新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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平成最後の更新になります。なんとか間に合いました。


第42話 スカリトロン

 キスすることでくろめと融合し、さらに支援メカ、ファイアローダーと合体することでスーパーモードになったホット・ロッドと、ガルヴァトロンがブリテンの地で再び対峙する。

 前と違うのは、ホット・ロッドが怒りに飲まれず強化された己の身体を完全にコントロールしていることだ。

 

 レーザーライフルから放たれる光弾を切り払いながら迫るガルヴァトロンをヒラリと躱し、新調した剣を抜いて斬り返す。

 二振りの剣がぶつかり、金属音と共に火花が散る。

 

「そんな付け焼刃の力で、この俺と勝てると思うのか!!」

「試してみるさ!!」

 

 鍔迫り合いからの斬り合いは、五合目にしてホット・ロッドが相手の肩に一太刀浴びせることになった。

 

「ッ!」

「前も思ったんだけどな、あんた剣の腕はそこまで大したことないな!!」

「言ってくれる……だが、そちらの()も大したことはないようだ」

『ロディ! 剣が!!』

 

 頭の中で聞こえるくろめの声に手の中の剣を見れば、刃がこぼれ刀身にひびが入っている。

 

「嘘だろ!? これ重合金製だぞ!」

「だからどうした! 量産品とはいえ、こちらは聖剣だ!」

「いや量産品の聖剣って時点で可笑しいだろ!!」

 

 叫ぶホット・ロッドに向かってガルヴァトロンが再び斬りかかってきた。

 それを後退することで躱すと、背中のウィングを広げ足裏からのジェット噴射で飛び上がる。

 

「飛べるのか!?」

「へへ、この前は気付かなかったけど飛べるってのは悪くない気分だな」

「小癪な!!」

 

 ガルヴァトロンも飛び上がり両腕から稲妻を放つと、ホット・ロッドは相手を挑発しながらレーザーライフルと腕に備え付けの三連フォトン・レーザーで応戦する。

 

 ドリフトは分身と共にレギオンと戦いながら、それを見上げていた。

 

「あの姿、やはり奴はメガトロンの……」

『余所見をするな』

「言われずとも。頼んだぞ、分身!!」

 

 影から生まれたドリフトの分身はニヤリと笑うとレギオンを脳天から股間まで真っ二つに斬り捨てる。

 気のせいか、前よりも色濃い黒になり目も赤く輝いている。

 

「お嬢ちゃん! あれやれるか?」

「任務了解。デストロイ・ゼム・オール!!」

 

 襲い掛かってくる量産型ガルヴァトロンだが、ハウンドの胸にキューブ状のゴールドコアに変身したケーシャが合体し、三連ガトリングが火を噴く。

 

「ボス、ボス! 形勢不利じゃねえ!?」

「粘れ! 後続が到着すればこちらの勝ちだ!!」

 

 クロスヘアーズと空中戦を繰り広げるニトロ・ゼウスの叫びに、空中でホット・ロッドと撃ち合うガルヴァトロンは徹底抗戦を命じる。オンスロートたちが追い付けば、ブルーティカスに合体して一気に戦況をひっくり返せる。

 それはオートボット側、特にハウンドはよく分かっていた。

 

「坊主! そろそろ退き時だ!!」

「分かった! あんた、話が通じるかは分からんが、立てるか?」

 

 ハウンドに援護されて飛竜の傍に着地したホット・ロッドに声をかけられて、飛竜は何とか目を開くと口を開いた。

 

「がならんでも聞こえておる……若造」

「喋れたのか」

「他に詩も諳んじることも出来るぞ……生憎と立つのは無理そうだが」

 

 割れた鐘の音のような声での返事に、ホット・ロッドはすぐに後方で降下船を待機させているネプギアに指示を飛ばす。

 

「ネプギア! こちらに降下艇を回してくれ! みんなは降下艇が敵に狙われないよう援護を!」

『了解です!』

「やれやれ、空飛ぶトカゲのために命を張るかね!!」

 

 例によって悪態を吐きながらも、クロスヘアーズは降下船を守るために敵の戦闘艇を引き付ける。大人げない彼だがこういう時は頼りになった。

 魚のようにも見える降下艇『スターバック』がすぐ飛竜の真上にやってくると、船底からトラクタービームを照射して飛竜を持ち上げようとする。

 通常のトランスフォーマーの倍近い大きさの巨体だが、それでもゆっくりと浮上していく。

 

「悪い、ちょっとジッとしててくれ」

「ロディマス、させんぞ!!」

「こっちの、台詞!!」

 

 弾幕の中を突っ切って、ガルヴァトロンが降下しようとしてくる。余裕がなくなっているのか、決別したはずの弟の名を、少なくとも彼がそう思っている名を叫ぶが、次の瞬間には黄色い閃光となったバンブルビーのジャンプからの体当たりを受けて怯む。

 その声に反応したのは呼ばれた本人でもオートボットの誰かでもなく、飛竜だった。

 目を見開き、レーザーライフルを撃っているホット・ロッドの方を見る。

 

「ロディマス? それがお前の名か?」

「ああ……そう呼ぶ奴もいる」

 

 複雑そうな顔をするホット・ロッドだが飛竜の顔は驚いたような色から、次いで感極まったような喜びの表情へと変わった。

 

希望を継ぐ者(ロディマス)……! そうか、お前がそうか! マーリンめの予言は当たったか!!」

 

 突然豹変した飛竜とその口から出てきた名を訝しむホット・ロッドだが、今は退くことを優先する。

 このまま飛竜はオートボット側が確保するかに見えたが……こでさらに場が混沌とすることが起こった。

 突然、飛竜の傍に、光の渦が現れた……グランドブリッジが開いたのだ。

 ホット・ロッドはディセプティコンたちの仕業かと思ったが、ガルヴァトロンも驚いた様子ところを見ると違うらしい。

 

「コウモリアマモリオリタタンデワレチュー……」

 

 渦の向こうから、不気味な呪文と蝙蝠の鳴き声のようなキキキ……という音が聞こえてきた。

 それを聞いた瞬間、戦っていたハウンドとドリフト、空中にいたクロスヘアーズがハッとする。これらに聞き覚えがあったからだ。

 

「この呪文は……!」

「馬鹿な! ()は死んだはず!!」

「墓の下から戻ってきたってのか!?」

 

 忘れようはずもない。

 遠く惑星サイバトロンの地下深くの暗がりが、三人の脳裏に過った。

 催眠効果を持った音波の効果が現れたのは、オートボットやディセプティコンではなく、降下艇に回収されようとしていた飛竜だった。

 

「ぐ!? ぐ、ぐ……」

「! おい、どうしたんだ!!」

「ぐ、ぐおおおおおお!!」

 

 苦しそうに呻いていた飛竜は、突然ギゴガゴと音を立て錆塗れの装甲と巨躯はそのままに人型へと変形する。

 騎士甲冑を思わせる姿だが脇腹や顔面の外装が破損しており、人間の骨格にも似た内部フレームが剥き出しになっている。

 その姿は映画やゲームに登場するような鎧を着た骸骨を思わせた。墓所や古城に潜み、侵入者を襲う怪物だ。

 

「おのれクインテッサの手下どもめが! このスカリトロンは倒れんぞおぉおおお!!」

 

 トラクタービームを振り切り、腰に下げた長短二振りの剣を抜くや、飛竜……スカリトロンは目の前にいたホット・ロッドに向け振り下ろす。

 咄嗟に跳んでそれを躱したホット・ロッドだが、突然襲ってきた騎士に混乱する。

 

「何するんだ!!」

『どうやらこの音に催眠効果があるようだね』

 

 冷静な声のくろめだが、そうしている間にもスカリトロンは、渦に向かってまるで吸い寄せられるように歩いていく。

 

「何だか分からんが、ここまで来て逃がしてなるか! 奴を止めろ!!」

「了解!!」

 

 レギオンの群れに敵を任せ、自らもスカリトロンに向かうガルヴァトロンの声に、バリケードが三名ほどの兵士を率いて突っ込んでいく。

 しかし、黄色い閃光にまとめと蹴り倒された。

 

「ぐぉッ!!」

「お先! ……さあ、ちょっと大人しく、してね」

「ぬうう! 羽虫めが!!」

 

 バンブルビーは高速移動で、剣撃を掻い潜ってスカリトロンに肉薄すると、その周囲を動き回って翻弄し動きを止める。

 

「よし、このまま……ッ!!」

 

 しかし、突然、グランドブリッジの渦の向こうから光線が飛んできた。

 その光線に当たってしまったバンブルビーの身体が凍り付き、これまでの速さが嘘のように遅くなっていく。

 

「な!」

『冷凍光線!?』

「バンブルビー!!」

 

 ホット・ロッドやガルヴァトロンたちもスカリトロンの方へと向かうが、同じように渦から飛び出してきたミサイルによって阻まれる。ミサイルは瞬間的な爆発の威力より特殊な薬剤の化学反応により超高熱の炎を長く起こさせることに念頭を置いた焼夷弾であるらしく、その熱はトランスフォーマーにもダメージを与える物だった。

 氷と炎越しに、バンブルビーは光の渦の向こうに立つ者の姿を見た。

 赤と青の人型の金属生命体のシルエット、蝙蝠のような物、人間大の物など五つほどの影が見えるが、その中でも中央に立つ者の姿は比較的鮮明だった。

 

 赤と白のヒロイックなカラーリングで、背中に翼を備え、胸に戦闘機の物らしいキャノピーがある。

 顔は飛行士のマスクのような形状をしており、腕にあるビーム砲の砲口が、青白く光っていた。

 

 その姿を見止めた瞬間、バンブルビーは目を見開いた。

 

「お前、は……!」

 

 それに気付いているらしい赤白のトランスフォーマーは、目元を嘲笑の形にしていた。

 纏わりつく炎と熱に両軍が怯んでいる間に、スカリトロンは呪文に導かれるようにして渦の中へと入っていく。

 

「おお……! ()()()()、友よ。久しいな……」

「!?」

 

 グランドブリッジが閉じる寸前、スカリトロンが足元の人間大の影に向かって懐かしそうにそう呟くのを、ホット・ロッドは確かに聞いた。

 光の渦が消失し炎も鎮火すると、後に残されたのは目的を見失ったオートボットとディセプティコンだけだった。

 ガルヴァトロンはグランドブリッジが開いていた空間とホット・ロッドを交互に見た後で、声を絞り出した。

 

「……退くぞ。鍵捜索には別の手を使う」

「了解」

 

 バリケードも頷き、ディセプティコンたちは引き上げていく。

 

「こっちも引き上げだ。色々情報を整理したい」

「おう。さあ野郎ども、引き上げだ!!」

 

 ホット・ロッドの指示にハウンドが号令を飛ばす。

 オートボット側もこれ以上戦う意味はなく、後続のディセプティコンとかち合うのは避けたかった。

 

「誰かバンブルビーを解凍してやれ!!」

「その、必要は、ない!」

 

 バンブルビーは全身を高速で振動させることで、熱と衝撃を生み出し自分を覆う氷を砕く。

 

『あービックリしたー!』

『ビー、ビーシャさん! 大丈夫ですか!?』

『うん、わたしはへっちゃら! ビーは大丈夫? ……ビー?』

 

 通信でのネプギアの呼びかけと頭の中のビーシャの声に、バンブルビーは答えなかった。

 ただ、グランドブリッジが開いていた場所を……その先にいた相手を、激しい怒りの籠った目で睨んでいた……。

 

  *  *  *

 

 それからしばらくして。

 ウェイブリーの屋敷の前では、くろめとケーシャの前にホット・ロッドが仁王立ちしていた。当然の如く、今回のことに怒っているからだった。

 

「くろめ、何でこんなことをしたんだ?」

「そ、その情報を得るにはアイツらに直接聞くのがいいかと思ったんだ」

 

 やはり怒っていた相棒に、くろめはオズオズと答えた。

 声こそ静かなホット・ロッドだが、同時に表情に怒りが滲んでいた。

 

「俺が言えた義理じゃないが、君たちの行動は皆を危険に晒した。とても許せるようなことじゃない」

「お言葉ですが、私たちはしっかりと情報を入手しました。それで帳消しにはなりませんか?」

 

 ケーシャは少し緊張した様子ながらも、反論する。

 クインテッサのことやスカリトロンの件など、彼女たちの得た情報は実際に大きな価値のある物だ。

 だが、ホット・ロッドはさらに表情を険しくする。

 

「ならない。そんな情報より君たちの命の方がずっと大切だ」

 

 一切迷いなく言い切る姿に、近くにいるクロスヘアーズがヒュウと口笛を吹く。

 ハウンドも困ったような顔でケーシャを見下ろす。

 

「それにな、そんなスタンドプレーをされたら皆困っちまう。俺たちは一応とはいえチームなんだ。兵士としてまずは……」

「……私は兵士ではない!!」

 

 急の男っぽい口調でドスの利いた声を上げるケーシャに、ホット・ロッドとハウンドは目を丸くし、隣のくろめはビクリとする。

 そんな周囲の様子にハッとなったケーシャは、慌てて頭を下げる。

 

「も、申し訳ありません。以後気を付けます」

「そういうこと言う奴は、大抵反省しないんだが……」

「なんにせよ、罰も兼ねてこれから君たちのことは監視させてもらう。君たちの通信機にGPS機能をアップデートさせてもらった。生体反応をこちらでモニターする機能もだ」

 

 この年頃の少女を扱いかねているハウンドが溜息を吐くと、ホット・ロッドは厳しく言う。

 くろめとケーシャの、通信装置はそれぞれ左手首のヴィジュアルラジオと右手首のリストバンドに仕込まれている。

 新しい機能を使えば、彼女たちの位置も、装置を着けているかも分かるようになった。

 

「許可なく外した場合はさらなる罰則を科す……かもしれない」

「……仕方ありません」

「…………」

 

 不承不承というのが顔に出ているものの、この決定を受け入れたケーシャに対し、くろめは何だか恥ずかし気だった。

 

「くろめ?」

「その、これって何処にいるかすぐに分かっちゃうんだよね?」

「そうなるな」

「つまりその……着替えとか、お風呂とかも……」

「ッ! ああ、いや盗撮とか盗聴は出来ない! 本当だ!! そりゃあ、何処にいるのか分かれば何をしてるのかはだいたい察しが……あ゛あ゛―! いや違うんだ、決して邪まな気持ちで監視機能を付けたワケじゃあ……」

 

 頬を染めてのホニャホニャした感じの言葉にホット・ロッドがしどろもどろになるのを見てハウンドは苦笑する。オプティマスの真似をして厳しくしてみたようだが……もちろん怒っているのも本当だろうが……すぐにこうして地が出るあたり、やはり何と言うか『若さ』を感じる。

 ケーシャも微笑ましい物を見るような顔をしていた。

 

「さてとだ、隊長さんよ。そろそろ本題に戻ろうや」

「え? あ、ああそうだな。杖と鍵の探索を再開しよう!!」

 

 実質的な副官であるハウンドに話を振られて、ホット・ロッドは誤魔化すように話題を変える。

 重かった少しは空気が軽くなったと、ハウンドは苦笑いをするのだった。

 

 

 

 

 

「で、結局ここに戻ってきたワケだけど」

 

 くろめは少し息を吐く。

 ウェイブリー家のエントランスホールで、くろめとネプギア、ゴールドサァド、そしてここに待たされていたミリオンアーサーとチーカマが揃っていた。

 正確には、空中に浮かぶ球体型の装置から投射されている立体映像のオートボットたちもいる。

 もちろん、いったん情報を整理するためだ。

 

「クインテッサねえ……」

「追放され、忘れ去られた神か」

「ミリアサさん、知っていますか?」

「いや、初耳だ……」

 

 シーシャとエスーシャが難しい顔をし、ネプギアがこの国出身の王候補に聞くが、彼女は首を横に振った。

 

『その者が本当に最初の13人の一柱、クインタス・プライムだとしたら、何故地球を滅ぼそうとするのだ? あの泥の星に何がある?』

「そこまでは……」

 

 ドリフトの疑問に、くろめは言葉を濁す。マジェコンヌもそこまでは知らないようだった。

 有り得そうなのは復讐か、あるいは恐ろしい秘密が、あの混沌とした世界に隠されているのだろうか?

 

「それにしてもスカリトロン……まさか、伝説の巨人の騎士の一人が、あのような場所で眠っていたとは……」

 

 ミリオンアーサーが低い声で呟く。

 帰ってきた一同から話を聞いた時、彼女は眼玉が飛び出るような気分だった。初代アーサー王に仕えたという12人の伝説の騎士の一人として知られる名が出てきたのだから。

 彼女にしてみれば、伝説の登場人物が実家のすぐ近くにいたということが驚きだった。

 

『何にせよ、杖をガルヴァトロンたちより先に見つけるっていう当初の目的は変わらないな』

『で、あの錆塗れの大トカゲが情報を持ってたんだろ! 詰んでんじゃねえか!』

 

 クロスヘアーズがイライラと言うとホット・ロッドは顎に手を当てる。

 

『スカリトロンが何処にいるかは分からないが……()()()()()は分かってる』

「コグマン、確かに彼がそう言うのを聞いた」

「それって、ワレチューさんたちを助けに来た、ヘッドマスターのヒトですよね」

 

 相棒の言葉を継いだくろめに、ネプギアが確認する。

 以前にプラネテューヌでスペースブリッジ『ビヴロスト』にハッキングを仕掛けたワレチュー。それを迎えにきたコグマン。マジェコンヌのスペースブリッジのデータを奪っていったシックスチェンジャーでありヘッドマスターのステマックスら、目的の見えない一団。

 

 彼らがスカリトロンを連れていったとホット・ロッドは考えていた。それが指し示すことは一つだ。

 

『オートボットでもディセプティコンでもない第三の勢力が、何故かは分からないが杖を狙っている』

「ああー、いよいよ話がゴチャゴチャしてきたね。もっとこう、スカッと爽快にいかないもんか」

 

 シーシャが頭痛を堪えるように後頭部を掻く。

 そこでふと、ホット・ロッドは思い出したことがあった。

 

「そう言えばシーシャ、さっき何か気になる物を見つけたって言ってたな」

「ああ……本の巻末にちょっとしたことが書いてあってね。こいつさ」

 

 シーシャは部屋の脇にある机の前まで歩くと、その上に置かれた本を取った。やはり重々しい装丁のハードカバーの本で、彼女が蔵書庫からここに移した物だ。

 

「マルジンの夢物語……作者不明の童話集だな。動物に変身する戦士たちの戦いや、子供と巨人の冒険譚が書かれている。ブリテンでは広く読まれている本だ」

「うん。で、この本の一番最後!」

 

 後ろから覗き込むミリオンアーサーの説明に相槌を打つと、シーシャは皆に見えるように巻末の部分を広げた。

 

『ベイドン山の下、炎の上に湖の乙女が訪れるとき、扉は開く』

 

 書き足されている一文を見たミリオンアーサーは酷く驚いた様子だった。

 

「これは……父上の字だ!」

「ビンゴ! ってことは、やっぱりこれがヒントなんだろうね!」

『だがよ、つまりどういう意味なんだこれは? あの山に行けってか? それに炎の上? バーベキューでもしろってか?」

 

 ガッツポーズを取るシーシャだが、立体映像のクロスヘアーズは顎を撫でながらしかめ面をする。

 すると、ネプギアが控えめに声を上げた。

 

「それなら……ひょっとしてあそこのことかも」

 

 

 

 

 

 ネプギアに連れられて一同が移動したのは、元はパーティーホールだったらしいコレクションルームだ。相変わらず様々な工芸品や美術品が置かれているが、中でも目立つのは立派な暖炉の上に飾られた大きな絵画だ。

 三本首の竜とアーサー王が描かれたそれの下にあるプレートには『ベイドン山の戦い』という絵の題名が刻まれていた。

 

『なるほど、ベイドン山の下、炎……暖炉の上か』

「いかにもにして、仕掛けがありそうだな」

 

 ドリフトが納得したように頷くと、エスーシャも呟いた。

 

「後は湖の乙女だが……」

「まあこの場合は、わたしだろうな……」

 

 ミリオンアーサーは何処か暗い表情で言った。

 全員の注目が集まると、代わってチーカマが説明を始めた。

 

「ミリアサの本名はね、アーサー王伝説に登場する『湖の乙女』という妖精のような存在にちなむのよ。……まあニムイーもなんだけど」

 

 つまり、『ベイドン山の下、炎の上に湖の乙女が訪れるとき、扉は開く』というのはミリオンアーサー……ヴィヴィアンがこの場所にやってきたらという意味だ。

 しかしミリオンアーサー本人は、悪い冗談を聞いたような顔をしていた。

 

「しかしな、晩年の父上は半ば正気を失われているようだった。その言葉にも大した意味はなかろう」

『…………』

 

 全員が沈黙する中、何処か誤魔化すような笑みを浮かべながらツカツカと暖炉の傍まで近寄ると、その上に置かれた木彫りの置物を手に取る。

 

「父上はこのような古く珍しいが何の力も持たぬ物、老婆が幼子に語って聞かせるような寝物語を愛していた。それらを集めるために長く家を空け、先祖代々の資産を潰すほどだ」

 

 そして置物を持つのとは反対の手を、ちょうどそれが置かれていた場所……()()()()()()()()()()()に何気なしに置いた。そこには、小さな金属の円盤ような物が嵌め込まれていて、ミリオンアーサーの遺伝子情報を一瞬でスキャンした。

 

「ふふふ、そもそもわたしはこの家で生まれ育ったのだぞ? 隠し扉だの隠し部屋だの、そんな物があれば知らないはずが……」

 

 すると、暖炉に小さく青い電光が走った。

 次いでギゴガゴと音を立て、暖炉の石が組み変わっていく。

 硬直しているミリオンアーサー以外が咄嗟に武器を構える中、暖炉はポッカリと開いた地下への入口に姿を変えていた。長い石の階段が闇の中へと伸びている。

 

『遺伝子認証だ……』

「断絶の時代の技術だわ……」

 

 そう呟いたのは、ドリフトとチーカマだった。

 つまりこの入口はウェイブリー家の人間……ミリオンアーサーにしか開けられないようになっているのだ。

 まさしく、あの文章の通りに。

 

「どうやら……」

 

 まだ愕然としているミリオンアーサーに向かって、くろめはこちらも呆気に取られながらも呟いた。

 

「生まれ育った家でも、知らないことというのは、あるものらしいね」

 




今回のキャラ紹介

騎士スカリトロン
かつてクインテッサを裏切り、アーサー王に仕えた12人の巨人の騎士の一人。ワイバーンに変形する。
『竜の洞窟』と呼ばれる施設に眠り、その場所を守っていたがステイシス・ロックが不完全だったためアンチ・エレクトロンの影響を受け、錆び付いたアンデットが如き無残な姿になってしまった。
それでも戦闘力は高く、ディセプティコンが彼を捕えた時にはブルーティカスを繰り出す必要があったほど。
戦闘では二振りの剣を用いる。

何て言うか、玩具まで出たのに原作での扱いがあんまりだったので出しちゃった人。

まだ名前が出てない彼が炎と冷凍の技を使うのは、アニメイテッドネタ。

それでは皆さん、令和もどうぞよろしくお願いいたします。
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