上里ちひろは勇者である   作:☆ここな☆

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はい、また忘れてました。ほんとにごめんなさい…(´._.`)シュン


15話 救うためには

ーーーちひろsideーーー

(これで…いい。泣き終わったら、全て話そう。大丈夫。勇者部のみなさんとなら…乗り越えていける。きっと。ん、でも…)

「友奈さん。」

「何?ちひろちゃん。」

「…東郷さんは?」

「そういえば来てないね。」

(メールで東郷さんのところにも届いてるはず。なぜ…?)

ブーブーブー

「何!?」

「なんで敵が来るのよ!?」

(特別警報!?なにそれ!?わけがわからない!東郷さん…須美さんがいないのと関係が!?)

「ちひろ!何かわかる!?」

「いや!特別警報なんて初めてです!間違いなくただの襲来じゃない!イレギュラーです!」

「おかしいよ!?アラームが鳴り止まないよ!」

 

 

 

 

 

ーーー土曜日ーーー

ーーー東郷sideーーー

「小さい頃、私は色んな史跡に連れていってもらい…歴史や国に興味を持った。母によると、私たち東郷の一族にも大赦で働く一族の血が入っている、とか…もしかしたら、私にも神樹様にお仕え出来る力があるかもしれない。もしそうならとても嬉しい、と。私の母は微笑んだ。」

 

『う…ここ…どこ?』

 

「医者が言うには、事故でここ2年程の記憶と。足の機能が失われてしまったらしい。記憶が戻ることはなかったが。その2年間もしっかり生きていた、と。自慢の娘だと、母は言ってくれた。そして、車イスでの生活に慣れて来た頃、親の仕事の都合で引っ越しが決まった。」

 

『わあ…大きい。うちって、ここまでお金持ちだったっけ?』

『こんにちわ〜!』

『?』

『あなたがこの家に住むの?』

『え、ええ…』

『じゃあ新しいお隣さんだ!私は結城友奈、よろしくね!』

『っ…東郷美森…です…』

『東郷さん!?カッコいい苗字だね!』

『あ、ありがとう…』

『そうだ! この辺よくわからないでしょ? だったら案内するよ、任せて!』

『うん。』

 

 

『あーん』

『ゴクリ』

『っ!?』

『えっ…?』

『う…う…う…うーん!おいすぃー!』

『よかった。結城さんが気に入ってくれて。車イスでお菓子作るの、ようやく慣れたから。』

『東郷さん!』

『っ?』

『もし出来れば毎日食べたい! 東郷さんのお菓子!』

『えっ?う、うん…わかった。ゆ、友奈ちゃん…』

 

 

『友奈ちゃん、チアリーディング部から誘われたんでしょ? 入らないの?』

『押し花部からの誘いだったらな〜』

『そんな部ないでしょ。』

『そうだよね〜』

『あなたたちにオススメの部活は他にあるわ!』

『?』

『あなたたちにオススメの部活は他にあるわ!』

『何故2回も?』

『どちらの勧誘なんですか?』

『私は2年の犬吠埼風、勇者部の部長よ。』

『『?』』

『勇者部?』

『なんですか?それ…とってもワクワクする響きです!』

『え?』

『分かる?フィーリング合うわね。勇者部の活動目的は世のため人のためになることをやっていくこと。各種部活の助っ人とかボランティア活動とか。』

『世のため人のためになることを!』

『うん、神樹様の素敵な教えだからね。と言っても、私らの年頃はなんかそういうことしたいけど恥ずかしいって気持ちあるじゃない?そこを恥ずかしがらず勇んでやっていくから勇者部!』

『なるほど。あえて勇者というケレン味のある言葉を使い、皆の興味を引くことで存在感を確立しているんですね。』

『いや…そこまで深く考えてなくて…』

『私憧れてたんですよね。勇者っていう言葉の響きに。かっこいいなー、って!』

『その気持ちさえあれば、君も勇者だ!』

『おお!勇者!』

『すごいところに食いつくのね。でも、なんだか友奈ちゃんらしいわ。』

 

 

『二人が入ってくれたおかげで勇者部の戦力は3倍に膨れ上がったと言っても過言ではないわ!』

『聞き覚えのない部活だと思ったら、一からのスタートだったとは…』

『全部これからなんだよね…』

『あ、この間立ち上げたホームページにさっそく依頼が来ています。』

『お、ナイス宣伝!東郷!』

『友奈ちゃんは陸上部、私は将棋部からです。』

『よし、頑張るぞー! 私は勇者になる!』

『あれ?地味に部長の私に依頼なし!?』

『くすっ。さっそく空いてる日を予定で埋めておきますね。』

『お願ーい!』

 

 

『悩んだら相談、っと。』

『こういう5つの誓いみたいなの、いいですねー!』

『なんか気が引き締まる感じがするっしょ?』

『あと一つどうしますか?』

『うーん、最後だからビシッと決めたいよねー。為せば成る。為さねば成らぬ、何事も。とかどう? 上杉鷹山さんのお言葉なんだけど。』

『成せば大抵なんとかなる、とかはどうでしょうか。』

『それならバッチリ分かるよ!東郷さん!』

『よーし、じゃあ決まりね!』

 

 

『緊張しすぎよ、樹。』

『もっとリラックスした方がいいと思うよ、樹ちゃん。』

『1年、犬吠埼樹です。よよよよろしくお願いします。』

『同じく1年、上里ちひろです。よろしくお願…須美さん!?』

『?私は東郷美森よ、よろしく、二人とも。』

『ちひろー、どうした?あんたらしくないわね。いつもクールなのに。』

『あ、すみません。知り合いに似てたもので…』

『よろしく、樹ちゃん!ちひろちゃん!』

『は、はい!』

『こちらこそよろしくお願いします。』

『なかなかよ。占いとか出来るし。私の妹にしては女子力低…』

『ギロッ。』

『や、やっぱなんでもないわ…』

『おぉー! すごいや!ならこれあげる!縁起物なんだー!』

『わぁ…か、可愛いです…』

『でしょ〜!』

『えっ!?』

『シルクハット…?』

ファサ

『…?』

『シルクハットを脱いで、布を被せて、とったら…』

『はい!』

バサバサ

『鳩〜!?』

『えぇー!?す、すごい…どうやったんですか!?』

『知りたい?』

『はい!』

『私も!』

『それはね、帽子の構造に秘密があるの。』

『ありがとね、二人とも。』

 

『わぁ、載ってますよ!』

『は、恥ずかしい…』

『ユニークって褒められてますね。』

『認められるのは嬉しいわね。』

『よーし、次は保育園でのレクリエーション、頑張ろー!』

『『『おー!!』』』

『あれ…そこ私のセリフ…』

『ザマァないですね。』

『グハッ!』

 

「…」

(勇者のお役目は、12体のバーテックスを倒すこと。私たちは皆で力を合わせて使命を果たした。でも、その後に待っていたのは…)

着物を脱ぐ。

(身体の欠陥だった。大赦の意見を信じて、いつか治ると願っていた。けれど、彼女と会って、とても大事な過去があったことがわかった。)

小刀を持つ。

(同時に、おぞましい真実を予感してしまった。調べていくうちに、その予感はやがて確信へと変わっていき…今に至る。)

お腹に左手をつける。

(精霊が勇者のお役目を助けるだけじゃなく…お役目に縛り付けるものだとしたら…)

 

『その代わり、決して勇者は死ぬことはないんだよ。』

 

(自殺はできないはず…!)

そして目をつぶり、小刀を自らの腹に突き刺す。

「はぁ、はぁ…!」

目を開けると青坊主が間に入っていた。

(まだだ…他の方法も試さないと…!)

その後も…

(どの方法でも、必ず介入してくる。たとえスマホの電池が切れていても。)

「何がなんでも私を生かそうとしている。これがただの緊急安全装置だったら素晴らしいことなんだけど…私の出した結論は違う。ひとまず友奈ちゃんと風先輩に報告を。そのあとは…彼女に会わなくちゃ。」

 

ーーー日曜日・解散後ーーー

ーーー病院ーーー

「やっぱり来てくれた。わかってたよ。この前は嬉しすぎて話が飛び飛びだったけど、今日はちゃんとまとめてあるからね、わっしー。あ、東郷さんか。」

「わっしーでも構わないわ。記憶は飛んでいるけど、その約2年間、私は鷲尾という苗字だったのだから。」

「おお!?すごい。よくわかったね。」

「適正検査で勇者の資格を持っていると判断された私は、大赦の中でも力を持つ鷲尾家に養女として入ることになり、そこでお役目についた。」

「鷲尾家は立派な家柄だからね。高い適正値を出したあなたを娘に欲しかったんだよ。」

「私の両親は、それを承知したのね。」

「神聖なるお役目のためだからね。」

「私は、あなたたちと一緒に戦い、散華して記憶の一部と足の機能を失った…敵を殲滅出来る力の代償として身体の一部を供物として神樹様に捧げる勇者システム。」

「うん。私はもっと派手にやっちゃって、今はこんな感じだけどね。えへへ…」

(ここまでは、当たってるのね。でも、まだ聞きたいことはある。)

「大赦は身内だけじゃやっていけなくなって勇者の素質を持つ人を全国で調べたんだよ。」

「東郷の家に戻されて、両親も事実を知ってて、黙っていた…事故で記憶喪失と嘘までついて…引っ越しの場所が友奈ちゃんの家の隣だったのも仕組まれたもの。」

「そうだね。彼女、検査で勇者の適正値が一番高かったんだって。大赦側も彼女が神樹様に選ばれるってわかってたんだろうね。」

「満開してからは食事の質が上がったわ。」

「大赦が手当として家に十分な援助をしてるんだろうね。」

「思えば、合宿での料理も豪華なものだった。あれは労っていたんじゃなくて、祀っていたのね。私たちを…そして親たちは事情をわかってて、今も黙っている…」

「神樹様に選ばれたのだから喜ばしいことだって納得したんだろうね。反対したのはちひろちゃんの両親くらいじゃないかな?」

「そうなの?でも…」

「上里家にはそもそもバーテックスが来てることすら伝えられてなかったんだ。月夜さんも神託を受け取れるけど、毎回じゃない。大人が神樹様と会話出来ること、そのものがイレギュラーなんだよ。2年前、瀬戸大橋の決戦のあとから上里家はずっと満開の廃止を求めていた。だからだろうね。」

(なんで…私の両親は…!そもそも…)

「っ…!どうして私たちがこんな…! 神樹様は人類の味方じゃなかったの?」

「味方ではあるけど神様だからね。そういう面もあるよ。そもそも…あ…落ち着いて聞いてね?」

「っ!?」

「壁の外の秘密。この世界の成り立ちを教えてあげる。」

「え?」

(この世界の…成り立ち…!?)

「あのね…」

ブーブーブー

「_______。」

(そんな…!?)

「もしもし? 東郷さん。昨日の話、私、ショックだったけど樹ちゃんのこともあるし、風先輩が心配になって…大丈夫かな? また連絡するね!」

「真実は、あなた自身の目で確かめるといいと思うよ。どういう結論を出しても、私は味方だからね。…本当は、私は今の勇者たちが何かの形で暴走したら抑える役目なんだ。」

「抑えるって、その体で…?」

「私の精霊の数は21体。」

(嘘…!それじゃあ、20回も満開してるってことに…!)

「えへへ〜すっごい強いんだよ〜戦いになったら大量の武器でズガーン!だよ。普段は怖がられて、手元にスマホがないから変身出来ないんだけどね。」

「辛い、でしょう…20回も散華して…」

「うん…何も出来ないからね…神樹様の身体に近づいたからって…こんなに祀られたところで、私は…」

「っ…!」

「でもね、今は不思議とつらくないんだよ。」

「っ…」

「もう少しだけ、ここにいてくれる?」

「…うん。」

 

 

 

 

 

ーーー壁ーーー

「きれいな景色。でも…」

(彼女の言う通りなら…この壁を超えたら…)

「え…?」

1歩踏み出した先にあったのは、何もない、燃え盛る世界だった。

「なんて…ことなの…」

 

『壁を越えれば、神樹様が見せていた幻が消えて、真実が姿を現わすよ。』

 

「彼女が言った通り…これが…本当の世界…世界は…宇宙規模の結界の中…」

そのとき、星屑が私に気づいた。

「あっ!」

 

『人類を滅亡寸前に追いやったのはウイルスなんかじゃないんだよ。天の神様が粛清のために遣わした生物の頂点、バーテックス。』

 

応戦し、倒れた先は…

星屑の卵の上。

「いやあっ!」

 

『西暦の時代、世界は彼らに突如襲われた。人類に味方してくれた他の神様たちは力を合わせ、一本の大樹となり四国に防御結界を張った。その時、神様の声を聞いたのが今の大赦。神樹様を管理してる人たち。』

 

(こんなところ…)

「まるで地獄じゃない…っ!?」

(あれって…確か!?)

「友奈ちゃんが倒したバーテックスが生まれてる!?こいつらがまた次々と攻めてくるのを、私たちが迎え撃つの!?何回も身体の機能を失いながら…何回も…何回も!」

結界の中に戻って来る。

 

『身体が樹木のように動かなくなって、最後は、こうして祀られる。』

 

「はあ…はあ…はあ…!うう…うっ…この苦しみを一つ一つまた味わう! それも皆が!」

(くやくやしてる場合じゃない。考えろ。)

「考えなきゃ。考えなきゃ…皆を助けなきゃ…みんなを救わなきゃ…!救うためには…どうすればいい…!」

(そうだ…これなら…)

「あった…!たった一つだけ…方法が…!」

 

ーーー樹海ーーー

ーーーちひろsideーーー

(特別警報…予想外の敵の襲撃?違う…バーテックスにも知能がある…少なくとも全体揃うまでは攻め込まないはず…かつ一斉攻撃とかをするはず…ならなぜ…?)

「そんな!? バーテックスは全部倒したはずじゃ…」

「落ち着きなさい。まずは状況確認よ。たとえイレギュラーだろうが私は…なっ!?」

「どうかしました?夏凜さん。」

「ちひろ…これ…」

「っ!?」

マップの海の先には点と見分けられないほど、赤色で埋め尽くされていた。

(まさか…壁を!?)

 

ーーー東郷sideーーー

「私一人だけが生贄なら、まだ良かった…でも、友奈ちゃんたちまで供物にするなんて…許さない。皆をもう苦しめない。待ってて、友奈ちゃん、皆。神樹様を倒してしまえば、苦しみから解放される!生き地獄を味わうこともない!!こんな世界…私が終わらせる!!」

 

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