新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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第45話 ビーシャ・ブルース

「……オーケー、一度状況を整理しよう」

 

 ユーリズマの街の近く、着陸した降下艇の前で、くろめは頭痛を堪えるように眉間を指で揉みながら口を開いた。

 そろそろ、日も傾いてきている。

 

「まず、オレたちはこのユーリズマに遺物を探しにやってきた。で、そこでディセプティコンと出会った。ここまではいい。どうやってかは分からないが、連中も遺物のことを突き止めたんだろう」

 

 ゆっくりと歩きながら、これまであったことを並べていく。

 

「で、ディセプティコンの新顔と何か因縁があって、堪えきれなかったビーがあの航空参謀擬きに突っかかって、結果街の人たちに大迷惑をかけた。……この時点で、大問題だ」

 

 努めて冷静であろうとしているが、その声には怒りが滲んでいる。

 あの後怒り心頭の指揮者バッソは、両軍に街からの退去を命じ、残る指揮者のアレグラもそれに反対はしなかった。

 まだ街にいられるのは、指揮者ゼボップが二人を説得してくれたからだ。

 アレグラの屋敷にいるのだろうディセプティコンたちも、遺物回収が出来ずに困っているはずだ。

 

「さらに、()()()()()()()ビーが子供になってしまった、と……いやふざけんなよ!!」

 

 一番の問題点を口にした瞬間、くろめは堪えきれなくなって咆哮した。

 

「有り得ないだろ!? なんでもアリにも限度ってもんがある! いい加減にしろよトランスフォーマー!!」

 

 一しきり絶叫した所で、肩を落として荒く呼吸する。

 そんな相棒の様子に、ホット・ロッドは酷く責任を感じているらしい顔をしていた。

 遺物探しが困難になったのもそうだが、それ以上に街に被害が出たこと、そして自分が怒れるバンブルビーを止められなかったことが、彼の心を苛んでいた。

 それを理解しているからこその、くろめの怒りでもあった。

 

「で、その黄色いアンチクショウはっていうと!!」

 

 くろめがギロリと睨むと、降下艇の影で黄色い影がビクリと震えた。

 

 黄色くて丸っこい造形に、ホット・ロッドよりも二回りは小さい体。

 渦中のヒト、小さくなったバンブルビーだ。

 胸に丸いヘッドライトやボンネットがあり、背中にはタイヤと昆虫の羽根のように配置された後部座席の窓部分があるが、御馴染みのカマロではなく別の車の特徴が現れていた。

 耳のようなパーツをしおれさせ、幼くなった顔に迷子のような不安を浮かべている。

 

 彼はその肉体ばかりか、精神までもが外見相応に退行してしまい、丸っきり子供になってしまったのだ。

 

「くろめさん、落ち着いて……ビー、怖がらなくていいんだよ」

 

 ビクビクとするスモール・バンブルビーを安心させようと、その頬をネプギアが撫でる。

 バンブルビーはちょっと安心したようだったが、くろめはその姿にイライラとした視線を向ける。

 

「ぎあっち! いくらなんでも甘すぎだよ!」

「でも、こんな状態のビーに怒っても何にもならないじゃないですか!」

「オレだってこんなこと言いたくないけど、そいつが復讐に憑りつかれたせいで……」

 

 そこまで言って、くろめはバツが悪げに黙り込んだ、

 復讐や恨み云々は、言えた義理ではないからだ。

 ホット・ロッドは深く追求せずに大きく排気した。

 

「元に戻す方法は……」

「分かりません。ただ、こうなった原因がビーシャさんとの合体にあるのなら、もう一度合体すればあるいは……」

 

 ネプギアの答えは、雲を掴むような話しだった。

 しかもビーシャはあの後、姿を消している。

 正義の味方を目指す彼女してみれば、今回のことは相当にショックだったらしい。

 グッとホット・ロッドは拳を強く握る。

 人々に迷惑をかけ、さらにはチームを纏めることも出来ない。

 やはり自分は、オプティマスのようにはなれないのか?

 

「とにかく、まずは手分けしてビーシャを探そう……」

 

 

 

 

 夕日が照らすなか、ビーシャは一人、街の外にある泉の畔に座り込んで膝を抱えていた。

 バンブルビーに合体を要請されたあの瞬間、何としても止めるべきだった。しかしあの時、情報員の激情を見たビーシャの頭は真っ白になっていた。

 

 一人悩むビーシャの横に、いつの間にかバンブルビーが立っていた。その脇にはネプギアも佇んでいる。

 彼らが一番速くビーシャのことを見つけたようだ。

 

「ビー、ネプギア……ごめん、もう少し一人にして」

「ビーシャさん……」

 

 心配そうに電子音を鳴らす情報員から、ビーシャは目を逸らす。まだ彼と話す気にはなれなかった。

 その感情を、上手く言葉にすることも出来なかった。

 

「ビーシャさん、ごめんなさい」

「なんでネプギアが謝るのさ。悪いのはわたしだよ。考えなしに合体しちゃって」

「いえ、私があの時、止められていたら……」

 

 お互いに思い詰めた顔をする女神とゴールドサァドの姿に、バンブルビーは悲しそうに電子音を鳴らし、それから何かを想いついたような顔で自分の腹の部分を弄った。

 そこにはカーステレオが嵌め込まれており、軽快な音楽が流れだす。

 

「これって……」

「5pb.さんの、『Dimension tripper!!!!』?」

 

 今もゲイムギョウ界のトップシンガーである5pb.の持ち歌に合わせて、ビーはステップを踏む。

 これを聞いて仲直りして元気を出してほしい、ということだろう。

 子供っぽいながらも確かな思いやりに、思わずビーシャとネプギアは薄く微笑んだ。

 

「ありがとう、優しいんだね……」

「うん。少しだけ元気が出たよ」

 

 その様子に、バンブルビーはピーブ音を鳴らして、彼女の脇に座り、反対側にネプギアも腰を下ろす。

 一緒に泉を眺めながら、ビーシャはなんとなしに口を開いた。

 

「わたしさ、正義の味方になりたかったんだ……お父さんとお母さんが死んじゃって、凄く寂しくと悲しくて、テレビのヒーローがわたしの支えだった」

 

 何処か懐かし気に、ビーシャは口元をほころばせる。

 

「ビーのこともテレビで見たんだ。……この世界には、作り物じゃない本物のヒーローがいたんだって、本当に嬉しかった。……だから、わたしもヒーローになろうって、そう決めたんだ」

「ビーシャさん……」

 

 こんな時だが、ネプギアは少し嬉しかった。愛する弟が、一人の少女に希望を与えた。それはとても素敵なことだ。

 そのころのことを覚えていなくてごめんと、バンブルビーは電子音で謝った。

 静かにビーシャは首を横に振る。

 

「ううん、わたしの方こそごめんなさい。わたし、あなたに理想のヒーロー像を押し付けてたんだと思う」

 

 その脳裏に、前にネプテューヌが前に言っていたことが思い出されていた。

 モンスター恐怖症だった彼女は、紫の女神に協力してもらいそれを克服するための特訓をしていた。

 

「ねぷねぷが言ってたんだ、『誰にだって得意不得意はあると思うんだ。けどそれって仲間同士で補えあえばいいだけの話でしょ?』って。そうだよね、みんな違うんだもんね」

 

 それは一人で何でも背負い込もうとする総司令官に少しでも幸せになってほしいと願い、自分もまた柄にもなく背負い込んでしまって友人たちに助けられた、ネプテューヌだからこその台詞だったのだろう。

 

 その告白をネプギア、そして近くの木々の裏に隠れてホット・ロッドとくろめも聞いていた。

 三人はそれぞれ、ここにはいない紫の女神の言葉に、そしてビーシャの告白に、感じる物があった。

 ホット・ロッドはみんな違うと言う部分に、くろめは理想の押し付けに、そしてネプギアは仲間同士補い合うという部分に。

 

「わたしはあなたに期待するばっかりで、補うことが出来なかった……ヒーロー失格だよね」

「そんなことありませんよ」

 

 力無く笑うビーシャの手をネプギアは握り、その目を真正面から見つめる。

 

「ビーシャさん、前に言っていたでしょう。ヒーローは一回負けてからが本番だって。だから、今度も大丈夫です。……駄目でも、その時は私たちが助けます」

 

 ビーシャはギュッと自分の手を握るネプギアの姿に、確かにネプテューヌの面影を感じた。

 やはり、この少女は女神なのだ。

 

「そうだね……うん、もう一度、頑張ってみるよ」

 

 ようやく笑みを浮かべたビーシャを見たバンブルビーは、やおら立ち上がるとギゴガゴと音を立てて車に変形した。

 丸っこくてちょっと古い型のその自動車は、何時の間にスキャンしていたものやら、地球のフォルクスワーゲン・ビートルと呼ばれる小型自動車だ。

 

 ビートルは乗ってと言わんばかりにドアを開けた。

 

「ドライブ? ……うん、気分転換にいいかも」

「じゃあ、せっかくだから私も」

 

 ビーシャとネプギアが乗り込むと、ビートルは軽快な音楽と共に走り出した。

 ホット・ロッドはグッと拳を握りしめ、深く息を吐いた。

 

「くろめ……力を貸してほしい」

「ああ、もちろんさ。で、何をする気なんだい?」

「鍵探しより先にやることがある。俺の……俺たちなりのやり方で」

 

 

 

 

 

 街の外の草原を、二人の少女を乗せたビートルを突っ走る。

 

「きゃー! ビー早ーい!」

「ビー、ちょっと早すぎるよー!」

 

 意外にも、はしゃいでいるのはネプギアで、ビーシャは少し戸惑っていた。

 

「何を言ってるんですか、ビーシャさん! 可愛くて強い! だから凄い! それがビーなんです!! そこに私の開発したトルクをかけて、100倍です! 分かりますか、この算数が!!」

「いやいや、なんでさー!!」

 

 テンションが上がって素っ頓狂なことを言い出すネプギアに、ビーシャはやっぱりネプテューヌの妹であると感じていた。

 バンブルビーがルーフを開けると、ネプギアは座席の上に立ってルーフから上半身を出す。

 

「ひゃー! 風が気持ちいいー!」

「そ、それならわたしも!」

 

 ビーシャもルーフから顔を出す。背の低い彼女だが、ネプギアに手伝って貰って何とか上半身を出せた。

 その身に風を一杯に受け、両腕を掲げると、何だか気分が高揚してくる。

 

「おー! ホントだ、気持ちいいー! ビー、やっぱりあなたは最高だよ!!」

 

 運転手がいなくとも走れるトランスフォーマーだからこその楽しみ方だった。

 と、急に後方から爆音が聞こえてきたかと思うと、猛スピードで何かが接近してきた。

 三台のレース使用のスポーツカーだが、このブリテンの野を走っているからには普通の車のはずもない。

 

 昼間、バリケードと共にいたモーターヘッド、ローラーフォース、グラウンドホッグだ。

 

「よーチビ助! いい走りしてんじゃねえか!!」

「俺らとレースしようぜー!!」

「どうしたチビ助、ビビってんのかー!」

 

 口で煽りながらバンブルビーの周りで蛇行して煽り運転してくる三体に、ビーシャはムッとする。

 

「ビー、ディセプティコンなんかに構うこと……」

「あ、いけない! 実はビーは……!」

 

 ネプギアが何か言いかけると、不機嫌そうにピーブ音を鳴らしたバンブルビーは、ラジオから戦意が高揚するような曲を鳴らす。

 やる気は満々のようだ。

 

「凄く、負けず嫌いなんです!」

「あー、なんか納得!」

 

 急いで車内に戻った二人がシートベルトを締めると、バンブルビーは小さな車体に見合わぬスピードを出して三台のレーシングカーを追い抜く。

 

「おお、やるじゃねえか!!」

「よーし、俺らも負けてられねえぜ!!」

 

 負けじとモーターヘッドたちもスピードを上げる。

 四台の車は、ブリテンの草原を走っていくのだった。

 

  *  *  *

 

 一方そのころ。

 バリケードは何とかアレグラを説き伏せて逗留を許してもらい、街の中を歩いていた。

 街のあちこちには破壊の跡が残されており、それらを一つ一つ見て回る。

 しかしそれでも音楽が鳴りやまないあたり、この街の音楽好きは筋金入りだ。

 

 街の人間たちはすっかりトランスフォーマーに恐怖感を抱いているのか、近づいてこない。

 別にそれをどうと思うこともなく、バリケードは燃え落ちたバルーンや崩れた山車の残骸を手に取り、スキャンしていた。

 しかし、後ろに気配を感じて排気する。

 

「何の用だ?」

「手を貸してほしいんだ」

 

 バリケードは後ろに立つホット・ロッドの声に、鼻で笑うような音を出す。

 

「正気か?」

「さあ? でもアンタらだって、このまま嫌われ者は困るだろ? 特にガルヴァトロンの奴は」

 

 一応は主君としている相手の名に、バリケードの目が剣呑な色を帯びる。しかし確かに、指揮官の顔に泥を塗るのは避けたい所だ。

 ホット・ロッドは続けた。

 

「あのスタスク擬きは?」

「あいつなら、拘束しておいた。これ以上何かされるのは御免だ」

 

 それも当然と、ホット・ロッドは頷いた。あのタイミングでバンブルビーを煽ったのには、妙な意図を感じた。

 

「これを見ろ」

 

 バリケードは振り返ると、手に持った山車の破片をホット・ロッドに渡した。

 それを繁々と見ていた若いオートボットは、あることに気付いた。破片に不自然焼け焦げがあるのだ。

 

「これって、ブラスターで撃たれた痕か?」

「そうだ。お前んトコのハチ公が走り回るのに合わせて撃って、被害を大きく見せてたんだ」

「いったい誰が……」

「心当たりはある」

 

 バリケードにはその見当は付いていた。

 このブラスターは特殊なタイプで、なおかつブリッツウィング絡みとなれば、トリプルチェンジャーのドロップキックだろう。おそらく相棒のシャッターもいるはず。

 あの女兵士は狡猾で執念深い、敵に回すと厄介な相手だ。

 

「おそらく俺たちが遺物を手に入れると困るんだろう。絶対にまた邪魔してくるぞ」

 

 それでもやるのかと、バリケードは言外に語りホット・ロッドの目を見た。

 若きオートボットは不敵に笑ってみせた。

 

「むしろやる気が出てきたぜ。障害が多いほど燃えるってもんさ」

 

 一瞬、ほんの一瞬、古参のディセプティコンは目の前の若者に、遠い日に忠誠を誓った相手の面影が重なった気がした。

 その男は、世界や運命というこの上なく強大な相手に挑んでいった。結果は……色々あったが最終的には勝利したと言っていいだろう。

 

「遺物はどっちの物になる? 仲良く半分こというワケにもいくまい」

「あんたらにやる」

 

 虚を突かれバリケードはギョッとした。

 その表情に、ホット・ロッドはニヤリとした。

 

「協力を要請する以上、筋は通す。今回はな。いずれこっちが分捕る」

「正義の味方らしくない物言いだな。そこは悪党に渡すくらいならブッ壊すとでも言っとけ」

「そんなのナンセンスさ。取られたなら、取り返せばいいんだ」

 

 それは若造ゆえの現実の見えていない物言いと言っていい。リスクを軽視した、無鉄砲な考え方だ。

 だが、中々に野心的で面白い。

 

「で? 具体的に何をする気だ?」

「勝つためには、敵の戦略だけでなく芸術も知るべきだ、……スローン大提督ってしらない?」

 

 バリケードの質問に答えず、というよりは答えるための前振りとして、質問で返してきた。

 言うまでもなく知らない。

 

「誰だそいつは。聞いたこともないぞ」

「マジで? 『スターウォーズ:反乱者たち』見てないの?」

「知らんわ。いいから本題に入れ」

「はいはい……ここはさ、音楽の街なんだ。ここで信用を取り戻すなら、音楽で勝負するのが一番ってことさ」

 

 意味が分からないというバリケードの前で、ホット・ロッドは軽く踊るような動きをする。

 すると建物の影から、くろめが現れた。隠れて二人の会話を聞いていたようだ。

 

「明日の晩のステージで、何曲か演奏させてもらえることになった。指揮者たちを説得するのには、苦労したんだぜ?」

 

 くろめがニヤリと笑うと、ホット・ロッドは自信ありげな顔をした。

 

「まずは、全員でステージの準備や街の修理を手伝う。その後で曲の練習だ……てなワケで、アンタらの仲間に楽器が出来る奴いるかい?」

「何を言い出すかと思えばそれが作戦か? 新兵でももうちょっとマシなことを考えるぞ。おまけに行き当たりバッタリの出たトコ勝負……モーターヘッドたちが、出来るとか言ってた気がするな」

 

 遠慮なく皮肉を吐きながらも、バリケードは答えた。

 

「だが奴らに物を頼むのはやめとけ。あいつらの頭にはレースしかない」

「なら一勝負するか。これでも、スピードには自信が……」

 

 そこで、ホット・ロッドの通信装置に着信があった。ネプギアからだった。

 手振りでバリケードに断ってから通信に出ると、珍しく語気の強い声が聞こえた。

 

『ホット・ロッドさん! すぐに来てください!』

「ど、どうしたんだネプギア」

『いいから!』

 

 

 

 

 

 そんなワケでホット・ロッドたちはネプギアたちのいる街の外までやってきた。そこでは思わぬ事態になっていた。

 

「もー! さっきのは反則だよ!! 接触スレスレだったじゃない!」

「んなことねえよ、あれぐらいレースでは当然さ!」

 

 ビーシャとレーシング・ディセプティコンの一人が揉めていた。

 しかし、それは本気で敵意を剥き出しにしていると言うよりは、お互いに楽しそうな雰囲気だ。

 

「ふっふっふ、さっきは遅れを取りましたが、今度は完璧に整備しました! これでビーがあなたたちに負けることはありません!!」

「どうかな? レースは整備だけで勝てるほど甘くねえぜ!」

 

 一方、ネプギアはレンチとドライバーを手に勝気な笑みを浮かべていた。

 

「やるじゃねえか、チビ助! いい走りだったぜ!」

 

 そしてバンブルビーはモーターヘッドに肩を叩かれて、サムズアップを返していた。

 思わぬ光景に、ホット・ロッドたちは唖然とする。

 

「ぎあっち、これはどういう事態なんだい?」

「あ、うずめさん! 来てくれたんですね!」

 

 一同を代表するかのようにたずねたくろめに、ネプギアは機械油の付いた顔で笑顔を浮かべた。

 彼女が言うには、モーターヘッドたちとバンブルビーは実に熱いレースを繰り広げていたが中々決着が付かず、ホット・ロッドを交えてもう一回レースをしようと彼を呼んだらしい。

 

 バリケードが何とも言えない顔をするが、ホット・ロッドにとってはむしろ渡りに船の展開だ。

 

「レースはいいけどさ、その前に一つ質問。あんたら、楽器弾ける?」

「あん? ギターなら出来るけど」

「ドラムならいけるぜ」

「ベース。いや、5pb.の曲にハマっててな」

 

 その答えは、まさにホット・ロッドが望んだものだった。

 

「いよーし、なら俺がレースに勝ったら、あんたらには何曲か演奏してほしいんだが、いいか?」

「お前が勝ったらな!」

「よし、決まりだ! 時間も少ないし、早く始めよう! バリケードは、審判を頼む」

 

 ホット・ロッドはランボルギーニ・チェンテナリオの姿に変形すると、エンジンを吹かす。

 その横にビートルに変形したバンブルビーが並び、ディセプティコンたちも位置に着く。

 ビーシャとネプギアは、黄色いビートルに向かって声を上げた。

 

「頑張れビー! 負けるなビー!」

「落ち着いてやれば大丈夫だから! ……ほら、くろめさんも応援しましょう!」

「オレも? ……まあ、いいか。ロディ! しっかりね!!」

 

 くろめが苦笑しつつも応援に加わると、バリケードは大きく排気してから腕を上げた。

 

「仕方がない……なら、街の周りを一周してこい。妨害はなし、合体とか特殊能力もなし。最初に戻ってきた奴が勝ち……スタート!!」

 

 バリケードが腕を振り下ろすと、5台の自動車は一斉に走り出した。

 

  *  *  *

 

 そのころ、ブリッツウィングはアレグラの屋敷の庭で、ステイシス・ポッドに入れられていた。

 だがそのポッドが開かれ、ステイシスが解除される。

 ブリッツウィングがオプティックを開くと、赤と青のディセプティコンが目の前に立っていた。

 

「無事なようだな」

 

 空陸将校シャッターと空陸兵ドロップキックだ。

 周囲には見張りのプロトフォーム・ディセプティコンが倒れている。一応死んではいないようだ。

 ゴキゴキと首のジョイントを回しポッドから出たブリッツウィングは、後ろで手を組んでいるシャッターに状況を確認する。

 

「それで、仕事は終わったのか?」

「いや、遺物を回収するにはまだ時間がかかるらしい」

「は! あの忍者野郎め、無能にもほどがある!!」

 

 ドロップキックが悪態を吐くとブリッツウィングは顎に手を当てた。

 

「ならどうする? 俺たちで遺物を分捕るか?」

「それはよろしくないな、参謀殿。今の我らは傭兵だ。傭兵は余計な仕事はしないものだ」

「まだっろこしい……! いっそ、連中をぶっ潰せば済む話だ!」

「同志よ、落ち着け」

 

 イライラと体を揺らす青いディセプティコンを、赤い女性ディセプティコンは宥めた。ドロップキックは、基本的にシャッターの言うことには逆らわない。

 

「しかし、オートボットにせよディセプティコンにせよ、まだこの街を追い出されないのは予想外だった。ここの連中は、思っていたよりも平和ボケしているようだ」

 

 シャッターはワザとらしく首を横に振る。

 

「その上、連中は組んで何かしようとしている。それが何にせよ、我々のやることは一つだ。……最高に盛り上がった所を、台無しにしてやるとしよう」

 

 ニィッと陰湿な笑みを浮かべるシャッターに、残る二人も頷く。

 特にドロップキックはその時を楽しみにしてウズウズとしているようだった。

 

「今度はバルーンじゃなく人間どもを破裂させてやる」

「その意気だ、ドロップキック。……と、その前に雇用主から貰ったビークルのデータをもう一回見せてくれ」

「例の、何とかという星の奴か?」

 

 空陸参謀の言葉に、シャッターが問いつつも掌からデータを空中に投射する。

 自動車、飛行機、列車、そして戦車。様々な乗り物の立体映像が現れる。

 ブリッツウィングは少し考えてから、その中から一つを選んでスキャンした。

 

 地球にかつて存在したソビエトと言う国で使われていた戦車だ。

 亀の甲羅のような平べったい砲塔に長い主砲とその横にモノクルのような射撃管制装置、車体の後部にはドラム缶のような燃料タンクを備えた、T-72という戦車だ。

 本来T-72が備えているスモーク・ディスチャージャーがオミットされ、キャタピラ脇に追加装甲が施されている改造型である。

 

「お、久しぶりにその姿になるのか」

「サイバトロンを出て以来か?」

「ああ。せっかくの祭りだ、めかし込まないとな」

 

 シャッターとドロップキックの見ている前で、スキャンを完了した空陸参謀の姿がギゴガゴと音を立てながらより凶悪な物へと変貌していった……。

 




今回、一番悩んだのは、ブリッツウィングがスキャンする戦車。
せっかくなので、80年代に活躍した奴に……分からない方は、大雑把に戦車だと思っていただければ……。

最近、やはり地球を舞台にした方が良かったかなと思ってます。駄目なことだと分かっているけど、いっそゲイムギョウ界編半ばくらいから書き直したい……。
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