新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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第28話 レギオン

「ガルヴァトロン……! 生きていたのか……!」

「元気そうだな。ロディマス」

 

 刑務所の前庭で、ホット・ロッドとガルヴァトロンは睨み合う。

 

「お前は異空間に落ちたはず……どうやって戻ってきやがった!」

「とある親切な御仁に助けてもらったのさ。……取引をしてな」

 

 声を荒げるホット・ロッドに対し、ガルヴァトロンの声は静かだった。

 ミリオンアーサーはその様子に怪訝そうな顔をする。

 

「そなたら……知己であったのか?」

「兄弟だ」

「敵だ!!」

「……複雑な事情があるようだな」

 

 すぐさま返された内容が正反対であることに、ミリオンアーサーはあえて追及しないことにする。

 一方で、信じられないと言う顔のまま固まっていたうずめは、ホット・ロッドとは逆に少しだけ調子を取り戻したようだった。

 

「そうかそうか……そういうことか。いやまったく小粋な演出だね」

 

 周囲に聞こえないように呟いたうずめは、顔を上げると破壊大帝の顔をねめつけた。

 

「久し振り……と言っても生憎オレには記憶がなくてね。でも君のことは聞いている。……オレを殺しに来たんだろう?」

 

 静かな声にハッとなったホット・ロッドが彼女の前に出る。

 ガルヴァトロンがどうやって異空間から戻ってきたのかは分からないが、彼はうずめを憎んでいる。

 しかし、当のガルヴァトロンは冷静さを保っていた……正確には保とうと努力していた。

 

「もちろんそのつもりだ……だが、それは後回しだ。先にやるべきことがある」

「やるべきこと、だって?」

 

 またしても予想していなかったとばかりに目を見開くうずめ。対しガルヴァトロンは顔に手を当てて静かに言う。

 

「貴様を今すぐ八つ裂きにしてやりたいのは山々だが、物事には優先順位という物がある。俺は地球での敗北からそれを学んだぞ……そう地球だ。あの星に巣食う蛆虫どもを全滅させる方が先だ。そうすればそう、何もかも解決だ」

 

 その言葉はうずめたちに言っているというよりは、自分に言い聞かせているようだった。声には隠し切れない細かい震えがあり、体中からバチバチと小さな稲妻が飛び散っている。

 取り巻きのディセプティコンたちも、その危険な様子に一歩引くが、ホット・ロッドは怒りを露わにする。

 

「あんたはまだそんなことを言ってるのか……! ゲイムギョウ界に来てまで!!」

「もちろんだ。この世界を守るために……」

「守るだと! これがか? みんなが平和になったことを喜ぶ祭りの日に、刑務所を襲うことがか!」

 

 本人も不本意なのか破壊大帝は渋面を作るが、変わってマジェコンヌが答える。

 

「……我々の事業には人材が必要でな。正直に募集しても誰も来ないだろうから、馴染みの顔をリクルートしに来たのだ」

 

 それを聞いたオンスロートはわざとらしく鼻を鳴らすような音を出すが、無視される。

 一方でネプギアは厳しい表情で顔馴染みの魔女を非難した。

 

「マジェコンヌさん、マジックちゃんをほったらかしにして、どうしてこんなことを……あの子がどれほど寂しい思いをしているか、分かっているんですか!」

「……私は母親にはなれなかったということだ。言い訳はせんよ」

 

 帽子の唾を摘まんで顔を隠したマジェコンヌの声は、不自然なまでに平坦だった。まるで、感情を無理やり隠している風に。

 

 ここで、これまで黙っていたバーサーカーがうずうずとした様子で声を出した。

 

「なあ話はもうええやろ? はよ、おっぱじめようやないか」

「……待て、バーサーカー」

 

 今にも敵に飛び掛からんとする狂戦士をガルヴァトロンが片手を挙げて止める。

 その視線は、ホット・ロッドたちのさらに向こう、門から敷地内に入ってきた一団に向けられていた。

 

 赤と青のファイヤーパターンのトラックを先頭に、黒いピックアップトラックと真紅のスポーツカー、白地に青いストライプのロードスターが、それぞれロボットモードに変形する。

 上空からは、紫、黒、白、緑の四つの光が舞い降りた。

 

 オプティマスたちと四女神が到着したのだ。

 

「皆、遅くなって済まない!」

「ネプギア、大丈夫?」

「お姉ちゃん! うん、私は大丈夫!」

 

 総司令官とネプテューヌの姿を見るや、ホット・ロッドは強い安心感を覚えた。

 戦斧と長槍を手にしたブランとべールは、敵一味の中のマジェコンヌの姿に驚いていた。

 

「あれが、マジェコンヌ? ……マジで別人じゃねえか。整形でもしたのか?」

「いったい、どんなアンチエイジングをしたらあんな風に……少なくとも10歳は若返ってますわ」

「失礼だな、おい! 別人云々をお前ら女神に言われる筋合いはない!!」

 

 シリアスな雰囲気だったマジェコンヌもこれには顔をしかめる。

 一方で、ノワールはディセプティコンたちの先頭に立つガルヴァトロンを真っ直ぐに睨みつけていた。

 

「……あなたが、ガルヴァトロン」

「…………」

「正直、あなたが本当に()()ガルヴァだなんて信じられないわ。……だからとりあえず、ぶっ飛ばしてから色々聞かせてもらうわ!」

「変わらないな、貴方は……いや俺が変わってしまっただけか」

 

 大剣の切っ先を向けてくるノワールに、ガルヴァトロンは懐かしさとも悲しみともつかない複雑な感情が籠った笑みを浮かべる。

 

「貴殿がオプティマス・プライムか。なるほど、英雄に相応しい威容だ」

「ミリオンアーサー、だったな。挨拶は後にしよう」

 

 ゆったりとした仕草で剣を抜くオプティマスと、正眼にエクスカリバーを構えるミリオンアーサー。

 

 ふとホット・ロッドは思った。両者の持つ剣はどちらも神々しさすら感じさせる代物だが、何故かエクスカリバーの方がテメノスソードよりも……それどころか四女神の持つ武器よりも見劣りしてしまうような気がするのだ。

 これはあまりに失礼なので、自分の気のせいだろう。

 

「どうやらここまでのようだな! 神妙にお縄に着けい!!」

「なんなら、抵抗してくれても構わねえぜ!」

「おうおう、早よ始めよや!!」

「今度こそ、俺の方が速いぜ(ラーピド)!!」

 

 ドリフトとクロスヘアーズが得物を構えながら挑発的にいうと、バーサーカーとドレッドボットが構え、他のディセプティコンたちも臨戦態勢に入る。

 だが、またしてもガルヴァトロンが制止した。

 

「止めろ。分が悪い、退くぞ」

「ふん、まあ妥当なのである!」

 

 オンスロートも、その言葉に同意する。

 すると、何処からか旧ディセプティコン軍団で使われていた降下船が数隻飛んできた。両舷に突き出た八つの可動式スラスターが、昆虫の足のようにも見える型だ。

 ディセプティコンたちは近くに着陸して前部ハッチを開いた降下船に乗り込んでいく。

 バーサーカーは不満そうだったが、それでも従った。

 インフェルノカスは一旦五体に分離してからハッチを潜っていった。

 

「おっと、逃がすと思うのかい?」

「話に、飽きたのは、オイラたちも、同じだぜい!!」

 

 そのまま降下船に乗り込もうとするディセプティコンたちだが、ニヤリとニヒルに笑ったハウンドがそのままガトリング砲を発射しようとし、バンブルビーはじめオートボットたちも各々の武器を手に飛び掛かろうとする。

 無論、ホット・ロッドは鬼の形相で実兄を名乗る狂人を狙う。

 

 しかし、ガルヴァトロンは慌てず騒がず背中の装甲の裏からカードの束を取り出した。サイズはともかく裏面の柄などはミリオンアーサーが魔法剣を使った時に翳したカードと同じだ。

 宙にばら撒かれたカードから黒い光が発せられたかと思うと、一瞬にして一枚一枚がトランスフォーマーの姿に変じた。

 

 それは前傾姿勢で腕が地面に付きそうなほど長く、銀色の体に黒と青の模様がある。そして頭部は、角が二本ありガルヴァトロンのそれを簡略化しつつ獣染みた狂暴性を加えたようだった。

 

 さしずめ量産型ガルヴァトロンとでもいった趣のそれは、まさしく獣のように吠えると、オートボットたちに襲い掛かってきた。

 

「なんだ、これは!?」

「こいつらはレギオンだ! 鉄騎アーサーが自分の因子から作り出した騎士……人工生命体だ!」

 

 ミリオンアーサーはカードを翳して剣に魔法の力を宿すと、大きくジャンプして先頭のレギオンの頭部に叩き込む。

 額をかち割られたレギオンは苦痛に吠えるが、倒れるには至らない。

 

「遠慮は無用ということね、クロスコンビネーション!!」

「はああああっ!!」

 

 自分たちに向かってきたレギオンに、ネプテューヌが剣技を喰らわせて足を止めると、オプティマスが大上段から剣を振り、頭頂から股間まで真っ二つに斬り捨てる。

 両断されたレギオンの体は黒い霧のように消え去り、後には二つに裂かれたカードが残った。

 一体一体なら大したことはないようだが、何分数が多い。

 

「こいつらは足止めだ! 奴らを止めろ!!」

 

 オプティマスのその指示に、女神たちがレギオンの群れを飛び越えて降下船に乗り込んでいくディセプティコンに迫る。

 

「マジェコンヌ!!」

「やはりレギオンどもだけでは、足りぬか。ならばダメ押しだ」

 

 しかし、マジェコンヌが手元の機械を操作すると、状況が変わる。急に、刑務所の中が騒がしくなりだしたのだ。

 怒号や歓喜の声が施設の中から聞こえてくる。

 

「何をしたの!?」

「おかしいと思わなかったのか? この刑務所には結構な数の囚人がいるんだぞ。それがどうして今まで大人しくしていたと思う?」

「あなたが何かをしていたというの?」

 

 女神たちの中央に立つネプテューヌの言葉に、ディセプティコンの傍らにいるマジェコンヌは挑発も兼ねて懇切丁寧に説明する。

 

「施設内にな、アンチ・エレクトロンと呼ばれるトランスフォーマーの生体活動を阻害する物質を散布していたのさ。濃度が薄いから、動きを止める程度だったがな」

 

 それでホット・ロッドは何故刑務所がこんなに静かなのかを察した。そして今、その散布を止めたことも。

 そうなれば、囚人たちは自由になってしまう。

 

「ちなみに、牢屋の扉は開けてある。……さあ、早く鎮圧しないと、大変なことになるぞ。国民を守るのが貴様ら女神の務めだろう? 正義の味方も楽じゃないな」

「ッ! やってくれるじゃねえか。ちっとあマシになったかと思ってたが、やっぱりテメエはどうしようもねえ悪党だ!!」

「……そんな言葉は、今更だな。私は根っからの悪人だぞ」

 

 怒りに燃えるブランに、マジェコンヌはやや自虐的な笑みを浮かべる。

 しかし、女神たちは悔し気ながらもこの場での優先順位を理解していた。

 囚人たちが暴れだしたり、傷つけ合うことを止めなければならない。

 

「マジェコンヌ」

「なに、奴らなら自力で何とかするさ。……さ、一度臨時基地に戻ってから、例の場所へ向かうぞ」

 

 これは予定になかったのか咎めるように自分の名を呼ぶガルヴァトロンに肩を竦め、マジェコンヌも降下船に乗り込む。

 一瞬、立ち尽くすばかりのうずめをチラリと見て、申し訳なさそうな顔をしたが、当のうずめ以外にそれに気付く者はいなかった。

 

「待て! ガルヴァトロン!!」

()()()、ロディマス」

 

 ガルヴァトロンは自分も降下船に乗り込む前に自分を呼び止めるホット・ロッドを顧みたが、それだけだった。

 飛び去る降下船に銃を向けるホット・ロッドだが、すでに射程外だった。

 それを見たオプティマスは剣を手に持ったまま指示を出す。すでにレギオンは殲滅されていた。

 

「こちらも応援を呼んだ。人工衛星を使ってディセプティコンをマークしているので、ネプギアとビー、ドリフト、クロスヘアーズ、それにハウンドは応援と合流後、追跡してくれ。他の者はここに残り、事態を収拾する」

『了解』

「へっ! ディセプティコンを二、三人血祭にあげてやるぜ!」

 

 その命を受けて、オートボットたちが動き出す。特にクロスヘアーズはやる気を漲らせていた。

 女神とそのパートナーは、刑務所の中へ進んでいき、バンブルビーたちは飛空艇に合流するべく変形する。

 

「ネプギア、気を付けてね」

「うん、お姉ちゃんも!」

 

 短く声を掛け合ってから、姉妹は別れようとする。お互いに深い信頼あっての、阿吽の呼吸だった。

 しかし、この命令に逆らおうという者がいた。

 

「待ってくれ! 俺も奴らを追う!!」

 

 もちろん、ホット・ロッドだ。

 追跡部隊の中に自分の名がなにことに納得がいかず近付いてくる若い騎士に向けてオプティマスは厳しい声を出す。

 

「いや、お前には別の任務を与える。ミリオンアーサーたちを、プラネタワーまで護衛してくれ」

「しかし……!」

「ホット・ロッド。オプっちは、あなたに兄であるガルヴァトロンと戦ってほしくないのよ」

 

 ネプテューヌも恋人の意を汲んで説得するが、ホット・ロッドはなおのこと反発する。

 

「あんな奴、兄貴なもんか!! あいつはただの狂人だ!! 俺が……俺がメガトロンの子供なもんか! あんな……人殺しの!!」

「メガトロン?」

 

 出てきた名前とホット・ロッドの言葉の関係が理解できずにミリオンアーサーは首を傾げるが、オプティマスとネプテューヌはいよいよ目つきを険しくする。

 

「ホット・ロッド、重ねて命じる。お前はお客人たちを連れてプラネタワーに戻り、その後待機していろ」

「なっ!? 俺はただ……」

「もう一度言う、これは命令だ。……少し頭を冷やせ」

「後でゆっくり話しましょう」

 

 それだけ言うと、二人は刑務所の扉を潜っていった。

 握りしめた拳をワナワナと震わせるホット・ロッドだが、やがてガックリと項垂れる。

 

「ホット・ロッドよ、そなたと鉄騎……もとい、ガルヴァトロンとの関係をわたしは知らぬ。しかし、オプティマスの言う通り、少し冷静になった方がいい」

「分かってるよ……」

 

 痛ましげなミリオンアーサーの言葉に、ホット・ロッドは息を吐いてから頷いた。

 確かに、自分は冷静さを欠いていると納得した……自分を納得させたからだ。

 実際、前には独断専行して皆に迷惑をかけた。同じ過ちは犯せない。

 ホット・ロッドは大きく排気してから、自分の頬を両手で叩いて気分を入れ替える。

 

 くよくよしてもしょうがない。

 

「よっし! オプティマスたちに任せりゃここは安心さ! ミリアサにチーカマ、プラネタワーまで案内するぜ!」

「立ち直りが早いわね」

「良いことだ。では頼むぞ、ホット・ロッド!」

「ああ! さ、うずめも行こうぜ!」

「……ああ、そうだね」

 

 うずめはまだ困惑が晴れない様子ではあるが、ビークルモードになったホット・ロッドに乗り込むのだった。

 

 ちなみに、チーカマはまたミリオンアーサーの膝の上だった。

 

 

 

 

 

「ねえ。出遅れちゃったけど、これからどうする? 私は、ここはブランちゃんたちに任せて大丈夫だと思う」

「同感だ。逃げていった方を追おう」

「ノワールさんと一緒に戦えないのは残念ですが……これも任務だ」

「よーし! 悪いディセプティコンをやっつけに、ビーシャ行きまーす!!」

 




祝、勇者ネプテューヌ発売!!
序盤からモブが「オールハイル・フィリン!!」とか言い出して一人で笑ってました(フィリンとは例のマジックぽい幼女、敵組織のボス)
いや多分、元ネタはコードギアスの方なんだろうけど。

にしても……だからなんで、バンブルビーの公開、日本だけ3月なの? 外国に観に行けばいい? そんな時間も金もないッス。

今回のキャラ紹介

レギオン
ガルヴァトロンが自分の因子を使って作り出した人工生命体『騎士』。つまり彼の分身。
技術的な問題により獣なみの知性しか持たない量産品。戦闘員枠。
元ネタはTF史上に残る問題作、キスぷれに登場したTF。ネタバレになるが『ガルバトロンの分身』という出自は概ね同じ。

外観のイメージは、プライム版ホイルジャックのボディにシンプルにしたガルヴァトロンの頭を乗っけて、色をガルヴァトロンカラーにした感じ。
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