新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED 作:投稿参謀
ダロスの議会堂の前には、オートボットとディセプティコンが集結していた。
この議事堂の一室では、今彼らのリーダーである騎士ホット・ロッドと新破壊大帝ガルヴァトロンが、暗黒星くろめとマジェコンヌ、ネプギア、そしてミリオンアーサーとチーカマを交えて話し合っているからだ。
両陣営の間にはやはりピリピリとした空気が流れていたが、それでも爆発するようなことはなかった。
むしろ、シャッターに騙されて自分たちが休んでいる間に話が進んでしまったインフェルノコンたちの方が、所在なさげだった。
さてホット・ロッドたちは、長テーブルのある部屋にいた。
暗黒星くろめとマジェコンヌは寄り添うように隣に座り、その対座にブリテンの二人がいる。そして部屋の両側にはホット・ロッドとガルヴァトロンが立っていた。
くろめから、自らが天王星うずめとは別人であること、ホット・ロッドに近づくためにうずめの振りをしていたこと、そしてサイバトロンと連絡が取れなくなったのは自分のせいであることを明かされた一同の反応は様々だった。
ガルヴァトロンは腕を組んで難しい顔をしていたが、怒ってはいないようだった。
もとより彼は、マジェコンヌに何か思惑があることを理解していたし、記憶の中でうずめと繋がりがあることも見ていた。
ホット・ロッドも同様だが、さすがにくろめがサイバトロンと音信不通になった理由と知ると顔をしかめていた。
ネプギアとミリオンアーサー、チーカマは顔を見合わせ、どうしたものか首を傾げていた。
「……色々と言いたいことはあるがな。そもそも、どうしたらそんなことが出来るのだ? 二つの世界を、あー、なんと言ったものか、行き来できなくするなど」
「それを説明するためにも、順を追って話したい」
ミリオンアーサーの問いに、くろめは立ち上がって一同を見渡した。
「オレは、そして地球にいるもう一人の俺は元々一人の女神だった。それがねぷっち……ネプテューヌから数えて二代前のプラネテューヌの守護女神『天王星うずめ』だ」
「待ってください。その、うずめさんがうちの国の女神だなんて、聞いたことがありません」
ネプギアの疑問はもっともだ。
彼女はグータラな姉と違って、自国の歴史も勉強していたが『天王星うずめ』という女神の存在は記録になかった。
くろめは、真面目な顔で頷いた。
「うん、それはそうだろう。オレの記録も、記憶も、全て消されているはずだ。もちろん、イストワールの物も含めてね」
「そんなこと、出来るんですか?」
イストワールは人工生命体、言わば生きたデータベースだ。
彼女は
するとくろめは、クシャリと悲し気に顔を歪めた。
「オレには、思ったことを現実にする力があるんだ」
その意味が理解できず、彼女とマジェコンヌを除く全員が目を丸くする破目になった。
「例えば……そうだな『今すぐプリンが食べたい。それもプラネテューヌで一番のお菓子屋さんのプリンがいい』」
急に何を言い出すのかと、一同は訝しむ。
発言の内容と唐突さもそうだが、常識的に考えて、プラネテューヌのプリンが手に入るとは思えない。
しかし誰が問うよりも早く、部屋の扉がノックされた。
一言断ってから入ってきたのは、お茶とお菓子を乗せたトレーを持った議会堂で働く侍従だ。
そのトレーの上に乗っていたのは、
なんでも秘密結社が持ち込んだ物を、偶然手に入れられたらしい。
せっかくだから遠い故郷の味を楽しんでもらおうと気を利かせてくれたようだ。
「こんなことって……」
紅茶と共に並べられたプリンを、チーカマは信じられないという顔で見下ろした。
偶然というには出来過ぎているが、前持って示し合わせたとも思えない。
「オレたちはこの力を、『猛争』と呼んでいた」
猛争。
猛々しく争う。
妄想と掛けているのだろうが、しかし随分と暴力的な響きだとホット・ロッドは感じた。
「簡単なことならこの通り、タイムラグなしで容易に思い通りになる。もっと難しいことでも、条件を整えれば何だって出来る。それこそ、普通なら不可能なことでもね」
「……信じられんと思うが、信じてもらうしかない。その力を使って、くろめは自分の一切の記録を消してしまった……人間の記憶すらもだ」
皮肉っぽい笑みのくろめが説明すると、マジェコンヌは嘆息した。彼女自身も、そうして一度はくろめのことを忘れてしまっていた。
「何故、そんなことを……」
「順を追うから、少し待て。……うずめに猛争の力があると分かって、最初はみんな喜んだ。女神が良いことを考えてくれれば全てが上手く回るんだからな……だがそんな上手い話があるはずなかったんだ」
相棒の問いに、マジェコンヌは苦し気に言葉を吐く。
人間の思考は、どうしたってポジティブでばかりはいられない。
ふと悪いことが起きるのでは?と思うこともある。災害の影に怯えることだってあるだろう。
「しかも当時のうずめは、その力をコントロールできなかった。良いことも、悪いことも、際限なく現実になっていった。……皆がうずめを恐れるようになるのに、時間はかからなかった」
事故も、災害も、犯罪も、戦争も、彼女が望めば……望まずとも思い描けば、その通りに起きてしまう。世界その物をひっくり返してしまうような、とてつもない力だ。
それを制御出来なかったなら……酷な話だが、周囲に恐れられるのも無理のないことだとホット・ロッドは感じた。
「それでも、傍にいてくれる人たちもいた。……マジェっちとか、イストワールとか、ね」
ふと懐かし気な顔になるくろめを見て、ホット・ロッドは戦いの最中に見た彼女の記憶を思い出した。
天王星うずめと共に在り、彼女を支えた背の高い青年。
朧気なあの姿に、友と呼び合ったアイツが重なった。
あの青年はおそらく……。
「それでも、猛争を止める術は見つからなかった。みんなから、化け物だって言われたよ……石を投げられ、刺されそうになったこともある。だからオレは封印されたんだ。ゲイムギョウ界の外、異次元にね」
しかしくろめが恐怖に震えるように自分の肩を抱くのを見て、記憶から引き戻される。
「一切の光も音もない、暗くて、冷たい、あの牢獄……体を動かすことも出来ないのに、思考だけはハッキリしているんだ」
震える彼女の肩を、マジェコンヌが抱いた。
ガルヴァトロンは、それでも厳しい顔を崩さなかった。
「唯一良かったことと言えば、時間がたっぷりあったことだ。おかげで、猛争を制御する術を身に着けることが出来た。そこから地球に流れ着くまでの記憶は曖昧で……正直良く思い出せない。でも忘れられないことがある……」
くろめは顔を上げて、相棒に向かって微笑んだ。
花の咲くような笑みだった。
「君だ、ロディ。暗闇を漂うオレの前に、君が現れたんだ」
全員の視線がホット・ロッドに注がれた。
しかし当人は困惑したように頭を振った。
いくつかの記憶を取り戻した彼だが、そのことは綺麗さっぱり抜け落ちているからだ。
「クリスタルに封印されたオレは君に触れることは出来なかった……でも君はオレを助けようとしてくれた。勇気付けようと声をかけてくれた」
「…………」
それは、果たして本当にそうなのだろうか?
何故、次元の狭間を漂う『うずめ』の前にホット・ロッドが現れたのか。
どうやってかはともかく、何のためにかは、これまでに得た情報を総合すると自ずと分かる。
ホット・ロッド……ロディマスは憎き仇敵『天王星うずめ』を殺すために、未来からやってきたのだ。
助けようとしていたのではなく、害しようとしていたのだろう。
声をかけていたのではなく、罵っていたのだろう。
そう考えるのが自然とあると同時に、過去の自分への嫌悪に吐き気がする。
懊悩する若きホット・ロッドだが、それを察したのかガルヴァトロンは話を進める。
「分からんことがある。あの、地球にいる天王星うずめは、何者なんだ?」
「彼女は、オレの半身さ」
くろめ何とも言い難い表情で、問いに答えた。
曰く、地球のいる天王星うずめは、彼女が切り離した良心や優しさが命と自我を持った存在だと言う。
そうしたのは、それらの感情は、復讐に邪魔だと考えたからだ。
「オレは……ゲイムギョウ界を憎んでいる。理由はどうあれオレを暗闇に追いやった連中に復讐してやりたい」
身内から溢れ出そうな何かを抑えるように、くろめは自分の肩を強く握った。
「あれから色々あったけど、オレの中にはまだその復讐心が渦巻いている……ふふふ、ガルヴァトロンの言う通り、オレを殺した方が世界のためかな」
「くろめ、そんなこと言わないでくれ……」
マジェコンヌは泣きそうな顔をして、友人と相棒の顔を交互に見た。
ガルヴァトロンの表情は変わっていなかったが、自らも復讐に身を焦がしているが故に彼なりに思う所があるようだった。そんな彼をホット・ロッドは警戒心の有る眼で睨んでいた。
「……一つ、分からんのだが」
空気が張り詰める中、ミリオンアーサーが全員に聞こえるように声を上げた。
「世界を切り離したと言うが、外敵、いや地球の者たちはこちらに来ているではないか。これはどうしたことだろうか?」
「それは……オレにも分からない」
当然の疑問に、くろめは力無く首を振った。
「このブリテンに来てから、オレの力の及ばないことがある。例えば、エクスカリバーだ……本当ならキャメロットでロディが抜くはずだったんだ」
怪訝そうな顔になる相棒に、くろめは弱弱しく笑んだ。
「『ロディがエクスカリバーを手に入れる』って願って、確かに猛争が発動したのも感じた。でも結果はごらんの通り。オレは未だにこの力を制御なんか出来ていないみたいだ」
「いや、それは……可能性の話だが、誰か、あるいは何かが、くろめの力の邪魔をしているんじゃ?」
「有り得ないよ。そんなことが出来るとしたら、それこそ本物の神様の域だよ」
ホット・ロッドの言葉を、くろめは否定した。
一方で、チーカマは顎に手を当てて思案する。
「それで問題は、天王星うずめ……もとい暗黒星くろめをどうするかだ」
「彼女は俺が預かる。これまでと変わりなく」
低く厳しい声のガルヴァトロンに、ホット・ロッドは間髪入れずに声で返した。
ギラリと、ディセプティコンの新破壊大帝は相手を睨んだ。
「それは、この女が何かしでかした時、貴様が責任を取ると言うことで違いな?」
「もちろん、そのつもりだ。そしてその時はこないと信じている」
しばしの間、二人は視線をぶつけていたが、やがてガルヴァトロンが頷いた。
「よかろう。だがサイバトロンとゲイムギョウ界の状態は元に戻してもらう。拒否すれば、それはこいつの責と思え」
「……分かった。拒否権はないってことだね」
むしろそう言われるのを待っていたと言う風に、くろめは大きく頷くと、立ち上がって目を閉じる。
「……元に戻る。元に戻る。元に戻る。綺麗さっぱり元通り」
「そんなんでいいのか?」
ブツブツと口の中で呟いているくろめに、ガルヴァトロンは怪訝そうに顔を顰めるが、マジェコンヌが人差し指を唇に当てるのを見て、黙る。
すると、くろめの身体から黒いオーラのような物が噴き上がり、渦を巻き出す。
額から玉のような汗が流れ、体が小刻みに震えている。
「元に戻る。元に、戻る……戻れ!」
繰り返される呟きは徐々に大きくなり、最後に力の籠った叫びになっていた。
何かが弾けるような音がしたかと思うと、くろめは大きく息を吐いた。
「……これで、戻るはずだ」
「『戻る』はず? 『戻った』ではなくか?」
「異常だった時間が長すぎたんだ。人々の意識が、この状態に慣れてしまっている。元通りになるには時間がかかる」
くろめが言うには、猛争も結局はシェアエナジーによる女神としての力であり、民衆の精神に影響を受けるらしい。特にこんな大がかりな世界への干渉は、影響を受けやすいと言う。
「ついでに、今までのことを考えると上手く戻るかは分からない」
不安そうなくろめに、ガルヴァトロンはややワザとらしいほどに大きく排気する。
万能に見えて不自由なことばかりの力である。こんな力を持っていては、人格が歪むのも止む無しか。
しかしここはマジェコンヌに免じて彼女を信じ、ガルヴァトロンはさらに話を進める。
「ではそろそろ本題に入ろう。……我々がこれからどうするかだ」
成り行きから共闘したが、彼らは本来追う者と追われる者だ。
ガルヴァトロンは地球人を滅ぼそうとしていて、ホット・ロッドはそれを阻止しようとしているのは変わらない。
「俺はブリテンを護るために戦う。奴らを放っておけば、必ずゲイムギョウ界は滅ぼされる。これは俺が確かに経験した現実だ……」
「待て待て! ああ、そうくるよな。でも、それはおかしいんだよ」
当然の如く、ホット・ロッドが待ったをかけた。
ギラリと鋭い視線を向けられても、若きオートボットは動じなかった。
「おかしい物か。貴様にしてみれば俺の考えは異常に思え……」
「違う、お前の考えがどうかじゃない。『地球人が侵略に来て、その結果ゲイムギョウ界を滅ぼす』っていうこと自体が理に適ってねえんだ」
ホット・ロッドは相手の声を遮り、ジッとその目を見つめた。
「NESTに話を聞いた。連中の目的は『移住』だ。こっちに皆で引っ越してきて、ショッピングモールやテニスコートを作ろうってんだ。美味しい空気を吸いながら、綺麗な川で釣りでもしようってのさ」
「それがどうし……」
ハッとガルヴァトロンも目を見開いた。
地球人のやろうとしていることを簡単に言えば、汚れた家を捨てて、綺麗な新居に引っ越そうということだ。
なのに、新しい家にわざわざ火を点け、毒を撒くだろうか。
「
「
その言い方に、そして苦み走った表情に、ガルヴァトロンの目には驚きと共に僅かな期待が宿った。
ホット・ロッドは自分のこめかみを指先でコツコツと叩いた。
「まだ俺がロディマスだって認めたワケじゃねえよ。ただ、断片的な記憶を整理すると、ロディマス
「…………」
その答えに、ガルヴァトロンは複雑そうな顔をした。
僅かでも昔のことを思い出してくれたことへの嬉しさと、それでも自分を兄と認めてくれない相手への悲しさが混ざった表情だった。
ホット・ロッドとしても、交渉の材料として肉親の情を利用しているようで、自己嫌悪を拭えなかった。
「話を戻そう。とにかく、あの未来の地球人らしき連中と、今の地球人が全く同じだとは、俺にはどうしても思えないんだ」
「しかし、実際に……いや待て」
ガルヴァトロンは何かに気付いたように、くろめを一瞥した。
「そういうことか」
「そういうことだ」
彼らの未来では恐るべき侵略者だった地球人。だが、それにしたって今の地球人がゲイムギョウ界を滅ぼす理由が見当たらない。
憎しみが暴走するということも有り得るが、余りに唐突過ぎる。
だとすれば、考えられる原因でもっとも有り得そうなのは、やはり『天王星うずめ』の存在なのだ。
猛争の力ならば、地球人を暴走させることなど容易いはず。
目が小さく窄まり体からスパークを迸らせるガルヴァトロンにホット・ロッドは突き刺すような視線を向けた。
「おっと、さっき俺に任せると約束したはず。それとも新破壊大帝閣下は、一分前にした約束を反故にされるおつもりで?」
「お前……! 地球人に対してもそうだが、奴らがしたことを思えば、あまりにも……!」
「そうそこだよ。確かに記憶の中で酷いことされたさ。でもそれは、未来の話だ。今はまだ、地球人も、うずめも、取返しの付かないことはしてないんだ」
ホット・ロッドは拳を強く握りしめた。
そうだ、ここは彼らから見れば過去だ。世界は美しいままで、彼らの大切な人々も生きている。
起こしてもいない罪で裁かれるのは、余りに理不尽だ。
「だがいずれは『取返しの付かないこと』をやらかすとも限らない」
「やらかさないようにすりゃあいい……せっかく過去に来たんだぜ? 二週目はハッピーエンド目指したくなるのが人情だろう?」
「つまり、戦争を未然に防ぐと? それも連中と和解する方向性で」
相手の言いたいことがだんだんと分かってきたガルヴァトロンは、腕を組んで思案する。
おそらく、未来はすでに変わり始めている、
彼の知識では、地球人はブリテンに来た時点でこの世界の破滅を目的としていたのだ。
「……しかし、地球人が侵略してきたのは事実。事後の策として、杖は手に入れる」
それが彼なりの最大の妥協だ。
「どのみち、クインテッサを放ってはおけん。奴は杖で地球もゲイムギョウ界も滅ぼす気だ」
それを聞いたホット・ロッドは、待ってましたと言う顔をした。
「杖か……つまりさ、お前は杖を手に入れてゲイムギョウ界を守りたい。俺は杖を手に入れてゲイムギョウ界と地球を守りたい、ってことだ」
「杖を手に入れ、クインテッサを倒す所までは利害が一致していると?」
「話が早くて助かる。戦力は多いほうがいいだろう?」
ニヤリと笑うホット・ロッドに、ガルヴァトロンは一つ息を吐いた。
この弟は、昔からこういう口八丁の悪だくみが得意で、よく母を困らせたものだ。
「しかし、鍵となる遺物はやっと一つ……いやスカリトロンを含めて二つ、手に入ったばかりだ」
「残りの場所は分かってる。お前も当たりは付いてるんだろう?」
「キャメロット。マーリンが隠しているんだろうな」
間髪入れずに返事を返されて、ホット・ロッドの笑みが大きくなる。
エクスカリバーの量産には、ソラス・プライムの鍛冶鎚が使われているはず。
そしてコピーを作るにはオリジナルが必要だ。
「ちょうどいいことにな、俺らの仲間がキャメロットを探ってる」
「その情報と引き換えに、共闘を継続したいと」
二人は小出しに情報を出し合いながら会話を進めていく。
まるでチェスで対局しているようだと、ミリオンアーサーは感じた。
「……いいだろう。こちらとしては、暗黒星くろめの監視もしたい」
「交渉成立だな。もうしばらくは休戦といこうぜ」
テーブル越しにスイッと差し出されたホット・ロッドの手を、ガルヴァトロンはゆったりとした仕草で握った。
相棒同士ががっちりと握手するのを見上げて、くろめとマジェコンヌ、ネプギアはホッと息を吐く。
一方でミリオンアーサーは何とも言えない顔をしていた。
自分の上で話が矢継ぎ早に進んでいくことに、奇妙な感覚を得ていたからだ。
「それで、キャメロットについての情報は?」
「まあ、待てよ。こっちも聞きたいことがある。例の『杖』とやらでクインテッサは何をたくらんでる?」
「…………」
手を引っ込めて少し思案したガルヴァトロンは、それを言うことにした。
今更隠してもしょうがない。それに地球に潜む
「いつかも言ったな。杖でもって地球に潜む存在の力を吸い取ると。そいつとこの世界に宿るオールスパークを吸収することで、クインテッサは創造主になろうとしている」
ガルヴァトロンの顔に緊張が走った。
その存在のことを話題にするだけでも、危険だとでも言う風に。
「そいつは、色々な名で呼ばれている。惑星サイバトロンの古き敵。破壊神。星間帝王。
「ユニクロン」
* * *
「…………」
何処とも付かぬ、暗黒の闇の中。
アンティークなテーブルに乗ったチェスを思わせるボードゲームの駒を、その自称の通り鏡のようなメタリックのライダースーツとフルフェイスヘルメットの男が黙々と動かしていた。
「あ~あ~、愛と希望の大勝利って感じッスねえ」
蜘蛛を思わせるトランスフォーマー、タランチュラスは糸を使って逆さづりの状態で、つまらなそうに体を揺らす。
「あいつら、もっと仲良くなっちゃった感じッスしぃ」
「それでいいんだよ」
ミラーは駒を動かしながら、嘲笑混じりに答えた。
「愛や信頼ってのはね、深く強くなるほどに……それが奪われた時に、大きな憎しみを生むんだよ」
「そんなもんッスかねえ……」
理解できないと言う風に、タランチュラスは首を振る。
くぐもった嗤いを漏らしながら、ミラーは駒を進める。
「さあて、新展開といこう。今度の役者はきっと、観客のお気に召すはずさ……何せ文字通りの看板役者だから、ね」
* * *
同じころ。
ブリテンの中心地、キャメロット。
その王城で潜入任務を行っていたケーシャは、目の前の光景を信じることが出来なかった。
突然爆発音と共に炎に包まれた王城の、その上に二つの影が立っていた。
一つは、大きな影。
太く逞しい後ろ足と相反する短い前足に、長い尻尾。
牙の並んだ大顎からは炎が漏れ出し、頭部には一対の角を備えている。
太古の時代に世界を制していた恐竜の王、
もう一つの影は、その暴君竜の足元に立っていた。
騎士甲冑の如き、重厚かつ勇壮なその姿。
全身に施された青と赤のファイアパターン。
背中には同様に炎模様がある大剣と丸盾。
神話の英雄が如き勇壮な顔には、左半分に血のように赤い痣のような模様が広がっていた。
肩には今しがた強奪したばかりの獲物である長柄の大鍛冶鎚……マーリンが秘匿していた最初の13人の遺物が一つ、ソラス・ハンマーを担いでいた。
ケーシャは、そして彼女を庇うように前に出たハウンドは、彼らのことを良く知っていた。良く知っているからこそ、信じることが出来なかった。
見上げる二人に答えるワケではないだろうが、炎模様の戦士は厳かな声で宣言した。
「私はネメシス・プライム……偉大なる創造主の忠実なる僕『三騎士』が、将」
「我、ネメシス・グリムロック! 我ら、クインテッサの三騎士!!」
暴君竜の姿の戦士も天を轟かすような咆哮を上げる。
だがしかし、ケーシャとハウンドはその名乗りを受け入れることは出来なかった。
彼らの本当の名を知っているから。
「なんで、なんで……」
「オプティマス……!」
竜の姿を持った古代の騎士ダイノボットの長グリムロック。
そして、オートボットの総司令官オプティマス・プライム。
炎に照らされる二体のトランスフォーマーの目は、そのどちらもが禍々しいなまでの
ややこしい設定を整理して、話をシンプルにするための回でした。
もっとややこしくなった? 言いっこなしで。
今回のキャラ紹介。
クインテッサ三騎士ネメシス・プライム
突如としてキャメロットを強襲した謎のトランスフォーマー。
その正体は創造主クインテッサが新たに送り込んだ刺客『三騎士』のリーダー格。
オプティマスとまったく同じ姿をしているが、顔の左半分に赤い痣のような模様があり、目が紫。
クインテッサ三騎士ネメシス・グリムロック
ネメシス・プライムと行動を共にする三騎士の一人。
ダイノボットのリーダー、グリムロックとまったく同じ姿をしているが、やはり目が紫。
元ネタは、横浜トランスフォーマー博で限定発売されたロストエイジ版ヴォイジャークラス・グリムロックの色替え玩具。
なお、三騎士という肩書きが指すように、もう一人仲間がいる。