新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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第29話 ゴールドサァド

 人気のない山中。

 ここに、今は使われていない村があった。

 かなり古い様式の木造家屋はシダや蔦に覆われ、立派な石造りの聖堂も長年風雨に晒されて朽ちかけている。

 

 この村は、かつてディセプティコンがゲイムギョウ界に来て最初の臨時基地として利用していた場所だ。

 

 村のあちこちに着陸している数隻の降下船から分かる通り、今再びここはディセプティコンの臨時基地となっていた。

 降下船の他に、戦闘艇も村の各所に停泊している。

 

 聖堂の前の広場では、ガルヴァトロン以下ディセプティコンたちの見ている中、マジェコンヌがリモコンのような機械を弄っていた。

 

「どうだ?」

「ああ、これで大丈夫だ。グランドブリッジは問題なく動かせる……パワーが溜まればな」

 

 マジェコンヌの返事にガルヴァトロンは満足気に頷く。

 グランドブリッジとは、スペースブリッジの簡易版とでもいうべき転送装置で、次元間や星間を繋ぐことは出来ないものの、このゲイムギョウ界なら何処にでも行ける。ただし、その本体はここから離れた場所にあった。

 

「ふん! そういうのは最初から充填しておくのが常識である!」

「そう言うな、向こうで十分なエネルギーを集めるのは、一苦労なんだ……しかし、こいつがあれば、その心配もいらなくなる」

 

 オンスロートの嫌味をさして気にせず、ガルヴァトロンは傍らのピラミッド状の装置の上に手を置く。

 これはエネルギー変換器といって、電気やオイルなど様々なエネルギーをエネルゴンに変換できる装置だ。

 

 マジェコンヌは、何処からか機械的な杖のような物を取り出すと地面に突き刺した。

 

「あとは充填が済めば、自動でこのマーカーを置いた場所にグランドブリッジが開く」

「よし。……さて諸君、我々はグランドブリッジのエネルギーが充填できしだい、ここを離れる! その先では、新たな戦いが待っている! 諸君の働きに期待している!!」

 

 ガルヴァトロンは居並ぶディセプティコンに向けて宣言する。

 すると、金属生命体たちは歓声を上げた。

 

「フロンティアってワケか! よしよし運が向いてきた(テネル・スエルテ)ぜ!」

「強い奴がぎょうさんおるとええのお!」

 

 ドレッドボットが拳銃をクルクルと回し、バーサーカーは狂暴に笑む。

 

「どんなトコだろうなー!」

「どんなだっていいぜ! 暴れ甲斐がありゃあよ!」

 

 モホークは両手に持ったナイフをこすり合わせ、ニトロ・ゼウスは掌を拳で叩く。

 インフェルノカスは、合体した状態で咆哮を上げる。

 

 だが、オンスロートだけは他の者と違い興奮していなかった。

 

「……質問がある。何故、我輩たちを脱走させた? 数を揃えるなら、レギオンとかいう連中で十分なはず」

「レギオンどもは、頭が弱くてな。複雑な仕事は出来んのだ。オンスロート、お前の戦術も頼りにしているぞ!」

 

 ディセプティコンらしからぬ、朗らかな笑みを浮かべるガルヴァトロンだが、オンスロートの表情は晴れない。

 

「…………」

「では俺とマジェコンヌはちょっとした()()を済ませてくる。留守中指示はバリケードに扇いでくれ。俺も予備のマーカーを持っていくので、先に出発してくれてもかまわない」

 

 彼の猜疑に満ちた視線は、一団から離れてバリケードの肩に手を置くガルヴァトロンに向けられていた。

 

「バリケード、ここは頼んだ。いざという時は、()()()()を使え」

「了解」

 

 

 

 

 

 援軍と合流し、廃村の近くまでやってきたハウンドらは、聖堂の前からガルヴァトロンが飛び立つのを目撃していた。

 

「おい! あの野郎、どっかに飛んでちまったぞ!」

「のようだな……」

 

 クロスヘアーズとハウンドは、身を隠しながら双眼鏡……もちろん、見た目よりも遥かにハイスペック……で廃村の様子を伺っていた。

 広場では、ディセプティコンたちが山と積まれた物資や弾薬などを、降下船に積み込んでいる。

 一方で、ハウンドたちと同じようにして双眼鏡を覗くネプギアが注目しているのは、村の外周に並べられたタンクのような物だった。

 

「センサーが反応すると中身が噴き出す仕組みみたい……多分、アンチ・エレクトロンが詰まってるんだ」

「不用意に近づけば、アンチ・エレクトロンとやらが出てきて動けなくなるってワケか」

 

 ハウンドは納得した様子だった。

 トランスフォーマーの生命活動を阻害する物質、アンチ・エレクトロン。それをディセプティコンは一種の防御装置として使っていた。

 これは近づくには策が必要だ。

 

「にしてもよ、ディセプティコンどもは、どうやってあんだけの武器やらなんやら集めたんだ?」

「どうやら、その答えが来たようだぞ」

 

 戦闘艇や降下船を眺めていたクロスヘアーズが首を傾げると、ドリフトが答えた。その視線の先では、村に向かう道を一台のオンボロピックアップトラックが物資を満載して走っていた。

 その姿に、クロスヘアーズが大きく舌打ちする。

 

「デイトレーダー! あのクソ野郎がディセプティコンどもに物資を売りつけてたってワケか! 野郎、ハチの巣にしてやる!!」

「まったく、オートボットの風上にも置けぬ!! ディセプティコンともども、奴めの首を落としてくれる!」

 

 同調してドリフトも吐き捨てる。

 彼らから見て、金次第でどんな相手とも取引するデイトレーダーは、あまり好ましい相手とは言えなかった。

 

「あ、あの皆さん、私たちの目的は逮捕ですからね、逮捕! それに無茶はしないでくださいね!」

「わーってるって……まあ、応援を入れれば向こうよりこっちの方が多い。ガルヴァトロンの野郎がいなけりゃ、レギオンとかいうのも呼べないし、アンチ・エレクトロンとかも、村に入っちまえば使えないだろう。あいつらまで動けなくなっちまうからな」

 

 好戦的なオートボットたちにいよいよ冷や汗をかくネプギアだが、ハウンドはさすがに冷静だった。

 しかし、彼の言う事はつまりディセプティコンに近づけなければどうしよもない。

 そこで、ネプギアの傍に控えていたバンブルビーがニヤリとした。

 

「ねえ、みんな……いいこと、考えた」

 

 

 

 

 

 村の入口では、プロトフォームのディセプティコンが二体、見張りをしていた。

 その内の一体が、オンボロピックアップトラックが接近してくるのを目敏く見つけると、手に持ったリモコンでタンクのセンサーを切りつつも、その行く手を塞ぐ。

 

「そこで止まれ」

「おいおい、俺だよ、デイトレーダーだよ! 新しい武器を持ってきたんだ!」

「見りゃ分かるさ、墓荒らしめ」

 

 ピックアップトラックから聞こえた声に、ディセプティコンたちは唾を吐き捨ててつつ荷台の後ろに回る。

 荷台には例によって積み荷が満載されていたが、今回は防水シートが被さっていて、どんな物か見えないようになっていた。

 

「一応、どんなもんか確かめさせてもらうぜ」

「あー……構わんが、ビックリするなよ? すっごい危険で強力な奴だから」

「そいつは楽しみだ」

 

 嘲笑ったディセプティコンが防水シートを引っぺがすと現れたのは、確かに危険で強力な奴だった。

 具体的には、黄色く丸っこい造形で青い円らなオプティックの、つまりブラスターを構えたバンブルビーだった。

 

「なッ!?」

「ハロー、グッバイ!」

 

 ディセプティコンたちが何をするより早くバンブルビーは素早くブラスターを一体の顔面に撃ち込む。

 相棒がもんどりうって倒れると残る一体が仲間に連絡しようとするが、その瞬間には上空から降ってきたビームが命中して昏倒する。

 

 荷台から降りて倒れたディセプティコンの手からリモコンを奪った空を見上げたバンブルビーは、そこで銃口から煙を上げているM.P.B.Lを手にした女神態のネプギアに向けてサムズアップする。

 

「上手くいったね、ビー!」

「あたぼう、よ! よし、こちら、バンブルビー! 作戦第一段階、成功! オートボット、攻撃開始だ!」

 

 通信を受けて、近くに待機していたオートボットたちが廃村になだれ込んできた。

 先頭はもちろん、ドリフト、クロスヘアーズ、ハウンドの三体だ。

 

「イヤッハー!! 騎兵隊の到着だー! ハチの巣にしてやるぜー!!」

「早きこと風の如し、攻めること火の如し、いざ斬り捨て御免!!」

「だからー! 逮捕するんですってばー!」

「分かってるさ。あいつらは、いつものあの調子だからよ。あんまり気にすんな」

 

 いつもの通り物騒なオートボットたちを宥めようとするネプギアだが上手くいかず、ハウンドにフォローされる。

 だがそのハウンドも、ここまでくれば遠慮は無用とばかりに三連ガトリングを構えて走っていく。しかし、さすがに彼は冷静だった。

 

「三人から四人のチームに分かれて散開! ディセプティコンどもを残らずひっ捕らえな!!」

 

 その号令に、オートボットたちは村のあちこちに散っていく。

 ネプギアたちが向かうのは、村の中心部だ。

 

 一方、デイトレーダーは呆れたように溜息を吐くと、そそくさと逃げていった。

 

「じゃ、俺はこのへんで。まったくオートボットは血の気が多くて困る……ん?」

 

 その途中、デイトレーダーは何故か道端に段ボール箱が置かれているのを見つけたが、気にせず走り去った。

 段ボール箱は、デイトレーダーがいなくあった後で、誰かが中に入っているかのように動き出した。

 

 

 

 

 

 オートボットたちが村を進むと聖堂前の広場に、バリケードを始めオンスロートやニトロ・ゼウスたち、地球に跳ばされたメンバーが待ち構えていた。インフェルノカスもいるが、他の者の姿は見えない。

 

「お前らか」

「これまで、だ。バリケード!」

「大人しく投降してください!!」

 

 バンブルビーはブラスターをバリケードへと向け、その隣にネプギアが並ぶ。

 

「さあ、ディセプティコンども、ホールドアップだ!」

「潔くお縄に着けい!」

「大人しくすりゃ、命だけは助けてやるぜ。例のアンチ・エレクトロンとかいうのも、ここでは使えねえだろ?」

「どうかな?」

 

 武器を手に凄むオートボットたちだが、バリケードは手に持った機械のスイッチを押す。

 

 それだけで、状況は一変した。

 

 ハウンドは胸を押さえて地面に伏せ、クロスヘアーズは激しく咳込んで銃を手から落とし、ドリフトは刀を杖替わりにするも苦しそうに口からエネルゴンを吐き出す。

 バンブルビーも、細かく痙攣しながら中途半端に車の姿に変形しそうになった状態で地面に転がる。

 

 それは村の各所に散った他のオートボットたちも同じで、体に不調を起こし動くことが出来ない。その様子にディセプティコンたちが歓声を上げた。

 

「ッ! みんな!!」

 

 ネプギアには影響はないらしく、バンブルビーの傍に降りる。

 しかしバンブルビーは体に力を入れることも出来ず、呻くのが精いっぱいだった。

 これがアンチ・エレクトロンの効果であるのは明らかだったが、ディセプティコンたちは全く影響を受けていないようだった。

 

 バリケードは皮肉っぽい表情を浮かべて、ゆっくりと首を横に振る。

 

「残念だったな。アンチ・エレクトロンにも抗体ってもんがある。俺たちは全員、それを摂取してあるんだよ」

 

 そこでバリケードは唸り声を上げるインフェルノコンをチラリと見たが、その意味は他の者には分からなかった。

 

「おっと、動くなよ? 動いたら撃つぞ」

「……ッ」

 

 ネプギアは動ける自分だけでもと銃剣を構えるが、バリケードはじめディセプティコンたちが武器をこちらに向けてくるのを見て銃口を降ろす。

 

「こうなっちまうと、ただのガラクタだなー」

「へへへ、嬲り殺しにしてやるぜ!」

「く、クソ野郎どもが……体さえ動きゃあ……!」

 

 モホークがナイフを手にハウンドの腹を蹴り、ニトロ・ゼウスは頭を踏み付ける。

 

再戦(レヴァンツァ)できねえのは、少し残念だが……」

「ま、死ぬ時なんて呆気ないもんや」

「こ、この……ゲホゲホッガハアッ!」

「む、無念……ゲエエエ!」

 

 ドレッドボットは拳銃の銃口をクロスヘアーズに向け、バーサーカーはドリフトの頭を叩き潰すべく棍棒を振り被る。

 今やオートボットたちはプレス機に向かうコンベアに乗った廃品も同然だった。

 バンブルビーに寄り添うネプギアは、彼らを止めるべく思わず叫ぼうとした……が。

 

「止めろ、こいつらを殺すのはナシだ」

 

 それより早く、バリケードが仲間たちを止めた。

 もちろん、オンスロートはじめディセプティコンたちは意味が分からないという視線を偵察兵に向けた。

 バリケードは溜息混じりに言った。

 

「ガルヴァトロンの命令だ。オートボットが攻めて来ても、動きを封じるだけにしておけと」

正気か(エスタス・ロコ)!? 動けない敵が目の前にいるのに、止めを刺さないなんて!!」

「オイル沼に落ちたスチールジョーを叩くのがディセプティコンやろ?」

「それじゃあ、餌を前にお預け喰らったようなもんだぜ!」

「なあ、せめて手足の一本くらい斬り落としておこうぜー!」

「駄目だ。傷つけるのもナシだ。……さあ、さっさと出発準備に戻れ」

 

 ドレッドボットとバーサーカー、ニトロ・ゼウスとモホークが次々と不満を口にするが、バリケードはこれで話は終わりだばかりに指示を出す。

 しかしディセプティコンたち……特にオンスロートは納得していなかった。

 

「こいつらを生かして帰せば、いずれオートボットがこちらを追跡してくるのである!!」

「心配するな。これから向かう場所は、大気中にアンチ・エレクトロンが充満しているんだ。オートボットは絶対に追ってこれない。女神どもだって、国を遠く離れれば力を失うし、人間は……まあ、どうとでもなる。そうだろう?」

「…………」

 

 まだ納得はしていないようだが、オンスロートは両腕を降ろして攻撃しないことを意思表示する。

 他の者たちも、一応は武器を降ろす。

 

「もう一度言っておくがお前も動くなよ、プラネテューヌの妹女神。俺たちがここからいなくなるまでは、そこでジッとしていろ」

「…………どうしてこんなことを」

「さあてな。正直、俺にもよく分からん」

 

 息も絶え絶えのバンブルビーの傍にいるネプギアはバリケードを睨みつけるが、当人は肩を竦めた。

 しかし、オートボットたちやネプギアに為す術はない。

 

 その時だ。

 

「待てい、悪党ども!!」

「!? 誰だ!!」

 

 急に聞こえた声にディセプティコンたちが辺りを見回すと、聖堂の上に人影があった。

 逆光を背に立つのは、プラスチックのような質感の黄色い服を着た金髪をピッグテールにした小柄な少女だ。

 

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ! 悪を倒せとわたしを呼ぶ! わたしは正義の味方、プレスト仮め……じゃなかった、ゴールドサァドのビーシャ!!」

 

 決めポーズを取って高らかに名乗り上げるビーシャ。

 その背には二機のビットが従い、身の丈ほどもあるバズーカを担いでいる。

 場違いなその姿に、ディセプティコンたちは呆気に取られていた。

 

「なんだ、ありゃ?」

「知らねえよ」

「っていうかマジで誰だよ」

「ディセプティコンの悪党ども! このビーシャが来たからには、好きにはさせないよ!!」

 

 ディセプティコンたちが首を傾げるなか、ビーシャはビシッとバリケードを指差す。

 何とも言えない表情になるバリケードに、若干呆れ気味なオンスロートが声をかけた。

 

「おい、あれは撃っていいのか?」

「……ああー、どうだろう?」

「もういい、とりえず撃つのであるっ!?」

 

 左腕の重機関砲をビーシャに向けるオンスロートだが、ハッとなって腕を交差させ横合いから飛んできたロケット弾を防ぐ。

 

「何奴!」

「防いだか。獲物を前に舌なめずりする精神性はともかく、その反応速度は……いいセンスだ」

 

 ロケット弾の飛んできた方向を見れば、円盤状のレドームと折り畳まれた砲を備えたバックパックを背負い、右目を眼帯で隠した少女がロケット砲を肩に担いでいた。何故か、脇にカラの段ボール箱を置いている。

 可憐な容姿とは裏腹に歴戦の兵士のような冷厳とした雰囲気を纏った彼女に、オンスロートは目を見開く。

 

「き、貴様は傭兵組織の……!」

「私は傭兵ではない。これまでも、これからも」

 

 冷たく吐き捨てた眼帯の少女こと、ゴールドサァドのケーシャはロケット砲……と段ボール箱を粒子に分解し、代わりに二丁のマシンピストルを召喚した。

 ディセプティコンたちがケーシャに向けて発砲するが、彼女は大きく跳んでこれを躱し、さらに女神がそうするように円形の障壁を張って光弾を防ぐ。

 

なんだ(ケェ)、あいつらは……ッ!」

 

 ドレッドボットもケーシャに向けて銃を撃っていたが、横合いから突っ込んできた人間大の青い影に殴り飛ばされる。

 青い色のその影は、白いレオタードのような衣装を着て長い茶髪をはためかせた女性だった。

 背中に機械仕掛けの蝙蝠の翼のような物がある。

 

「不意打ち失礼!」

 

 ゴールドサァドのシーシャだ。

 不意を突いたとはいえ自分の何倍もあるディセプティコンを殴り倒す膂力はとんでもない。

 

「お、なんやもう一人おるやないかい! ぶっ潰したるでえ!!」

 

 バーサーカーはこの事態にむしろ嬉しそうにしていて、いつの間にか広場の端に気だるげに立つ銀髪に黒い服、片翼を背負った女性を見つけるや、棍棒を振りかざして向かっていく。

 その女性、エスーシャは息を吐くと片翼を羽ばたかせて飛び退き、棍棒は廃屋の壁を砕く。

 

「壁とでも戦ってろ……」

「こんダボが、またんかい!」

 

 興味なさげなエスーシャをバーサーカーは追いかけるが、ヒラリヒラリと攻撃をかわされる。

 

「なあ、ニトロ。よく分かんねえけど、とりあえずこいつら始末しとかね?」

「ああ、そうしとくか」

 

 大混乱に陥った場で、ニトロ・ゼウスとモホークは深く考えずに各々の武器をオートボットたちに向ける。

 

「ッ! させません!!」

「ギア、逃げ、て……!」

 

 銃剣を手に二体の前に立ちはだかるネプギア。バンブルビーは何とか声を絞り出すが、それ以上は動けない。

 

「へへへ、女神を切り刻むのは初めてだから、楽しみぎゃあああッ!」

 

 ナイフを手に笑っていたモホークだが、真上からバズーカ砲の弾が数発振ってきた。巻き起こる爆風に煽られて、モホークは遠くに飛んでいった。

 

「モホーク! なんだってんだ、いったい……」

「プレストキーックッ!!」

「ってぇええっ!?」

 

 攻撃してきた相手を探すべく上を向いたニトロ・ゼウスだが、その瞬間にビーシャのキックが単眼に命中した。

 激痛に悲鳴を上げて地面に転がるニトロ・ゼウスを後目に、ビーシャは綺麗に着地してバンブルビーに駆け寄る

 

「バンブルビー! 大丈夫?」

「君、は……」

「プレスト仮面、さん?」

「ぎくっ! ひ、人違いじゃないかな?」

 

 もの凄く分かりやすく動揺するビーシャに、バンブルビーとネプギアは逆に目を丸くしてしまう。どうも、あれでバレてないと思っているらしい。

 

「ぐおおおお……! このクソチビがあああ! よくもやってくれやがったなぁあああ!」

 

 と、ニトロ・ゼウスが立ち上がり怒りに燃えるオプティックでビーシャを睨む。さらに、ここまでボケーッとしていたインフェルノカスもようやっと動き出した。

 しかしビーシャは勝気な笑みを浮かべると、ビシッと指を突き付ける。

 

「ディセプティコンの悪党! このビーシャの目の黒いうちは、好きにはさせないよ!! ……変、身!」

 

 ビーシャが頭上で両腕を交差させるようにしてポーズを取ると、その体が光に包まれる。

 幼い体が、一瞬光の粒子に分解したかと思うと、丸みを帯びたキューブ状の機械に再構成される。

 

 それは眩い黄金色をしていて表面に精緻で美しい模様が刻まれ、その一面には琥珀のような黄色い結晶が埋め込まれ、その真ん中にやはり黄金色の金属で稲妻のような模様が描かれていた。

 まるでオールスパークの容れ物だったエネルゴン・キューブのミニチュアだ。

 

「え、ええええッ!?」

「どういう、ことなの……」

「なんだそりゃあ!?」

『ゴールド、オン!!』

 

 愕然とする一同に構わず、ビーシャから変身した金色のキューブは倒れているバンブルビーの胸に、稲妻模様がある面を表にして半ば埋め込まれるように合体した。しかし痛みはない。

 

 すると、不思議なことが起こった。

 

 バンブルビーの体からアンチ・エレクトロンの影響が消えて動けるようになったのだ。それどころか全身に力が漲る。胸のキューブから、未知のエネルギーが体に流れ込んでくるのだ。

 立ち上がったバンブルビーは、不思議そうに自分の手を眺めた。

 

「これは、いったい……?」

「何だか知らねえが、動けるってんなら、今度は二度と動けないようにしてやる!!」

 

 ニトロ・ゼウスはやはり深く考えるより先に左腕の機関砲を撃つが、その時バンブルビーは奇妙な感覚の中にいた。

 周りの全てが止まって……いや止まって見えるほどゆっくりになったのだ。銃弾ですら、ノロノロと空中を進んでいる。

 まるで、ホット・ロッドの時止め弾のようだ。

 

「これ、は……?」

『わたしたちは、合体したトランスフォーマーに新しい能力を与えられるんだ。わたしの場合は、超加速!』

 

 胸の機械から、ビーシャの声がした。

 

『ぶっつけ本番だけど、上手くいったね! さあ、いっしょにディセプティコンをやっつけよう!!』

「……分かった」

 

 よく分からないが、これは好機だ。バンブルビーは考えるのは天の助け……いやオールスパークの助けと思って後にすることにした。

 

 限りなく遅くなった時間の中で、バンブルビーは亀の歩みほどの速度の銃弾を易々と躱し、ディセプティコンに向かっていくのだった。

 




新年、明けましておめでとうございます。

今回のキャラ紹介

ゴールドサァド ビーシャ
突然現れた四人組、ゴールドサァドの一人。
ヒーローやロボットが大好きでプレスト仮面と名乗って人助けをしているが、それ以上にお金が好きという困った性格。
なお、本人はプレスト仮面の正体はバレていないと思っている。
原作ゲームと違い、この時点でネプテューヌとは面識がある。またオートボット、特にバンブルビーの大ファン。

ゴールドサァドは黄金に輝く丸みを帯びたキューブ状の物体『ゴールドコア』に変身し、TFと合体することで特殊な力を与えることができる。
彼女の場合は、弾丸もノロノロとして見えるほどの『超加速』を付与する。ただし連続使用できるのは一分間が限界で、それを過ぎるとある程度のインターバルが必要。
また、アンチ・エレクトロンの影響を完璧に防御できる。

キューブに変形してTFと合体、新たな力を授けるというのは、超神マスターフォースのゴッドマスターの海外版パワーマスター、およびパワー・オブ・ザ・プライムのプライムマスターが元ネタ。
能力自体は仮面ラ〇ダーのファイ〇アクセルとかクロッ〇アップとかがモチーフ(超高速を売りにしてるヒーローは多いですし……)

それでは2019年も、よろしくお願いいたします。
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