヌは、時計を見てほくそ笑むと手持ちの通信機を起動する。

 

「ガルヴァトロン、こちらマジェコンヌ。予定通りに配置についた。さあ、ショーを始めるぞ……!」

 

 

 

 

 

 プラネタワーの自室で、イストワールは寝間着姿で休んでいた。

 ハーブティーを飲み、気分を落ち着かせる。

 

 彼女は回復はしてきたものの本調子に戻っておらず、療養していた。

 検索のために内面世界に潜っていた間の記憶は靄がかかったようにハッキリしない。

 

 ただ、いくつかのことが頭の中に浮かんでは消える。

 

「大いなる危機、四つ鍵……希望を継ぐ者。それにあの時見た映像はいったい……」

 

 自分の中にあった、封印された記憶。少女と女性の姿。

 あの映像が、頭から離れない。

 

「…………」

 

 ふと見たモニターには、終結祭の様子が映し出されていた。

 

 

 

 

 

 ニューサイバトロンの特設アリーナでは、G-1グランプリが開幕する時間となり、すでに大変な盛り上がりを見せていた。

 まずは開幕の宣言するために、四カ国の女神たちが変身した姿でリングに昇る。

 

 マイクを手に持ったネプテューヌは、満員の観客席に向かって思い切り声を上げた。

 

『四つの国の国民の皆さん、トランスフォーマーの皆さん! 今日は集まってくれて、本当にありがとう!! お祭りは楽しんでくれてるかしら?』

 

 観客たちが歓声を持って答えると、ネプテューヌは笑みを大きくする。

 オプティマスは、リングの脇に立ちそれを満足気に眺めていた。彼はこの大会の選手ではなく、審判としてここにいた。

 ユニたち女神候補生や、他のオートボットたちも周りに控えている。

 

(メガトロンがいれば、きっと喜び勇んで選手として参加したのだろうな)

 

 剣闘士出身で、そのチャンピョンであるライバルを想い、オプティマスは苦笑する。

 元来目立ちたがりでプライドの高い彼のこと、こういう催しには必ず飛びついたはずだ。

 

 なお、そうなればオプティマスもメガトロンを抑えるという名目で参加していただろう。

 

 サイバトロンに残されたメガトロンたちについて、オプティマスは特に心配はしていなかった。案外、この状況を打破する手をもう見つけているかもしれない。

 

 それより心配なのはイストワールのことだ。

 だいぶ元気になったが、ふとした拍子に夢遊病のようになり、あのうわ言を繰り返すのだ。

 

「大いなる危機、四つの鍵、希望を継ぐ者……」

 

 オプティマスなりに個人的な友人たちの手も借りてこの言葉について調べているが、どうにも分からない。

 しかし、無視してはいけないと胸の中のマトリクスが言っている気がした。

 

『皆が楽しんでくれてるようで、私も嬉しいわ!! どうか、このG-1グランプリ決勝リーグも、その後も、最後まで楽しんでいってちょうだいね!!』

 

 

 

 

 

「あー! もう始まってるー!!」

 

 ニューサイバトロンまで戻る道中にある街で、大きな街頭モニターの下を通りかかったホット・ロッドたち。

 うずめは街頭モニターを見上げて声を上げた。

 

「仕方がない! ロディ、ここで止めてくれ!!」

「お、おい、いいのかうずめ?」

「もう会場まで行ってたら間に合わない!!」

 

 急停車したホット・ロッドから降りたうずめは、街頭モニターを見上げた。

 ミリオンアーサーとチーカマも降り、うずめの背を追う。

 

「ううむ、どうも彼女は中々に強引だな。……そんな少女も好きだが」

「自重なさい」

 

 モニターの周りには祭りには行かなかった人々やトランスフォーマーも集まっていた。

 ロボットモードに戻ったホット・ロッドはその中に見知った姿を見つけた。

 

「ハウンド? ドリフトにクロスヘアーズも!」

「坊主か」

 

 コンテナに腰掛けたハウンドは、片手を上げて挨拶する。ドリフトは胡坐を組んで画面を眺め、クロスヘアーズは腕を組んで興味なさげを装いつつもチラチラと画面を見ていた。

 

「三人はグランプリには出なかったか」

「ああいうのは、どうにも性に合わねえからな。お前は?」

「俺は普通に予選落ちさ」

「そいつはご愁傷様。で、あちらさん方は?」

 

 肩を竦めるホット・ロッドだが、ハウンドの問いにモニターを見上げるミリオンアーサーとチーカマに視線を向ける。

 

「なんとあのようなレオタード姿で戦いに望むとは! いや実に眼福眼福……ジュルリ」

「アーサー! そこのアーサー! だから自重なさい!!」

 

 なぜか獲物を狙う獣の如く目を妖しく光らせながら舌なめずりをし、それにツッコんでいる。何となく、緑の女神の姉妹に似た香りがした。

 

「ああっと、彼女たちはミリオンアーサーとチーカマ。遠いブリテンという国から、はるばるオプティマスを訪ねてきたそうだ」

「センセイを?」

 

 総司令の名が出るや、やはりと言うべきかドリフトが反応した。

 

「それは何故だ?」

「さあ? なんか重大な理由があるってさ」

「つまり、聞いていないのだな。……貴様、そのような得体の知れぬ者たちをオプティマスに会わせようというのか!!」

「お、いいぞやれやれー」

「止めろ、馬鹿! 公衆の面前で!」

 

 ホット・ロッドの答えに激昂したドリフトが刀を抜きクロスヘアーズが囃し立てるが、ハウンドが三連ガトリングで殴って止める。

 

「……なんか、向こうが凄く物騒な感じなんだけど」

「ん? ああ、いつものことさ。気にするとキリがないよ」

「いつものことなんだ……」

 

 騒いでいるオートボットたちに気付いたチーカマだが、うずめにあしらわれる。周りの人々もまるで気にしていないことに、チーカマは顔を引きつらせた。

 一方でミリオンアーサーは、さっきよりも真面目な顔で画面の端に映った赤と青の戦士を見ていた。

 

「あれがオプティマス・プライムか……果たして彼がブリテンを救う英雄なのか」

 

 その呟きは隣にいるうずめの耳に届いていた。

 

「ブリテンを救う?」

「聞こえていたのか……そうだ、我がブリテンは今、未曽有の危機にある。彼に力を貸してもらいたいのだ」

「……王といいつつ、結局は人任せか」

 

 何処か刺々しいうずめの言葉に、不快に思った様子もなくミリオンアーサーは苦笑する。

 

「耳が痛いな……確かにブリテンの問題はブリテンの人間が解決するべきなのだろう。しかし、そうも言っていられないのだ。……あの、鉄騎アーサーに対抗するためには」

 

 真剣な声色のミリオンアーサーから、うずめは目を逸らして画面を注視する。

 鉄騎アーサーとやらが誰だか知らないが、ブリテンの問題にこちらを巻き込まないでほしい。

 

「うずめさーん! ホット・ロッドー!」

「遅いから、迎えに来た、でよー!」

 

 そこへ、黄色いカマロとそれに乗った紫の女神候補生がやってきた。二人の様子を見に来たようだ。

 画面では、ネプテューヌが開会の言葉を終えようとしていた。

 

 

 

 

 

『それじゃあ、皆! G-1グランプリ決勝リーグの開幕を……!』

「その勝負、ちょっと待ってもらう」

 

 話しを締めようとした時、急に声がした。

 ノワールは、その無粋者を探して顔を巡らせる。

 

「誰!?」

「私たちが誰かって?」

 

 声の主は、アリーナに設置された巨大モニターの前に立っていた。

 女性の影が、全部で四つ。

 

「黄金の頂に君臨せし者……」

 

 自然と、スポットライトやカメラがそちらを向く。

 すると、四人の中で最も小さな影がポーズを取る。

 

「正義の味方、救いのヒーロー! ……とう!」

 

 四つの影は、一息にモニターの前から跳躍し、リングの上に着地する。

 

 レオタードの上から青い上着を着た健康的な大人の女性。

 学生服の上に赤い上着を羽織った黒髪の少女。

 金髪をピッグテールにした、プラスチックのような質感の黄色い服の童女。

 黒い服のどことなく高貴な雰囲気を纏った銀髪の女性。

 

 いずれも黄金色に輝く瞳を持ち、金属的なパーツを背負った彼女たちは、声を合わせて名乗り上げる。

 

『ゴールドサァド、とでも名乗ろうか……!』

 

 

 

 

 

「あのお嬢ちゃんは……!」

「あの時の!」

「あの無礼な……!」

 

 ハウンド、クロスヘアーズ、ドリフトの三人は、モニターに映った女性たちのうち、それぞれ学生服に眼帯の少女、レオタードに黒タイツの女性、黒い衣服の女性の姿に驚いていた。

 その姿に、見覚えがあったからだ。

 

「あれ、あの子って?」

「うん。あの時の、プレスト仮面」

 

 ネプギアとバンブルビーも、黄色い服の童女が以前に助けられた仮面の少女であると気付き戸惑っていた。

 

「なんだ、あいつらは……!」

「むう、またしても美少女が! このゲイムギョウ界は歩けば美少女が沸いてくるのか!!」

「だから自重せいって言ってるでしょう!」

「…………」

 

 目を丸くするホット・ロッドに、馬鹿な事を言ってチーカマにツッコまれるミリオンアーサー。

 しかしうずめは、居並ぶゴールドサァドなる女性たちを見て、暗い笑みを浮かべた。

 

「ついに来た……この時が。今こそ世界改変の時だ」

 

 

 

 

 

「というか、あなた。ビーシャじゃない」

「ケーシャ!? あなた何やってるの?」

「何しに来やがったんだよ、シーシャ!」

「エスーシャ、どうしてここに?」

 

『え?』

 

 ネプテューヌ、ノワール、ブラン、ベールは声を上げた後で顔を見合わせる。どうやら、全員知り合いであるらしい。

 それに反応するように、ゴールドサァドたちも黒い服の女性以外が笑顔になる。

 

「ヤッホー! ねぷねぷ!」

「やあやあ、ブランちゃん」

「ノワールさん!」

 

 黄色い服の少女ビーシャと青い服の女性シーシャは朗らかに、赤い服の少女ケーシャはやや緊張した面持ちだ。

 残るエスーシャだけが、無表情に佇んでいた。

 

「……失礼。審判のオプティマスだが、如何なる用だろうか?」

 

 リングの上に昇ったオプティマスは、女神たちとゴールドサァドの丁度真ん中に立つ。あたかもそれは自分が中立の立場だと言っているかのようだ。

 ゴールドサァドの中から代表するように、シーシャが進み出る。

 

「なに……ぜひ、女神様たちと手合わせ願いたくてね。色々あって、出場を申し込むことが出来なかったんだ」

「それで! 盛り上げるのも兼ねて、乱入しようってことになったの!!」

 

 ピョンピョンと跳ねるビーシャに、オプティマスは難しい顔をする。

 このような行為を許してもいいものだろうか。

 

「いいんじゃないの? 良い余興になるわ」

「さすがねぷねぷ! 話が早い!」

 

 しかしネプテューヌは好戦的な笑みを浮かべて、手元に愛刀オトメギキョウを召喚する。それを見て、ビーシャもバズーカを取り出した。

 

「ケーシャ、やるつもりなら容赦しないわよ」

「もちろんです。……戦闘任務、準備完了」

 

 ノワールが大剣ワタリガラスを取り出せば、ケーシャは二丁のマシンピストルを握り、その雰囲気が剣呑な物へ変わる。

 

「胸を貸してやるぜ、シーシャ」

「そうこなくちゃね。……いい勝負が出来そうだ」

 

 戦斧ユキヅキを肩に担いだブランに対し、エスーシャは拳を握って構えを取る。

 

「エスーシャ、あなたはどうしますの?」

「興味ないね……しかし、やるからには負けるつもりはない」

 

 無気力な調子ながらも剣を構えるエスーシャに、ベールはヤレヤレと首を振りながらも長槍コノハカゼをクルリと回す。

 

 すっかり対戦する気になっている女神とゴールドサァドにオプティマスは軽く排気する。周囲の観客も、興奮しているようだ。

 ハプニングも祭りのエッセンスである。

 

「君たちがそう言うのなら、いいだろう。……では、本選の前に軽いエキシビションマッチとする。全員、並んでくれ」

 

 その言葉に従い、女神とゴールドサァドは対面する形で並ぶ。

 

「時間もないので、ルールは4vs4のチーム戦とし、本選同様に降参か気絶、または場外に出たら負けとする。最終的にチームのうちの誰かが残った方の勝ちだ」

 

 総司令官は朗々たる声で宣言し、そして最後に付け加えた。

 

「何より重要なのは、お互いに礼節を持って戦うこと。そして勝敗に関わらず相手に敬意を払うことだ……これは戦争ではないのだから」

 

 厳かな言葉に、女神たちは真面目な顔で頷く。よくある言葉だが、それもオプティマスの口から語られると重みを持っていた。

 ゴールドサァドたちも女神ほどは重く受け取らなかったようだが、それでも頷く。

 

「では、お互い良い戦いを。……はじめ!」

 

 その言葉を合図に、女神たちが飛び立ち、ゴールドサァドが地を蹴る。

 両者が手に持った武器を振りかざし、激突しようとした、まさにその時。

 

 爆発音が聞こえた。

 

 女神もゴールドサァドも観客も一瞬動きを止め、爆音が

 アリーナの巨大モニターに映像が映っていた。

 

 相次ぐ爆発と崩れる建物、燃え盛る炎と立ち昇る黒煙、そしてその向こうで蠢く影だ。

 それは頭から大きな二本の角が生えた大きな黒い体に赤い目の鬼のような姿のトランスフォーマーだ。

 その大鬼のような金属生命体は、獣のような咆哮を上げると丸太のような腕に備えたキャノン砲を撮影している何者かに向ける。

 砲口が光って一瞬後、画像は消えて砂嵐になった。

 

「オプっち、今のは?」

「少し待ってくれ。……私だ。状況を報告せよ。……ああ、分かった。通信終わり。……皆さん、どうか聞いていただきたい!!」

 

 観客席がざわつく中、オプティマスはネプテューヌに断ってから通信をし、それを終えてからリングの中央に進むと大声を上げる。

 

「ハプニングとは続く物。先ほど、プラネテューヌのアバーッシリ刑務所が何者かの襲撃を受けました!! よって、私と女神たちはその現場に急行しなければなりません!!」

 

 その言葉に群衆の動揺がさらに大きくなる。

 ネプテューヌは状況をすぐに察し、群衆に向かって声を上げる。

 

『せっかく集まってもらったのにごめんさい!! でも、この世界の平和を守ることも、女神である私たちの使命なの!!』

 

 高らかに宣言するネプテューヌの傍に、ノワール、ブラン、ベールも並ぶ。彼女たちも、優先すべき事柄はよく分かっていた。アイアンハイド、ミラージュ、ジャズらもリングの上がり、整列する。

 その姿に観客は歓声を上げて応援を始めた。

 

「女神さまー! 頑張ってー!」

「オートボットたちも、しっかりねー!」

「レッツ、ねぷねぷ!!」

 

 惜しみない声援を受けながらも、女神たちはやや呆気に取られているゴールドサァドに向き合った。

 

「そんなワケで、ごめんなさい。勝負はまた今度」

「大丈夫だよ! オートボットと女神は、正義の味方だもん!!」

「ま、しょうがないさ。ここで引き留めるのも野暮だ」

 

 ビーシャとシーシャを筆頭に、当然の如くゴールドサァドたちは快諾した。

 彼女たちとて乱入こそしたが、決して戦闘狂なワケではない。

 

「女神候補生のみんなは、念のためここに残っておいて!」

『はい!』

『うん!』

 

 ネプテューヌの言葉に、ユニ、ロム、ラム、アリスは頷く。

 頼りないから連れていってもらえないのではなく、信頼されているから後を任されたのだと理解しているからだ。

 

「では行こう……オートボット、変形して(トランスフォーム・)出動だ(アンド・ロールアウト)!!」

 

 オプティマスの号令と同時に、オートボットたちは歓声を受けながら変形して走り出し、女神たちもその上を飛ぶ。

 

 アリーナの入場口から出ていく彼らを見送った女神候補生たちは、一つ頷き合うとそれぞれの相棒と共にそれぞれの仕事に向かう。

 

「あ~あ、なんか戦わずして格の違いを見せられちゃった感じだねー」

「さすがはノワールさん……もとい女神様といったところですか」

 

 残されたビーシャは体をぶらぶらと揺らし、ケーシャは目を輝かせる。

 試合はお流れとなったが、何だか妙な敗北感があった。

 

「それじゃあ私らも行こうか。……邪魔にならない程度に、ね」

「女神の手並みを拝見させてもらおう……」

 

 シーシャは悪戯っぽい笑みを浮かべ、エスーシャは気だるげながらも歩き出す。

 

 ここでただ引き下がるのも、つまらない。

 

 

 

 

 

 ホット・ロッドは、これまで以上に憧れと尊敬に満ちた眼差しを画面に向けていた。

 人々から強く信頼され応援を受けているあの姿こそ、英雄のあるべき姿だった。

 

「あれこそまさにリーダーだ。彼のためなら死ねるね。……これも洗脳かな?」

「いや、……あれがオプティマス・プライムだ」

 

 クロスヘアーズとドリフトの言う通りだ。あれがオプティマスだ。

 彼こそが、自分の目指すべきヒトだ。

 

 ……あの悪逆非道のメガトロンではなく。

 

「よーし、野郎ども。俺らも行くぞ!」

「ビー、私たちも!」

「よっしゃあ!」

 

 ハウンドの号令に、オートボットたちは手早く出撃の準備をする。

 当然ながらホット・ロッドもそれに倣うが、そこでミリオンアーサーが意外なことを言い出した。

 

「ホット・ロッド、我々も連れて行ってくれ!」

「ミリアサ? でも、君たちには関係が……」

「それがあるのだ! 先ほど、画面に映った鉄の鬼……インフェルノカスは我がブリテンで猛威を振るう鉄騎アーサーの手下だ!!」

 

 少し考えてから、ホット・ロッドはその必死な申し出を受けることにした。

 鉄騎アーサーというのが何者か知らないが、敵の情報を知っている人間がいるのは、心強い。

 

「……分かったよ」

「すまない、恩に着る!」

「いいよ別に、気にしないで。それでうずめ、君はどうする? ……うずめ?」

 

 頭を下げてくるミリオンアーサーに笑いかけた後で、うずめに声をかけるが、当の彼女は肩を震わせていた。

 

(なんだあのデカブツは? なんだこの展開は? 知らない、オレはこんなの知らない!)

 

 それは、自分の考えていた筋書き(シナリオ)がいつの間にか改変されていたことへの、言い知れぬ驚愕と不快感……そして不安に打ち震えているのだった。

 




嗚呼……なんで映画バンブルビーの公開、日本だけ三月なんねん……。

後書きに代えて、キャラ紹介。

ブリテン王候補ミリオンアーサー
遠い島国ブリテンの王候補アーサーの一人。
ブリテンでは聖剣エクスカリバーを抜いた者をアーサーと呼ぶ。その数なんと100万人強。当然エクスカリバーも同じだけある。
またアーサーは因子から生み出した人造生命体『騎士』(外見、知能、人格、全て人間と遜色はない)を円卓の模型とエクスカリバーで指揮することが出来る。このことについては原作中でも批判されている。

彼女もそうした王候補の一人であり、混迷を極めるブリテンを統一しようという強い気概を持つ。能力も高く器も大きく、それでいて現実を見据える冷静さも併せ持つ……のだが、大の美少女好きでありハーレムを作ろうと目論んでもいる。
頭の王冠は、騎士製造装置『湖』の小型版。

スマホゲーを中心に展開する『ミリオンアーサー』シリーズ(正確にはその第一作『拡散性ミリオンアーサー』)の擬人化キャラクター。
最後の騎士王要素とあまりに相性が良いのでメインキャラに抜擢。

なお、この作品の独自設定として彼女には『ミリオンアーサー』の他に本名がある。


サポート妖精チーカマ
ミリオンアーサーのパートナーであるサポート妖精。
ブリテンには妖精という人ならざる種族がおり、通常人間と意思疎通することは出来ない。しかし一部の妖精はある魔術師の魔法により、人間の言葉を話すことができ、そうした妖精は一部の(おそらく王候補として有望な)アーサーのサポート役に就く。

彼女もそうした妖精の一人であり、ミリオンアーサーを影に日向に支える出来た女。
素直でないものの知的で自分の立場や礼儀を弁えている。故に破天荒な相方には振り回されがち。それでもミリオンアーサーのことを大切に思っている。


なお、彼女たちの故郷ブリテンはミリオンアーサーシリーズのそれの再現ではなく、TF要素がマシマシになった混沌とした地。
具体的にはG1のあの回の要素とか……。
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