新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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更新が遅れ、申し訳ありません。


第54話 外敵、襲来

 ブリテンの沿岸にあるネビュロンの地。

 かつてこの地はアーサー王に仕える一族が治めていた。高潔な彼らは、外敵の脅威からこの地を守護すると共に、ある秘密の使命を帯びていた。

 だがそれも昔の話だ。

 

 灯台下暗しというべきか、欲に目の眩んだ臣下に陥れられて領主の座を追われ、一族は海へと追いやられた。

 いつか使命を果たすことを誓い、『天を仰ぐサソリ』の旗を掲げて船出した彼らの傍には、()()()()()()()()()()()が寄り添っていたという……。

 

 時は流れ現代。

 

 ネビュロンのとある森の中にオートボットたちの宇宙船エイハブが停泊していた。

 シーシャ、クロスヘアーズ組とエスーシャ、ドリフト組はここを拠点にネビュロンの地に隠された遺物を探していたのだ。

 ところが全く見つからず、同じく遺物を探しにきたディセプティコンと小競り合いになるばかりだった。

 

「そもそも、あの一族が遺物を置いてブリテンを出ていくとは思えないわ」

 

 モルガナとしての記憶をある程度取り戻したチーカマは、難しい顔で腕を組む。彼女の知る騎士の一族は、遺物を守る己の使命に誇りを持っており、それを放棄するとは思えなかった。

 せめて裏切った家臣の一族に話を聞こうにも、こちらも暴政が祟って数代前に断絶していた。

 ここにきて、遺物と杖への手掛かりは完全に途絶えてしまったというワケだ。

 

「みんなすまないな、無駄骨折らせて……で、これからどうするかだけど」

「もう一度、ウェイブリーの屋敷を調べてみるのはどうかしら?」

 

 ホット・ロッドは険しい顔でドリフトやクロスヘアーズに詫びると、チーカマがそんな意見を出した。

 確かに何か見落としがあるかもしれないし、今のチーカマならまた違った見方が出来るだろう。ホット・ロッドはすぐに決断した。

 

「そうしよう。バンブルビーと合流し次第、アセニアに戻るぞ」

「無駄骨空振りばっかりで、まーったく面倒くせえ任務だぜ!」

 

 首を回しながら、クロスヘアーズが悪態を吐く。だが無理もない。

 杖のヒントである遺物は、まだ唯の一つでさえも回収できていないのだから。

 と、その時急にチーカマが顔をしかめた。

 

「……メッセージを受信したわ。マーリンからよ」

「何?」

 

 その言葉にミリオンアーサーが反応した。

 どうやらサポート妖精はマーリンから直接通信を受けられるようだ。

 顔を見合わせたホット・ロッドとミリオンアーサーが頷き合いチーカマが手を翳すと、空中に映像が投射された。

 長い髭を蓄えた鋭い目つきの老人は、まごうことなく次期王選定を取り仕切るブリテンの宮廷魔術師にしてフェミニアからソラス・ハンマーを奪い去ったマーリンだった。

 

『全てのアーサーに告ぐ……』

「全サポート妖精に映像付きに送られてきたみたい」

 

 重々しく口を開くマーリンに、チーカマは不快そうな視線を向けた。彼のしたことを思えば、それも仕方ないだろう。

 

『由々しき事態だ。外敵が襲来する予兆が確認された』

「なんだと!?」

 

 ミリオンアーサーが目を剝く。

 外敵、それは初代アーサー王の時代からブリテンを脅かす謎の侵略者だ。

 

『外敵はおそらくネビュロン地方に上陸するものと思われる。近隣にいるアーサーはただちに集結せよ……』

「なんということ、この大事に外敵まで現れるとは!!」

「…………」

 

 顔を険しくする相棒に、チーカマは何故か複雑そうな顔をする。

 だがその顔がすぐに不愉快そうな物に戻る。マーリンからこちらに通信が入ったからだ。

 映像が切り替わるも、やはり全く変わらぬしかめっ面が現れた。

 

『しばらくだな、ミリオンアーサーよ』

「マーリン、この危急の時に何用か?」

『今回はおぬしに用があるのではない』

 

 丁寧な態度の未来の王候補を捨て置き、マーリンはその後ろに立つオートボットを睨んだ。

 

『やはりミリオンアーサーのもとにいたか、客人よ。遺物探しは上手くいっておらぬと耳にしたぞ』

「どの口が……!」

 

 ホット・ロッドの隣に立つくろめの目付きが鋭くなり、遺物のことを隠していたことを追求しようとするが、当の相方に視線で制止された。他のオートボットたちも同様だ。

 現状、こちらの味方とは言えない老魔法使いは、しかし一応はブリテンの代表なのだ。

 潜入しているハウンドたちのためにも、こちらが不信感を抱いていることを悟らせるのはよろしくない。

 

「しばらくです、マーリン殿」

『挨拶はいらぬ。それよりも此度の外敵の件だが』

「我々に関わるな、とおっしゃるのでしょう?」

 

 年若いオートボットに先読みされて、マーリンは眉をピクリと動かした。ホット・ロッドにしてみれば、この老人の言いそうなことぐらい分かる。

 

『……その通りだ。これはあくまでもブリテンの問題よ』

「なるほど。しかし我々はちょうどネビュロンにおりますので、人々の避難を手伝うくらいのことはしたくなります。燃える家から子供を助けるのはよくて、燃えようとする街から人々を助けるのは良くないというのは、道理が通らないでしょう」

 

 痛い所を突かれたのか否か、マーリンは顔を不愉快そうに歪めた。

 しかし、人命救助についてはなし崩しとはいえ、それをマーリンが認める形になった前例がある。

 

「おい、あいつ前より口が上手くなってないか?」

「うむ……何があったものやら」

 

 クロスヘアーズとドリフトは若い隊長の様子に面食らい、小声で話し合う。

 本人に自覚があるかはともかくとして、あのフェミニアでの悪夢はホット・ロッドの意識に変化を齎していた。

 

「もしその過程で()()()外敵なり何なりに邪魔されたとして、これを退けるのは正当防衛でしょう」

『ふん、まあよかろう……好きにするがいい』

 

 そう言ったのを最後に、マーリンの映像は消えた。

 ホット・ロッドは一つ排気すると一同を見回し、号令をかける。

 

「そんなワケだ。街の人々を避難させるぞ!」

『了解!!』

 

  *  *  *

 

 ネビュロン最大の港街、ダロス。

 入り江の海岸に作られたこの街は港であると同時に外敵の襲来に備えて造られた要塞都市でもある。

 街を治める評議会にミリオンアーサーに話しを付けてもらい、オートボットと仲間たちは手分けして街の人々の避難を手伝った。

 そうしていると、やがて街にはミリオンアーサー同様にエクスカリバーを携えたアーサーたちが騎士を引き連れてやってきた。

 全身甲冑姿の武人、白馬に跨った貴人、武骨な装備の蛮人、戦乙女の如き麗人……中にはもっと奇妙な姿のアーサーもいる。ドリル装備だとか釣り竿持ってるだとか複数人でサッカーしているだとか……さらにはどう見ても柄のよろしくない物もチラホラいる。

 

「あれが例の巨人の騎士か……ユーリズマではたいそう暴れたと聞く」

「まさか、あのアセニアの田舎娘め。本当に初代アーサーに肖る気か?」

「バカバカしい。あんな騎士を使うことを躊躇うような甘ちゃんに何が出来る」

 

 そんな彼らにしても、トランスフォーマーたちと協力し合っているミリオンアーサーは奇異に映るらしく、遠巻きにこちらを見ているだけだった。

 

「何だか感じが悪いね……」

「まったく、言いたいことがあるなら面と向かって言えってんだ」

「王の椅子を争う者同士、味方とは言えないのだろう」

「しかし、あの言い方はあまりに無礼ではないか」

 

 子供たちを馬車に乗せていたシーシャが耳にした会話に顔をしかめクロスヘアーズがケッと吐き捨てると、エスーシャのドライな返しにドリフトが眉をひそめた。

 

 一方で、ホット・ロッドは取り残された人がいないかどうかビークルモードで街を見回っていた。

 

「ここらへんにはもう人はいないか……ん?」

 

 一区画ずつ確認していたホット・ロッドだが、街の中央広場までやって来た時、街の議事堂の前に人影があることに気が付いた。小柄な子供のようだが、街でも一際立派な建物の正門をジッと見上げている。

 

「君! こんな所でどうしたんだ? ……あれ、君は?」

 

 ロボットに戻って歩み寄ったホット・ロッドはその少年に見覚えがあった。

 上等な仕立ての服に身を包んだ線の細い少年だが、目だけが異様に荒んでいる。

 

「確かユーリズマで会ったよな?」

「ふん、貴様か。しばらくだな」

「やっぱり! あの時の子か! こんな所でどうしたんだ? お父さんとお母さんは? はぐれたのか?」

 

 心配そうに質問するホット・ロッドを、少年は振り返って煩わしそうに見上げた。

 

「心配せんでも、じきに迎えが来るわ」

「そうか、良かった」

「はん」

 

 安堵した様子のオートボットに鼻を鳴らし、少年は再度建物を見上げた。この建物は、かつて領主の使っていた屋敷を改装した街の歴史館だった。

 何か、ここに思い入れがあるのだろうか。

 

「貴様は、ここの連中のために戦う気か?」

「戦うかは分からないけど、助けたいとは思う。罪の無い人が傷つくのは嫌だ」

 

 何気なく放たれた問いへ答えると、少年はもう一度鼻を鳴らす。

 

()()()()というのはな、弱く愚かということよ。そして弱く愚かとは、強く賢い者に食い荒らされることと同義なのだ。この地を治めた一族がいい例よ」

「そりゃあ極端な考え方だろう」

「だが真実だ。領主一族はお人好しさに付け込まれて陥れられた負け犬だ」

「そいつは付け込んだ奴が悪いのさ。よく騙された奴が馬鹿っていうけどさ、それって別に騙した奴が悪くないってことじゃないだろ?」

 

 ホット・ロッドの言葉に、少年はムッとしたようだ。どうもオートボットの理屈はお気に召さなかったようだ。

 

「むしろ俺は、そういう人の良心や優しさを裏切る奴が許せない……」

 

 ブレインに過るのは、地球で仲間たち共々虐げられた日々、敬愛するオプティマスの言葉、フェミニアで聞いたクインテッサの所業、そしてあの悪夢の中で垣間見た過去だった。

 

「嫌なんだよ、暴力だろが裏切りだろうが、そういう理不尽で誰かが傷つくのは」

 

 グッと拳を握ると同時に放たれた言葉に少年はやや気圧される。だがすぐに付き合っていられないとばかりに頭を振る。

 

「はん、外敵がどんな連中かも知らないだろうに! お前みたいな奴をな、世の中では……馬鹿というのだ! それも救いようのない馬鹿だ!!」

「馬鹿は酷いなぁ……」

 

 苦笑しているホット・ロッドを捨て置き、いつかと同じく少年は去っていこうとする。迎えとやらと合流するためだろう。その背にホット・ロッドは声をかけた。

 

「なあ、送って行こうか!」

「いらん! 子ども扱いするな!! 言ってはなんだが()は貴様より稼いでおる!!」

 

 そうは言われても子供にしか見えないのだが。逆に無理しているような一人称が微笑ましい。

 心配になって路地に入った少年の後を追うが、すでに姿はなかった。

 

「あれ? いったい何処に……」

『ロディ、聞こえるかい? こちらは避難が終わったよ』

 

 その時、くろめから通信が入った。

 

「ああ、こっちもだいたいは終わった。少ししたらそっちに合流するってみんなに伝えてくれ」

『分かった……それとちょっと厄介なことになった。鉄騎アーサー様のお出ましだ』

 

 

 

 

 

 街に入ろうとするアーサーたちの一団を押し退けるようにして、鉄騎アーサーことガルヴァトロンが悠然と進む。

 その隣にはマジェコンヌが、後ろにはオンスロートやバリケードらディセプティコンが付き従っていた。

 さらに彼らの後ろを行進するのは因子で造られた騎士ではなく、ブラスターや装甲服といった、これまでブリテンに存在しなかった物を纏った人間の兵隊たちだ。オンスロートの訓練もあって、彼らは何とかこの武器を使いこなせるようになっていた。

 彼らを率いるのは黒獅子の意匠がある甲冑に身を包んだワイゲンド卿を筆頭に、鷲、一角獣、豹、猛牛、蝙蝠の甲冑を着込んだガルヴァトロンと同盟関係にある領主たちである。

 

「どうやら、オートボットも来ているようだな……」

 

 人間の兵士から報告を受けたガルヴァトロンがゴキリと首を鳴らすと、街門を潜る。

 騎士を連れたアーサーたちも、彼とその軍団の威容の前には霞んでいた。

 

 

 

 

 

 

『てな感じさ』

「随分と大所帯で来やがったな」

 

 マーリンが近場にいるアーサーに声をかけた以上、ガルヴァトロンが現れることは分かり切っていたことだ。

 実際のところ、ホット・ロッドはまだガルヴァトロンと面と向かって話すべきか迷いがあった。

 あのフェミニアでみた悪夢がフラッシュバックする。

 

「…………」

 

 しかしガルヴァトロンのことは気になる。

 動かせる戦力を全て動かしているのだ。遺物探しよりも力を入れているような感じすらある。

 

『とにかく、オレは連中とかち合うとまずい。いったん船に戻ってるよ』

「分かった。俺は……」

 

 一回りしてから戻ると言おうとした時、ふとさっきの少年の言葉が頭をよぎった。

 

(外敵がどんな連中かも知らないだろうに!)

 

 そして見上げれば、歴史館。おそらく外敵の資料もあるはずだ。

 

「少し、歴史の勉強をしてから戻るよ」

 

 

 

 

 

 

「ねーねーボスー! 外敵だかのついでにオートボットも倒しちゃおうぜー!」

「そうだぜ、遠慮するこたあねえ」

「外敵を倒す方が先だ」

 

 血気に逸るモホークとニトロ・ゼウスを諫めたガルヴァトロンは、街の中央通りに出ると声を上げる。

 

「鉄騎アーサー、ブリテンの危機に参上した。普段は王の座を争う我らなれど今は共に戦おう!」

 

 堂々と宣言するガルヴァトロンだが、オンスロートは不愉快そうにアーサーたちを見回していた。

 彼はこの場に確たる指揮系統が存在せず、また纏め役と言える者もいないことを察していた。

 

「船頭多くして宇宙船墜落す……強い奴を集めりゃ勝てるってもんじゃないのである」

「つまりこいつら全員ぶちのめして言う事聞かせりゃええんか?」

「いやそれは短絡的すぎるぜ、アミーゴ」

 

 物騒なことを言い出すバーサーカーをドレッドボットが諫める。

 と、そこで一人のアーサーがガルヴァトロンの前に進み出た。もちろん、ミリオンアーサーである。その後ろには相棒のチーカマもいる。

 

「貴殿も参られたか」

「貴様か。ミリオンの」

 

 ギラリと目を細めるガルヴァトロンだが、ミリオンアーサーは怯まない。

 

「貴殿の言う通り、今は仲間だ。ブリテンを守るため、共に戦おうぞ」

「無論だ」

『聞け、アーサーたちよ』

 

 二人が頷き合うと、突然空にマーリンの姿が現れた。目立つようにということだろうが、非常に大きい。

 

『外敵が上陸が確実となった今、ブリテンの存亡はそなたたちに掛っておる。東の海岸にて外敵を迎え撃つのだ』

『おお!!』

 

 その言葉に、アーサーたちはエクスカリバーを掲げて堪える。

 だがガルヴァトロンは声を上げず、後ろにいる部下たちに視線を送った。

 

「どう思う?」

「戦力が集中すれば、敵はその裏をかこうとするのである。海岸に陽動のための攻撃をし、その間に別の場所に少数の部隊を上陸させる、というのが定石だな」

「街の連中は西の旧市街にある砦に逃げ込んだ。そこを突かれると厄介だぞ」

 

 オンスロートとバリケードの意見にガルヴァトロンは思案する。そんな彼に、足元のマジェコンヌが声をかけた。彼女は、通信装置を手にしていた。

 

「ガルヴァトロン。例の連中からのコンタクトがあった」

「やっとか。出来ればもう少し早く……まあいい」

 

 その言葉にガルヴァトロンは頷くと、街の向こうにある海を……そこからやってくるであろう侵略者を見据えた。

 目の奥に憎悪の火が燃え上がり、海の向こうを焼き尽くさんとしているかのようだった。

 

「来るなら来るがいい、外敵。望み通り相手になってやる……!」

 

 彼がこれほどまでに憎む相手は、ただ一つ。すなわち……。

 

 

 

 

 

 歴史館の中は広く、ホット・ロッドでも入ることが出来た。

 この地を元々治めていた一族の『天を仰ぐ蠍』の家紋が描かれた鎧や美術品が飾られている。それを裏切った家臣の金銀宝石で飾れらた彫像は蠍を踏み付けていて、なにかコンプレックスを感じさせた。

 やがてその家臣の一族も住民の反乱に合い、今はその反乱の指導者だった者たちの子孫が評議会としてこの地を治めている。

 そして奥の一室には外敵に纏わる品々が陳列されていた。

 

「こ、これは……」

 

 だが、それらを見た時ホット・ロッドは死ぬほど驚愕することとなった。それらに見覚えがあったからだ。

 

 古代ローマで使われていた剣、グラディウス。

 モンゴル帝国がその版図を広げるのに、大いに貢献したという弓矢。

 ヨーロッパを脅かしたオスマン帝国はイエニチェリの銃。

 スペインの征服者(コンキスタドール)の衣服一式。

 大英帝国の軍服や大砲、銃。

 壁に飾られているのはナチスドイツの旗だ。

 極めつけに旧ソビエトの装甲ヘリ、ハインドが半壊した状態で飾られている。

 

 言うまでもなく、これらは地球の物だ。

 

 ホット・ロッドのブレインが回転し、様々な事柄が思い浮かぶ。

 異なる二つの世界にある、同じ名前の国。

 他の世界について調べていた、あの世界の秘密機関。

 軍勢を率いてきたガルヴァトロン。彼が心から憎む相手。

 ブリテンを脅かす外敵の、数十年ごとに現れ、その度に強く狡猾になっていくという性質。

 ジグソーパズルのピースが嵌るようにして、これらが指し示すことは一つ。

 

 外敵とは、外敵の正体とは……。

 

「地球人……!」

 

  *  *  *

 

 時間はホット・ロッドたちがネビュロンにやってきた頃に遡る。

 

 この時、ブリテン沖に一隻の船が停泊していた。

 船と言っても本来は空を飛ぶ船、秘密結社アフィ魔Xの空中戦艦アフィベースだ。その前には小島……というよりは海から突き出た岩の塔のような物があった。

 どれだけ昔の物かも分からぬほど古い灯台だ。

 その屋上広場に、忍者のようなメカのステマックス。

 ブリッツウィング、シャッター、ドロップキックらトリプルチャンジャーたち。

 そして白い鎧のようなアフィモウジャスが立っていた。

 

 アフィモウジャスは、島の中央にある柱状の装置に何等かのデータをインストールしていた。

 

「坊ちゃま!!」

 

 突然声がしたかと思うと、アフィベースの甲板から血相を変えた人間大のトランスフォーマー、コグマンが一跳びで灯台の壁に飛び付き、そのままヤモリのように壁を登ってきた。

 

「坊ちゃま、おやめください!」

「コグマン……ネズミめ、止めておくことも出来んのか」

 

 コグマンが屋上まで登ってくると、煩わし気に振り返ったアフィモウジャスは、足止めを命じたワレチューたちが失敗したことを察して溜息を吐く。

 

「お聞きください、それをすれば後戻りは出来なくなりますぞ!! モージャス家代々の御当主に仕えてまいりましたが、これほどの愚行に走った方はおりませぬ!!」

「だろうな。儂は先祖たちとは違う。家臣に裏切られた領主に、家を乗っ取られた無能なぞとはな」

 

 シャッターとドロップキックが武器を展開してコグマンに向けるが、ステマックスが手を挙げて制止した。

 そうしている間にもコグマンは食い下がる。

 

「今度という今度は言わせていただきます! わたくしとて、これまで坊ちゃまの秘密結社ゴッコに付き合ってまいりましたが……それもモージャス家に恩義があればこそ、そしていつか坊ちゃまが目を覚ましてくださると信じていたからです!! どうか、先代様たちを悲しませるようなことだけは……」

「黙れ、このポンコツが! 先祖の使命も、馬鹿親どもの話も、もうウンザリだ! それに坊ちゃまは止めろと何度言わせる! 子供扱いするな!!」

「子供はみな、そう言うのです!! ステマックス殿、あなたも友人なら止めてください!」

 

 コグマンに吼えられて、ステマックスは申し訳なさそうに頭を下げた。彼は彼で、何かアフィモウジャスに負い目があるらしい。対しトリプルチェンジャーズは冷めた顔をしていた。

 なおも、コグマンは懇願する。今度は静かに、悲しみと労りを込めて。

 

「坊ちゃま……アイフ坊ちゃま、お願いします。どうか、貴方様のために御止めください。必ず後悔なさいます……」

「儂のため? そう言う貴様が儂のために動いたことが一度でもあったか? まるで記憶にないがな!」

「ッ!」

 

 傲然と返された言葉に、コグマンは大きなショックを受けたようで元々丸い目を大きく見開く。さすがにステマックスが非難するような声を出した。

 

「将軍、さすがにその言い方は……」

「良いのだ。このガラクタには良い薬……ッ!?」

 

 軽く返して装置の起動キーを押そうとしたアフィモウジャスだが、その手が止まる。

 コグマンが腕を銃に変形させて、柱状の装置を撃とうとしたから……そして、シャッターとドロップアウトがそれより早くコグマンを取り押さえたからだ。

 

「もういいだろう、茶番はそこまでにして初めてくれ」

「おい、こいつ小っこい癖にとんでない馬鹿力だぞ!!」

「坊ちゃま! 坊ちゃ……!」

 

 シャッターに発声回路を押さえられ、コグマンは黙らされる。それでも怪力で跳ねのけようともがくが、さすがに二体がかりではそれも敵わない。

 執事が発砲しようとしたことに、アフィモウジャスは酷く動揺しているようだった。

 ステマックスは制止するような響きを込めて声を出す。

 

「……将軍」

「儂は……儂は理不尽に食われる側には、負け犬には断じてならん! そうなるくらいなら、儂が理不尽をばら撒く側になってくれるわ!!」

 

 ここにきて初めて迷いが生じたらしいアフィモウジャスだが、大きく息を吐くと意を決して起動キーを押した。

 装置の内部をパワーが駆け巡り、灯台その物が強い光を放つと同時に、水平線の彼方から遥か上空に向けて光の柱が昇った。

 知識がある物が見れば、それはブリテンに伝わる外敵襲来の予兆……あるいはスペースブリッジが開いた際の光だと分かるだろう。

 

「さあ、始まるぞ……!」

 

 光が収まると、水平線の向こうから数隻の艦艇が現れた。民間の貨物船に偽装した大型の輸送艦が一隻に、数隻のミサイル巡洋艦だ。

 それらはいずれも次元を隔てた別世界、地球のアメリカという国の物であり、表向きは退役して解体されたり事故で沈没したことになっている艦だった。

 

 ブリテンを脅かす外敵……地球人の秘密組織、コンカレンスの私兵N.E.S.T部隊がゲイムギョウ界に乗り込んできたのだ。




やーっと外敵の伏線を回収できた。

今回のキャラ紹介

モブアーサーの皆さん
エクスカリバーを抜き、ブリテンの王足らんと名乗りを上げた物たち。
質はピンキリ。色物もすごい多い。
しかも王足らんとする気概も持つ者ばかりでもない。

マーリン(自称)がこんなに王候補を粗製乱造しているのには、ある目的がある。

『外敵』
数十年ごとにブリテンを脅かす外敵、その正体は地球人。
古代ローマ帝国、オスマン帝国、モンゴル帝国、スペイン王国、大英帝国、ナチス第三帝国、ソビエト連邦……その時代ごとに野心のある国や集団が現れる。
そして今回はコンカレンスというワケである。
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