新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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第53話 そして夜が明けて

(止めて! 止めてよ!)

 

「ランスロット、なんということを……!」

「王よ……あなたに人の心は分からない」

 

(みんな、止めて……お願い)

 

「アーサー王……父よ、母のため貴方を討つ!」

「モードレッド……許せとは言わぬ」

 

(アーサー、モードレッド……貴方たちは親子なのよ……なのに、どうしてこんな!)

 

「済まないな、モルガナよ。儂がもう少ししっかりしていればあるいは……む!? な、なんと空から竜が! 噂には聞いていたが、竜を見たのは初めてだ!!」

 

(ドラゴンストーム! それに、ああ、そんな……()()()()……!)

 

「その呼び方は止めろと何度言えば分かるのかしら? あなたたちのことを我が子などと思ったことはありません」

「竜を使役するとは、そなたはいったい……!? そ、その妖しくも美しい姿、よもやケルト人の伝承にある女神か?」

「女神……女神ね、当たらずとも遠からずと言った所かしら。私はクインテッサ、生命のプライムにして、新たな世界の創造主」

 

(お母さま、お願いします。後生ですから、どうか彼に手を出さないでください……彼はもう老いていて、多くの物を失いました。この上……きゃあ!)

 

「モルガナ!」

「黙りなさい、モルガナ。……さて肉ケラよ、私は今非常に面白い気まぐれを起こした。……お前に知恵を与えてやろう。お前たちが魔法と呼ぶ業、生命を繰り死をも超える力を。もちろん、相応の対価は貰うがな」

 

(く、口車に乗っては駄目! お母さまはあなたを……あなたたちを利用する気なのよ!)

 

「な、なんと! これが(まこと)の魔法か! この魔法があれば()()()()()! 今一度、ブリテンを! アーサー王の物語を!!」

 

(だめ……駄目よ、マーリン!!)

 

 

 

 

 

「だめ、止めて……ッ!」

 

 顔に掛る光でチーカマは目を覚ました。

 ぼやけた視界に知らない天井が映った。ここは何処だ、自分は何故こんな所にいるのだろうか?

 上体を起こして首を回すと、そこは何処かの大きな部屋で自分は床に転がされていたようだった。いや自分だけではなく、相方のミリオンアーサーやくろめ、子供たちも寝かされていた。

 あの眼鏡の女教師が、みんなを起こそうとしている。

 そこまで認識した所で、急に記憶が甦った。森の中の隠れ家、鐘の音、そして悪夢……。

 

「ッ!」

 

 強烈な頭痛と吐き気に頭を押さえるが、やがてそれも落ち着いてくる。

 そして断片的にだが、彼女は思い出した。自分が何者かを。

 

 

 

 

 

 ついにマインドワイプを冥府に送り返した一同だが、それで万事解決とはいかなかった。

 未だにオートボット、ディセプティコン、第三の組織のいずれも遺物を手に入れていなかったからだ。

 妖精たちはいつの間にか姿を消していた。

 

「ち、ぢゅー……ひ、酷い目にあったっちゅ。SAN値が大ピンチというか、深淵を覗き込んでないのに深淵の方から『ネックブリーカー、死ねえ!!』かましてきたような……今日はもう帰るっちゅ」

 

 しかし、そこで目を覚ましたワレチューはトットと撤退することに決めた。

 

「オイラにもワルとしてのプライドがあるっちゅから礼は言わないっちゅよ」

 

 結果的にとはいえ命を助けられたのにも関わらず、憎まれ口を叩くのが彼らしい。

 それでも、プイと顔を背けて一言。

 

「……でも借りはいつか返すっちゅ」

「ああ、期待せずに待ってるよ」

 

 その言葉に、ホット・ロッドは苦笑したのだった。

 続いてオンスロートもあのハウンドの超火力を見た後で、それと戦う気は起らなかったらしくさっさと撤退していった。

 去り際に、スカルクらインフェルノコンたちは酷く不思議そうな顔をしてホット・ロッドにたずねてきた。

 

「お前、なんでオデたち、助けた?」

「なんでって……理由なんかないよ」

 

 あまりに当然のことを聞いてくるので逆にキョトンとして返すと、スカルクはもっとキョトンとした。何だか話がかみ合っていない。

 オンスロートの方は、インフェルノコンの困惑の理由が分かっているらしく不愉快そうに鼻を鳴らした。

 

「ふん、甘い小僧だ……ガルヴァトロンの弟というだけはある。奴も甘さや温さが抜けんからな」

「…………かもな」

 

 何とも言えない顔をするホット・ロッドにオンスロートはもう一度鼻を鳴らすと、今度こそ去っていった。

 

 ホット・ロッドの胸に去来したのは、やはりあの悪夢の内容だった。

 ガルヴァトロンを兄と呼ぶ自分、サイクロナスとスカージ、滅びゆく世界、そして……。

 

「ロディ!」

 

 天守へと続く扉が開かれて向こうから飛び込んできたのは、泣きそうな顔の暗黒星くろめだった。

 後ろには、酷く疲れた顔のミリオンアーサーと子供たちもいた。女教師が助けてくれたようだ。

 

「ロディ……ロディ! やっと逢えた!!」

 

 何があったのか、涙を漏らしながらホット・ロッドの足に縋りつくくろめ。ホット・ロッドの脳裏に、先ほどよりも鮮明にあの悪夢の世界が甦る。

 

 天王星うずめ……憎き、仇。

 

 ホット・ロッドの青いオプティックに、赤い光が……憎悪の炎が宿る。

 自然に屈んだホット・ロッドは、女神の容易く捩じ切れそうな細首に乗った頭部に震える手を伸ばし、そして……。

 

「ああ、くろめ。大丈夫だ……」

 

 優しく、撫でた。

 あの悪夢が本当なのかは分からない。絵空事と無視も出来ない。

 それでも、心細さから涙を流す彼女を見て放っておくことが出来なかった。近いうちに過去と向き合うことになるだろうという、奇妙な予感を覚えながらも。

 

 すすり泣くくろめとそれを慰めるオートボットを見て、子供たちの一人である黒髪のアキラは何やら察したらしく、大きな衝撃を受けた様子で水色髪のカインに肩を叩かれていた。

 

 初恋とは、とかく実らぬ物である。

 

「……さて、残された問題は遺物が何処にあるかですね」

 

 ハウンドの横に並んだケーシャは、本題を口にした。

 色々と遠回りしたが、そのためにこの地に来たのだ。しかし、ヒントになるはずの妖精たちは姿を消してしまった。

 未だ疲労の色が拭えぬ相棒の横に並んだチーカマは、気づかわし気な顔をしながらも口を開いた。

 

「そのことだけど……みんな、付いてきてちょうだい」

 

 

 

 

 

 チーカマの言葉に従って一同がやってきたのは、子供たちが隠れ家にしていたあの洞穴の前だった。

 そこで待っていたのは、九姉妹を始めとする妖精たちだった。

 

 妖精たちは、チーカマと……ホット・ロッドの姿を見とめるや一斉に膝を軽く折って礼をした。

 すなわち、『おかえりなさい、お姉さま』と、チーカマに向かって。

 

「これはいったい……」

「あ~……説明が難しいのだけれど」

 

 困惑する一同、頓に相方たるミリオンアーサーに向かってチーカマは困ったように微笑んだ。

 

「私はどうやら、モルガナだったみたい」

 

 彼女の説明によると、元々この地の妖精たちのリーダーだったモルガナは、ある事情のためにこの地を離れることになった。

 話は今から数十年前にまで遡る。かつてこの地をある魔法使いが訪れた。

 彼は遠い昔に封じられたはずの『妖精を無力化する魔法』の使い手だった。その魔法によって妖精を無力化した彼は、妖精たちが守っていた遺物ソラス・ハンマーを持ち去ってしまったのだという。

 奪われたハンマーを取り戻すため、モルガナは姿を変え、自身の記憶を封印し、ある人物の手を借りて森を出た。

 

 それが、ミリオンアーサーの父ウェイブリー卿である。考古学的な知識から古代サイバトロン語を知った彼は、妖精と何とか話すことが出来たのだ。

 

「で、その魔法使いってのは……」

「何となく察しは付くんじゃない?」

 

 森の中心部で、困ったように笑うチーカマことモルガナは、椅子の形をした樹に腰かけていた。周囲には彼女を姉にして女王と慕う妖精たちが侍っている。

 今までと違って超然とした様子を見せるチーカマに試すように視線を向けられて、ホット・ロッドは少し思考を回した。

 ソラス・ハンマーにはあらゆる物質を加工する力がある。偉大なるプライムの力の、その僅か一滴分でも引き出せたなら、可能となることはいくらでもある。

 

 例えば、伝説の剣のコピー品を量産するとかだ。

 

「……マーリンか」

「ええ、正確にはそれを名乗る男よ。微かに残っている記憶にあるマーリンは……()()()マーリンはあんなのとは全然違ったわ」

 

 嫌悪も露わにチーカマは吐き捨てた。

 ソラス・ハンマーの在り処とマーリンの目的を探るため……そしてミリオンアーサーのことが心配で彼女のサポート妖精になったモルガナだが、そのための術式のせいで多くのメモリーと力を失う破目になった。思い出せたことも、かなり断片的だ。

 

「さあ……それでも憶えていることがあるわ。……ロディマス、炎の戦士よ」

 

 チーカマは玉座から立ち上がると、妹たちと共にその場で頭を垂れた。

 

「私たちは、貴方を待っていたわ。マーリンが予言した大いなる危機に立ち向かう救世主。我ら妖精は、貴方と共に戦います」

 

 当然のことながら、ホット・ロッドはこの状況にむしろ混乱するばかりだった。

 そりゃあ、ただでさえ問題山積みなのに、急に救世主呼ばわりされても困る。

 

「ん、まあそういう反応になるわよね。まあ、そう固くならずにファンクラブが出来たくらいのもんだと思ってくれればいいのよ」

「そういうもんか……」

「そういうものよ」

 

 頭痛を堪えるようにホット・ロッドは額に手を当てる。

 しかし大いなる危機ときた。イストワールも言っていたことだ。

 

「危機っていうのは具体的に何が起こるんだ?」

「マーリンはそれが何なのか、頑なに言おうとしなかったわ。私たちはそれをお母さま……クインテッサの再来だと考えているわ」

「…………」

 

 クインテッサ。創造主を自称する、最初の13人の一柱。

 ガルヴァトロン、妖精、騎士、そして『杖』、それらは元を辿ればクインテッサに繋がっている。

 クインテッサが杖を取り戻し、地球を滅ぼすというのは大いなる危機というには、十分過ぎるほどだろう。

 ならばまずは、これまで通りに杖を手に入れることに注力し、クインテッサへの対策を立てるべきだろう。

 

「君とソラス・ハンマーの件も含めて、マーリンと話すべきだな」

 

 真実の追求もそうだが、今ブリテンの実権を握っているのはあの老魔法使いだ。しかし、あの老人がそう簡単にこちらに従うだろうか?

 遺物について知らないというのも嘘の可能性が出てきた。

 さらにウェイブリー邸の地下にあった日記には、キャメロットの魔術師から歴史を調べることを依頼されたとあり、ミリオンアーサーの父はその人物のことを酷く警戒しているようだった。おそらく、それがマーリンなのだろう。

 これは、本格的に調査する必要がありそうだ。

 

「……だけど、先にネヴュロンに向かう方が先だな。最後の遺物をディセプティコンから守らないといけない」

「それなら、マーリンのことは私が探っておきましょう」

 

 そこで発言したのは、ハウンドの横で話しを聞いていたケーシャだった。

 一同の視線が集まると、ケーシャは不敵に笑った。

 

「あのお爺さんが正直に話してくれるとはとても思えませんからね。多少は、ダーティーにいかないと」

 

 ホット・ロッドがチラリとハウンドを見ると、歴戦の勇士は彼女に任せると表情で語っていた。

 少し考えたホット・ロッドだが、すぐに頷いた。下手を打てばこの国の立場がさらに悪化するだろうが、すでにそれで済まない()()が動いている予感がするからだ。

 些かグレーゾーンに足を突っ込むことになるが、調べておくべきだろう。

 

「分かった。ミリアサ、少しルール違反になるが許してほしい。 ……ミリアサ?」

 

 そして未来の王候補に一応の話を通そうとするが、どうも様子が可笑しかった。

 ミリオンアーサーは、自身の王権を証明するエクスカリバーを両腕で抱きしめていた。

 チーカマに向けられた視線は、置いてけぼりにされた幼子のように不安と恐怖に揺れていた。

 

「ミリアサ? どうしたんだ、大丈夫か?」

「ッ! い、いや大丈夫だ。そんな感じに進めてくれ。うん、大丈夫だ……」

 

 くろめに声をかけられてそう返してきたが、明らかに大丈夫そうではない。身体も声も震えている。

 他の誰かが行動するより早く、チーカマはフワリと浮き上がってミリオンアーサーに近づくと彼女を優しく抱きしめた。

 

「はいはい、無理しないの。らしくもない」

「ち、チーカ、いやモルガナ殿……」

「チーカマでいいわよ。確かに記憶を失ってはいたけれど、貴方と過ごした時間も決して嘘ではないもの。わたしは今も、あなたのサポート妖精よ」

 

 母性を感じさせる優しい声に、ミリオンアーサーの震えが止まりエクスカリバーを取り落とした。

 マーリンが魔法をかけたからではなく、彼女自身の意思でチーカマが傍にいてくれるのだと感じたからだった。

 

「……すまない、チーカマ」

「いいわよ。相棒でしょ?」

 

 

 

 

 

 一同はいくらかの休息を取った後で、それぞれの目的地に向かうことになった。

 ホット・ロッドたちがネヴュロン、ケーシャとハウンドがキャメロットだ。

 チーカマは妹たちと別れを惜しんでいたが、それでもミリオンアーサーと一緒に行くことに決めていた。

 

「とりあえず、一段落だな」

 

 ホット・ロッドやくろめとケーシャが話しているのを少し離れた場所から眺めながら、ハウンドはシミジミと呟いた。

 長く、奇妙な夜だったが、それも明けてしまえば夢の一間に過ぎなかった。

 

 実包を葉巻のように吹かすハウンドの横に、あの眼鏡の女教師が自然と並んだ。

 少し自信を付けた表情のケーシャを見るその目付きは、優しくも寂し気だった。

 

「……あの時はありがとうな。銃、投げたのあんただろ?」

「ふふふ、あなたは誤魔化せそうにないわね」

 

 夜の戦いで幻の女傭兵の持っていた銃を、ケーシャが手にした。幻影が持っていた物なら幻影のはずだが、銃は確かな実体を持ち今もケーシャが懐にしまっている。

 それは、本物の銃を誰か……女教師が放ったからだった。

 あの銃はケーシャの師が愛用していたこの世に二つとない物。つまり……。

 

「いつから気付いていたの?」

「初めてあった時から違和感はあった。身体の重心が左右で少しズレてたからな。お前さん、内蔵や骨格をかなり機械に置き換えてるな。特にその腕、義手だろう?」

 

 女教師……ケーシャの師である女傭兵は微笑みながら、左手をヒラヒラさせた。傍目には普通の手にしか見えない。

 

「特に酷い傷を負ってね、切断するしかなかったの。……トランスフォーマーの技術とは凄い物ね。生身の腕とほとんど変わらないわ。でもそれだけで私の正体を察したワケではないでしょう?」

「お前さんから、()()の臭いがしたからな。だいぶ薄まってたし巧妙に隠しちゃいたが、それでも分かる」

「さすがね」

 

 負けたとばかりに肩を竦めた彼女はポツポツと自分の物語を口にした。

 死に場所を求めて戦いを起こし、ケーシャとの戦いで重症を負った彼女だが、何人かの部下により救出されサイボーグ手術を受けることで一命を取り留めていた。

 皮肉にも、その技術は彼女たちの戦闘方を時代遅れにしたトランスフォーマーによって齎された物だった。

 その後、主要四カ国を離れ海の彼方へ逃亡しようとするが、船が難破し彼女だけがブリテンに漂着したのだ。

 

 手術からこっちは彼女の意思に反することだったが、それでも女傭兵に生きて欲しいと願う部下たちによって彼女の意識がない間に行われたことだった。

 

「……最初はすぐに部下たちの所へ行こうと思った。でもふと思ってしまったの。ここには私を知る者は誰もいない。敵も味方もない。やり直せるんじゃないか、って」

 

 実のところ、愛弟子ケーシャがそうであるように、彼女もまた戦いにしか生きられない自分を倦んでいた。

 必死に戦ううちにカリスマに祭り上げられ、いつの間にかそれ以外の生き方は許されなくなっていた。

 それでも彼女はそんな自分を受け入れていたし、仲間たちのことを大切に思っていた。

 だが思いもかけずに訪れた『生き直し』の誘惑は、逆らい難いほどに魅力的だった。

 幸いにして、断絶の時代の技術を使えばサイボーグ化した身体を整備することは出来た。

 

 持ち前の潜入スキルで人々の輪に入り込み、昔から憧れていた教職について、子供たちと一緒に暮らし……。

 楽しかった。やっと自分自身として生きているのだと、そう感じた。

 ケーシャは気付く素振りも見せない辺り、本当に昔の面影がなくなってしまったのだろう。

 

「無責任よね。あの子が苦しんでいるのに、自分はこんな所で呑気に暮らしていたんだもの」

「……確かにな」

 

 敢えて感情を殺した声色の女教師に、ハウンドは敢えて厳しい声で言ったが、それ以上攻めるようなことはしなかった。

 そうするには彼は硝煙の臭いが染み付きすぎているし、過去を捨てて別の人間になろうとした彼女は、皮肉なくらいケーシャに似ていたからだ。

 

「いつかでいい。必ず、あの子に会いにいって、良く話し合いな。……なに、その時は俺も一緒にいてやっからよ」

「……ありがとう。いい男だな、あなたは」

 

 一転、茶目っ気のある顔でウインクしてみせるハウンドに、女傭兵は頬をやんわり染めて柔和な笑みを見せるのだった。

 

 そんな二人を遠目に見ていたカインは何やら察したらしく、大きな衝撃を受けた様子でアキラに肩を叩かれていた。

 

 初恋とは、とかく実らぬ物である。

 

  *  *  *

 

「で、これでハッピーエンドッスか? つまんないッスねえ」

「ふふふ、いやこれでいいんだ。マインドワイプは良く働いてくれたよ」

 

 何処とも付かぬ闇の深奥。

 ライダースーツの男、ミラーはゲーム盤の駒を進めながら、ほくそ笑む。

 

「でもあいつら、みんながみんな少し大人になった、って感じッスよ?」

「そうでもないさ。彼らの中に不信の種は蒔かれた。後は哀しみや怒りという水を吸って大きく育ち、悲劇という花を咲かせるのを待てばいい」

「はあ……」

「天王星うずめ……もとい暗黒星くろめはロディマスへの依存を増し、逆にロディマスは己の憎悪に無理矢理蓋をした。この齟齬はやがて致命的な結果を招くだろう」

 

 ミラーは駒を動かす。

 静かに、慎重に、そして対戦相手にとって致命的な損害を与えるように。

 

「加えてモルガナは、色々とややこしくなりそうな情報は敢えて言わなかった。……これは信頼に罅を入れるには十分なことだ」

 

 脇に控えたタランチュラスは、わざとらしく肩を竦めてみせた。

 

「まだるっこしいッスねえ。なんて言うか、アタシたちのいつものやり方と違う気がするッス」

「前にも言っただろう? 今回はいつもとちょっと違うことをしたい気分なんだよ……さあ、そろそろゲームも動く頃合いだ」

 

 ミラーは駒を動かす。その駒は飾り気のない真っ黒な立方体で、まるで墓石のようだった。

 その表面にはアルファベットで『ハロルド・アティンジャー』と刻まれていた。

 




トランスフォーマー:ラスト・スタンド・オブ・レッカーズを読みました。
ハードにもほどがある内容だけど、この世界線で人間とTFの共闘が見れたのが良かったです。
そして前情報どおりの狂人なオーバーロードさん……『メガトロンと殺し合いたいから命令違反する』ってあーた……なんて厄介なファンなんだ。
こういう面倒なのを引き寄せるからカリスマが過ぎるのも考え物。
っていうかハ〇ター! ボンブシェルに死んだ方がマシな目に合わされたハン〇ー・オ〇イオン!? 生きてたのか君!?


あとネプテューヌのOVAも見ました。
久し振りに動く女神たちが見れて大満足!
僕の夏休み山! 大丈夫か、版権とか!?
大人ネプテューヌは良い感じに頼れますねえ。

さて、次回以降本格的に巻き巻き……。

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