新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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第5話 再会

 CS社の未来的な本社ビルの内部には、その技術力を支える研究施設があり、アメリカ国内でもトップクラスの研究者たちが研究を重ねている。

 その一角には、何故か大きなトレーラーキャブが置かれていた。

 

 鼻の長いボンネットタイプで、青と白のファイヤーパターンという中々に珍しい配色のトラックだ。

 

 周りでは、白衣の研究者たちが話し合ったり、端末を前に何らかのデータを打ち込んだりしている。

 このトラックはその外見に反し、他ならぬ社長が自ら設計し、開発の陣頭指揮を執った未来技術の塊だった。

と言っても、実際の使用を想定していないコンセプトモデルである。

 

 その前に満足気に立っているこの会社の社長は、最終調整を終えて一息吐いているところだった。

 技術屋である若い役員が、コーヒーを差し出す。

 

「社長、どうぞ。……しかしなんでトラックなんです? もっと他にあったでしょう」

「ありがとう。……まあ、敢えて言うなら、憧憬と敬意、何よりも感謝かな。カマロとどっちにしようか迷ったんだけどね」

 

 自分の問いに何とも抽象的な答えを返してくる社長に、役員は肩を竦める。

 

「しかし、いつも思うんですけどね。こんなアイディアがいったい何処から出てくるんです? まさか、神の啓示ってワケでもないでしょう」

「当たらずとも遠からずだね。実のところ、世の人々が僕が発明したと思ってる物のほとんどは、実際には宇宙人からの借り物なんだよ」

 

 軽い調子での明らかな冗談に、役員は苦笑する。

 しかし、実のところ社長は冗談を言ったつもりはまったくなかった。

 その時、社長が懐に入れていた社内連絡用の端末が震えた。見れば秘書からだ。

 役員に一言断ってから通話ボタンを押す。

 

『社長! 緊急事態です!!』

「どうしたんだい? 午後の予定ならまだ時間が……」

『西のコンビナートで暴走事件です! 例の人型も現れました!!』

「ッ! 分かった、すぐに戻る」 

 

 通話を切った社長は、研究チームにそのままでいるように告げると、足早に上階の社長室に向かって歩き出した。

 道すがら、ある人物に連絡を取る。

 

「ダッチ、聞こえるかい?」

『はい、旦那様。御用でしょうか?』

「すぐに西コンビナートで起こっている事件についての情報を集めてほしい。警察、マスコミ、それに軍とか……とにかく全部だ。それと、あらゆる手段を使って赤と青のトレーラーキャブと黄色いカマロを追跡してくれ。絶対に見失わないでくれよ」

『委細承知いたしました、旦那様』

 

  *  *  *

 

 それから、しばらくしてのこと。

 暴走重機群を撃破したオートボットたちは、ドサクサに紛れてコンビナートを後にし、ケイドのスクラップ場に帰り着いていた。

 

「やれやれ、まったく! あの連中の面を見たかよ! 助けてやったてのに、化け物見るみたいな面しやがって! あんな連中ほっといて、ディセプティコンどもを片付けりゃよかったんじゃないかね!」

「お前一番ノリノリだったじゃねえか」

 

 落ち着きなく歩き回りながら愚痴を吐くクロスヘアーズに、三連ガトリングの手入れをするハウンドは呆れたようにツッコミを入れる。

 事実、あの場で一番楽しそうにしていたのはこの空挺兵だったのだが、同時に彼は万物にまず文句を付ける性質なのだ。

 

「それとこれとは関係ねえ! 俺が言いたいのはだな、ここの連中は礼儀がなってねえってことだ!」

「ま、ゲイムギョウ界に慣れちまってるからな」

 

 ハウンドはガトリングを整備する手を止めずに言う。

 実際、トランスフォーマーが受け入れられているゲイムギョウ界と、この地球とでは大分違った。

 

「お前もそう思うだろ、ドリフト! ……ドリフト?」

 

 クロスヘアーズはグダグダというが、こういう時何か言ってくるはずの侍が静かなことに気が付いて、怪訝そうな顔になる。

 当のドリフトは、胡坐をかいて刀をじっと見つめていた。

 

「おい、ドリフト。どうした、浮かない顔して?」

「何でもない。……ドリフト。そうだ、私はドリフトだ」

「なに当たり前のこと言ってんだ、お前?」

 

 立ち上がるや刀を振るい、素振りを始めたドリフトの奇怪な言葉に、クロスヘアーズは怪訝そうな顔になるが、この侍が変なことを言い出すのはいつものことかと、あまり気にせずに話題を変える。

 

「で、だ。あの小僧、どう思う?」

「ホット・ロッドだったか? ……筋はいいな。初陣にしちゃ動けてた。あの時間を止める弾もすげえ。でもまあ、それだけだ」

 

 変わらず銃器を手入れしながら、ハウンドはあまり関心なさげに答えた。

 彼から見て、ホット・ロッドはよくいる若いオートボットだ。クロスヘアーズにしてもそんな物だ。

 特殊な力を持っているようだが、それだって持ち主の実力次第だ。

 しかし、ドリフトの感想は違った。

 

「あの男の足捌き……あれは剣を使う者の動きだ。おそらく相当な訓練を積んだのだろう、歩法が身に沁み着いている。……私に分かるのは、それだけだ」

 

 その言葉に、ハウンドとクロスヘアーズは顔を見合わせ、それきりそれぞれの作業に戻った。

 総じて、彼らはホット・ロッドに大した興味を感じていなかった。

 

 

 

 

 

「はい! ビー、整備終わったよ!」

「ありがと!」

 

 一方、作業用のプレハブ小屋の中では、ネプギアとケイド、スクィークスがバンブルビーの整備をしていた。

 なんだかんだ技術者としては一流なケイドから見ても、ネプギアの腕はかなりの物だった。

 

「慣れてるな、あんた。若いのに大したもんだ」

「えへへ。まあ、ビーたちとはそろそろ長い付き合いですから。ケイドさんも凄いですよ! トランスフォーマーを直すのには、コツがいるのに」

「これでも発明家一筋で20年近いからな」

()()発明家だろ……」

 

 胸を張るケイドに、プレハブ小屋を覗き込むホット・ロッドが茶々を入れる。

 ムッとしてケイドはホット・ロッドを見上げた。

 

「なんだよ! 俺は立派な発明家だぞ! 特許だって持ってるんだからな!」

「俺たちの体を調べて得た特許技術だろ、それ。……あいつのと同じく」

 

 ホット・ロッドが視線で指した先ではネプテューヌがスクィークスやひよこ虫たちと一緒にテレビを見ている。脇には、オプティマスが腰を掛け、近くにはうずめや海男、キャノピーも集まっている。

 テレビには年若い男が映っていた。

 高級そうなスーツを着て、垂れ目の瞳はヘーゼル色で、やや癖のある茶髪を短く刈っていた。

 

『約束しましょう。我がCS社の技術で、貴方の日常は変革(トランスフォーム)します!』

 

 人好きのする笑顔を浮かべる青年の後ろに、巨大なCS社のロゴが現れる。

 言うまでもなく、これはCS社のコマーシャルだ。

 

「CS社か……」

「なんて言うか、未来に生きてる感じの人だね! わたし、シンパシー感じちゃうかも!」

 

 未来に生きるプラネテューヌの女神ネプテューヌは好感を持ったようだが、オプティマスは難しい顔だ。

 近くにいるキャノピーも、あまりいい顔はしていない。

 

「気付いているかもしれないが、オプティマス。CS社の社長が発明したとされる技術……そのほとんどは、オートボットの科学だ」

「……ああ」

 

 キャノピーの言う通り、CS社の製品にはトランスフォーマーの科学技術が流用されていることを、オプティマスは察知していた。

 海男も真顔のまま頷いたが、声のトーンがいつも以上に真面目だ。

 

「そのことから、俺たちを捕えていた組織は、CS社なんじゃないかと考えている」

「じゃあ、この人も悪い人なの?」

「それはまだ分からない。だが、オートボットが捕えられていた研究施設に、オートボットの科学を売り物にしている会社……無関係な方が不自然だ」

 

 首を傾げるネプテューヌに、海男は冷静に自分の考えを言う。

 視線を鋭くし、オプティマスはテレビに映っている男を見る。

 

「私も気にはなっていたが、CS社……Cybertron(サイバトロン) System(システム)。さっきのCMといい、あまりに出来すぎている」

「まるで、来るなら来いって誘ってるみたい……」

 

 不安を感じるネプギアだが、一方でネプテューヌはあっけらかんとした顔だ。

 

「みんな考え過ぎだって。ひょっとしたら、オートボットの大ファンってだけかもしれないよ?」

「いや、それは不自然」

 

 あまりに呑気なネプテューヌの意見に、バンブルビーがツッコミを入れる。

 ホット・ロッドとケイドも苦い顔をし、スクィークスも呆れた調子で電子音を鳴らす。

 オプティマスや海男すら苦笑しているが、意外にもうずめがこれに乗ってきた。

 

「ああ、いいなそれ。……もしそうなら、心強い味方になる」

 

 笑顔のうずめだが、急に纏う空気が変わった。

 何というか、ほにゃほにゃした感じに。

 

「きっと~、凄い発明とかでみんなを助けてくれるんだよー。それで、他の人たちと仲良くなるきっかけを作ってくれたらいいなー」

 

 オレンジハートに変身したときのような調子のうずめに、ネプテューヌたちは面食らうが、ホット・ロッドや海男らは慣れた様子だ。

 うずめは一同の視線が集まっていることに気付き、ハッと正気に戻った。

 

「い、いや、そんな都合のいいこと滅多にないよな、うん!」

「時々、ああなるんだ」

「人のこと言えないけど、あの子も、大概濃いね」

「うずめって、ひょっとして根はかなり乙女?」

 

 短く、ホット・ロッドとバンブルビーが話し、ネプテューヌが疑問を口にする。

 むくれるうずめを海男が慰めようとした時だ。

 向こうからハウンドの声がした。

 

「オプティマス、お客だ。数百m先、こっちに向かって車が一台近付いてきてる」

「……客か!」

 

 ケイドが一瞬呆気に取られたあと、笑顔を浮かべる。

 視線をやると、オプティマスは即座に理解し、厳かな声を出した。

 

「オートボット、トランスフォームして息を潜めていろ。……ネプテューヌたちもケイドの邪魔をしないように」

『はーい!』

 

 

 

 

 

 スクラップ場の敷地に古臭い黄色いダットサンが入ってきた。

 ウニモグの軍用トラックの脇を通り過ぎたダットサンは適当な所で停車する。

 運転席から降りてきたのは、古い車とは裏腹に高級そうなスーツを着た青年だった。

 癖のある茶髪を短く刈り、垂れ気味の目の瞳はヘーゼル色だ。まだ30かそこらだろう。

 青年は、薄く笑顔を浮かべて辺りを見回す。

 

「いらっしゃい! ようこそ、イエーガー中古機械店へ……!」

 

 それをうずめが満面の笑みで出迎えたが、その青年の正体に気付き目を見開く。

 

「あんたは……!」

「どうも。僕のこと知ってるの? 嬉しいな」

「ああ、うん……」

「有名人だからな」

 

 戸惑ううずめの後ろからケイドが現れ、ニコニコと笑う青年に驚きと警戒の混じった目を向ける。

 

「サイバトロン・システム社の社長さんだ。家はこの街でも有数の名家。主席でプリンストン大学を卒業して、立ち上げた会社は今や業界トップ。今の大統領が選挙に勝てたのも、あんたがとんでもない額の政治献金を積んだからだってもっぱらの噂だ」

「どこぞの不動産屋よりはいいと思ってね。それに僕がお金を出さなくても、彼女は大統領になってたよ」

「どうだか。……まさに勝ち組の中の勝ち組だ。羨ましいね」

「勝ち組、ね……自分ではそうは思ってないんだけどな。僕なんか、せいぜいメッセンジャーボーイがいいとこさ」

 

 多分に妬みの入った言葉に、社長は自嘲気味に答える。

 この時、うずめは青年……CS社社長の目に、不思議な色が宿っていることに気付いた。

 後悔……あるいは罪悪感だろうか?

 

「そういうあなたはケイド・イエーガー。出身はテキサス。数年前にうちに発明を売り込みにきましたよね? 正直、あの全自動卵割り機はどうかと思ったけど、技術は間違いなく一流だ。……技術者としてなら採用したいと、うちの人事担当が言ってませんでした?」

「生憎俺は、あくまで発明家としてやっていきたくてね。……それで、こんな場末の中古機械店にどんな御用で?」

 

 わざとらしく肩を竦めて話題を変えるケイドだが、そこで社長の目に鋭い光が宿った。ここからが本題なのだろう。

 

「実は車を探しているんだ。……特別な奴を」

「だったら、高級車のディーラーに声をかけたらどうだ? あんたなら、選びたい放題だろう」

「いや、実は昔乗ってた車が忘れられなくて。……あれは本当にすごい車だった。ここなら、似たようなのがある気がして」

 

 懐かし気に目を細めながら、社長はスクラップ場を見て回る。

 赤いAMG・GTの座席を覗き込み、緑のシボレー・コルベットを眺め、ランボルギーニ・チェンテナリオのボンネットを撫でる。

 

「随分と高級車が多いですね?」

「まあ色々と伝手があってね。それで、お気に召した物はあったかな?」

「そうだな……カマロとか、ありますか? 黄色くて、黒いストライプの入ったやつ」

 

 うずめが息を飲み、ケイドの額に一筋の汗が流れる。

 

「ああ、あるが……非売品でね」

「どうしてです? ひょっとして、変形するとか」

「な、なんのことだよ。お、玩具じゃあるまいし、ロボットにへ、変形なんかするワケねえだろ!」

 

 思わず上擦った声で誤魔化そうとするうずめだが、社長は別にロボットに変形するとは言っていない。

 見事にボロを出したうずめに、ケイドはヤバいと感じていた。

 社長は意味深な笑みをうずめに向ける。

 

「話は変わるけど、最近この街にヒーローが現れてね。可愛い女の子で、雰囲気は違うけど年の頃は君と同じくらいかな」

「な、何を……」

「君についても調べた。あちこち、点々としてたみたいだね。そしてそれは、あのヒーロー少女の目撃された場所と一致する。つまり……ッ!」

 

 うずめが何か誤魔化すより早くランボルギーニがギゴガゴと変形して立ち上がり、社長との間に割って入る。

 ホット・ロッドは背中から抜いた銃を社長に向ける。

 

「てめえ……うずめから離れろ!!」

「おい馬鹿止めろ!」

「痴れ者が! センセイがジッとしていろと命令したのを聞かなかったのか!」

 

 ロボットモードになったクロスヘアーズとドリフトが、左右からホット・ロッドを抑える。ハウンドも立ち上がって、呆れた表情になる。

 揉める金属生命体たちだが、ケイドは顔を覆い、社長はしてやったりという顔をしている。

 

「ああ、やっぱりいたんだ。……わざわざダッチに探らせた甲斐があった」

「つまり、我々に用があるということか」

 

 聞こえてきた厳かな声に、社長がハッと振り向いた。

 プレハブ小屋の脇に、赤と青のファイヤーパターンの騎士を思わせる姿のオプティマス・プライムが、黄色いバンブルビーとキャノピーを伴って立っていた。

 足元では、ネプテューヌとネプギアが武器を手にしていた。

 

「…………」

「CS社の社長殿。私の名はオプティマス・プライム。……どういった要件だろうか?」

 

 丁寧な呼びかけに、しかし社長は絶句し、それから体を震わせていた。今までとは明らかに反応が違う。

 そして、懐かしい友人に再会したかのような笑顔で、それでいて泣き出すのを堪えているような声で言った。

 

「オプティマス、ビー……ああ、やっと会えた」

 

 その言葉に、ホット・ロッドやドリフトたちは顔を見合わせ、ケイドやうずめは意味が理解できずにオプティマスたちに視線で説明を求めた。

 ネプテューヌやネプギアも、それぞれの相方を見上げる。

 一方で、総司令官と情報員は、彼らは彼らで奇妙な既視感を覚えていた。

 CMで見た時は何とも思わなかったが、こうして直接会ってみると……。

 

「不思議だ。初めて会ったはずなのに……何故か懐かしさを感じる」

「まるで、ずっと、昔からの、友達のような……君は、いったい?」

「僕は……」

 

 一同に見守られる中で、社長は涙を堪えながら、それでもしっかりと総司令官の顔を見据えて言葉を紡いだ。

 

「僕は、サミュエル……サム・ウィトウィッキー。君たちの、味方だ」

 




あとがきに代えて、キャラ紹介。

オートボット熟練兵ハウンド
歴戦を潜り抜けてきたワンマンズアーミー
トレードマークの三連ガトリングを始め、アサルトライフル、サブマシンガン、ロケット弾、ショットガン、拳銃、ナイフと全身に装備した武装を自在に操る、動く火薬庫。
また肥満体にも見える体格からは想像もつかないほど機敏。
人情味と茶目っ気も備えた男で、年長者としてドリフトやクロスヘアーズを纏めている。
アイアンハイドとは親友。

オートボット侍ドリフト
刀を振るう鎧武者風の戦士。
元々はディセプティコンだったが、オートボットに鞍替えした。
堅物な性格だが、短気で好戦的。
オプティマスに心酔しており、バンブルビーとは仲が良くない。またジャズとも様々な要因から犬猿の仲。
リーンボックスの女神ベールを好いているという、意外な一面がある。
……こうして書くと、凄く困ったヒトである。
オートボットとディセプティコンが和解した今、彼がオートボットであることに拘る意味は……?

オートボット空挺兵クロスヘアーズ
コートと飛行ゴーグルがトレードマークのガンマン風の戦士。
短機関銃と拳銃の早撃ちが得意技で、乗り物の操縦にも秀でる。
とにかく口が悪く喧嘩腰で、ディセプティコンとの和平にも人助けにも不満たらたら……なのは、割と口だけ。
ミラージュに一方的に突っかかっては無視されているが、お互いに実力を認めてもいる。
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