新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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第2話 うずめの仲間たち

 街のシンボルである女神像を横目に、数台の車が橋を渡っていく。

 

 先頭を行くのは黒とオレンジのランボルギーニ・チェンテナリオ、

 次いで三連マフラーの目立つ赤と青のファイヤーパターンのトレーラーキャブ、

 さらに黄色に黒のストライプの入ったカマロの最新モデル、

 前部が長いロングノーズショートデッキのドイツの高級スポーツカー、メルセデスAMG・GT、

 吊り目のようなヘッドライトが印象的な緑のシボレー・コルベット、

 歴戦を潜り抜けてきたことを感じさせる汚れた深緑の四輪のウニモグの装甲トラックが続く。

 

 この奇妙な車列は都市から少し離れた道を行く。

 道の脇には、『イエーガー中古機械店。あなたのお探しの品がきっとここに! ※機械修理も承ります』と書かれた看板があった。

 さらに進むと、何台もの廃車が並ぶ場所に着いた。

 セダン、ワゴン、クーペ、バンにUSV、さらにはトラックやバス、バイクまで、あらゆる種類の乗用車が並ぶ姿は、一種の墓場を思わせる。

 ここでは廃品となった機械から使える部品を取り出し、売買しているのだ。

 

 その奥には一応の事務所兼作業場であるプレハブ小屋があり、隣には荷運びに使うのかダンプトラックが停まっていた。

 車群はプレハブ小屋の前で停車する。

 

「ここまでくれば、もう大丈夫だ。……多分な」

 

 先頭のランボルギーニから降りたケイドが言うと、車群はギゴガゴと音を立てて立ち上がる。

 トラックは、乗っていたネプテューヌが降りると一際背の高い騎士を思わせる姿のオプティマス・プライムに。

 同じくネプギアが降りたカマロは背中に配置されたドアが羽根を思わせる丸っこい造形のバンブルビーに。

 AMG・GTはラジエーターグリルとそこに付けられた社章が胸に配置された赤い鎧武者のような姿のドリフトに。

 緑のコルベットは飛行ゴーグルとコートを着たような姿のクロスヘアーズ。

 装甲トラックは全身に銃器を身に着けた、太って髭面のハウンドに。

 そしてチェンテナリオはホット・ロッドに変形した。

 

「で、だ。俺らをこの鉄の墓場に案内してくれたのはありがたいがね。そろそろ、これがどういうことか誰か説明してくれねえか?」

 

 クロスヘアーズは適当な廃車に腰掛けながら、腕を組んだ。

 相変わらず、文句のありそうな面をしている。

 

「それはこっちの台詞だ。なんなんだ、お前らとかあのプレデターのバッタモンみたいな連中とか……」

 

 ケイドもジャンパーを脱いでから、金属の戦士たちを見上げる。

 となりに立つ、うずめも何処か警戒心が抜けていない。

 

 オプティマスが傍らに立つネプテューヌをチラリと見ると、彼女は小さく頷いた。

 

「分かった。では……」

「おお……! そんな、まさか……オプティマス・プライムなのか!」

 

 説明を始めようとしたとき、プレハブ小屋の脇に置かれた黄色いダンプトラックが、ギゴガゴと音を立てて立ち上がった。

 現れたのは大きく太ましい体格の、オートボットだ。

 優しそうな顔立ちをしている。

 

 さらに廃車の合間から、薄青のスクーターが走ってくる。

 スクーターは走りながら変形し、大きな二つのヘッドライトがそのまま目になり、グリップが手、タイヤが両足になった小型のオートボットになった。

 

「! 君たちは……」

「あ、ああ……私はキャノピー、こっちはスクィークスだ」

「お前ら知ってるぜ、あの時逃げ出した連中だな!」

 

 突然変形したオートボット、キャノピーが自己紹介するとクロスヘアーズが突然声を上げた。

 ワケが分からないという顔をするケイドやうずめ、ネプテューヌに対し、腕を組んだドリフトが説明する。

 

「あの戦争の最中、新天地を目指して星を出ていった者は大勢いた。大部分は戻ってきたが……中には、いまだ行方の知れぬ者も。彼らもその一例だ」

「ああ……そうだな。私たちはあの果て無い戦争に嫌気が差して、星を捨てた。……苦しい選択だったが、間違っていたとは思わない」

 

 非難がましいクロスヘアーズやドリフトの視線に、キャノピーはそう答えた。

 ドリフトは鼻を鳴らすような音を出し、クロスヘアーズはケッと吐き捨てた。

 

「それでオプティマス、戦争はどうなったんだ? オートボットとディセプティコンは……」

「キャノピー、戦争は終わったんだ。オートボットとディセプティコンは和睦した」

「終わった……! それに和睦……そうか、そうか……」

 

 厳かな総司令官の言葉に、キャノピーはホッと肩の力を抜いた。

 

「俺は納得してねえけどな! ディセップと仲良しこよしなんぜ、反吐が出るぜ!」

「もう、いい加減にしなよ! いつまでも終わったことをグチグチと、男らしくないよ!!」

 

 グチャグチャという緑のオートボットを、ネプテューヌが叱りつける。

 一方で、うずめとホット・ロッドは顔を見合わせた。

 表情から、彼らが会話についてこれていないのは明らかだった。

 そんな彼らを横目に見ながら、オプティマスはキャノピーに質問した。

 

「それで、キャノピー。……なぜ、この星に?」

「ああ、それについては長い話になるが……さっきそこの緑色が言った通り、私とスクィークスはサイバトロンを脱出したある船に乗っていたんだ……だが、船が故障を起こし、私と彼は一緒にポッドに乗って脱出した」

 

 その時のことを思い出しているのか、黄色いオートボットは悲しそうな表情になった。

 

「その後、長い漂流の果てにこの星に辿り着いたんだが、ここの人々は何と言うか……警戒心が強くてね。私たちはある組織に囚われの身になってしまった。そこで出会ったのが、彼らだ」

 

 そこでキャノピーはうずめやホット・ロッドに視線を向けた。

 

「彼らはホット・ロッドと天王星うずめ。どちらも同じ施設に囚われていた。二人ともそれ以前の記憶を失っているが……とても善良だ。彼らのおかげで我々は自由になれた」

「へへ、そう言われると照れるな」

 

 ブラブラと、ホット・ロッドは体を揺らす。

 うずめはパッと笑みを浮かべた。

 

「ま、だいたいは海男のおかげだけどな!」

「海男、さん?」

「ちょうどいいや、紹介するよ。おーい、海男! 出てこいよ!」

 

 首を傾げるネプギアに、うずめはプレハブ小屋の中に向かって声をかけた。

 すると、渋く深い声が聞こえてきた。

 

「ふむ……これは自己紹介せねば礼を欠くな」

「おおー! かなりのイケボ! イケメンか渋いナイスミドルを予想させるね!」

 

 プレハブ小屋からの渋い美声にネプテューヌがはしゃぐ。

 一同が見守っていると、小屋から出てきたのは……。

 

「え?」

「へ?」

「む?」

『は?』

 

 ネプテューヌとネプギアは目を丸くし、オプティマスは首を傾げ、残るオートボットたちは大口を開ける。

 

 現れたのは……魚だった。

 それもただの魚ではない。人面魚だった。

 丸っこい人面魚が、フワフワと宙に浮いているのだ。

 

「じじじ、人面魚!? しかも真顔!?」

 

 絶叫するネプテューヌ。

 その叫びの通り、人面魚は何とも言えないシュールな真顔だった。

 

「おう、これが海男だ! 可愛いだろ!」

「うん……可愛い、かな? コレは」

「いや可愛くはねえだろう」

 

 満面の笑みのうずめに、ネプテューヌは苦笑いし、クロスヘアーズはバッサリと切り捨てる。

 ケイドもうんうんと頷いているあたり、彼の視点から見ても可愛くはないらしい。

 

「声と姿のギャップがすごいかも……」

「ぶっちゃけ、きもい」

 

 ネプギアは戸惑い、バンブルビーは思わず失言してオプティマスに睨まれていた。

 だが当の人面魚こと海男はまったく気にした様子を見せなかった。

 

「初めまして、異邦の方々。俺は海男と呼ばれている。見ての通りの魚介類だ」

「これは丁寧にどうも。……ふむ、この世界の魚介類は知的種族なのだな」

「いや、違うからな。こいつが特別なんだからな。アニメ映画じゃあるまいし、普通のお魚はこんなダンディな声で喋ったりしないからな!」

 

 唯一、オプティマスは驚きはしたものの丁寧に応対する。

 しかし、その惚けた言葉にケイドがツッコミを入れた。なんだか、すでに苦労人のオーラが漂っていた。

 

「ああとさ、質問いいかな?」

 

 ホット・ロッドが手を挙げると、オプティマスは頷いて先を促した。

 

「その、戦争ってのは終わったんだろ? だったら、あのプレデターのパチモンどもは何なんだ」

「そう、まさにそれだ。……我々のことも含めて、話す必要があるな」

 

 オプティマスは静かな声でここに至った経緯を説明した。

 その間、うずめとホット・ロッド、海男にケイド、スクィークスとキャノピーは神妙に聞いていたが、ネプテューヌやクロスヘアーズが茶々を入れてきて話が脱線しそうになり、そのたびに海男が話を修正した。

 

 やがて話が終わると、顔色が赤くなったり青くなったりしていたケイドが堪えきれずに大声を出した。

 

「つまり……身長5m以上の凶悪犯罪者が、そこらをうろついてるってのか!? しかも、車に成りすまして!」

「そういうことになる。……すまない、我々の世界の問題をこの星に持ち込んでしまって!」

「まったくだよ! ……ったく、とんでもないことになったな」

 

 オプティマスの謝罪にケイドは叫んだ後で大きく息を吐く。

 

「……で、あんたらは奴らを捕まえるんだな」

「ああ、そのつもりだ。これは戦争ではなく、あくまで遭難者の救助と犯罪者の捕縛だ」

「ま、俺らも遭難してんだけどな!」

 

 厳かなオプティマスの言葉をハウンドがわざと茶化す。

 うずめは拳を握りしめ、力強い笑みを浮かべた。

 

「そういうことなら、俺たちも協力するぜ! いいだろ、みんな?」

「俺たちは仮にも逃亡者なんだが……これも何かの縁だ」

「協力したいのは山々だが、こういうことは家主の意見を聞かねばな」

 

 ホット・ロッドは俄然やる気だが、海男は冷静にケイドに視線を送った。

 結局のところ、オートボットがここに居られるかは、彼次第なのだ。

 

「…………ああもう、分かったよ! 好きにすればいいさ!」

 

 オートボットや女神、その他の視線の集中砲火に遭って、ケイドは肩をすくめながら言い捨てた。

 

「よし! これから、しばらくの間よろしくな、ねぷっち!」

「うん、よろしく! ……ねぷっち?」

「ああ、ネプ……なんとかじゃ言いにくいだろ? だから、お前はねぷっちだ!」

「でました、初めて会った人がわたしの名前を言えないパターン! けどわたし的には可愛いあだ名だから大歓迎だよー!」

 

 手を差し出しつつの悪気のない言葉にネプテューヌは一瞬ポカンとしたが、すぐにパッと笑みを浮かべてうずめの手を握り返した。

 うずめは姉の後ろにいるネプギアにも顔を向ける。

 

「ちなみに、お前はぎあっちだ!」

「ぎあっち!?」

「二人ともネプから始まったら、被っちまうだろ? だから、ぎあっちだ!」

 

 自身満々のうずめだが、そのネーミングセンスにオートボットたちは何とも言えない顔をし、ホット・ロッド以下のメンバーは苦笑する。

 ネプギアも目を丸くしていたが、やがて笑顔になった。

 

「ぎあっち……ぎあっちかあ。えへへ、ビーやコンパさん以外から綽名で呼ばれることって珍しいからなんだか新鮮!」

「いいんだ……」

 

 バンブルビーは相方のチョロい感じに不安になるが、一方でケイドは別の意味で不安になっていた。

 

「これでトランスフォーマーが8体に、人間が都合4人……それによく分からない生物が数体か……こりゃ大変だ……」

 

 しがないスクラップ場経営者にとって、これは由々しき問題なのだった。

 

 

 

 

 

 

 まあ結局、オートボットらが発明を助けたり、特にオプティマスが運搬などの仕事を手伝うという約束になった。

 そして日も暮れてきて……。

 

 スクラップ場の奥には、ケイドの家である木造建築があり、その近くにはうずめの寝床であるトレーラーハウスがあった。

 これは、さすがに年ごろの少女と中年男性が一つ屋根の下は問題があるとしてケイドが廃品を再利用して用意した……というか、前にここに住んでいたケイドの娘、テッサが用意させた物だ。

 ネプテューヌとネプギアは、このトレーラーハウスで寝泊まりすることになったのだが、彼女たちはまたしても目を丸くすることになっていた。

 

「うずめさーん!」

「お帰りなさーい!」

「おおー、みんなただいまー!」

 

 屈みこんだうずめに、数体の奇妙な生き物がすり寄っていた。

 全体像は陸に上がった魚といった風情で、背中からトサカのような背びれが生えており、胴体の下からは昆虫の節足にも見える足が八本生えてた。

 こう言うとずいぶんとグロテスクな生き物に思えるが、実際には円らな瞳と猫口、丸っこい姿で愛らしい姿をしていた。

 

「これって……ひよこ虫?」

「ああ、俺たちと同じ施設に捕まってたんだ」

「はいです! ボクらはうずめさんたちと一緒に逃げてきたのです!」

 

 笑顔で並んだひよこ虫の頭を順に撫でるうずめだが、ネプテューヌとネプギアは顔を見合わせた。

 ひよこ虫とは、人間を女神に改造しようとした実験の果てに生まれた、女神の成り損ないだ。つまり、誰かが女神を作ろうとしているのだろうか?

 

 このことについては、オプティマスと話さなくてならないだろう。

 

「ま、重い考えはとりあえずそこまでにして……うずめにとっては、この子たちも仲間なんだね」

「ああ、なんせ話すエビフライなんて珍しいだろ? 捕まんないようにしてやらないとな」

『エビフライ!?』

 

  *  *  *

 

 同時刻、街の中心部にある、未来的なデザインの超高層ビル。

 このビルこそ、この街の産業の中心、この十年でKSIと並ぶロボット産業の世界的トップにまで成長した大企業、CS社の本社ビルだ。

 ビルの前の広場には、創業者の先祖でありこの街のご当地偉人でもある、北極探検に成功した船長の銅像が立っていた。

 この厳しい表情の像の台には、その一族の家訓であり、そしてCS社の社訓でもある言葉が刻まれていた。

 

 すなわち、『犠牲なくして、勝利なし』と。

 

 ビルの上層に位置する大会議室では、何人かの男女が集まって話し合っていた。

 議題は、最近の暴走車事件についてだ。

 

「だから! 我が社のシステムが問題など有り得ない!」

「KSI社の妨害工作でしょうか? あるいは、インドか中国の企業の仕業では?」

「とにかく、この暴走車のおかげで我が社の悪い評判が立っとるんだ! 株価の低下も馬鹿に出来ん!」

「失礼、皆さん」

 

 言い合う役員たちに対し、会議室の長テーブルの一番奥に座る人物……この中では若い方だが、椅子の位置からも分かる通り最も位が高い……が良く通る声を出した。

 役員たちがシンと静まってから、男は続ける。

 

「この件に関して重要なのは、暴走の原因が本当に我が社のシステムか、その一点に尽きる。……で、どうなんだい?」

「社長、その可能性は限りなく低いかと。システムを何度も何度もチェックしました。考えうる限り全てのテストをしましたが全くもって異常無しです。外部からのハッキングということも考え辛い」

「なら、堂々としていればいい」

 

 技術担当の役員の言葉に、若い男……CS社の社長は笑いを浮かべた。中々に人好きのする笑みだ。

 彼はまだ三十に届くか届かないかといった年齢だが、プリンストン大学を首席卒業後、街の名士である一族の資産と自身が発明した革新的な技術の数々を基礎に、巨万の富を築いた有名人だ。

 

「しかし、実際問題として暴走事件が起きている以上、早く原因を見つけなくてはね。……例えば、見かたを変えてみるのはどうだろう? 僕の経験上、物事には目に見える以上の何かが隠されているものさ」

 

 社長が手元の端末を操作すると部屋の一面にあるディスプレイに暴走事故の現場写真が次々と写し出された。

 社長と役員たちは、高価な椅子を回転させてそちらを向く。

 

「暴走事件はすでに12件、今月だけで3件目。……さて、その共通点は?」

「いずれも自動車です」

「そうだね。自動車だ……中古のマイホームカー、コーラの運搬トラック、クレープの移動販売車、不良少年のバイク……車と一括りにするには、少しバリエーションに富み過ぎてるかな? 他には?」

「関係あるかは分かりませんが……その近辺で妙な女が目撃されています」

 

 役員の一人が手元の端末を操作すると、オレンジのレオタードを着た少女の姿が映し出された。

 老婆を抱えて空を飛んでいたり、暴走車をパンチ一発で粉砕したりしている。

 映画のようだが、これは現実に起こったことだ。

 

「まるでスーパーガールですな……嫌いじゃありませんが」

「どちらかというとワンダーウーマンでは? レオタードですし……嫌いじゃありませんが」

「むしろ、ジャパニーズ・アニメーションのキャラクターでしょうこれは……嫌いじゃありませんが」

「何にせよ若すぎますな。……いや嫌いじゃありませんが」

「とにかく、この空飛ぶショーガールが暴走車事件の犯人か……もちろん、ノーだろう」

 

 微妙に脱線しかけた議題を、社長は強引に戻す。

 彼女は素直に人助けをしているのだろう。

 事実、暴走車事件以外の事故や犯罪の現場でもたびたび目撃されている。

 

「スーパーヒーローですか……いるんでしょうか、そんな物が、現実に?」

「ボランティアにしては、少々……度が過ぎますな」

 

 懐疑的な経営担当の役員たちに、社長は少し眉を潜める。

 海千山千のビジネスマンである彼らは、無償の善意という物を信じるには資本主義に染まり過ぎていた。

 

「僕はいると思うが……まあ、ともかく彼女は関係ないだろう。とりあえず今はそうしておこう。さて他に真新しい情報は……」

「社長、今日の昼ですが銀行強盗事件が発生しました」

 

 技術屋である若い役員の一人が声を上げたが、周囲の役員は顔をしかめる。

 銀行強盗と暴走車の因果関係が見えないからだ。

 しかし、社長は先を促した。

 

「続けて」

「この事件で、奇妙な……実に奇妙な物が確認されまして……」

 

 言葉と共に、モニターに映し出されたのは荒い画像だった。

 素人が撮った物だろう。

 

「銀行の監視カメラの映像やスマートフォンの写真や動画は何故か消去されていましたが、居合わせた老人が偶然にも所持していた旧式のカメラの写真は無事でした」

 

 若い役員が説明するが、誰も聞いていなかった。

 そこに映し出されていたのは大きな人型だった。

 天井に届きそうなほど背が高く、辛うじて赤と青のファイヤーパターンが見て取れる。そしてこの巨人は、明らかに機械仕掛けだった。

 

「なんだ、これは……!」

「ロボット? KSI社製か?」

「しかしこんな、巨大な……CGか合成では?」

「事件があったのは今日の昼だぞ。そんな物を用意する時間はないはずだ」

「見ろ! 完全な人型だぞ! こんな画像でも重心も完璧なのが見て取れる!!」

 

 驚愕し、ざわつく役員たち。

 彼らは最先端ロボット企業の一員だけあって、そのロボットがいかに常識外れかすぐに理解したのだ。

 

「それと目撃情報によると、このロボットは複数いて……車から変形したと」

「馬鹿な! 玩具じゃあるまいしそんなこと不可能だ!!」

「暴走車が進化してロボットに変形できるようになったとか?」

「いやいやいや! いくらなんでもそれはないだろう!」

「やはり、見間違いかデマだろう」

「まあ、そうだろうな……」

「それよりも、今は暴走事件です!!」

 

 会議は紛糾しつつ、結局は巨大ロボの存在には懐疑的な方向に進んでいき、元々の議題である暴走車の件へと戻っていく。

 一方で、社長の反応は他と違った。

 その画像のロボットを食い入るように見つめ、やがて口元に笑みが浮かぶ。

 まるで、懐かしい友人の顔を見たような、そんな笑みだった。

 

「ようやく来たってわけだ……! 遅かったじゃないか……!」

 

 話し合いに熱中する役員たちの中に、社長の小さな呟きを聞いた者はいなかった。

 




これまでこの作品でのトランスフォーマーたちが変形しているのは、ゲイムギョウ界で作られた架空の車種、という無駄な設定がありました。
ですので、地球に到来するに至りやっと実車の名前を使えるワケです。

オートボット漂流者 キャノピー
元々はオートボットだったが、戦いを嫌いサイバトロンを出奔していた。戦いは不得手。
なんていうか、騎士王での扱いがあんまりだったんで、急遽登場したヒト。
イザベラを匿ってたくらいだし、心優しい(少なくとも愚連隊めいたドリフトたちよりは)んじゃないかと思います。
ビークルモードは、日本でもよく見るタイプのダンプ。(ロングハウルみたいなのは重ダンプというんだとか)

オートボットサバイバー スクィークス
キャノピーと共にサバトロンを脱出した年少のオートボット。
ベスパのスクーターに変形する。
大人しく甘えん坊な性格だが、地味に容赦がない。
戦闘は不得手で、どちらかというと修理が得意。
原作と違って変形できる(できなくなるほど壊れてない)

ケイド・イエーガー
ご存知、発明おじさん。
態度と口は悪いがなんやかんやお人好し。
機械技術は非常に優秀だが、発明家としてはいまいち。
40近くでやたらムキムキ、昔はアメフトやってた、銃を撃てば百発百中、不意打ちすれば戦闘職の人間に勝てる、と絶対に職業選択を間違ってる人。
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