新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED 作:投稿参謀
噴煙を上げるスラル山の中腹に、剣を打ち合う音と砲撃音が轟く。
メガトロンの息子たるガルヴァトロンと、メガトロンの精神的後継を自称するヘッドマスター、破壊将軍アフィモウジャスが熾烈な戦いを繰り広げていたからだ。
ガルヴァトロンがマジェコンヌの変形したキャノン砲を撃てば、アフィモウジャスは尻尾の光子キャノン砲を撃ち返す。
アフィモウジャスがタイラントソードを振るえば、その斬撃を躱してガルヴァトロンがエクスカリバーで斬り付ける。
二人の戦いは、まさに一進一退だった。
「これほどの力を持ちながら……何故、こんな回りくどいことをしたぁ!!」
鍔迫り合いの状態に持ち込んだガルヴァトロンは吼える。
彼には目の前の相手が、何故シャッターたちに裏切りの振りまでさせて、わざわざこんな所にまで自分を誘い込んだ理由が分からなかった。
これほどの力を持っているのなら、地球人が上陸した時点で彼らと協力することも出来たはずだ。
「くっくっく! 所詮貴様には分からぬか。この儂の深謀遠慮が!」
「なにぃ!?」
「ああやって全滅寸前にまで追い込まれれば、奴らは儂を頼らざるを得なくなる! そうすれば、もっともっと報酬を搾り取ることが出来るというもの! 命がかかっておれば、出し惜しみはすまい!!」
「この……金の亡者が!!」
元々エクソスーツが中型トランスフォーマーほどもあったこともあって、トランステクターにヘッドオンした状態の秘密結社首領はディセプティコンのリーダーの二倍近い大きさを持ち、それ相応のパワーを持っていた。
だがそれで怯むようなガルヴァトロンではない。
「剣よ!」
一端距離を取って聖剣を天に翳すと、まるで避雷針のように何処からか稲妻が刀身に降り注ぐ。
稲妻の力を得たエクスカリバーは、さらに破壊力を増す。
「それがどうしたぁ!!」
アフィモウジャスは剣を地面に突き刺すと、両方の鋏の内側の二連装ミサイル、腰部のブラスター砲、尾の先の光子キャノン砲を一斉発射した。
ミサイルと光弾が、嵐のように吹き荒れる。
「温いわぁ!!」
ガルヴァトロンはキャノン砲を撃って相手を牽制、全身から放つ稲妻をチャフ替わりに弾幕を突っ切って一気に接近した。
大上段からの斬撃を地面から抜いた剣で受け止めるアフィモウジャスだが、その巨体が僅かに後退する。
頭部ユニットの表情も気圧されているように見える。
大金をかけ、強力なトランステクターを作り上げた彼であるが実戦経験は少なく、その差が気迫の差となって徐々に出始めていた。
「薄汚い、売国奴め! はした金のために世界を売るとは!!」
「ハッ! 金の重要性を理解できぬとは、貧しさを知らぬ奴の口ぶりよな!!」
「それは心の貧しさのことか? 確かに貴様のような奴の性根の貧相さは理解できんよ!!」
吼え合うガルヴァトロンとアフィモウジャス。
お互いに目の前の相手がどうしようもなく腹に据えかねていた。
万力を込めてガルヴァトロンを弾き飛ばしたアフィモウジャスは、ヘッド部分ごと機械サソリの姿に変形し、相手に圧し掛かるようにして襲いかかった。
迫ってくる両の鋏をガルヴァトロンは咄嗟に受け止めるが、この形態のパワーはロボットの時より上であるらしく、ジリジリと後ろに押されていく。
「心の貧しさだと? そんな物は現実世界の金が埋めてくれるわ!!」
「金、金、金! それでよく父上の後継などと名乗れた物だ!!」
「儂はメガトロンの精神を継いでおるのよ! 己の我を貫き通す、その覇道をな!!」
尻尾の先の大剣がガルヴァトロンを突き刺そうとしてくるが、体を左右に揺らしてそれを躱す。
だがそうすることで、一瞬ではあるが体の力が抜けてさらに押されてしまう。
「母の乳が恋しい軟弱者め、『ママ~助けて~』とでも叫んでみたらどうだ!」
「ッ! 舐、め、る、なぁッ!!」
しかしアフィモウジャスの罵りがガルヴァトロンにさらなる怒りを、怒りは機体にさらなる力を生み出した。
両脚でしっかりと大地に踏ん張り、雄叫びを上げてアフィモウジャスを投げ飛ばした。
「なんだと!?」
「母上を愚弄する者は許さん!! ……ガッ!」
地面に叩きつけられた大サソリにキャノン砲の狙いを付けた瞬間、横合いからの攻撃を受けた。T-72戦車に変形したブリッツウィングの戦車砲だ。
「へへへ、敵は一人じゃないんだぜ?」
「おのれ、卑怯な!!」
「ディセプティコンに卑怯もラッキョウもねえんだよ!!」
さらにドロップキックも一度車の姿に変形してから山の斜面を登り、その勢いで飛び上がって攻撃ヘリに変形して機関砲を浴びせる。
すぐにアフィモウジャスも体勢を立て直し、人型に戻って攻撃に加わった。
もとより一対一で戦う気など毛頭ないようだ。
「ガルヴァトロン! こうなったら!!」
ドローン軍団の相手をしていたバリケードは、四対一の戦いを強いられているガルヴァトロンに助力するべく、懐からクインテッド・エニグマを取り出した。
ブルーティカスの力を持ってすれば、この状況を打破することなど容易い。
「ユナイト!!」
エニグマが蜘蛛のような節足を生やして胸板に張り付き、目のように見える部分から赤い光線を放った。四筋の光線は正確にオンスロートたちに命中し……それから何も起きなかった。
バリケードを含めて、誰も胴体や手足に変形しない。
「どうした、ユナイトだ! 何故合体出来ない!?」
「愚かなりバリケード。そいつの対策をしていないと思ったのか?」
狼狽えるバリケードを、せせら笑う攻撃参謀の手には、金属の球体が握られていた。
球体はまるで花の蕾のような形をしており、花びらに当たる部分を透かして内部から青い光が漏れていた。
「本物が劣化コピーの力を上回っているのは、当然である」
「まさか……調和のエニグマ!?」
その正体を察してバリケードは目を剝く。
合体戦士の祖、ネクサス・プライムの遺産たる調和のエニグマは、己の紛い物の光を打ち消すように強く輝いていた。
ニトロ・ゼウスやモホークらはこの陰謀を知らなかったらしく、オプティックを白黒させていた。
「オンスロート! 貴様、謀ったなぁッ!!」
先ほどの言動や遺物を持っていることから、相手の裏切りを理解したバリケードは攻撃参謀に飛び掛かろうとする。
しかしそれよりも早く、調和のエニグマは花びらを開くようにして内部の光球を露出し、そこから放たれた光がバリケードを含めたディセプティコンたちを飲み込んだ。
「な、なんやコレは!?」
「まさか、また合体するってのか!?」
「おい、オンスロート! これはどういう……!」
「あれ? 今度は俺も?」
「おのれ! この裏切り者がぁああああッ!」
パーツに変形しながら混乱するディセプティコンたち、そしてあらん限りの怒声を上げるバリケードに対し、オンスロートはニヤリと笑ってみせた。
「悪いな、状況判断である……
オンスロートが咆哮するように叫ぶと、彼の身体がギゴガゴと音を立てて胴体部へと変形し、そこに他の四人が変形した手足が接続される。
バーサーカーの肩の突起が鋏として備わった右腕、グリペンの後部バーナーが火炎放射器となった左腕、錆に塗れたドレッドボットの右脚にバリケードの左脚。
全身の武装と背中から二門のキャノン砲の砲身が天に向かって伸びていること加え、両肩にはロケットランチャーが加わった。
……そして胸には、モホークが変形したパーツが張り付いていた。
「ブルーティカス、
六体のディセプティコンが合体したブルーティカスは、大咆哮を上げると近くにいたレギオンを踏み潰し、全身の火器を発射する。
調和のエニグマによる合体戦士の力は、合体した者の数が多いほど大きくなる。そのため、モホークが加わったブルーティカスのパワーは以前よりも増していた。
「ブルーティカス、お前たち皆憎い!!」
その声は以前のようにバリケードの物でも、オンスロートのそれでもなく、合体した全員の声が混ざっていた。口調も片言で粗暴だ。
実は調和のエニグマで合体した場合の合体戦士は、全員が意思を合わせなければ知性が著しく欠けてしまうのだ。しかも今回の場合はオンスロートとバリケードが強く反目し合っているため、その精神は非常に不安定な状態に陥っていた。
「戦う! 止めろ! 破壊!」
合体出来る人数が限定されている代わりに一人が残る全員を乗っ取る形のクインテッド・エニグマに比べて、調和のエニグマは安定性に欠けていた……元々兵器ではないのだからしょうがないことだ。
「ワケが分からない! 潰せ! 駄目だ!」
何とか手足を振り回そうともがく
継ぎ接ぎの精神の巨大兵士は、レギオンばかりかドローンたちまでも巻き込んで暴れ回る。
ガルヴァトロンは唯一信頼している仲間の惨状を察知していたが、この数と質の敵に囲まれては助けに向かうことも出来なかった。
「バリケード! 今助ける!!」
「待て! 奴のことは諦めて今は撤退しろ!」
「しかし……!」
「ここで犬死にする気か! ワイゲンドたちと合流すれば逆襲の糸口も掴める!!」
右腕に合体したマジェコンヌの声に、ガルヴァトロンは悔しさと屈辱に歯噛みした。だが彼女の言う通り、このまま戦い続けても意味がないことも理解していた。
「畜生ッ……!」
集中砲火を浴びながらも空中に飛び上がったガルヴァトロンは、被弾しながらも逃げようとする。
このスラル山のプラズマを含んだ火山灰のせいでグランドブリッジは開けない。何とかプラズマの影響がない所まで行かなければならないのだ。
当然の如くシャッターたちはそれぞれビークルモードに変形して手負いの獲物を追いかけ、アフィモウジャスもまたロボット、サソリに次ぐ第三の形態、戦闘機の姿に変形してそれに続いた。
それでもガルヴァトロンの飛行速度は速く、何とか逃げ切ることが出来そうだった。
「馬鹿め、逃がすと思うか! やれ、ステマックス!!」
「承知!」
しかし火口のちょうど上まで来た所で、何処からかジェット戦闘機が飛来した。そのコックピットには、ステマックスが乗っている。
いつの間にか姿が見えなくなっていた秘密結社の隠密だが、影の薄さを生かして不意を打つ機会を伺っていたようだ。
「トウッ! ヘッドオン!」
ステマックスはコックピットのハッチを開けて機体の外に飛び出し、体を折りたたむようにして左腕の巨大手裏剣が額飾りになった大きな頭部へと変形し、首無しの人型に変形したジェット機に頭部として合体する。
背中のウイングや肩のタイヤ、上腕部のキャタピラなど複数のビークルの意匠を持つ、これがシックスチェンジャーとしてのステマックスの姿だ。
「ガルヴァトロン、覚悟!!」
「ぐッ……!」
そのまま飛行の勢いを利用してガルヴァトロンの背中を蹴り飛ばしてバランスを崩させ、さらに逆手に持った忍者刀を突き刺した。
咄嗟に身を捻って急所への一撃は避けたが、これにはガルヴァトロンも大きなダメージを受け、火口の縁へと墜落してしまう。
ステマックスは悠々と離脱していた。
「ぐ、お……」
「ガルヴァトロン! おい、しっかりしろ!!」
マジェコンヌに叱咤され何とか立ち上がろうとするガルヴァトロンだが、さっきの一撃のせいで体が思うように動かない。
すぐ後ろの噴火口では、下の方で真っ赤に輝く溶岩が煮え滾っていた。
その眼前に、アフィモウジャスとステマックス、トリプルチェンジャーたちが舞い降りた。
口からエネルゴンの混じった液体を吐くガルヴァトロンを見て、秘密結社首領は高笑いする。
「ハハハ! これぞ我が結社必勝の布陣よ!!」
アフィモウジャスはガルヴァトロンを直接倒すことに拘っていた。単なる謀殺ではなく、実力でも上回ろうと考えていた。
そのために他のディセプティコンやワイゲンドら人間の兵士たちと分断し、ドローンを掌握して数の差を埋め、バリケードたちを合体することで封じた。
アフィモウジャスはガルヴァトロンを倒すためにあらゆる準備をしていたのだ。
「そしてこいつで詰めよ! ステマックス、来い!」
「変化! ガンモード!」
六つの形態の一つ、光線銃形態に変形した忍者を主君アフィモウジャスが手にする。
いかに巨躯を誇る秘密結社首領と言えど、隠密が変形した銃は両手で抱えるようにして持たねばならなかった。
だが、そうすることで二体のエネルギーが同調し、最大の威力の攻撃を放つことが出来るのだ。
傷ついた体では躱すことも出来ない。
「必殺! アフィ魔Xキャノン、
「……そのネーミングはどうなんだ?」
アフィモウジャスが引き金を引き、そのまんま過ぎる名前にシャッターが思わずツッコミを入れると、ガンモードの銃口から普段とは比べ物にならない凄まじいエネルギー波が放たれた。
「ッ!」
咄嗟に右腕のキャノン……マジェコンヌが変形したそれを庇う体勢になったガルヴァトロンを、エネルギー波が飲み込む。
「がああああっ!?」
「ぐわあああッ!!」
エクスカリバーが弾き飛ばされ、片方の角が折れ、腹に穴が開き、顔面の半分が破壊される。
その余波は庇われた状態のマジェコンヌにすら届き、衝撃で右手から分離してしまう。
ビームが止まった時、ガルヴァトロンは半壊した状態だったが、それでも倒れなかった。倒れなかったが、もう指一本動かすことが出来なかった。
「呆れた頑丈さだな……だがここまでだ」
その姿に戦慄しているとも感心しているとも付かぬ声色のアフィモウジャスは、ステマックスを降ろしてガルヴァトロンに近づくと、折れていない角を掴んで引き寄せる。
「おのれ……世界への、裏切り者め……!」
「案ずるな。儂とてこの世界を地球人どもに侵略させる気はないわ。金を搾れるだけ搾り尽くしてから始末してくれる」
「な、何故だ……何故、それほどの力と知恵を持ちながら……たかが金のために!」
「
絞り出すような声が返ってくると、アフィモウジャスの声色がより強く殺気を帯びた。
「金が無ければ、人は飯を食うことも出来ん。金が無ければ、誰も助けてはくれん。簡単な道理だ! この世に人の運命を支配する神がいるとすれば、それは女神などではなく金に他ならんわ!!」
大きく強いトランステクターとエクソスーツの奥から、怒りと憎しみ、そして隠し切れない妬みが滲み出していた。
そしてその妬みこそが、アフィモウジャスがガルヴァトロン打倒に拘る最大の理由だった。
「貴様には分かるまい……金のない、惨めさなど! 分かるはずもない! 強く賢い父を持ち、母親に王子様のように甘やかされて育った貴様には、絶対に!!」
「…………憐れな奴だな」
ほとんど機能停止寸前だと言うのに、ガルヴァトロンの瞳に浮かんだのは哀れみだった。
慟哭にも似た叫びに、ふと目の前の相手が悲惨な出来事に合ったのだと思い至ったからだった。
「分かったような口を……利くな!!」
それがよほど癪に障ったのか、アフィモウジャスは相手の顔面に拳を叩き込んだ。
殴られたガルヴァトロンはゆっくりと後ろに倒れ込み、噴火口の中へと落ちていった。
「ぐ、があ……」
一方、未だに暴れていたブルーティカスは、ようやっと合体が解けた。
六人のディセプティコンたちがバラバラと散らばり、それぞれ元の姿に戻る。
合体の後遺症で意識が朦朧とし、頭を振ったり悪態を吐いたりしている中で一番先に正気を取り戻したのはバリケードだった。
「ッ!」
その目に映ったのは、半壊した主君の息子が、火口の中へと消える姿だった。
バリケードは、ビークルモードに変形し、エンジンをフル回転させて火口まで登っていった。
「ガルヴァトロン!」
地面に転がって意識を失っていたマジェコンヌは、意識を取り戻した。
だが、ダメージで体を動かすことが出来ず、溶岩の海に落ちたガルヴァトロンを見ていることしか出来なかった。
このスラル山の溶岩は単に超高熱と言うだけでなく、強力なプラズマを含んでいる。トランスフォーマーの金属の身体でさえも、完全に熔解してしまうだろう。
バリケードは、変形して下を見下ろし、顔を絶望の色に染めた。
「ガルヴァトロン、そんな……」
「ガルヴァトロン……ガルヴァトロォンッ!!」
叫びも空しく、メガトロンの息子は溶岩に沈んでいった……。
もうちょっと先まで書いてあったけど、長くなったので分割。
原作におけるアフィモウジャスも金の亡者なんですが、金より大事な物があることはちゃんと理解してる人です。
でも金以外に縋る物を知らないので、それに縋るしかない人だと、私は感じました。
何となくお分かりいただたけると思いますが、アフィモウジャスの作劇上の役割は、自分の親に否定的だったり、メガトロンの都合のいい部分を信奉していたりと、ホット・ロッド、ガルヴァトロン兄弟の『鏡像』です。
(それにしてもアフィ魔Xキャノンはもうちょっと良い名前を思いつかんかったものか……)