新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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第52話 ケーシャとハウンド

 かつて、ケーシャはノワールにたずねたことがある。

 

「なぜ、アイアンハイドといつまでも仲良くいられるのですか?」

 

 親友のノワールはオートボットの戦士を父として大いに慕っているが、同時に愚痴も多い。

 

 やれ、いつも口煩くてたまらない。

 やれ、いつまでも子供扱いを止めない。

 やれ、そのくせ自分の私生活はだらしない。

 

 惚れた腫れたでもないのに、そんな異性をいつまでも好きでいられることが不思議でしょうがなかった。

 

「そうね……やっぱりアイアンハイドのことが好きだからよ。……もちろん父親としてね」

 

 ケーシャにとって『家族』……とりわけ父親というのは未知の物だ。

 傭兵たちは、あくまで師である女傭兵の部下であり、父親役とはまた違った。

 

「頑固で、素直じゃなくて、駄目なトコもあるけど……私が本当に辛い時は支えてくれて、一人で暴走した時は叱ってくれた……女神じゃなくて『ノワール』としての私をね。だからあの人は、私にとっては『お父さん』なの」

 

 はにかむように微笑むノワールの顔は、いつもより幼く見え、多分ケーシャが見た中で一番()の彼女に近いのだろうと、そう思わせた。

 

  *  *  *

 

 女教師の手によってクインテッサの像が破壊されたことで、妖精たちはコントロールを失うと同時に倒れ伏した。

 これでケーシャたちの洗脳も解ければ言う事なしだったのだが、そうはいかないようだ。

 

『この、スピッターの小便よりも……下衆な! 下衆な鉄クズがよくも! いい気になるなよ!!』

「落ち着け、今だに数はこちらが圧倒的に有利だ」

 

 激昂するマインドワイプに対し、ケーシャは全く動じる様子はない。その姿は歴戦の軍人その物だ。

 実際、まだオートボットたちの方が不利だ。

 だがせっかくの強力な兵隊を失ったマインドワイプの怒りは収まらない。

 

『いいや、落ち着けるものか!! 奴らにより強烈な、絶望を与えてやる!! ……コウモリアマモリオリタタンデワイプ、コウモリアマモリオリタタンデワイプ!』

 

 マインドワイプの声が呪文を唱えると、異変が起こった。

 突然部屋の中に霧が発生したのだ。

 

「ッ!」

「なんだ!?」

 

 ホット・ロッドとハウンドが背中合わせになって何が起こるにせよそれに備える。

 霧の向こうから、咆哮や悲鳴が聞こえる。やがてそれらは、錆に塗れ、半壊したトランスフォーマーとして現れた。それらはハウンドの記憶の中の亡き戦友や敵の姿をしていた。

 地球で見たゾンビを思い出してホット・ロッドは目を見開く。

 

「テラーコン!?」

「いや、どうせまたマインドワイプのトリックだろうよ……ッ!」

 

 これも幻の一種だろうと考えたハウンドだったが、そのゾンビ・トランスフォーマーの放ったブラスター弾に髭を焦がされて呆気に取られる。どうやら実体があるらしい。

 霧の向こうから迫ってくるのはゾンビばかりでなく、ホット・ロッドが悪夢でみた地球人が使っていた戦車もいる。

 

 突然、インフェルノカスが悲鳴を上げた。霧の中から山のように巨大な彼らの創造主、クインテッサの触手が迫ってきたからだ。同じようにスパークダッシュも逃げ惑う。

 この現象には敵味方は関係ないようだ。

 

「マインドワイプ!? 何を考えている……ッ!」

 

 虚空に向けて怒鳴るオンスロートだが、彼の前にも彼自身の悪夢の化身が現れた。

 それは不安げで、寂しげで、弱々しい顔をした、オンスロート本人だ。

 

「吾輩は戦いが終われば用済みだ……老兵は死なず、ただ消えゆくのみ」

「何を……!」

「これ以外に生き方など知らない。他の皆はそれぞれの道を見つけたが……誰か教えてくれ、戦いしか能のない奴は、平和な世界でどう生きていけばいいんだ?」

「黙れ!! 吾輩は……我輩はそんな軟弱な理由で戦っているのではない!!」

 

 弱音を吐く自分に向け、オンスロートは重機関砲を発射した。

 弾丸はもう一人のオンスロートを粉砕し、辺り一面に破片が散らばる。

 だがその破片の一つ一つがまるで泡立つようにして膨らみ、オンスロートの姿を形作る。

 

「忘れられるのは嫌だ……必要とされたい……認めてほしい……」

「戦い……戦いしか、出来ることがない……」

「戦いがなければ、吾輩は役立たずだ……」

「違う! 吾輩の戦術は芸術だ!!」

 

 オンスロートは狂気に駆られたように銃機関砲を乱射するが、粉々になった幻影は、やや時間を置いてより多くの幻影になって泣き言を吐きながら攻撃参謀を取り囲んでいった。

 

「ケーシャ……我が弟子よ」

 

 そしてケーシャの横には、当然のように彼女の師である女傭兵が立っていた。

 

「我が弟子……いや我が娘よ、お前には私の全てを授けた。私の知恵、技、殺すための全てを……」

 

 優しさと冷酷さが合わさった声で、女傭兵は囁く。

 洗脳が解けていないにも関わらずケーシャは動揺したように後ずさりするが、その後ろには別の影が現れていた。

 黒い髪をツインテールにした、ゴシック風の衣装の少女……ラステイションの女神ノワールだ。

 だがその表情は酷い嫌悪感に歪んでいた。

 

「ケーシャ、ケーシャ、私のお友達……なんて思うワケがないでしょう! この人殺し!」

「ッ!」

 

 ケーシャがついに表情に恐怖を浮かべる。すでに洗脳そのものは解けかかっているが、それどころではない。

 

「キキキ、苦しめ苦しめ! 生きとし生きる全ての者は苦悶にのたうつがいい!!」

 

 何処か上の方から陰湿極まるマインドワイプの声が聞こえてきた。

 通信を通した物ではないようで、術を使うためかこの部屋にまで来ているらしい。

 もはや敵味方の区別もなく、只々他者を苦しめることだけが目的になってしまっているようだ。

 

「お前は我がミームを継いだのだ。これこそまさに、親子というもの……」

 

 囁く女傭兵は、最後まで言葉を吐くことなく霧散した。

 ハウンドが、三連ガトリングを正確に撃ち込んだからだ。

 

「ふざけんじゃねえ……!」

 

 ギョッとするホット・ロッドに構わず、ハウンドは吼える。

 周囲の蘇ってきた戦友たちには目もくれず、ケーシャの前に再生した女傭兵を睨んでいた。

 

「テメエが親だと!? 親ってのは、子供を守り、教え、導くもんだろうが!!」

 

 そのブレインには、親友アイアンハイドの照れくさげな笑みが浮かんでいた。

 誰よりもディセプティコンに怒りを感じていながら、ノワールのためにそれを抑えた彼のことが。

 そして彼の怒りは、ケーシャにも向けられていた。

 

「嬢ちゃん、あんたもあんただ!」

 

 ビクリと、身体を震わせるケーシャに、ハウンドは怒りと悲しみがない交ぜになった表情で問いかけた。

 それは過去のことを責めているのでも、洗脳されたことを責めているのでもなかった。

 彼には自分が偉そうに説教するのは筋違いだと分かっていた。それでもどうしても言わなければならないことがある。

 

「なあおい……あんたとノワールは、友達なんだろう? お前さんの大切な友達は……こんな酷いことを言うような奴なのかい?」

「……ッ!」

 

 電撃を受けたようにハッとなって、ケーシャは目の前に立つ()()()()を見た。

 嫌悪に顔を歪め嘲笑を浮かべた……これが、これがノワール?

 

(違う……)

 

 ノワールは確かに自分にも他人にも厳しい人だ。

 他人の悪いと思った部分を隠さず指摘してくる人だ。

 強気で素直ではなく、口を開けばキツイ言葉が出てくるような人だ。

 

 でも、同時に人への確かな優しさを持った人だ。

 仲間や友達が歪みかけた時には、嫌われる覚悟で正そうとする人だ。

 

「違う! あなたはノワールさんじゃない!!」

「何を言ってるの? 私はノワールよ。あなたの思うノワール」

「そう! あなたは私の想像の中のノワールさんだ!!」

 

 本当は嫌われているのでは、疎まれているのではという不安と、兵士だった過去での自己嫌悪が混じって生まれた虚像が目の前のノワールだ。

 本物なら、こんなことを言うはずがない。いや、本当に()()思っていたなら、隠したりせずにもっと前に言ってきただろう。

 

「あなたもそう! あなたは師匠じゃない!!」

 

 ケーシャの声にもまったく表情を変えないノワール擬きを捨て置き、師の姿をした物を見据えた。

 

「師匠は私が殺した! それに、それにあの時、あの人は……!」

 

(忘れるな、ケーシャ……我々は戦いから逃げることは出来ない。どう足掻こうともな)

 

 戦いの末、ボロボロになった師は、それでも笑っていた。

 封印されていた……否、自ら目を逸らしていた記憶が甦ってくる。

 

 思えば、不自然なことは多かった。

 何故、師はケーシャに普通の学校への潜入を命じたのか?

 そこでノワールと出会ったのは、偶然だったのか?

 そして見計らったように、ケーシャが普通の女の子になりたいと願うようになった頃に教会に戦争を仕掛けるなどと言い出したのか?

 他の傭兵たちが、何故それに反対する素振りを見せなかったのか?

 

(だがお前は違う……戦いを止めて、好きに生きなさい)

 

 それはまだ引き返せる所にいたケーシャを、逃がすためではなかったのだろうか?

 そして偉伝子(ミーム)を継げということは……自分たちを忘れないでほしいということだったのではないだろうか。その可能性から、ケーシャはずっと目を逸らしてきた。師や傭兵たちを自分の過去と同一視し、恥ずべき物としてきた。

 

(忘れないで、ケーシャ……私たちはあなたの記憶の中にいるわ)

 

 全てはケーシャの憶測に過ぎない。あるいは本当に、師はケーシャを自分の複製にしようとしていたのかもしれない。

 

「ケーシャ、ケーシャ……私の、娘!!」

 

 師の姿をした何者かは、ケーシャに向けて銃を撃とうとする。

 だがそれより早く、ケーシャは相手の懐に潜り込むと腕をねじり上げ、銃を奪おうとする。

 だが彼女にその技を授けたのは、彼女の師だ。当然のように反撃される。

 

「私に勝てると思っているのか!」

(戦闘の基本は格闘よ)

 

 格闘、ナイフ、射撃……ケーシャは全ての技を駆使して相手に挑む。

 これらを全て彼女に叩き込んだのは師である。故にその動きはケーシャの上をゆく……以前戦った時の記憶と寸分たがわずに。

 

 だから勝ち筋も同じ。

 

「私たちのミームを継ぐのだ、ケーシャ!」

(人生最高の瞬間にしよう……)

 

 格闘戦の末に、銃の奪い合いになり一瞬の隙を突かれて銃を弾き飛ばされるも、こちらも相手の手を蹴り上げて銃を弾き飛ばし、跳躍して空中でそれをキャッチする。

 目の前の相手がそうであるようにこの銃も幻影であるはずだが、何故か銃……自分の持つ銃と対を成す銃は実体を持っていた。

 

「ケーシャァァァ! この人殺しぃぃぃ!!」

「ノワールさんはそんなこと言わない!!」

 

 背後からノワール……ケーシャの中の闇の化身であるノワールが襲いかかろうとするが、あっさりと後ろ蹴りで倒された。

 

「私を殺すのか、ケーシャ? 母親の私を……」

(見事だ、ケーシャ……)

 

 銃を突き付けられて怯えた顔を見せる女傭兵。

 いや、あの時彼女はこんな顔はしていなかった。

 

「確かに私はあなたのことを母親だと思っていた。……でもあなたたちは、ノワールさんでも師匠たちでもない……私の中の恐怖、()()()()!!」

 

 ケーシャは女傭兵とノワール……その姿を取った自身の恐怖心を前に吼えた。

 その堂々とした姿に、ハウンドは心からの笑みを送る。

 

 誰の中にでもある、恐怖や不安。それと向き合えるようになったなら、それは立派な成長だ。

 

 そしてケーシャが躊躇わずに撃った瞬間、ノワールと女傭兵の姿にノイズが走る。一瞬だが見えた物は……蝙蝠の群れだ!

 蝙蝠が集まって人の形を取り、その上から立体映像が重ねられて、蝙蝠ドローンに備え付けのブラスターによって幻影が攻撃してきたと見せかけていたのだ。

 

「ッ! そういうトリックかよ!!」

 

 戦車に向けて銃を撃っていたホット・ロッドは、相手の正体を知ると同時にその卑劣な手段に憤る。

 人間やトランスフォーマーの弱い部分に付け込む、作戦とも言えない策だ。

 

「ふ、ふん! そんなこったろうと思ったのである!!」

 

 自分の幻影に囲まれて恐慌状態に陥っていたオンスロートも、何とか正気を取り戻した。

 しかし、元より知能の低いインフェルノカスやスパークダッシュはそうはいかずに創造主の触手から逃げ回っていた。

 オンスロートは幻影を攻撃するが、一端は散らすことが出来ても傷ついた蝙蝠ドローンの分は他の蝙蝠がやってきて補うことで時間を置いて元通りになってしまう。

 蝙蝠自体の攻撃力は低いものの、これでは蝙蝠を全て倒すかマインドワイプ本体を叩かないといつまでたっても敵が減らない。

 しかし、ハウンドは三連ガトリングを掃射して幻影を一掃し、再生する前にケーシャの隣に立つと笑う。

 

「ようするに全部潰しゃあいいんだな? 任せときな……お嬢ちゃん、いけるかい?」

「問題ない……ありがとう、ハウンドさん。さっきの一喝はその……効きました」

 

 傭兵としての声ではなく、いつもの少女としての声で、ケーシャは礼を言った。

 この太った髭の大男の声がなければ、自分自身の恐怖に食い尽くされていたかもしれない。

 するとハウンドは今までとまた違う、暖かみのある笑みを浮かべてパチリとウインクした。

 

「なーに、歳を取ることの良いことはな、お前さんたちみたいな若いのの助けになれることさ。ま、それに比べりゃあフレームがあちこち歪んじまうとか、廃油のチューブが詰まって臭いがするなんてのは軽いもんだ……さあて、いくぜ嬢ちゃん!!」

「はい! ゴールド、オン!!」

 

 こちらも年相応の笑顔になったケーシャだが、すぐに表情を引き締めて叫ぶ。

 光と共にその体がキューブ状のゴールドコアに変換され、ハウンドの胸に嵌め込まれた。

 モスグリーンの熟練兵の身体の隅々にまで力が漲り、その溢れるエネルギーがコアの歯車の紋章とハウンドの目を黄金に輝かせるが、今回はそれだけは終わらない。

 ハウンドの背中側がギゴガゴと音を立てて変形し、大きなバックパックになっていく。ケーシャが背負うゴールドユニットと似た形だ。

 

『これは……!』

「はっはー! こいつはいいぜ! さあ、反撃開始だ!!」

『ええ! デストロイ・ゼム・オール!!』

 

 ハウンド・G(ゴールド)フォームのバックパックの右側から折り畳まれていたレールガンの長大な砲身と、それよりやや短めの誘導レーザー砲が肩に担ぐような形で展開し、左側からは8連装ミサイルポッドが展開し、さらに バックパックの一部が分離して拡散ビーム砲を備えた二基のビットとなって宙に浮かぶ。

 そのあまりにも凄まじい武装の数々に、ホット・ロッドとオンスロートはギョッとする。

 

「お、おいハウンド! そんなもんここで撃ったら……!」

「貴様、城ごと吹っ飛ばす気か!?」

「心配すんな。むしろそこを動くなよ!!」

 

 不敵に笑むハウンドの右目に眼帯のようなターゲットスコープが装着される。そうするとますます変身したケーシャに似ていた。

 両脚に爪のように備わった小型パイルバンカーが床に打ち込まれ、ハウンドの身体をしっかりと固定する。

 

「ッ! 時よ、止まれ!!」

 

 咄嗟にホット・ロッドは両手に構えた拳銃から時止め弾を発射した。

 弾はオロオロとするインフェルノカスたちの前で弾け、纏めてタイムバブルの中に取り込む。

 

 一拍置いて、手持ちの三連ガトリングを含めた全ての兵装が火を噴いた。

 

 砲弾が戦車を粉砕する。

 ガトリング弾がゾンビを薙ぎ払う。

 レーザーが偽オンスロートを蒸発させる。

 ミサイルがクインテッサの触手を吹き飛ばす。

 さらに背後や頭上は二基のビットが飛び回ってカバーし、死角はない。

 しかもそれらはケーシャのゴールドサァドとしての能力である『弾数無限』によって尽きることはない。

 

 無限の弾丸、無限の破壊、無限の蹂躙……しかしホット・ロッドたちや倒れた妖精には掠りもしない。

 恐るべき正確さ精密さで、ただただ悪夢を纏った蝙蝠たちを紙キレを火で炙るが如く燃やし尽くしていき、その爆風によって霧を吹き飛ばしいく。

 

「こ、こんな……こんな馬鹿なぁぁぁッ!?」

 

 霧の中、天井に逆さづりになって潜んでいたマインドワイプはそこから逃げる間もなく、レールガンの弾に胸部のど真ん中を撃ち抜かれた。

 

 圧倒的な火力による攻撃は、当然の如く敵の全滅を持ってすぐに終わった。

 後に残されたのは跡形もなく破壊された蝙蝠ドローンの残骸と無傷のオートボット、ディセプティコン、妖精。 これほどの無茶苦茶な火力にもかかわらず、神業の如き正確な射撃によりほとんど傷ついていない建物。

 さすがにフルファイアは身体に負担がかかったようで、全身から高熱と煙を発しているハウンド。

 

 そして胴体部を破壊され、首だけで床に転がるマインドワイプだった。

 

「キ、キキ……せ、せっかく蘇ったってのに、こんな結末か!」

「夢は覚めるもんさ。元居た所に帰んな……地獄にな」

 

 恨めし気に呻く吸血鬼の頭を見下ろして、ハウンドは首を横に振る。

 ホット・ロッドやオンスロートも周りを取り囲んだ。

 

「ギギ……キ、キキ、ま、まあいいさ。お前たちの未来には、俺が見せたのなぞ比べ物にならない恐怖が待ってるんだからなぁ……! 精々、足掻きやがれ。キ、キキキ、キキ……キ……」

 

 負け惜しみか、あるいは彼にしか分からぬことがあったのか不気味な言葉を最後に、マインドワイプの意識は元来た闇の中へと戻っていった。

 彼の頭部はギゴガゴと音を立てて、小さいマインドワイプの姿になり、さらにそこからネズミのようなモンスター……ワレチューが転がり落ちた。目を回しているが、生きてはいるようだ。

 

 ふとその場にいた者たちは、天井の穴や窓の外から陽光が差し込んでいることに気が付いた。

 

 長い夜が明けたのだ。

 

「俺たちは悪夢なんぞに負けねえよ」

 

 二度目の死を迎えたマインドワイプに向けて、ハウンドは朝日を浴びながら口に咥えた実包に火を点け、力強い笑みを向ける。

 彼から分離したケーシャがその横顔を見上げると、脳裏にかつてノワールから聞いた言葉が甦った。

 

(頑固で、素直じゃなくて、駄目なトコもあるけど……私が本当に辛い時は支えてくれて、一人で暴走した時は叱ってくれた)

 

(だからあの人は、私にとっては『お父さん』なの)

 

 自然とケーシャの顔にも笑みが浮かんだ。

 それはいつもよりも幼く見える、ゴールドサァドでも傭兵でもない、多分()の彼女に限りなく近い微笑みだった。

 




今回のキャラ紹介

ハウンド・G(ゴールド)フォーム
ケーシャの信頼によって生まれたハウンドの新たな姿。
背中などにケーシャのゴールドユニットに似た武装が施されており、右肩のレールガンと誘導レーザー砲、左肩の8連ミサイルポッド、バックパックの一部が分離したビット二基、ともはや移動要塞が如き超重武装(というかメタ〇ギアREXまるまる背負ってるようなもんだと思ってもらえば……)
さらにケーシャの能力により弾切れがないため、出鱈目極まる火力を誇る。

具体的には、ロストエイジの終盤でダイノボットの助けがなくても何とかなっちゃうぐらい。

また右目に装着されたターゲットスコープによって正確無比な射撃を可能にしている。
ただしやっぱり耐久力が無限になったワケではないので、オーバーヒートする危険も高くなっており、また機動力はどうしても落ちてしまう。

しかしまた分割……こりゃ次の話から巻きを入れないと……。
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