新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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※前回、前々回のタイトル変えました。


第46話 音楽都市の挑戦

 バンブルビーが縮んでから、一晩明けて。

 あの後、何回か試してみたが、合体しても元に戻らなかった。それどころか、高速移動も出来なくなってしまっているという。

 これは精神的な問題が大きいのではと、ネプギアは言っていた。

 

「よーし、そっち持ってくれ!」

「おー」

 

 朝日の差すユーリズマの街では、オートボットと一緒にモーターヘッドらディセプティコンが、街の瓦礫の撤去やステージの準備に勤しんでいた。

 ホット・ロッドとバンブルビーとのレースに惜しくも敗北した彼らは、潔く協力してくれているのだった。

 

「はい、これで弾けるはずです!」

 

 一方、ネプギアは即興でトランスフォーマーサイズの楽器を作り上げていた。

 元々は街の飾りだった物だが、彼女にかかれば本当に使えるようになった。後は職人に手伝って貰えば調律もばっちりだ……何かおかしいが気にしてはいけない。

 

 一通り片付けを終えたホット・ロッドは、ネプギア作特大ギターを持ち上げてモーターヘッドに渡す。

 

「よし、ありがとう。じゃあここが終わったら、音合わせといこう」

「おお、待ちくたびれたぜ!!」

 

 ギターの弦を弾くモーターヘッドを眺めながら、休憩中のバリケードはヤレヤレと排気する。奇妙なことになったものだ。

 だが、何より奇妙なのはバンブルビーだった。

 

 どういうワケか小さいオートボット、さしずめミニボットとなった黄色い情報員は、バリケードにも突っかからなくなった。それどころか……。

 目の前で、そのミニボット・バンブルビーがオイルの入った樽を差し出してきていた。

 

「……ああ、ありがとうよ」

 

 受け取ると、そろそろ付き合いも長いオートボットは嬉しそうにピーブ音を鳴らした。あれほど敵愾心を向けられていたのにこれだと、調子が狂う。

 

(いや、調子が狂っているのはこの世界に来てからずっとかもしれんな)

 

 そんなことを考えながらオイルを煽ると、横にホット・ロッドが立っていた。

 

「なんだ? 言っとくが俺は楽器なんざ弾けんぞ」

「ああ、そういうワケじゃないんだ。ただ、アンタとは一度話しときたくてさ」

 

 静かに、ホット・ロッドは言った。明るい表情だが、本人なりに決意があることが目の色で分かった。

 彼が聞きたいことは、それこそ山のようにあるだろう。

 

「あんた、何でガルヴァトロンと一緒にいるんだ? あんただって、昔はオートボットと一緒に戦ったんだろう?」

「成り行きでな。……ガルヴァトロンといるも、言ってしまえば成り行きだな」

 

 思えば、何故自分はあの男についていっているのか、その明確な答えを、バリケードは持ち合わせていたかった。

 平和な世界に退屈を感じ、刺激を求めていたのは確かだ。

 今や大帝の伴侶となった、あの女神の面影を感じるのもある。

 

「あいつが、生まれてすぐの頃からの……かなり変則的だが……付き合いだ。あれがあの女に抱かれていた日のことを、今でも覚えている」

 

 ホット・ロッドは、バリケードが未来からきたというガルヴァトロンの言葉に疑問を感じていないことには口を挟まなかった。

 

「つまり、放っておけないってことか」

「そうかもな……正直、あいつが正しいのかは分からん。現状に流されてることは否めん。……それでもな、不思議とあいつを見捨てる気にはならない」

 

 そして、バリケードはホット・ロッドの顔を見た。

 

「お前のことも這い蹲ってたころから知ってるんだぞ、俺は。兄貴たちに比べると随分と手のかかる奴だったな。それは今もだが」

「俺はその話を信じてるワケじゃないけどな」

 

 何処か懐かし気な顔をするバリケードに、ホット・ロッドは少し困った顔になる。

 彼自身はまだ、自分が破壊大帝の子だと受け入れたワケではなかった。

 

「それで、どんな連中なんだ、その……メガトロンとレイってのは」

「素晴らしい二人だった、とでも言えば満足か? 生憎と、俺から見ても結構な欠点のある二人だったよ」

 

 パトカー型ディセプティコンは、いつもの癖で顔を皮肉っぽく歪めた。

 

「メガトロン様は、良くも悪くも自分の考えを曲げない上に完璧主義が過ぎたし、レイは気が弱いかと思えば強引だったり、その癖いちいちズレてて振り回されたもんさ……だが思えばそれも楽しかったな」

 

 皮肉の仮面の奥から、懐かしさと愛おしさが漏れ出しているバリケードを、ホット・ロッドは眩しそうに見ていた。

 少なくとも、彼からしてみれば暫定両親は嫌いな相手ではないらしい。

 

「まあ何のかんの言っても、俺たちディセプティコンがメガトロン様に救われたのは確かだ。だがメガトロン様を救えたのは……多分、レイだけだったんだろうな」

 

 例えば他の女神だったなら、メガトロンにあそこまで寄りそうことは出来なかっただろう。

 あの時点でのゲイムギョウ界に居場所のなかった、多くの罪や矛盾を抱えていたレイだったからこそ、孤独な破壊大帝の隣に立てたのだ。

 それはレイにとっても同じで、ゲイムギョウ界の価値観から外れた存在で、無理矢理にでも掻っ攫っていくような強引さを持ったメガトロンだから、彼女は救われたのだ。

 

「これはフレンジーっていうレイと特に仲の良い奴から聞いた話しだが、メガトロン様は時折、あの女のことを欠片(ピース)と表現していたそうだ」

「欠片? 駒じゃなくてか?」

「ああ、どういう意味かは俺にも分からん」

 

 肩を竦めるバリケードだが、反対にホット・ロッドは何かが腑に落ちたようだった。

 

「欠片か……そうか、欠片を得て初めて完全になれる。そういうことかもな」

「…………」

 

 それは計らずしも正確に父の言を言い当てていた。

 実のところ、バリケードはフレンジー経由でそのことを知っていた。本人は望まないだろうが、ますます目の前の若者が大帝に重なって見えた気がした。

 

「意外とロマンチストなんだな、メガトロンって。ま、宇宙征服とか言い出すくらいだしな」

「リアリストの極致みたいなもんだと皆思ってたんだがな。レイが言うには理想を叶えるために現実主義に徹してる、らしい」

「ちょっと美化し過ぎじゃないか、それ?」

「まあ恋は盲目って奴さ。結婚した今では面倒くさい男っていつも言ってるしな」

 

 二人として、何となく笑い合う。

 バリケードはこの若者はこの若者で気に入り始めていた。

 メガトロンに似ているから、だけではない。敵にも協力を求めるクレバーさと楽天的な部分が同居した、その若さとひたむきさが、好ましかった。

 

「おい、ホット・ロッドよ! そろそれ練習しようぜ!」

「俺たち楽しみにしてんだぞ!!」

 

 もう少し話しを続けたかったホット・ロッドだが、モーターヘッドたちに呼ばれた。バンブルビーもカーステレオから流す音楽に合わせて体を揺らし、催促している。

 

「ああ、今行くよ! ……それじゃあバリケード、()()()()()頼む」

「ああ、()()()()()

 

 ホット・ロッドとバリケードは、すでにブリッツウィングが逃げ出したことを情報共有していた。話し合った結果、空陸参謀とその背後にいるシャッター、ドロップキックが仕掛けてくるであろうことへの対策も立てた。

 このベテラン偵察兵には、狡猾で好戦的、かつ執念深い……つまり()()()()()()()()()()()相手の思考は手に取るように分かるからだ。

 

  *  *  *

 

 いくらかの音合わせと演奏の練習をして、一休みすることにしたホット・ロッドは塚の上に立つモードレッド王の立像を見上げていた。

 父王に代わりこの国を治めた二代王に、ホット・ロッドは少しシンパシーを感じていたが、自分は彼と違いオプティマスの代わりにはなれそうにない。

 自分なりのやり方を模索しているが、それが正しいのかはまだ分からない。

 

「あんた、親父さんの跡を継いで立派に国を治めたんだって? 凄いな」

「そんなに凄いことか? 親の敷いたレールに乗っただけだろう」

 

 急に皮肉っぽい言葉が聞こえた。少年のような高い声だ。

 見下ろすと、白い子供用スーツを着た男の子が二代王の像を見上げていた。

 綺麗に切り揃えられた金髪に病弱そうな白い肌と線の細い顔立ちが貴族的な印象だが、青い瞳の浮かぶ目は妙に荒んでいた。

 この街の子だろうか?

 

「親に従って、結局はこの狭い国を治めただけだ……」

「それも悪くはないと思うぜ。それが自分の意思による物なら」

「どうせなら、親を殺してこの国を奪うくらいすれば良かったのに」

「それをやろうとして大失敗した奴を知ってる」

 

 ともすれば少女のような容姿に似合わぬ辛辣な物言いに自然と苦笑しつつも、ホット・ロッドは努めて軽く答える。

 少年は、吐き捨てるように言った。

 

「親から貰った物を後生大事にするとは……親なんて勝手なもんだ。愛してるとか言って、結局は子供に迷惑をかける」

 

 少年は何処か、親という物に確執があるようだった。

 

「それはまあ、同感かな。ホント、勝手なもんさ……」

 

 珍しい話でもない。実際、ここにも暫定両親をまだ両親と認められない男がいる。破壊大帝とラスボス系女神を親として認めるには、まだ踏ん切りが付かなかった。

 何故か少年は意外そうな顔をした。

 

「親にもよるだろう?」

「そうだな、親にもよる」

「贅沢な奴め……話を戻すがな。こいつは凄い奴なんかじゃない」

 

 呆れたように鼻を鳴らし、少年はギロリと二代王を見上げた。

 

「この男は父から王座を継いだが、父と自分を比較して悩んでいたそうだ。『自分は父のようにはなれないのだろうか?』そんな風にな! 部下たちも、当然ながら父王と同じように振る舞うことをこいつに望んだ」

「…………」

「ある時、この街を訪れた王に三人の音楽家が歌を披露した。一人はアーサー王が好んだ歌を歌った。二人目はモードレッドが好む歌を歌った。そして三人目は、前の二人の歌を引き合いにアーサーとモードレッドは違う人間であるという歌を歌った……これを聞いた王はたいそう感動し、父とは違うやり方をするようになった……ハッ! なら最初からそうしろという話しだ!!」

 

 どうやらこの少年は、モードレッドが嫌いらしい。

 しかし、その話の内容に、ホット・ロッドは感じ入る物があった。

 オプティマスにも『自分らしく振る舞え』と言われた。

 自分はオプティマスとは違う。だが、それでもいいのだと時代を超えて後押ししてもらったような気がした。

 

「この街の連中は、それを指してここを音楽が一つの時代を作った場所と吹聴している……まったく馬鹿らしい、そんなのは偶然の産物だ」

「そうか? 確かに偶然に偶然が重なった結果かもしれないが、モードレッドが救われたのは音楽のおかげだろう?」

 

 少なくともこの街では音楽は暴力に勝る。

 それが分かっただけでも、勇気づけられた。

 

 少年はフンと鼻を鳴らすと、人混みの中へと消えていった。

 

 それを見送った後で、改めてホット・ロッドが二代王を見上げると、装甲の隙間から何かが這い出てきた。

 

 ミリオンアーサーから贈られた、あのタリスマンだ。

 

 四本の足を生やし、蜘蛛のようにホット・ロッドの身体をよじ登っていく。やがてタリスマンはオートボットの肩に乗ると、前足に当たる部分を振り上げた。

 まるで再会を喜ぶかのように。

 

 それに気付かずホット・ロッドは不敵に笑んだ。

 

「さあて、モードレッド王。今まで聞いたことのないような音楽を聞かせるから、楽しみにしててくれ」

 

 無論だ。

 そう、石像が答えた気がした。

 

  *  *  *

 

 そして、日が暮れて祭りのフィナーレが近づいてきた。

 舞台の上ではスペシャルゲストの歌姫アーサーなる吟遊詩人が、見事な歌を披露している。

 しかし舞台周りは昨日と様子が少し違っており、座席が撤去され観客たちは立って歌を聞いていた。まだ、広場には円を描くように六本の機械的なポールが立てられていた。

 

「よーし、もうすぐ出番だ!」

「は、はい!」

「ううう……緊張する」

 

 舞台近くの目立たない広場で、モーターヘッドたちが楽器を手にし、なんとネプギアとビーシャがドレスを着込んでいた。

 ネプギアは薄紫のシンプルながらも清楚なドレス。ビーシャはフリルが一杯のレモン色のドレスで、二人とも普段とは大分雰囲気が違う。

 

 やっぱり歌が録音では味気ないということで、この二人がヴォーカルを担当することになったのだ。

 実際、二人の歌声はかなりの物だった。

 

 しかし、どういうワケか仕掛け人であるホット・ロッドと、ディセプティコンの代表であるバリケード、さらにくろめの姿がない。

 

 最後の音合わせをするディセプティコンたちを、バッソ、アレグラ、ゼボップの指揮者三人が見ていた。

 

「ゼボップー、この大事な祭りで何故奴らに演奏をさせるのだー♪」

「……正直、理解できないわ」

 

 バッソは怒りのあまりコントラバスを鳴らし、アレグラはついにミュージカル調を捨てていた。

 この祭りは、単にドンチャン騒ぎをするというだけの物ではない。この地を愛し終の棲家としたモードレッド王に、感謝と尊敬を込めて歌を奉ずる祭事なのだ。

 

「やっぱり、エイスリング卿への義理立て?」

「そうだね、それもあるけど……」

 

 ゼボップもまた、いつもの歌うような調子ではなく、真面目な声色だった。

 

「彼らは遠い国からきた。ならばその遠い国の、僕たちの知らない音楽を聴いてみたい。その音楽が奇跡を起こすなら見てみたい。それが一番かな」

「ゼボップ……」

 

 バッソは一瞬感心したように破顔したが、すぐにワザとらしい呆れ顔を作る。

 

「まったくー♪ 本当にどうしようもない音楽馬鹿だー♪」

「それはあなたもでしょー♪」

「違いなーいー♪」

 

 アレグラも微笑んでから歌うようにツッコミを入れ、バッソもそれを否定しない。

 結局、この街の人間はどうしようもなく音楽が好きで好きでたまらないのだ。音楽の力を信じているのだ。

 特にこの三人はモードレッド王に歌を披露した三人の音楽家の、直系の子孫なのだから。

 

「上手くいくかな……」

「大丈夫だよ。今度は、みんな一緒だもん」

 

 不安げなネプギアの手を、ビーシャが握る。

 バンブルビーも音楽に合わせて軽くステップを踏んで、彼女を元気づけた。

 

 そして、彼女たちが演奏する時がやってきた。

 

 

 

 

 

「ステマックス、まだ遺物は手に入らんのか?」

『まだで御座る。やはりこの塚は、祭りのクライマックスまで開かない仕掛けの様子。破壊も出来そうにないで御座るな』

「はん……ならば当初の予定通り我々が騒ぎを起こす。その隙にいたただいてしまえ」

『承知』

 

 

 

 

 

 舞台の上に見慣れぬ少女二人と楽器を抱えた金属の巨人たちが現れると、観客たちの多くは訝し気な顔をしたり、嫌悪を露わにした。何せ、昨日の今日である。

 準備や修理を手伝ってはもらったが、これは予想外だったようだ。

 

 ビーシャが代表して声を上げる。

 

「ユーリズマのみんな、こんばんはー! ゴールドサァドのビーシャでーす! わたしたちは、遠いプラネテューヌっていう国から来ましたー!」

 

 ざわざわと騒ぎだす観客とその視線にビーシャは一瞬気圧されそうになる。

 しかし、バンブルビーがサムズアップし、ネプギアが頷くのを見て気合を入れ直す。

 

「うん、戸惑うのもわかるよ! 昨日はみんなに迷惑かけちゃったもんね! ……だから、お詫びってワケじゃないけど、わたしたちの国の歌を聞いてほしいんだー!!」

 

 その言葉に対する観客の反応は様々だった。

 何を今更という顔をする者、興味を持ったらしい者、まだ状況が飲み込めていない者もいる。

 だがそのいずれも檀上の少女たちに注目していた。

 

「それじゃあいきまーす! 5pb.っていう歌手の歌、『流星のビヴロスト』!!」

 

 ビーシャが手を振ると、バンブルビーやモーターヘッドたちがそれぞれの楽器を演奏し始める。

 その音は今までユーリズマに響いたことのないリズムを刻む。

 バンブルビーが、カーステレオから音を流しながらステップを踏む。

 序奏が終わると同時に、ビーシャとネプギアは息を吸い、歌い出した。

 ビーシャは子供らしい可愛らしさを残しながらもよく通る声、ネプギアは張りと透明感の有る綺麗な声だ。

 

 聞いたことのないメロディに、歌詞に、歌声に。徐々に人々は興味を引かれていく。

 この歌は今までブリテンになかった物だ。彼らの知る作法や技術とは大きく異なる。

 それでも、そこには魂があった。祈りが、想いが、愛が込められていた。

 ならばそれは、このユーリズマでは人の心に届くのだ。

 

 ここは、音楽の街なのだから。

 

 一曲目が終わると、多くの観客が拍手を送っていた。

 

「ありがとう! みんな、ありがとう!!」

 

 確かな手ごたえにビーシャは笑顔を浮かべる。

 でもまだまだだ。まだ懐疑的にこちらを見ている人も多い。

 

「じゃあ次の曲は、『きりひらけ!グレイシー☆スター』!」

 

 トランスフォーマーたちが楽器を奏で、ビーシャとネプギアが息を吸った時だ。

 上空から空気を切り裂くような音がした。ジェット機の飛行音だ。

 

 見上げれば、案の定というべきかファントムⅡが夜空を横切った。

 

「来たね……!」

 

 しかしビーシャは慌てない。これは想定されていた事態だ。

 ブリッツウィングは空中でロボットに変形したが、その姿は昨日よりも凶悪になっている。

 

 背中の翼や胸部のキャノピーなどはそのままに、下腿に戦車の物らしい履帯があり、背中のバックパック部分からは砲身が真上に向かってニョッキリと突き出ていた。

 

 これぞ、ある時はジェット機、ある時は戦車へと変形するトリプルチェンジャー、空陸参謀ブリッツウィングの真の姿だ。

 背中と踵からのジェット噴射で観客席の上に滞空するブリッツウィングは、親指で自分を指す。

 

「貴様ら、俺の名を言ってみろ!!」

「ブリッツウィング!!」

 

 だがビーシャはその名を呼ぶと、突然の乱入にざわつく観客に笑顔を向ける。

 

「みんな! ここからは、ちょっと趣向を変えてお芝居を交えて演奏するね! こちら、ディセプティコンのブリッツウィング! とっても悪い奴なんだ!!」

 

 これには観客たちは、なんだこれも演出かと思い、面白い趣向だと感心する。逆に当の空陸参謀が面食らっていた。

 

「な、何を言っている!?」

「あいつはこのお祭りを滅茶苦茶にするつもりなんだよ! でも大丈夫! わたしたちでやっつけちゃうから! だからちょっと場所を開けてね!! ポールの後ろまで下がって!」

 

 バンブルビーが踊るように舞台から降りると、ノリのいい観客たちは左右へと退避していく。

 

 すっかりヒーローショーの悪役に仕立てられてしまったブリッツウィングは顔を不愉快そうに歪めると、ご丁寧に開いた場所に降りた。

 

「ふざけやがってぇ……! 誰が、こんな茶番に付き合うか! ムシケラども、悲鳴を上げろ! 逃げ惑え! 恐れ慄けぇぇッ!!」

 

 砲を展開して凄んで見せるも、もはや彼を『悪役を演じる役者』としか見ていない人々は冗談半分に悲鳴を上げたり、逆に野次を飛ばす。中にはブリッツウィングの演技力に感心する者までいる始末だ。

 屈辱を怒りに変え、ブリッツウィングはキャノン砲を観客に向け躊躇いなく撃つ。前と違い、今度は超高熱の熱線が発射された。

 鉄をも溶かす熱線は、人間など容易く蒸発させ……られない!

 

 ポールから強力なフォースバリアが発生したからだ。

 フォースバリアは六つのポールを結んで六角形なるように発生し、ちょうど鳥籠のようにブリッツウィングとバンブルビーを閉じ込めた。

 これは、予めネプギアが仕込んでおいた物で、いつぞやの女神たちがマジェコンヌに捕らえられた事件から着想を得て開発した物だ。

 

「なッ!?」

「さあ、行くよビー! ゴールドユニット、装着!!」

 

 ビーシャが変身するとドレスがいつものプラスチックのような質感の服に変化し、二機のビットとバズーカが召喚された。

 バンブルビーはボクシングのように拳を握って手招きし、相手を挑発する。

 

「上等だこのクソ餓鬼どもがぁああああっ! ぶっ潰してくれる!!」

 

 怒髪天を突かんばかりのブリッツウィングは、ギゴガゴと音を立てて改造型T-72に変形した。

 ネプギアの歌声とモーターヘッドたちの演奏が響くなか、主砲が火を噴きバンブルビーとビーシャが駆けだす。

 

 さあ、戦いだ!!

 

 

 

 

 

「何をやってるんだ、あいつは……」

 

 隠れて様子を伺っていたシャッターは、良いように相手のペースに飲まれてしまった航空参謀に頭を抱えたくなった。

 あのバリアの中では空中戦が出来ず飛行型の優位が潰されてしまう。

 

 隣に立つドロップキックは、やや不安げにたずねてきた。

 

「どうする、俺たちも突っ込むか?」

「いや、あのバリアを破壊するぞ。発生元の装置を狙え……ッ!」

 

 右腕をキャノンに変形させポールに向けるシャッターだが、そのとき後ろに気配を感じ振り向いた。目の前に銃口と、皮肉っぽく吊り上がった口があった。

 

「久し振りだな、シャッター」

「バリケード、貴様か……」

 

 ガトリングをこちらに向けて笑う偵察兵に、シャッターは苦々し気な顔をする。

 

「シャッター! 貴様ぁッ!!」

「おっと、お前も動くなよ。えーと……名前なんていうんだ?」

 

 ドロップキックは激昂しキャノン砲を撃とうとするが、別の相手がレーザーライフルの狙いをその額にピッタリと定めていた。

 

「邪魔するなら、最高に盛り上がった所を台無しに……バリケードの言った通りだったな」

 

 それは不敵に笑う、ホット・ロッドだった。

 




今回書いてて自分で意外に感じたのは、ホット・ロッドとバリケードの相性が思いのほかいいことだったり。
生意気な若造と皮肉屋のベテランという王道の組み合わせで、下手するとA軍よりバディ感がある気がする……。
ネプギアとビーシャが歌うのは……中の人、どっちも歌が上手いですし。バン〇イナムコと言えばアイド〇マスターですし!

タリスマン
ついに(ほんとについに)動き出した重要アイテム。

空陸参謀ブリッツウィング
新たに戦車への変形能力を得た。
この姿になると、火力や装甲、パワーは強化される反面、重量が増すので飛行能力はやや落ちてしまう。
全体のシルエットはそのままに、足の履帯、背中の主砲などが追加されている。

歌姫アーサー
台詞はないけど乖離性ミリオンアーサーのメインキャラ。
リュートのような楽器型エクスカリバーを持つ王候補。

身なりのいい少年
実は非モブ。
一応、すでに登場してるキャラクターだったり。

しかし、ユーリズマ編に四話かかるとは思わんかった……。
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