新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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地球編『使命』
第1話 遭遇


 うずめたちが暮らす街には、当然ながら銀行がある。

 中々に立派なオフィスビルの一階に位置し、ピカピカに磨かれた床とギリシャ風の柱が高級感を醸しだすそこの一角で、一人の男が銀行員相手に騒いでいた。

 四十絡みだがなかなかの男前で、体付きも歳の割りに逞しい。

 しかしこの場にTシャツとジャンパーという恰好は、社会人として微妙に問題がある。

 

「なあ、頼むよ! 説明しただろ!! 発明を完成させるためには、もう少し纏まった金がいるんだって!」

「イエーガーさん、何度も言うように当銀行としては貴方に融資することはできません」

 

 対するスーツに七三分けという分かりやすい見た目の銀行員は、死ぬほど興味無さげに事務的な対応をする。

 

「あーもう! あんたじゃ話にならん! もっと話の分かる奴を連れてきてくれ!」

「恐れながらお客様。それはこちらの台詞でございます」

 

 騒ぐ自称発明家のケイド・イエーガーに、銀行員はウンザリと息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 銀行脇の路地裏では、ビークルモードのホット・ロッドがうずめを乗せて待機していた。

 センサーの感度を上げてケイドと銀行員の会話を拾っているホット・ロッドは、溜め息のような音を出す。

 

「まったく、ケイドも馬鹿なこと言ってんな……技術者としちゃ凄腕なんだから、普通に働きゃいいのに」

「そう言うなよ、ホット・ロッド。面倒見てもらってるんだから」

 

 うずめが窘めるが、彼女も実のところは同じ気持ちだった。

 何せケイド・イエーガーという男はいい歳して発明家として成功することを夢見て、そのためにテキサスくんだりからCS社に発明を売り込むために、この街まで引っ越してきたのだ。

 結果はご察しである。

 

「その癖、大人の男として振る舞おうとするんだもんな。そりゃテッサだって出てくっての」

「テッサが出てったのは大学に通うためだろ。……シェーンと一緒に」

 

 取り留めのない会話をする二人だが、ふと車道に目をやったうずめは、向こうから変わった車がやってくるのに気が付いた。

 

 移動店舗などに使われるワンボックスカーの、トランスポルターという古い車種で、車体全体が錆に覆われフロントには鋭角的なロボットの顔のように見える奇妙なマークが描かれている。

 それが他の車を押し退けるようにして、銀行へ向かってくるのだ。

 

「なあホット・ロッド、あの車……ッ!」

 

 うずめがホット・ロッドに話しかけた瞬間、錆塗れのトランスポルターが銀行の扉に突っ込んだ。

 ガラスの割れる音が辺りに響く。

 ギョッとして固まるうずめだが、すぐに正気に戻ってホット・ロッドから降りる。

 

「また暴走車か!?」

「見てくる! ホット・ロッドはここで待っててくれ!」

 

 そう言ってうずめは急いで破壊された両開きの扉を潜り、銀行の中に入る。

 中では人々が助け起こし合ったり、スマートフォンで写真を撮ったりしていたが、トランスポルターは、受付に突っ込むようにして止まっていた。

 

 そしてケイド・イエーガーはその脇に尻餅をついていた。銀行員の方は逃げたようだ。

 

「ケイドのおっさん! 大丈夫か?」

「あ、ああ……間一髪だったが。こいつが例の暴走車か?」

「ああ、多分な。でもこんなにオンボロ車でってのは珍しいな……」

 

 冷や汗をかきながらもうずめに助け起こされつつも錆だらけの車を見やるケイドに、うずめも首をひねりながら返す。

 近頃、あっちこっちで車が一人でに動き出すという事件が起こっているが、その多くはコンピューター制御を導入した物で、こんなスクラップ寸前のオンボロが暴走するのは珍しい。

 

「オンボロとは言ってくれるな、小娘(ニーニャ)!!」

 

 その瞬間、トランスポルターはギゴガゴと異音を立てて変形した。

 車体が寸断され、移動し、組み変わる。

 そうして現れたのは、人の三倍はある恐ろしい姿のロボットだった。

 角に四つの目、下顎から突き出た牙、そして前屈みの姿勢は、ロボットというよりは地獄から来たモンスターを思わせる。

 何故か、クリスマスのイルミネーションをアクセサリーのように右腕に巻いていた。

 

「な……!?」

 

 うずめもケイドも、その姿に驚く。

 周りの人々に至っては、何が起こったのか分からずに硬直していた。

 ロボットが右手に持った拳銃らしい武器を頭上に掲げ天井に向けて一発撃つと、爆発音と共に天井に穴が開く。

 

「俺は銀行強盗だ! 大人しくしな、アミーゴ!」

「な、なんでアミーゴ!?」

 

 唐突にメキシカンなロボットにツッコミを入れるケイド。発音にも何処かスペイン語の訛りがある。

 だが、本人は気にせず銃をカウンターの向こうの銀行員たちに向けた。

 

 うずめは混乱していた。

 このロボットは多分、ホット・ロッドやスクィークスの同類だ。

 しかし、明らかに無関係な人間を害そうとしている。

 だが、この場で変身するワケにはいかない。正体がばれるのもそうだが、ケイドに迷惑がかかる。

 

「と言っても欲しいのは金じゃないぜ。……お前らの命だ!! 死ね(ムエレ)!」

「ッ! 待て!」

 

 銀行員に向け適当に銃を撃とうとするロボットに対し、うずめは弾かれたように走り出す。

 ケイドが止めようとするが、うずめは構わず拳を握りしめて突っ込もうとする。

 だがその瞬間、銀行の壁を破って新たなロボットが現れた。

 

 ロボットモードのホット・ロッドだ。

 

 ホット・ロッドは不意打ちでロボットに掴み掛かる。

 一瞬ギョッとした錆塗れのロボットだが、すぐに回し蹴りを繰り出してホット・ロッドを弾き飛ばし、拳銃を素早くその頭に向ける。

 

「遅いぜ、小僧(チコ)。その背中の銃は飾りか?」

「…………一つ、聞きたい。お前はディセプティコン、って奴か?」

「ああん? そうに決まってるだろ。こんないい男のオートボット野郎がいるかよ?」

 

 そのまま残酷な笑みを浮かべて引き金を引こうとするが、その時うずめが消火器を投げた。

 顔面に命中したそれに気を取られ、錆塗れのロボットはホット・ロッドが繰り出した体当たりを受けて床に倒れ、さらに銃を頭に突き付けられた。

 

「ッ!」

「大人しくしろ! 殺したくはねえ!」

「……ハッ!」

 

 銃口を額に押し当てられた状態にも関わらず、錆塗れのロボットは余裕を崩さない。

 

甘いな(ドルチェ)。さてはまだ戦場に出たことがねえな。……ほら、撃てよ。小僧(チコ)、男に成るチャンスだぜ? 男は殺しの一つや二つは経験しとかねえとな」

「……!」

「止めろ、ホット・ロッド!」

 

 ヘラヘラと笑うロボットに、ホット・ロッドは震える指に力を籠めるが、そこでうずめに止められた。

 

「うずめ……」

『うずめの言う通りだ。彼には色々聞きたいことがある』

 

 掲げられたうずめの腕に嵌められたラジオから、渋い男性の声がする。一党の参謀役である海男の声だ。

 確かに、とホット・ロッドは納得する。

 このマカロニウェスタン気取りの正体やら何やら、聞き出さねばならない。

 

「そんなワケだ。大人しくしな。お前一人で何をすることも出来ないだろう」

「……へッ、どこまでも甘いなアミーゴ。……()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 その言葉にハッとなった瞬間、ホット・ロッドの後ろの壁を……わざわざ壊れていない所を……突き破って、黒塗りの車が現れた。

 

 シークレットサービス仕様のサバーバンだ。

 

 サバーバンは回転灯を輝かせながらホット・ロッドに体当たりしようとする。

 間一髪、ヒラリと躱したホット・ロッドだが、やはりと言うべきかサバーバンはギゴガゴと音を立てて変形していく。

 

 やはり二本の角と四つの目、牙の突きだした下顎が特徴的だが、こちらは背筋がピシッと伸びており後頭部からドレッドヘアーのような触手が垂れており両肩からは大きな突起が生えている。

 さらに胸には白地に赤い×の字が描かれ鼻輪のような物を着けている。

 

「ザッケンナコラー! スッゾオラー! テメッコラー!!」

 

 何やらヤクザスラング的なことを叫びながら両手に持った棍棒を振りかざす姿は恐ろしげで、逃げ遅れた男がしめやかに失禁していた。

 

「大丈夫かいな、ドボやん!」

ありがとよ(グラシアス)、バーサーカー……でもその略称は止めてくれや、俺はドレッドボットだぜ」

「ええやん、同じドレッズ型のよしみや」

「……まあ、オンスロートの野郎よりは付き合い易いけどよ」

 

 何故か遠く極東の島国の、さらに西の方の方言で話すバーサーカーなるロボット。

 錆塗れのロボット、ドレッドボットは人間臭い仕草で息を吐いた。

 ホット・ロッドは新たに現れた敵に、背中からもう一丁の銃を抜く。

 二対一は、さすがにキツそうだ。

 

「なんやこん餓鬼は! ここにはオートボットはおらへんのやなかったんかい!」

「知らねえよ! 保安官(シェリフ)気取りは何処でもスカルペルのように湧いて出てくるってことだろうよ!」

「……つまり、ぼてくりかませばええっちゅうことやな!! アッコラー!!」

 

 ペッと錆の混じった痰のような粘液をドレッドボットが石の床に吐き捨てると、バーサーカーは棍棒を振り回しながら一直線にホット・ロッド……ではなくうずめとケイドに向かってきた。

 咄嗟に、ホット・ロッドは二人を庇って背中に棍棒を受ける。

 

「グッ……!」

「シネッコラー! テメッコラー!!」

 

 棍棒は情け容赦なく叩き付けられる。

 ドレッドボットはニヤニヤといやらしく笑いながら、銀行のカウンターに腰かけてそれを眺めていた。

 

「ホット・ロッド!! こうなったら……!」

 

 うずめは懐から小さい透明な結晶を取り出す。

 何か大きな宝石の欠片のようだ。

 それを握り潰そうとした瞬間、破壊された壁の穴を通って新たな影が現れた。

 

 それはやはり、巨大な人型だった。

 バーサーカーやドレッドボットよりも一回り以上は大きい。

 騎士鎧のような洗練された姿に、赤と青の炎模様が強烈な印象を受ける。

 背中に大きな剣と盾を背負っていて、見るからに強そうだった。

 

「新手!?」

 

 驚愕と絶望感に顔を引きつらせるうずめだが、そこで思いもよらぬことが起きた。

 それまでホット・ロッドの背中を打ち据えていたバーサーカーが、赤と青のロボットの方へ向かっていったのだ。

 

「オプティマァァァスッ!!」

「馬鹿! 止めろ!!」

 

 ドレッドボットの制止も聞かずに飛び掛かるバーサーカーだが、赤青の騎士は素早くその腕をつかみ、柔術の要領で投げ飛ばす。

 

「グエッ!」

クソが(ミエルダ)!」

 

 すぐさまドレッドボットが銃を撃つが、いつの間にか構えていた盾に防がれ、続いて信じられないスピードで懐まで踏み込まれて、拳を顎に叩きこまれた。

 

「な、何なんだこれは……!」

「大丈夫!? 怪我はない?」

 

 状況についていけずに茫然とするうずめだが、そこへ誰かが駆け寄ってきた。

 パーカー一枚という中々にアバンギャルドな恰好の女性で、紫の長い髪が美しい。

 染めたのでは絶対にありえない、自然な美しさだった。

 

「あ、ああ……でも、お前らはいったい?」

「通りすがりの正義の味方だよ。憶えておいてね!」

 

 微笑みを浮かべてウインクしてみせる紫の髪の女性。

 童顔ながらも色っぽい笑みだった。

 そうしている間にも立ち上がって再び飛びかかったバーサーカーがまたしても投げ飛ばされる。

 

「降参しろ、我々はお前たちを保護するためにやってきたのだ。大人しくすればこれ以上手荒な真似はしない」

 

 厳かに言う赤青の騎士……オプティマスなるロボットだが、ドレッドボットとバーサーカーは戦意を衰えさせる様子はない。

 特にバーサーカーなどは、獰猛な笑みさえ浮かべている。

 

「……致し方ない」

 

 オプティマスは背中からゆっくりと剣を抜く。

 大振りな大剣で、刀身には未知の文字が彫り込まれている。

 振ってもいないのに、リンと空気を切る音が聞こえた気がした。

 

「おうおう、やっと闘る気になったんやな! 待っとったでぇ!!」

 

 バーサーカーは狂気染みた笑みを浮かべるが、ドレッドボットは緊張しているようだった。

 赤と青の騎士の全身から、凄まじい闘気が立ち昇る。

 しかしその瞬間、丸い球体が何処からか三体のロボットのちょうど中央にコロコロと転がってきた。

 

「ッ! 手榴弾!!」

 

 オプティマスが一瞬でホット・ロッドを庇うような位置に移動して盾を突き出すのと、手榴弾が爆発し凄まじい閃光が辺りを覆ったのは、ほぼ同時だった。

 

「オンスロート! 余計なことしくさって! ここからが楽しいトコやっちゅうに……」

「馬鹿言ってないで、ずらかるぞ!!」

 

 バーサーカーとドレッドボットの声が聞こえる。

 閃光が収まると、もう二体はいなかった。

 

 オプティマスは敵の気配がないことを確認してから、視線をうずめたちの方へ向けた。

 

「皆、無事か?」

「うん、大丈夫!」

「あ、ああ……」

「どうなってんだ、あんたたちはいったい……」

 

 ケイドは混乱した様子でオプティマスを見上げた。

 堂々とした態度の機械の騎士は、顎に手を当てる。

 

「ふむ、どう説明したものか。まず、私は……」

 

 その時、建物の外からパトカーのサイレンが聞こえてきた。

 

「……まずは場所を変えよう。人目に付くのはマズい。もう手遅れかもしれんが」

「それなら、俺の店にいこう。街から少し離れてるし、ああー……あんたらみたいのを匿うのには、慣れてる」

 

 うずめに助け起こされたケイドの言葉に、オプティマスは厳かに頷き、それから床に座り込んでいるホット・ロッドに手を差し伸べた。

 

「よくやった戦士よ。無辜の民を守るのが我ら、オートボットの務めだ。後は慎重さを身に付けるべきだな」

「オート、ボット……俺が?」

「おや、違ったのか? そう言えば、見覚えのない顔だ。登録されているオートボットの顔と名は全て把握しているはずだが……戦士よ、君の名は?」

 

 問われて、ホット・ロッドは圧倒されつつも発声回路から声を絞り出した。

 

「お、俺は、オッド・ルード」

「ふむ、オッド・ルードか」

「い、いやオッド・ロッド……ああもう、肝心な時にフランス訛りが出た! ヤんなるぜまったく!」

 

 どういうワケかホット・ロッドはフランス語の訛りが出ることがある。

 必死に音声設定を直し、ようやく正しく発音する。

 

「……ホット・ロッドだ」

「ホット・ロッド。私はオプティマス。……オートボット総司令官オプティマス・プライムだ」

「オプティマス・プライム……あんたが……!」

 

 差し出されたオプティマスの手を取ると、その手は大きく、力強かった。

 




あとがきに変えて、キャラ紹介

銀行強盗犯ドレッドボット
元ディセプティコンの監察兵。
平和に馴染めず、ゲーム感覚で銀行強盗を繰り返していた。
拳銃の使い手で、その腕は中々の物。
原作だと台詞が一言もないヒト。
スペイン語混じりに話すのは、拳銃使いの銀行強盗犯→西部劇の悪役→マカロニウェスタンの悪役という連想から。

殺人鬼バーサーカー
元ディセプティコンの監察兵。
かつは恐れ知らずの狂戦士として名を馳せ、メガトロンからも一目置かれる武勇の持ち主だった。
この二次では、大量殺人は未遂に終わっている。
原作だと出オチ要員なヒト。
関西弁とヤクザスラング混じりに話すのは、狂暴な殺人犯→武闘派のヤクザという連想から。いわゆるネチネチしたタイプの殺人鬼とは違う気がしまして。
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