上里ちひろは勇者である   作:☆ここな☆

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14話 心の痛みを分かる人

ーーー樹side ーーー

「私が…樹ちゃんの声が出なくなったのは…私のせいなの…!」

(どういう…こと…?ちひろちゃんが…原因…?でも…)

『私の声が出ないのは満開の副作用じゃないの?』キュッキュッ

「そうだけど…そうだけど!」

『落ち着いて。そのままだったら話せることも話せないよ。』キュッキュッ

「うん…、満開にはね…散華っていう隠された機能があるの…」

『散華?』キュッキュッ

「そう、華が散ると書いて…散華。身体の一部を供物として神樹様に捧げる機能。満開をしたらパワーアップとして精霊が一体追加される。その精霊も…勇者のサポートを本来の目的とはしてない…あらゆる死から勇者を守り…お役目から逃げられなくするのが本来の目的。」

『!!』キュッキュッ

「そして…私は2年前にも勇者をやってたんだ…乃木園子、三ノ輪銀、鷲尾須美…いや東郷美森と一緒に…」

『え!?東郷さんが2年前に勇者をやってた…?』キュッキュッ

「そう、でも途中で3体同時に来た蠍座、蟹座、射手座によって三ノ輪銀は…殺された。その反省を元に新たに勇者システムに追加されたのが…満開と精霊。」

『…』キュッキュッ

「そして東郷さんは満開を2回使って記憶と両脚を…乃木園子は20回もの満開をして身体のほとんどを失った…だから…わたしは知ってたんだよ…満開の代償を…決戦のときには言おうとしたけど…獅子座の火球で言うことができなかった…そしてみんなは満開して…樹ちゃんは声を失った…もう失ったところは戻ってこないのに…ホント最低だよね…みんなが不自由になる理由つくったんだよ…それにこんな重要なことも隠してたし…そのせいで…樹ちゃんの夢すら…奪うことに…!」

(ちひろちゃん…)

『知ってたよ。さすがに東郷さんのこととかまでは知らなかったけど。』キュッキュッ

「…え?」

『ちひろちゃんが勇者やってたこととか、散華のこととか。』キュッキュッ

「な…んで…」

 

ーーー時は遡り、昨日・土曜日ーーー

(着いた…ここだ。)

ピンポーン

『失礼します!』キュッキュッ

「はーい、どなたですか〜?」

『私、犬吠埼樹と言います!ちひろちゃんのお友達で勇者やってます!』キュッキュッ

「!!どうぞ〜」

 

ーーーリビングーーー

「私は上里月夜、月に夜って書いて月夜です、ちひろの母で巫女をやっていました、今でも神樹様とお話しできたりしますけどね。で、何が聞きたいのですか?」

『はい、実は決戦の後からちひろちゃん、まるで全て自分に非があると思ってるみたいに元気がなくて…少しでも元気づけられればとおもって…』キュッキュッ

「…教えます。彼女がそうなった理由を。なぜ讃州市でわざわざ暮らしてるのかも。私が知ってる、ちひろの全てを。それが、私の償いでもあると思うので。」

 

ーーー今ーーー

ーーーちひろsideーーー

『ちひろちゃんも散華でみんなから忘れられちゃったんでしょ?それこそ一番つらいよ!自分のことを覚えてくれてる人が誰もいないなんて…みんなのために戦って来たのに、不審者扱いされて、勇者システムも無理矢理取られそうになって…私たちが被害者なら、ちひろちゃんも被害者だよ!』キュッキュッ

「樹…ちゃん…」

『それに伝えようとしてくれてたんでしょ?そのときは獅子座の妨害が入っちゃったんだから仕方ないよ!伝えようとしてくれただけで充分だって、勇者部のみなさんも言うよ?そして、秘密だって…今言ってくれたじゃん。』キュッキュッ

「あっ…」

『言わなかったら、約束を破ってることになるから怒るけど、約束破ってないもん。怒らないよ。』キュッキュッ

(わた…しは…)

「私のこと…許して…くれるの…?」

『もちろん!』キュッキュッ

(私は…こんなにも…いい友達を…持ってたんだ…!)

その瞬間、2年もの間、私の心を縛り付けていた鎖が、断ち切られた気がした。

2年分の涙が一気に溢れ出た。

「うわああーん!樹ちゃーん!つらかったよ!ずっとずっとー!つらかったよー!」

『いくらでも泣いていいよ、私たちは、「親友」だから。』キュッキュッ

「うん!うん!うああーん!ありがとー!」

私は泣いた。隣で誰かが跳躍する音も聞こえないくらい。

 

ーーー3分後ーーー

「ひっぐ、ごめん、付き合わせて…」

『全然大丈夫だよ!ちひろちゃんの役に立ちたいってずっと思ってたから。』キュッキュッ

(樹ちゃん…そこまで気にしてくれてたんだ…ん?)

「メール?大赦から来てる…なんだろう?」

『私のとこにも…珍しいね。』キュッキュッ

その内容は、

 

『現在、勇者犬吠埼風が暴走中。勇者各員はこれを止めるよう力を尽くしてください。』

 

『お姉ちゃん!そんな…!』キュッキュッ

「風先輩…止めよう!樹ちゃん!」

『うん!ちひろちゃん、私に考えがあるんだけど、それまでお姉ちゃんを止めてて!』キュッキュッ

「もちろん!ただ、大赦のためには私は止めない!風先輩のために止めるから!」

『私も。一部の人以外は大赦もう好きにはなれないよ…』キュッキュッ

「じゃ、あとで!」

『うん!あとで!』キュッキュッ

(元はと言えば伝えられなかった私も一枚噛んでるんだ!止める!風先輩のため!樹ちゃんのため!勇者部のために!)

 

 

 

 

ーー時を遡り木曜日、友奈・東郷の報告後ーー

ーーーかめやーーー

ーーー風sideーーー

(身体が、戻らないかもしれないなんて…私はいいけど樹は…)

「どうぞ。」

「あ、はい。ありがとうございます。」

「最近みんなと一緒に来ないのね。」

(友奈は味覚がないし、樹は声が出ない。かめやの人に心配かけさせたくないからね。)

「あ、あの…ちょっと今友達の調子が悪くて…まあ、でもすぐに治りますよ。そいつには、てやーっ!って私の女子力を注ぎ込んでおきますから。一緒にこの店のうどんパワーも注ぎますね。うどんと女子力は万病に効きますから。」

「ふふ、すごいのね。」

「それで、友達の調子がもどったら…また来ます、皆で。」

(そうよ、戻るはず、医者だって言ってたんだし。)

 

ーーー金曜日ーーー

ーーー少人数教室ーーー

「樹さんの今の状態は、一部の授業に支障がでています。」

「えっ!? あの子が誰かに迷惑をかけたんですか?」

(まさか…そんな!)

「いえ、他の子にではなく、樹さんご自身の問題で…」

(よかった…、いや、よくないわ…)

「音楽の歌の練習なども樹さんは出来ませんし…ある程度授業内容を変えることで対応しておりますが。あまり露骨な変更は逆に樹さんが気に病まれるでしょうし…ちひろちゃんもカバーしてくれてますが…」

(絶対治る。だって皆、何も悪いことなんかしてないじゃない。)

 

ーーー今日・午前ーーー

ーーー東郷の家ーーー

「どうしたの?東郷、急に呼び出して。」

「ちょっと見てもらいたいものがあって…」

「何?東郷さん?」

取り出したのは小刀。

「「っ?」」

「東郷さん?」

そしてなんと東郷はそれを思いっきり首に…!

(そんな!?東郷!?)

だが、青坊主がそれを受け止め、刑部狸が奪い、離れた机に置く。

「何やってんのよ東郷!?あんた今精霊がいなかったら確実に…」

「止めますよ、精霊は確実に…」

「「?」」

「ここ数日で10回以上の自害を試みました。」

「「え!?」」

「切腹、首吊り、飛び降り、一酸化炭素中毒、服毒、焼身…考えうる限り、全ての方法を試しましたが、全て精霊に阻止されました。」

「何が…いいたいの…?」

「…私は今、勇者になってませんでしたよね。」

「あ!本当だ…!」

「それにも関わらず精霊は勝手に動き、私を守った。」

「だから何が言いたいのよ!」

「精霊は私たちの意思とは関係なく動いている。ということです。私は今まで、精霊は勇者の戦う意思に従っていると思っていました。

でも、そうではなかった。それに気づいたら、この精霊という存在が違う意味を持っているように思えたんです。精霊は勇者のお役目を助けるものなんかではなく、勇者をお役目に縛り付けるものなのではないかって。死なせず、戦い続けさせるための装置なんじゃないかって。」

(…そんな!?)

「で、でも精霊が私たちを守ってくれるってことなら、悪いことじゃないんじゃないかな?」

「そうね。それだけなら悪いものじゃないかもしれない。でも、精霊が勇者の死を必ず阻止するなら…乃木さんが言っていたことは、やはり当たっていることになる。」

「勇者は…決して死ねない…」

「彼女が言ってることが真実なら、私たちの後遺症が治らないことも…真実になる。」

「そんな…」

「私たちは何も知らされず、騙されていた…」

(嘘…そうなら…樹は…私のせいで…!)

「なら…樹の声は…二度と…知らなかった…知らなかったの…人を守るため、身体を捧げて戦う。それが勇者…だなんて…私が樹を勇者部に入れたせいで…!」

 

ーーー夕方ーーー

ーーー夏凜sideーーー

大赦からのメールを見る。

 

『犬吠埼風を含めた勇者部4名が精神的に不安な状態に陥ってます。三好夏凜、あなたが他の勇者を監督し、導きなさい。』

 

(たしかに最近、みんな元気がない。特に延長戦が終わったあとから。でも、大赦は…信用できるのかしら。満開の後遺症に関してもう何かしら見つかっててもおかしくないはずなのに…)

そう思ってる間に、風たちが住んでいるマンションの近くについていた。

「大丈夫よね、風…」

 

ーーー風sideーーー

(もう戻らない…樹にどう伝えれば…)

プルルルル

「はい、犬吠埼です。」

「突然のお電話失礼致します。いおなミュージックの藤原と申します。」

「いおな、ミュージック?」

女性(通話)

「はい。犬吠埼樹さんの保護者の方ですか?」

「はい、そうですが…?」

女性(通話)

「ボーカリストオーディションの件で一次審査を通過しましたので、ご連絡差し上げました。」

「え? 何のことですか?」

「あ、ご存知ないんですか? 樹さんが弊社のオーディションに…」

(樹がオーディションに…?いつのまに…?)

「いつ?」

「えー、1ヶ月ほど前ですね。」

「っ!?」

「樹さんからオーディション用のデータが届いています。」

(なっ!?)

「っ!」

「あれ?どうしたんですか?もしもし?もしもし?」

「樹!」

部屋に入るが…

「いないの?」

(このノート…体調を良くするための秘訣がかかれてる…あっちには喉の治療法についての本…喉に効くハーブティーの作り方まで…これで…もう治らないって…樹が知ったら…)

「ん?これって…」

そこにはオーディションと書かれたファイルがあった。

「…」

カチッ

『えっと、これで…あれ? もう録音されてる?あ、ボ、ボーカリストオーディションに応募しました、犬吠埼樹です。讃州中学1年生、12歳です。よろしくお願いします。私が今回オーディションに申し込んだ理由は、もちろん歌うのが好きだっていうのが一番ですけど、もう一つ理由があります。私は歌手を目指すことで自分なりの生き方、みたいなものを見つけたいと思っています。私には大好きなお姉ちゃんが居ます。お姉ちゃんは強くてしっかり者で、いつも皆の前に立って歩いていける人です。反対に私は臆病で弱くて、いつもお姉ちゃんの後ろを歩いてばかりでした。でも、本当は私はお姉ちゃんの隣を歩いていけるようになりたかった。だから、お姉ちゃんの後ろを歩くんじゃなくて、自分の力で歩くために、私自身の夢を、私自身の生き方を持ちたい。その為に今、歌手を目指しています!』

「っ!!」

(樹が…そんな風に…思ってくれてたなんて…)

『実は私、最近まで歌を歌うのが得意じゃありませんでした。あがり症で人前で声が出なくて、でも、勇者部の皆のおかげで歌えるようになって、今は歌を歌うのが本当に楽しいです!そして、私が好きな歌を一人でもたくさんの人に聞いてほしいと思っています!あ、勇者部というのは私が入っている部活です。勇者部では保育園の子供達と遊んだり、猫の飼い主を探したり…』

(でも…もう戻らないなら…歌えないじゃない…)

『私、人見知りだから部に入った最初はちょっと不安でした。でも、部の皆は優しくて。今は部活の時間がすっごく楽しいです。あ、ごめんなさい。余計なことまで話し過ぎちゃいました。では、歌います。』

「あ…ああ…あ…」

(私が…巻き込まなければ…こんなことにならなかったじゃない…勇者にさえ…ならなければ…)

 

『あのね、お姉ちゃん。私、やりたいことが出来たよ!』

『なになに? 将来の夢でも出来たってこと? だったらお姉ちゃんに教えてよ。』

『うーん…秘密。』

『あー、ひどい!誰にも言わないから、ね?』

『でも、ちひろちゃんにも言ってないから。いつか教えるね!』

 

ピロリン

大赦から返信が届く。

 

『勇者の身体異常については調査中。しかし肉体に医学的な問題はなく、じきに治ると思われます。』

 

(ここまで来ても…隠し通すのか…大赦は…!)

 

『お姉ちゃん!』

 

(樹が…こいつらのせいで…許せない…潰してやる…樹の夢を奪った大赦なんて…)

「潰してやるーーー!!」

 

 

 

 

ーーー夏凜sideーーー

ビュン

(ん?今窓から何かが…)

砂浜にいたのは…

変身した風だった。

(嘘…なんで!?)

ビュン

「待ちなさい!」

「っ!?誰!?」

(ひとまず止めないと!)

刀を投擲するが風はそれを薙ぎ払う。

(それは陽動よ!)

「はぁ!」

ドガァン

風に蹴りを食らわす。

でも風は止まらない。

「風!あんた何するつもり!?」

「大赦を潰してやる!」

「っ!?」

(大赦を…潰す!?)

「大赦は私たちを!騙してた!」

「えっ!?」

「満開の後遺症は治らない!」

(やっぱり…)

「うっ!くっ…!」

(風、泣いてる…)

「大赦は始めから後遺症のことを知ってた!なのに!何も知らせないで!私たちを生贄にしたんだ!!」

「…!!」

「私たちよりも前に!犠牲になった勇者がいたんだ!!」

(な!?でも私たちより前に勇者がいるはずが…!)

「何度も満開して!ボロボロになった勇者が!」

(そんな…!)

「そして今度は私たちが生贄にされた!なんでこんな目に会わなきゃいけない!?なんで樹が声を失わなきゃいけない!?夢を諦めなきゃいけない!?」

「うっ!」

(一撃一撃が…重い…!)

「世界を救った代償が!これかああああ!!」

(両手の剣はさっき弾かれた!やばい!)

思わず目を閉じるが、

ギイィィン

「…?友奈!?」

目を開けると友奈が守ってくれていた。

「どきなさい!!」

「嫌です!風先輩が傷つける姿なんて見たくないです!」

(友奈…)

「だからって…こんなこと許せるかあー!!」

「分かってます!」

「だったら!」

「でも、もし後遺症のことを知らされてても、結局私たちは戦ってたはずです!」

「っ!?」

「そうするしかなかったから!だから誰も悪くない! 選択肢なんて誰にもなかったんです!」

「それでも!知らされてたら私は皆を巻き込んだりしなかった!そしたら!少なくともみんなは!樹は無事だったんだーーー!」

「風先輩! そんなの違う! ダメです!」

(!友奈のゲージ!5個溜まってる!?)

「何が違うの!?」

「友奈!ダメ!」

でも、友奈は風の大剣をはじき返した。

(ゲージ…マックスに…なってる…)

「風先輩を止められるなら、これぐらい…」

「っ…」

「だって私は、勇者だから。」

「友奈…」

「少し、昔話をしましょうか、風さん。といっても2年前ですけど。」

「っ!ちひろ!」

そこにはちひろがいた。

 

ーーーちひろsideーーー

(なんとか、間に合った。)

「2年前、4人の少女たちがいました。

少女たちは世界を守るために神から選ばれた、特別な少女たちでした。

敵は強大でしたが、少女たちは協力し、試練を乗り越えていきました。」

「これって…」

「勇者のお話…?」

「そんな時、敵が4体攻めて来ました。

最初は2体だと思っていた少女たちは、攻撃をくらい、二人が動けなくなってしまいました。

主人公の少女は3体の敵に二人で立ち向かおうといいましたが、元気なその少女は高速で神様に近づいている1体を頼むと言いました。

主人公の少女はそれを受け入れ高速の敵を、元気な少女は3体を相手に戦いました。

主人公の少女は敵を倒すことができましたが、元気な少女は3体を追い返すとともにその命を散らしました。」

「そんな…」

「高速の敵って双子座…?」

「それから彼女たちの戦うためのシステムは改善され、3人になった少女たちは最後の戦いに行きました。

ですが、その新しいシステムには、欠点がありました。

新しい力を使うごとに身体のどこかを神様に捧げなければならなかったのです。

しかし少女たちはそのことを知りませんでした。

戦いが終わったあとには少女たちはバラバラになってしまいました。

おっとりとした少女は何回もその力を使い、全身のほとんどを捧げ、大人たちに崇められるように。」

「これって…園子ちゃん…?」

「しっかりとした少女は両脚と2年間の記憶を失い、大人たちに騙され、2年後再び戦うことに。」

「東郷と…状況が…似ている…?」

「そして主人公の少女は…この世の全ての人から忘れられた。」

「う…そ…」

「最後にその少女たちの名前を。

元気な少女は三ノ輪銀。

おっとりとした少女は乃木園子。

しっかりとした少女は鷲尾須美、記憶を失ったあとの名前は東郷美森。

そして主人公の少女の名は…上里ちひろ。」

「「えっ!?」」

「私のことです。この物語は私が2年前に辿った話。」

「そ…んな…」

「獅子座の攻撃のせいで言えなかったものの、私は知ってました。元はといえばもっと早く言えばよかった話。だから、もう隠さない。」

「ち…ひろ…」

「風さん!私は…2年前から…ずっと心は閉ざしたままでした!でも!樹ちゃんと!風さんと!勇者部のみなさんと出会って!助けられたんです!風さんが!勇者部をつくってくれたから!みんなに出会えたからです!だから!自分一人で抱え込まないでください!あなたには!私たちがついてるから!」

「わ…たし…が…助けて…きた…?」

ギュッ

「っ!?樹…え…?」

コクコク

「っ…う…うう…」

(樹ちゃん!間に合ってよかった…)

風さんは泣き崩れる。

「ごめん…ごめん、みんな…ううっ…」

樹ちゃんがスマホを見せる。

「え…?」

『私達の戦いは終わったの。もうこれ以上、失うことは無いから。』

「でも…私が勇者部なんて作らなければ!」

フリフリ

首を横に振って紙を見せる。

歌のテストのときに、みんなが書いた寄せ書きだった。

キュッキュッ

コクコク

寄せ書きに何かを書き込み、風さんに渡す。

「樹…」

ニコッ

その内容は…

『勇者部のみんなと出会わなかったら、きっと歌いたいって夢も持てなかった。

  勇者部に入って本当によかったよ 樹。』

「じゃ、私も。」

キュッキュッ

「はい、風さん。」

「ちひろ…」

『さっきも言いましたが樹ちゃんや風さんに出会えなければ私の心は永遠に閉ざされたままだったと思います。だから、私は風さんのことを尊敬してます。大赦の人間だって知った後も。勇者部があったから私は変われた。守りたいものができたんです。ありがとうございます。』

「風先輩、私も同じです。だから、勇者部を作らなければなんて言わないでください。」

「ぅ…うぅ…うあぁぁぁぁぁん! うあぁぁぁぁぁっ!!」

静寂が訪れた空には、風さんの泣き声だけが響いていた。

 




実はこの回だけ原作から題名いじってないんですよ。
だってこれ以上にピッタリな題名なかったんだもん
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