新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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いつにも増して遅くなってしまいました……。


第66話 ネメシス

 ホット・ロッドはランボルギーニの姿でブリテンの荒野を走っていた。

 その横には、一応の同盟を結ぶことになったガルヴァトロンが、エイリアンタンクの姿で並走していた。

 というよりも、彼がクインテッサに呼び出されたのでホット・ロッドはそれにくっついて来た形だ。

 

 これから、ガルヴァトロンが合う相手と話すために。

 

 キャメロットに潜入していたケーシャとハウンドから連絡を受けたが、その内容は到底信じることが出来ない物だった。

 謎のトランスフォーマーが件の城を強襲し、ソラス・ハンマーを奪っていった。そのトランスフォーマーと言うのが……。

 

「…………」

 

 荒野のど真ん中に、その噂の張本人が立っていた。

 赤青の騎士甲冑のようなボディに、背中には一対の三連マフラー。

 剣を乾いた地面に突き立て、彫像のように動かない。

 

 閉じていた目がゆっくりと開かれると、紫色の光が漏れた。

 

 その姿は、ホット・ロッドが良く知る人物、その物だった。

 

「オプティマス……」

 

 だが、有り得ない。

 オプティマス・プライムがクインテッサに与し人間を攻撃するなど、有り得るはずがない。

 当然ながら、ホット・ロッドは情報を得るやすぐさまプラネテューヌに連絡を取ろうとした。

 しかし大気中に充満するアンチ・エレクトロンのせいか、あるいは別の理由か、通信が届かなかった。

 

 今、目の前のオプティマスらしき相手について考えられる可能性はいくつかある。

 第一に、オプティマスの姿を模した偽物である。これが一番ありそうだ。

 因子を使って作った騎士か、機械仕掛けの紛い物か……。

 

 あるいは、洗脳されたか?

 だとしても、今のオプティマスをどうやって操る?

 そんなことは彼の恋人であるプラネテューヌの女神ネプテューヌが何としても阻止するだろうし、仮に操られたとしても、間違いなく救出に動くはず。

 

「貴方が……クインテッサの使途か?」

 

 黙考するホット・ロッドに代わって、ガルヴァトロンが緊張した面持ちで目の前のオプティマスの姿をした『何か』に声をかけた。

 それは、厳かに口を開いた。

 

「いかにも。創造主の忠実なる僕、三騎士が一、幻影騎士ネメシス・プライムだ」

 

 やはり声も口調もオプティマスその物だった。

 しかしこれがオプティマスとは到底思えない。

 

「お前が余りにも仕事を進めんので、我らが送り込まれたのだ」

「なるほど……確かに仕事が早いようだ。さっそくキャメロットを襲撃し、遺物を奪ったとか」

()()()のではない。()()()()()のだ。あれは元々、創造主が持つべき物。……これから、お前たちには私の指揮下に入ってもらう」

 

 冷厳した声で、ネメシス・プライムは告げる。攻撃したことを何とも思っていないようだ。

 一方的な物言いにガルヴァトロンは眉をひそめた。

 

「その話の前に、一つハッキリさせておきたい。貴方は……オプティマス・プライムなのか?」

「オプティマス……? 誰だそれは? ……ん?」

 

 不思議そうに、ネメシスは首を傾げた。

 そこで三騎士の将は小刻みに震えているホット・ロッドに初めて気が付いた。

 

「その者は何者だ? お前の部下、ではないようだが」

「こいつは……説明が難しいのだが」

 

(冷静になれ、冷静になれ、冷静になれ!!)

 

 ホット・ロッドは必死に自分に言い聞かせていた。

 敬愛するオプティマスの姿をした偽物の一挙一動、一言一言がスパークを逆撫でされているかのように怒りを湧き上がらせる。

 この目の前の紛い物を、そしてこんな物を用意したクインテッサを今すぐこの世から消し去ってやりたいという激情にかられる。

 しかし、今はまだその時ではない。

 

「……俺はホット・ロッド。オートボットのブリテン遠征隊の隊長だ」

「ほう、その若さで隊長か。前途有望な戦士なのだろうな」

 

 感心したように穏やかな声を出すネメシスが、記憶の中のオプティマスと重なり余計に腸が煮えくり返る。

 これは、オプティマスに対する最大級の侮辱だ。到底、許せるものではない。

 

「しかし報告によればオートボットは貴様と敵対したはず。何故ここにいる?」

 

 その質問にどう答えたかと思案していた時、ホット・ロッドが内蔵している通信装置に通信が入った。

 

『ロディ、こっちは準備できたよ!』

 

 くろめの声が聞こえてきて、ホット・ロッドは我知らずニヤリとした。誰かが見れば、メガトロンに似ていると言うかもしれない、そんな笑みだった。

 

「答えろ、何故ここにオートボットがいる?」

「それは……テメエをぶちのめすためだよ、偽物野郎!!」

 

 ホット・ロッドが合図すると、何処から黄色い閃光が走り、バンブルビーが現れた。

 空からはクロスヘアーズが舞い降り、遅れて完全武装のハウンドとドリフトも現れてネメシスを取り囲む。

 彼らは全員、すでにゴールドサァドと合体していた。

 

「よもやよもや、本当にオプティマスだと言うのか……?」

「偽物に決まってんだろろうが!」

「どちらにしても、動かないでくれよ……!」

 

 その姿に動揺するオートボットたちだが、それでもネメシスに向けた武器を降ろすことはない。

 特にこんな時に一番混乱しそうなバンブルビーは、冷静だった。

 彼はかつて、『ネメシス・プライム』と言うオプティマスを模した粗悪な機械人形を目撃しているからだ。

 

「……これがお前の意思か? 創造主に反旗を翻すと?」

 

 だがネメシスは周囲のオートボットたちを無視して、ガルヴァトロンを冷たい目で睨んだ。

 

「無論。元より俺はこの世界を守ることが目的だ……次元の狭間から救い出してくれたことには感謝しているが、それとこれとは話が別よ」

「愚かな」

 

 大きく頭を振ったネメシスは周囲のオートボットたちを見回した。

 

「オートボットたちよ、何も我々が戦うことはない。……私は、そして創造主は大義のために動いているのだ。それを理解してほしい」

 

 厳かな、しかし穏やかな声は、彼らの知るオプティマスとまったく変わりがなかった。

 オートボットたちは我知らず顔を見合わせる。

 

「我々の目的は、皆が幸福に暮らせる世界。ただそれだけなのだ」

「キャメロットを襲いやがった癖に……!」

 

 ホット・ロッドが憎々し気に睨むと、ネメシスはゆっくりと首を振った。

 

「地球に潜む邪神ユニクロン……サイバトロンにとって最大の敵とも言える奴を討ち滅ぼすためには、杖がどうしても必要なのだ……そして創造主のもと、この不完全な世界を一度滅ぼし理想郷を創生するために」

「黙れ! センセイの姿で戯言を語るな!!」

 

 その声に誰よりも先に怒りの声を上げたのは、やはりと言うかドリフトだった。

 二刀を構え、相手に斬りかからんばかりだ。

 

 ホット・ロッドはまだ冷静だったが、それでも青い目の奥に赤い光が揺れていた。

 ガルヴァトロンは厳しい顔で彼を諫めた。

 

「落ち着け、ホット・ロッド。それにそっちの侍も……」

 

 殺気だつオートボットたちを見回したネメシスは残念そうに排気した。

 

「……説得は無理か。残念だ……実に、残念だ。見どころのありそうな若者だと言うのに」

 

 その瞬間、一同の立つ地面が爆発した。

 轟音と共に土が舞い上がり、その中から巨大な影が現れた。

 それは二本の脚で立ち、長い尻尾を持った金属製の暴君竜だ。

 

「ぐるぉおおおおお!! 剛竜騎士ネメシス・グリムロック! 見参!!」

 

 牙の並んだ口から炎を吐きながら立ち上がったネメシス・グリムロックは体に付いた土を掃うのも兼ねてギゴガゴと音を立てて変形する。

 ネメシスの二倍はある巨躯で、額に一本の角を持ち、両肩に竜の顔の意匠がある騎士の姿にだ。

 手には長柄の戦鎚ドラゴントゥース・メイスを握っている。

 

 そして口元にはまるで(くつわ)のように赤い痣のような模様が広がり、両の目は紫に輝いていた。

 

「グリムロック……! マジで出やがった!」

『噂には聞いてたが、本当にデカイね。G級間違いなしだ……!』

「みんな落ち着け! こいつもどうせ偽物だ!!」

 

 飛び上がったクロスヘアーズとエスーシャが戦慄した様子で呟くが、体勢を立て直したホット・ロッドは土煙の向こうのネメシスの影にレーザーライフルを向ける。

 だがこちらが引き金を引くより早く、向こうの方が撃ってきた。

 

 咄嗟に上体を傾けると、頭のあった場所を大型の弾丸が通り過ぎた。

 

「避けたか……やはりまだ武器に慣れていないな」

 

 土煙が収まると、こちらに銃口を向けるネメシス・プライムがいた。

 今までにホット・ロッドが見たことのない、銃だ。

 だがその銃『アクティブリボルバー』はネメシスの左腕と一体化している。手の甲の上に銃口があり、リバルバー拳銃のようなシリンダーが腕そのものを芯にしてその周りを囲んでいた。

 さらに右腕にも破壊大帝の代名詞フュージョンカノンにも似たビーム砲『デストロイガン』が装着され、左肩にはショルダーキャノンが備えられている。

 

 これらの武装一式は、クインテッサより彼に授けられた物だった。

 

 幻影騎士が無造作にデストロイガンを発射すると光弾がオートボットたちに襲い掛かる。その攻撃に一切の躊躇いはない。

 

「やれ、ネメシス・グリムロック」

「応よ! 我、ネメシス・グリムロック!! 創造主の敵、叩き潰す!!」

 

 グリムロックに似た剛竜騎士は、メイスを振るって小さなオートボットたちを薙ぎ払おうとする。

 超スピードでそれを躱したバンブルビーは、相手の顔にブラスターを撃つ。

 

「ぐおっ!?」

『ちょ!? ビー、あれ痛くない!?』

「大丈夫、あいつは、頑丈!!」

 

 合体しているビーシャの抗議をバンブルビーは否定する。

 実際、グリムロックは一切ダメージを受けた様子はなく、咆哮を上げてメイスを振り回す。

 だがハウンドのレールガンを喰らうとさすがに痛みを感じたようだ。

 

「紛い物め! その首を刎ねてくれるわ!!」

『落ち着け、作戦を忘れたか!』

「ぐぬう……!」

 

 一方で、ドリフトは刀を振りかざしてネメシス・プライムに向かっていこうとして、エスーシャに窘められていた。

 幻影騎士は、周囲の敵の動きに首を傾げた。ドリフトばかりかホット・ロッドやガルヴァトロンまでも遠巻きに銃撃してくる状況に、違和感があるからだ。

 

「これは……なるほど、そういうことか」

 

 呟いた瞬間、何処か遠くから飛んできた装置が頭上で静止し、それを中心に三角錐型の結界が発生。

 二人の騎士を包み込んだ。

 

  *  *  *

 

「上手くいったか……」

 

 マジェコンヌは、ガルヴァトロンの傍に並ぶとホッと息を吐いた。

 結界の中で動けなくなった騎士たちを、オートボットや待機していたディセプティコン、そしてネプギアたちが取り囲む。

 この結界は、彼女とネプギアの合作であり、かつて女神を封じたアンチ・クリスタルの結界の簡易版だった。

 

「ロディ、大丈夫かい?」

 

 くろめが相棒に心配そうに声をかける。

 ホット・ロッドは結界の前に仁王立ちし、光の壁越しにネメシスを睨みつけていた。

 

「貴様の目から怒りが見える。よくないぞ、そういうのは」

「……怒りもするさ。オプティマスの出来の悪い偽物を用意されりゃあな!」

「偽物とは酷い言いようだ。私はオールスパークによって生を受けたその日より、ネメシス・プライムと呼ばれているのだが」

「ほざいてろよ、バッタモン」

 

 ネメシスに静かな声をかけられて、ホット・ロッドはイライラと吐き捨てるように返した。

 いつも以上に強い怒りを見せる彼だが、くろめにはその理由がよく分かった。

 

 ホット・ロッドにとってオプティマスは憧れの存在であり、精神的に大きな影響を受けた、疑似的ながら父替わりと言っても差し支えない相手だ。

 そんな相手の名誉を穢すような存在に、怒りを感じるなと言う方が無理なのだ。

 

 その姿は、父母を侮辱された時のガルヴァトロンによく似ていて、本人らの意識はともかく、やはり二人が兄弟なのだと感じさせた。

 

 そして怒っているのは、もちろんオートボットたちもだった。

 

「さて、この偽物をどうするか……」

「決まっている! さっさと斬り捨てるぞ!!」

 

 特にドリフトはネメシスたちを排除したくてしょうがないようだった。

 ハウンドはそんな彼を諫める。

 

「落ち着けよ。こいつらは三騎士って名乗ってんだ……ってことはあと一人、仲間がいるんだろうな」

「そいつもどうせ、誰かのパチモンだろ?」

 

 地面に降り立ったクロスヘアーズは、ガンスピンをして銃をコートの裏にしまいながら軽く言った。

 一方で、ネメシス・グリムロックは咆哮を上げていたが、ネメシス・プライムは落ち着き払っていた。

 

「その通りだ……我ら三騎士はこの私、幻影騎士ネメシス・プライム。剛竜騎士ネメシス・グリムロック。そして最後の一騎が……」

「ッ! 上だ、全員備えろ!!」

 

 その瞬間、感じた殺気にホット・ロッドが叫ぶと、上空から無数の剣が降り注いだ。

 半透明のエネルギーで出来た剣は、地面に突き刺さると爆発する。

 バンブルビーは高速移動でネプギアを抱えて離脱し、クロスヘアーズは飛んで避ける。

 ハウンドとドリフトはそれぞれの得物を盾替わりにして耐え、ホット・ロッドとガルヴァトロンはそれぞれの相棒を庇う。

 

「ふう、危ない、危ない!」

『ネプギア、大丈夫?』

「今の攻撃は……そんな、まさか!」

 

 情報員に抱えられたネプギアは信じられないという顔で空を見上げる。

 今の攻撃は、『32式エクスブレイド』……彼女の、良く知る相手の技だからだ。

 

「へえ……これを避けるんだ」

 

 そこには女性の影が浮かんでいた。

 

 女性的で肉感的な姿態を包むのは、黒いレオタードのような衣装。

 背中には光で構成された妖精のような翼。手にはアメジストのような光沢を放つ優美な太刀。

 長い紫の髪を二つの三つ編みにし、瞳には円と直線を組み合わせた電源マークのような紋章が、ネメシス・プライムやネメシス・グリムロック同様に紫色に光っていた。

 背筋が凍るほどに妖艶な笑みを浮かべた美しい顔の右半分には、ハートのような形の赤い模様があった。

 

 その姿を見て、ネプギアは呆然と呟いた。

 

「お姉ちゃん……」

 

 そこにいたのは、ネプギアの姉、すなわちプラネテューヌの女神ネプテューヌ……その女神としての姿であるパープルハートに他ならなかった。

 

 パープルハートらしき女神はそれに構わず、手に持った刀……彼女の愛刀であるオトメギキョウを一振りして結界を発生させている装置を壊すと、ネメシス・プライムの前まで降下した。

 

「ふふふ、油断したわね。ネメシス」

「ああ、助かったよ」

 

 親し気に微笑み合う、パープルハートらしき女神とオプティマスのようなトランスフォーマー。

 忌々しいほどに、プラネテューヌの姉女神とオートボット総司令官の日常での姿そのものだ。

 

『そんな、ねぷねぷ、なんで……!?』

「お姉ちゃん、本当にお姉ちゃんなの!?」

 

 バンブルビーと一体化しているビーシャと固まっているネプギアの動揺した声に気付き、パープルハートの姿の女神は小首を傾げた。

 

「ねぷね……? それにお姉ちゃん? 残念だけど、私の妹はリーフウインドだけよ」

「な、なに言ってるの!? 私だよ! ネプギアだよ!!」

「知らないわね……変な子。それに、私の名前は『ねぷねぷ』なんかじゃないわ」

 

 ネプギアの声に、怪訝そうに顔を歪めたパープルハートは、ネメシス・プライムの顔の横に並ぶ。

 

「私は最初の十三人の一柱、鍛冶師ソラス・プライムの娘が一人、ベルフラワー……またの名を、妖花騎士ネメシスハートことネメシス・ネプテューヌ!!」

「ね、ネメシスハート!? それに、ベルフラワーって!?」

 

 パープルハート改めネメシスハート……ネメシス・ネプテューヌは、愕然とするネプギアを冷たい目で見下ろした。

 

「今はこんな肉の体に押し込められているけれど……本来なら、私は正当なるソラスの後継よ」

「そ、そんな……」

「ぎあっち、落ち着くんだ! あれがねぷっちなもんか!」

「くそう……! オプティマスばかりか、ネプテューヌの偽物まで用意しやがったのか!!」

 

 くろめが首を振るネプギアを落ち着かせようし、ホット・ロッドはさらなる怒りに燃える。

 ふん、とネメシスハートは鼻で笑った。

 

「偽物? さっきから馬鹿なことばかり言うのね。それよりも、あなたたちはオートボットね。ならば、彼に……ネメシス・プライムに傅きなさい。当然の礼儀よ」

「なんだと! 誰が……!」

 

 無礼な物言いに激昂するドリフトだが、ネメシスハートはまるで動じずに口上を続ける。

 

「彼こそは最初の十三人が末弟、偉大なるネメシス・プライムそのヒトよ。本来ならあなたたちのような連中は、謁見することも許されない高貴な存在なのよ」

「ベル、そういうのはあまり……」

「謙虚なのは美徳とは限らないわ。こういう不躾な連中にはガツンと言って聞かせないと……ああ、そっちのディセプティコンは別にいいわよ。殺すから」

 

 高慢で好戦的なネメシスハートに、ネメシス・プライムは軽く排気する。

 その態度と言い分から、いよいよホット・ロッドは確信を持った。

 

 やはり、こいつらは偽物だ。

 おおかた、クインテッサが操りやすいように適当な情報を刷り込んだのだろう。

 

 その確信を元に、皆に攻撃指示を出そうとした、その時だ。

 

『ブ……遠……、こち…イ……ワール、応…してくだ……!』

 

 唐突に、通信機器から声が聞こえた。

 それはその場にいる、ブリテン遠征隊全員がそうだった。

 

『ブリテン遠征隊、応答してください! こちらプラネテューヌ教会! 繰り返します、ブリテン遠征隊、応答してください!!』

 

 通信機器からは何処か幼さを残した少女の、しかし切羽詰まった声がする。

 プラネテューヌの教祖、くろめとマジェコンヌにとっても関係のあるイストワールの声だ。

 さっきまでは、ブリテン国外と連絡が取れなかったと言うのに。

 不信に思いつつも、反射的にホット・ロッドは回線を繋いだ。

 

「……こちら、ホット・ロッドだ」

『! ああ、よかった! やっと繋がりました! ホット・ロッドさん、落ち着いて聞いてください! 緊急事態なんです!!』

「悪いがこっちも立て込んでるんだ。後に……」

 

 戦闘中であるため、通信を切ろうとするが、次の言葉に何度目になるか分からない衝撃を受けた。

 

『ネプテューヌさんとオプティマスさんが、さらわれてしまったんです!!』

 

 

 

 

 

 その時、何処か深い闇の底で、鏡のようなライダースーツの男が嗤った。

 

 

 

 

 

「な、に……?」

『数日前に突然現れた、クインテッサを名乗る相手に……偶々来ていたグリムロックさんも一緒に! もちろん抵抗しましたが、近くにいた子供たちを人質に取られて……!』

 

 通信機からの声が遠くに聞こえる。

 

『他の国の女神様やオートボットのみなさんが後を追おうとしましたが、見失ってしまって……こちらは大混乱なんです!!』

 

 混乱しているのはホット・ロッドやオートボットたちもだった。

 では、ならば、まさか……。

 

「それじゃあ、あいつは……オプティマスだってのか!?」

「馬鹿な! そんなことがあり得るものか!!」

「落ち着け、まだ決まったワケじゃねえ!!」

 

 動揺するクロスヘアーズとドリフトを落ち着かせようとするハウンドだが、今度は効果が薄かった。

 ガルヴァトロンは鋭い目つきでクインテッサの走狗と化した者たちを睨んでいた。

 

「クインテッサ……やってくれる!!」

 

 そんな一同を、ネメシス・プライムは胡乱げに見ていたが、やがて厳かに声を発した。

 

「こちらに付かんのなら、それも構わん。だが邪魔だけはしないでもらおう」

「あら? 叩き潰しておいた方がよくない?」

「グルルルゥ……我、ネメシス・グリムロック! 物足りない!!」

 

 当然の如く戦意を衰えさせない剛竜騎士と妖花騎士だが幻影騎士は首を横に振る。

 

「これ以上彼らに構っている暇はない。一刻も早く、杖を手に入れなければ……創造主のために」

「……ええそうね。私たちは下らない宝探しなんかするつもりはないわ。最短ルートで杖を手に入れましょう!」

「グルルルゥ……仕方ない。いざ、ベイドン山へ!!」

「させると思うか!!」

 

 もはやオートボットもディセプティコンも眼中にない様子の三騎士だが、そうはさせじとガルヴァトロンが電撃を放とうとして……ドリフトに掴みかかられて止められた。

 

「何をする!!」

「そちらこそ……あれは、あれはオプティマスなのだぞ!?」

「だとしても、今は敵だ!!」

 

 その声に反応するかのように、バンブルビーが動く。

 本当にあれがオプティマスだとしても、それを止める必要があると感じたからだ。

 だが、急に体から力が抜け、加速することが出来なかった。

 

「ビーシャ!?」

『そんな、ねぷねぷと、ねぷねぷと戦うなんて……!』

 

 一体化しているビーシャの闘志が完全に萎えてしまっているからだった。

 正義の味方を目指す彼女と言えど、友人と戦う覚悟を即座に決めることなど出来なかった。

 一方で、ネプギアは動揺しつつもすぐに姉を止めるべく走る。

 

「お姉ちゃん!! 待って!!」

「……私は、あなたの姉ではないわ」

 

 しかし、ネメシスハートが振り向きざまに放った刀の一閃が顔のすぐ前を通り過ぎて、足を止めてしまう。

 息を飲む妹を、女神は冷たい目で見ていた。

 

『ハウンドさん!』

「あれがオプティマスであれ……ここで止める!!」

『クロスヘアーズ、難しいことはあいつをぶっ飛ばしてから考えよう!!』

「! ああ、そうだな!!」

 

 相棒たちに言われて、ハウンドは全身の武器の狙いを三騎士に定め、クロスヘアーズも三騎士に向かっていく。

 ガルヴァトロンはもちろん、バンブルビーも立ち上がりブラスターを構える。

 

「愚かな……ベルフラワー、頼む」

「分かったわ……だから、叩き潰したほうがいいと言ったでしょう? 融合合体(ユナイト)!」

 

 彼らを一瞥したネメシス・プライムに声をかけられ、ネメシスハートは声を上げ、彼の身体に溶け込むようにして一体化する。

 すると騎士の身体から紫のオーラが噴き上がった。

 

 ネメシスは右腕からデストロイガンを取り外し、その後部を左肩のショルダーキャノンの先端に接続する。

 さらにアクティブリボルバーの銃口をデストロイガンの側面に差し込むと、彼をして肩に担がなければならないほどの巨大な大砲になった。

 

「バズーカストーム……準備完了」

「ッ! ロディ!!」

 

 バズーカストームなる大砲が火を噴くよりも早く、くろめは跳び上がって相棒の唇に自分の唇を重ね、溶け込むように彼と一体化する。

 ハッと正気に戻ったホット・ロッドは腕を翳した。

 

 相手の発射に合わせてポータルを開き、その攻撃を相手に送り返すために。

 

 だがしかし。

 今回の相手は実戦経験の少ない秘密結社首領ではなく、洗脳されたとはいえ百戦錬磨の英雄だった。

 

 敵の動きを察知したネメシスは大砲を発射する瞬間、ふくらはぎ部分からジェット噴射をして高く跳んだ。

 

「なに!?」

「……発射」

 

 咄嗟のことで、ホット・ロッドはポータルを開く位置を変えようとするが、それよりもバズーカストームが発射される方が早かった。

 三つの武器のパワーを合わせた強力な紫色のビームが、オートボットやガルヴァトロンたちのちょうど真ん中の地面に命中し、大規模な爆発を起こす。

 

『ぐわああああッ!?』

 

 直撃はせずとも爆風だけでオートボットたちは吹き飛ばされ、ガルヴァトロンやハウンドですら耐えきれず転倒してしまう。これほどの破壊力があるのは、女神と合体しているからなのは明らかだ。

 地面に空いたクレーターと、致命傷こそ負わなかったものの炎と煙の中で倒れた一同を見下ろし、ネメシスは剛竜騎士の傍に舞い降りた。その身体からネメシスハートが分離する。

 

「グルルルゥ……ネメシスばかりズルい。我も、戦いたい」

「いずれ、別の機会にな」

 

 三人の騎士の身体を、上空から降り注いだ光が包んだ。上空に浮かぶ小型の宇宙船からのトラクタービームだ。

 ガルヴァトロンには人員も船も与えなかったのに、彼らはよほど期待されているようだ。

 

「ま、待て……!」

 

 ヨロヨロと立ち上がったホット・ロッドは、浮かび上がっていくネメシス・プライムにレーザーライフルの狙いをつけ、引き金を引こうとして……引けなかった。

 彼の中のオプティマスの思い出が、頑なに指に力を入れることを拒んでいた。

 

「さらばだ、オートボットのホット・ロッド。……また邪魔をするのなら、次は排除する」

「この場で殺さないなんて、ネメシスは本当に優しいわね」

『ねぷっち……!』

 

 冷厳と告げるネメシス・プライムとそれを茶化すネメシスハートが宇宙船に吸い込まれるのを見上げ、くろめは愕然と呟いた。

 

 花火の揚がる夜の、ネプテューヌの横顔が脳裏をよぎる。

 あのネプテューヌが、最愛の妹を攻撃したばかりか、この惨状を指して『優しい』などとのたまうのが信じられなかった。

 

『ホット・ロッドさん!? そっちで何が起こってるんですか! ホット・ロッドさん!!』

 

 宇宙船が飛び去っていくのを見送るしかない一同の通信機からは、イストワールの声が空しく響くのだった。

 

 

 

 ……マーリンが全トランスフォーマーをブリテンの敵とし、全てのアーサーにその討伐を指示したと知らされたのは、そのすぐ後のことだった。

 

 

 




ミラー「だから言っただろう? 看板役者だってさ……何せこの作品は『超次元ゲイム ネプテューヌ』の二次創作だからね!」

今回のキャラ&小ネタ紹介。

妖花騎士ネメシスハート/ネメシス・ネプテューヌ

クインテッサの三騎士、最後の一人……その正体は洗脳されたプラネテューヌの女神ネプテューヌ。
自らをソラス・プライムの娘と認識しており、ネメシス・プライムからはベルフラワーと呼ばれている(この作品ではネプテューヌの前々世が本当にソラスの実の娘ベルフラワーなので、つまり前々世の人格に歪んだ形で逆行させられている状態)
その洗脳は極めて深刻であり、『ネプテューヌ』としての人格と記憶はほぼ完全に封印され、傲慢で独善的、かつ好戦的な性格と化している。
自分たちに敵対する相手、特にディセプティコンを嫌悪しており、情け容赦なく叩き潰そうとする。

今回は未登場だが、いつもの人間態に戻ることもでき、その状態だと普段のような明るく惚けた性格になる……が、敵への苛烈さや傲慢さはまったく変わっていないという、ある意味で非常に危険なことになっている。

クインテッサの唯一にして最大のお気に入りであり、そのため全力でバックアップされている(人員確保やら何やら、すべて丸投げされているガルヴァトロン一味とは大違いである)



ネメシス・プライムの武装

バリケードのガトリングにも似た形状の実弾銃『アクティブリボルバー』
メガトロンのフュージョンカノンを彷彿とさせる『デストロイガン』
上記二つに左肩のショルダーキャノンを組み合わせた『バズーカストーム』

これら一式はクインテッサがネメシスハートにおねだりされて用意した物。

元ネタはテレビマガジンで掲載されていた『超ロボット生命体物語ザ☆トランスフォーマー』に登場した巨銃兵士ギルトールというオリジナルトランスフォーマーの武装(ただしアクティブリボルバーは実弾銃ではなくレーザー銃、デストロイガンではなくデストロガン)
このギルトール、クインテッサ星人(タコお化けの方)が造ったコンボイのコピーで意思を持っておらず、コンボイにメガトロンをニコイチしたような姿が特徴。
作中ではみんな大好きニューリーダー(故)に憑依されてました。



三騎士の肩書き。

全員一律に騎士だとややこしいんで、それぞれ肩書きを追加しました。
ネメシス・プライムが幻影騎士(プライム版ネメシスプライムの肩書き、幻影兵士に由来)
ネメシス・グリムロックが剛竜騎士(Vに登場するデストロン、恐竜戦隊のリーダー、ゴウリュウに由来)
ネメシスハートが妖花騎士(元ネタなし。妖花とは、怪しい美しさを持った花や女性を指す言葉)


そんなワケでネメシス三騎士は、洗脳された本人です。洗脳された経緯はそのうち。
なお、この作品ではネメシス・プライムはオプティマスの前世である13番目のプライムの本名と言う設定。
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