ーーー人世紀2年 12月7日、樹sideーーー
園子「じゃあ、改めて〜」
風「樹、誕生日おめでとう!!」
樹「2回目だから言わなくてもいいのに…ありがとうございます。」
12月7日、今日は私の誕生日。
中学二年の時に大幅に人数が増えたことで活動がより活発になったのがあるんだろう、中学三年生になってからも勇者部に入る人はさらに増加。
サブとして入った人も含めると校内でも屈指の人気部活となっていました。
そのため今日は部室で祝われて、その後にかめやで初期メンバーのみなさんに祝われて…そして今、家で祝われてる状況。
園子「しっかしもうイッつんも卒業か〜時の流れは早いですね〜」
風「そう!それなのよ!もう随分と立派になって…」グスッ
樹「あー泣かないでお姉ちゃん、私なんてまだ家事頼りっきりだから〜 」
園子「ふーみん先輩も来年には卒業、仕事や大学次第では讃州市から離れざるを得ないし、最低限はできるようになってた方がいいね〜まあこの様子だと、イッつんが姉離れできてもふーみん先輩の方が妹離れできなさそうだけど〜」
風「安心しなさい乃木、私は一生するつもりないわ。」
樹「そこはしないとダメだよ!?」
同じマンション、それもお隣さんで3年も暮らせば必然的にかなり親睦は深まります。だからいつもよりも将来とかにくい込んだ話も多いです。
…ただ、しかし。
園子「…ちっひー、ついに間に合わなかったね…」
風「全くあいつは…去年はまあ調査だし仕方ないとしてもまたいないって…」
樹「しょうがないよ。どれだけキツい状況でもちひろちゃんが困ってる人を見捨てれるはずないもん。」
ここに私の親友、ちひろちゃんの姿はありませんでした。
事件は遡ること…一週間前。
佳美『…みなさん!これって…』
竜治『どうした?そんなあわて…ちひろ!?』
亜耶『意識不明の…重体…!?』
樹『…ふ…へ…???』
大橋市で起こった銀行強盗、そこに偶然ちひろちゃんが居合わせたらしく、みなさんを逃がした上で犯人が追えないように単独で戦闘。
その末に出血多量で意識不明の重体になったそうです。
ひとつの疑問は…なぜ大橋市なのか。
一応園子さん曰く、口座も空っぽになったため家に直接取りに行ってたらしいですが…
その前の週から園子さんも分からない用事で部活に来ないことが多かったことも重なり、みなさんの中にも疑問が残っていました。
…それでも。
私はちひろちゃんの行動が、私たちのためを思っての行動だったと信じています。
信じ続けています。
ーーー夜11時ーーー
(眠れない…)
明日は休日ですが、お姉ちゃん達が模試?というのがあるそうで、家での誕生日パーティーは8時半に解散、9時半にはベッドについたのですが…
樹「…ここまで寝れなかったの初めてだなぁ…」
再び寝ようと瞼を閉じますが依然目は冴えたまま。
(…ちひろちゃん…無理なのは分かってるけど…)
樹「…私は…ちひろちゃんにも祝って欲しかったよ…」
…その時でした。
ブーブー
樹「…?メール?こんな時間に?」
スマホが振動します。確認するとNARUKOからでした。
(NARUKO…ってことは勇者部の誰かだよね…)
そしてそこには…
ちひろ:夜遅くごめんね、屋上来れる?
待ち焦がれていたちひろちゃんからのメッセージが入っていたのでした。
ーーー屋上ーーー
樹「はあ、はあ…!!」タッタッ
大急ぎで防寒具を着込み、屋上への階段を駆け上がる。
そしてその先には言われたとおり…ちひろちゃんがいた。
樹「ちひろちゃん!!」ギュッ
思わず抱きつく。
ちひろ「樹ちゃん!!大丈夫?寝てるとこ起こしたりしなかった?」
樹「ううん、ずっと眠れないで起きてたから…ちひろちゃんは体大丈夫なの?」
ちひろ「うん、寝てる間に傷はあらかた治ったみたい。」
(そっか…よかった…)
ちひろちゃんのことだ、今日が私の誕生日である以上、無茶してでも来る可能性が高かったので、怪我のないことに安堵する。
樹「…でーも!気持ちは分かるけどあまり無茶はしないでね。みんなすっごい心配したんだよ?私だって…」
ちひろ「…うん、ごめん。今度からは気をつける。」
樹「わかった。で、ひとつ聞きたいんだけど…いい?」
ちひろ「うん、今は反省の証としてなんでも答えます。」
樹「ありがとう。ほら、事件って大橋の銀行で起こったじゃん?どうしていたの?園子さんから家にお金取りに行ったのは聞いてるけど…」
ちひろ「あ、それ?うーん…家で銀行から直接引き出してって言われたから?」
樹「え?でもいつもお金は家にって…」
ちひろ「私もそう思ってたんだけど…ほら、お母さん達さ、少しでも職につける人増えるようにってお手伝いさんとか一気に雇い始めたじゃん?それであまり防犯の機械を付けづらくなったのと、給料をそれぞれの口座に振り分けやすいようにって、ずらしたんだって。」
樹「そういうことだったんだ…」
ストンと納得する。
ちひろ「他に聞きたいことない?ないなら本題入りたいけど…」
樹「大丈夫、ないよ。本題って?」
ちひろ「…樹ちゃん、誕生日おめでとう。」
(…あ。)
本当のついさっきまで覚えていたのに、いつの間にか意識から抜けてたことに気づく。
樹「…うん、ありがとう。」
ちひろ「いえいえ。今のところ1回しか祝えてないもん。そしてこれが誕生日プレゼント。」
そう言って出されたのは小さな紙。
樹「えっと…これって…?」
(大きさ的には…名刺?だけど…)
ちひろ「ひっくり返して見てみて!」
言われたとおりにひっくり返してしてみる。
そこには…
『いおなミュージック 犬吠埼樹専属マネージャー 上里ちひろ』
そう、書かれていた。
樹「これ…まさか…!」
ちひろ「うん。樹ちゃんの歌手活動のマネージャー、私がやらせてもらうことになりました。」
樹「…ど、どうやって…」
驚きと嬉しさのあまりに声が震える。
ちひろ「ふふ、直談判しに行ったんだ。勇者のこととか私が樹ちゃんの親友のこととかあって特例で応募資格は得られたから、あとは受かるだけ…って感じかな。やっと高成績が役立ったよ…」
…そうして、気づく。
樹「…もしかして最近ずっと部活に出ないで帰ってたのって…」
ちひろ「うん。公式のはもう終わってたから私だけ1人で受けてたんだけど、樹ちゃんの誕生日に間に合わせるためにも結構予定キツキツで…」
樹「…本当にいいの?私なんかで…」
ちひろ「樹ちゃんだからいいの!私…誰かを支えれる職に就くのが夢なんだ。それが樹ちゃんなら本望でしかないよ。」
樹「…人気出ないかもしれないんだよ?そしたら収入…」
ちひろ「出ないわけない。ずっと聞いてきた私が断言する。億が一にあったとしてもお金なんて私のところありあまってるし!
…というか私の方が足引っ張るかもしれないんだよ?さすがにマネージャーとか初めてだし…」
樹「ちょっとくらいなら全然大丈夫。ちひろちゃんはすごいけど完璧じゃないって知ってるもん。」
ちひろ「めちゃくちゃヤバいミスかもしれないんだよ?」
樹「その時は私が頑張って挽回する!だから私が大変なことになったらちひろちゃんが助けて欲しいな。」
ちひろ「もちろん!!」
ふふっと二人で笑い合う。
ちひろ「…ありがとう、樹ちゃん。生まれてきてくれて。」
樹「生まれては言い過ぎじゃない?」
ちひろ「ううん。樹ちゃんがいなかったら私…今も笑えてなかったと思うから。樹ちゃんと過ごした日々の思い出全てが、私のかけがえのない宝物なんだ。」
樹「…私も、ありがとう。ちひろちゃんがいてくれなかったら私…ここまで頑張ってこれなかったと思う。世界の真実とか、散華とか…」
ちひろ「本当に色々あったよね。…でも悪いことだけじゃなかった、絶対に。」
樹「うん、私もそう思う。勇者にならなかったらみなさんにも会えなかったんだし…」
ちひろ「これからも、一緒にいてくれる?」
樹「歌手とそのマネージャーだよ?当たり前じゃん。」
ちひろ「そうだね。
…樹ちゃんが困った時は私が支えるから、心配しないでいいよ。」
樹「うん、じゃあちひろちゃんがどうしてもダメって時は私が頑張るね。」
ちひろ「…あ、2人とも心折れそうな時はどうしよう。」
樹「あっ…うーん…」
ちひろ「お互いにカバーし合う、とか?」
樹「…確かに、2人でなら絶対なんとかなるね!」
ちひろ「…うん、そうに違いない!」
樹「…ちひろちゃん。」
ちひろ「…樹ちゃん。」
2人「「大好き。今までも、今も、これからも。ずーっと!!」」
ーーー園子sideーーー
風「━━━━━て!」
(…むにゃ…?サンチョ〜…?)
風「お━━━!」
園子「まだ〜…早いんよ〜…」
風「━━━━起きなさい!!!!」
園子「わあっ!?!?」ガバッ
耳元の大声で思わず飛び起きる。
目を擦ると前にパジャマのふーみん先輩が。
園子「どうしたんですかふーみん先輩〜パジャマで〜」
風「樹がいないのよ!」
園子「え?」
信じられないことを聞き、つい声が漏れる。
風「ついさっきトイレに起きたんだけど、そしたらいないの!靴もないから多分自分で出かけたんだと思うんだけど…書き置きもなしでなんて…」
園子「…と、ともかく探しましょう。私は下の方を!」
風「任せたわ!私は上を!」
園子「うーん困ったんよ〜…」
外の周辺まで大急ぎで探したものの、イッつんの姿は見つけられなかったのでした。
(そしてここまで上がってきてるのにふーみん先輩もいない〜?まさか上に化け物でもいたりするのかな?)
各階をサッと確認しながらどんどん階段を上る。
(もうすぐ屋上…!)
出口にふーみん先輩を見つける。
声をかけようとした、その時。
園子「ふーみん先輩!樹ちゃん…は…」
私の目が止まったところ、ふーみん先輩も見ていたところ。
そこでは…イッつんとちっひーが、お互いに寄りかかるように寝ていた。
園子「…いなかったの、ちっひーが呼び出してたんみたいですね。」
風「そうみたいね。…全く、勝手に抜け出してきただろうちひろも、夜中になんも残さずに来ちゃう樹も明日説教ね。」
園子「そうですね〜風邪引いちゃいますし布団持ってきます?」
風「そうね。私の家に予備があるから行くわよ。」
園子「あいあいさ〜!」
2人がそのまま寝ていられるようにふーみん先輩の部屋へ布団を取りに向かう。
その顔はどこまでも幸せそうな笑顔で、そして…
その手は、固く固く、繋がれていた。