上里ちひろは勇者である   作:☆ここな☆

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長くなったので3分割です(2話目)


25話 抗ウ者達

ーーー三門市北部ーーー

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「ホントにいいんですか?ぶっちゃけこれ特に扱いムズくて私でもやや手こずり気味なので加減できるか分かりませんよ?」

小南「分かってるわよ。でもアイツの上からデカいの叩き込むならこれしかないし、多少はなんとかするからそっちも頑張りなさい。」

ちひろ「それは言われずともですよ。」

ユズル君の発案から始まったクラスター攻略作戦。

だがその肝となるレッドバレットアイビスが着弾するまでにかかる時間は約5分、スタークラスターに迎撃対象とされるだろう位置からでも2分はかかると推測されている。

途中で気づかれて火球で迎撃されても、回転で反射させられても頓挫する。

だからなんとしても回転を一時的に止めて、それを着弾まで維持する必要がある。

今私が用意してるのはその回転を止めるキッカケ。

天秤座の時の戦いを応用し、私のモードジェットで小南さんを上空まで運び、真上からどデカい一撃を浴びせることでクラスターの動きをほんの一瞬封じる、というものだ。

そうして回転の止まった一瞬をついてアタッカー組が棘を切断、もちろん再生するはずだけど再回転する前に何度も何度も破壊。

シューターやガンナー、スナイパーのみなさんは妨害を止めるべく撃ち出されるであろう火球の迎撃。

これを2分間続け、レッドバレットアイビスを着弾させる。

間もなく発射されてから4分、スタークラスターの圏内に入る。

ちひろ「…行きます!!モードジェット!」

小南「…いいっ加減!!止まりなさぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!」

ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!

小南さんの叫びと共に振り下ろされた一撃が、作戦開始を告げた。

 

ーーー太刀川sideーーー

(派手にぶちかましたな。)

合体バーテックスの頭上で上がる白煙と、凄まじい衝撃によって大きく体がしなった合体バーテックスを見て出た感想がそれだった。

小南が扱う双月はボーダーで支給される標準的なものよりもトリオン消費量が高い代わりに攻撃力が段違いになっている。だが、それでも圧倒的な防御を持つ合体バーテックス相手にあそこまで煙が出るほどの傷が付けられるとは思えない。

おそらく刃が合体バーテックスに接触する瞬間にメテオラを挟み込み、起爆させたのだろう。

(ベイルアウトはしてないようだがダメージはでかいはずだ。復帰は期待しない方がいいな。)

そう、状況を整理して。

太刀川「続くぞお前ら!!」

日佐人「はい!」

樫尾「了解です!!」

王子「合わせるよ!」

「「「「旋空弧月!!!!!」」」」

5つの剣閃が重なり、合体バーテックスの棘を本体から切り離す。

これで状況は成立、あとはこれを2分維持するだけ…だが…

ドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッ!!!!

今の一撃でこちらの狙いを理解したのか、防衛本能かは分からないが前にも優る勢いで火球を装填、放ち始める。

四方八方、かわす隙すらない超高密度の攻撃。

…だが、しかし。

嵐山「攻撃開始!!」

当真「狙撃再開だ!!」

それらはうちの優秀な仲間たちが撃ち落とし、半分、いや7割がた減らしてくれる。そこまで減らしてもらえればあとはこちらでかわすのは容易だった。

太刀川「ふんっ!!」

身を捩って火球をかわしつつ、回復を始めた断面に更なる追撃を加える。

(残り1分55秒…頼むぜてめえら…!!)

 

ーーー樹sideーーー

烏丸「ガイストオン、ガンナーシフト!」

『カウントダウン開始 ベイルアウトまで157秒』

レイジ「[[rb: 全武装 > フルアームズ]]、オン

!」

旋空組とゆっくりゆっくりこちらへと向かってきているレッドバレットアイビスに向けて放たれ続ける火球を撃ち落とすべく、レイジさんと烏丸さんが奥の手を発動します。

レイジさんのは同時にトリガーを使用できるのはメイン・サブから1つずつという制限をなくし、大量のトリガーによる総攻撃、超高密度の弾幕展開を可能とするフルアームズ。

烏丸さんのはあえてトリオン体のバランスを崩し偏らせ、時間制限付きの部分超強化を得るガイスト。

どちらも大量のトリオンを消費する短期決戦用ですが、この後の撃破までの見通しがついてる今、出し惜しみの必要はありません。

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ

ボガガガガガガガガガガガガガガガァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!!!

2人から放たれた凄まじいほどの数の弾が火球を迎え撃ちます。

(私だって…!!)

樹「これで…えぇぇぇい!!!」

1本だけでは先にこちらの方がちぎれる。

そうさっきの攻防で学んだ私は、何十にも糸を束ねて鞭のようにし火球を切り裂きます。

(あと1分46秒くらい…なんとしても裁ききるんだ…!!!)

 

ーーー王子sideーーー

事態が動いたのは残り1分30秒のときだった。

(水球…!?)

合体トリオン兵の下半身についていた巨大な2つの水球、それまでもが追尾火球のように放たれ始めたのだ。

ちひろ「っ!!一度閉じ込められると脱出できません!!気をつけてください!!」

サトっちからそう注意がとんでくる。

(捕獲して身動きを封じたとこを水圧レーザーや火球で確実に葬るつもりかな。ただ火球ほどの速度はない。点の攻撃で穴を作り破壊する!)

王子「アステロイド!!」

度重なる侵攻で現れる新型の防御力を抜くために積んでおいたアステロイドを分割せずに発射、水球に穴を空け、そこから水を抜こうと試みる。

…が。

ポチャン

王子「!?」

アステロイドが水球に当たっても穴が空く事はなく、弾は水球の中で解けるように霧散する。

水球の仕組みを完全に読み違えた。

あの水球は泡のような器に水を満たした…いわばペットボトルのようなものだと思っていた、だから穴を空けることができればそこから何とか出来ると踏んでいたけれど。

これは湖や海が球の形となったものだ、破壊するならメテオラのような爆破手段が必要だった。

そうして破壊に失敗した水球がこちらへ迫る、再生する断面へ更なる旋空を打ち込みながら後ろへと回避行動を…

ボガァァァァァァァァン!!!

取ろうとしたまさにその時、爆風が身体を押し返す。

(メテオラではない、あの火球、爆発もできたのか…!?それも任意で…!!)

真に厄介なのは、トリオン兵離れした知能だった。

読み違えた報いを受けさせるように、水球がぼくを取り込んもうとする。

しかし、その未来は訪れなく。

樫尾「隊長!!!!」

ダンッ

カシオが代わってその受け皿となる。

王子「カシオ!!」

樫尾「ーー!!」

必死に脱出しようとカシオがもがく。

だけど、その表情は焦りというよりも…

出水「メテオラ!!」

ボガァァァァン…

そう逡巡した一瞬、イズミンのメテオラがカシオごと水球を吹き飛ばし、カシオはベイルアウトで本部へと戻っていく。

出水「…メテオラの爆発で内部からぶち壊せば一応可能、か。かなり厄介だなコレ。アタッカー組の負担はこれ以上増やせねえからメテオラ持つやつ以外かわすしか…ねえ!!」

自身へと向かってきた火球を撃ち落としながらイズミンがそう零す。

王子「そうだね、何より…トリオン体を溺れさせるなんて芸当ができるんだ。どんな影響が出るか分かったもんじゃない。」

到達までの残り時間、約1分24秒。

状況はドンドンと変化していく。

 

ーーー太刀川sideーーー

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッッッ!!!!

太刀川「かわしてもかわしてもキリがねぇ、なっと!!!!」

こちらを狙う追尾火球をかわし、時には棘と一緒に切り裂く。

だが、明らかに火球の数が増えている。

その理由は言うまでもない、樫尾が落ちた事でその分が分散してこちらを狙っているのだ。

あとはさっきから合体トリオンが排出し始めた水球、あれがヤバい。

どうやらあの水球、メテオラくらいしか破壊できるものがないらしく、一度囚われれば脱出も不可能、そもそもデカいのも相まってほとんどのメンバーは迎撃という手のある火球と違って回避にも意識を割かなければならない。

火球と水球で挟み撃ちされた結果茶野隊の2人が落とされていたり徐々にシューター・スナイパー組共に押されてきているのだ。

日佐人「…っ!?」

ボガァァァァァァァァァン!!!!!

そんな矢先、傘増しされた火球の集中砲火によって日佐人まで落とされる。

(残り1分と10秒くらいか…?ダメだ…このままじゃ先にこっちが落とされるぞ…!!)

荒船『…しまっ…!?』

荒船が死角からの水球に呑まれる。

木虎「くっ…!!」

木虎が火球の弾幕に動きを止めたところを水圧レーザーで撃ち抜かれる。

間宮「すみません…!!」

間宮隊の2人が火球に押し切られる。

たった数秒でこのザマだ。

ボガァァァァァァァァァン!!!!!

太刀川「ぐっ!?」

かくいう俺も、周りに意識を向けた一瞬をつかれ、火球の爆風で体勢を崩す。

(まずい…!!)

樫尾と日佐人が落ちた今、棘への攻撃に参加してるのは俺と王子の2人。

そしてそれでギリギリ再生速度にこちらの攻撃が間に合ってる状態だ。

ここで二刀流の俺が落とされれば最後、棘へ攻撃を加えれるのは王子の孤月一本のみとなる。

仮に王子が火球の攻撃を最後まで凌ぎきっても、再生しきられ、再び全てを跳ね返す回転が始まるだろう。

そうなれば作戦は失敗だ。

火球が迫る。

(回避は無理だ!旋空は…無理だ、体勢が悪ぃ!クソッ!!ここまでか…!!)

その瞬間だった。

ズババババババババババババァァァァァァァァァン!!!!!!!

地面から生えた斬撃が火球を尽く切り裂いた。

太刀川「…!!こいつは…風刃…!?」

迅『その通りだぜ太刀川さん。』

そう通信が入る、その主はもちろん斬撃を放った迅だった。

迅『作戦は聞いた、今そっちに向かってる。

…まだやれるだろ?太刀川さん。』

そう迅が俺に問いかける。

その声が聞こえた時からもう返答は決まっていた。

太刀川「ったりめーだろ!!」

迅からもらった時間で体勢を立て直し、再度孤月を構える。

アイビスにより放たれたレッドバレットの到達まで、残り1分。

更に再生速度の上がった断面を旋空弧月の黄刃と風刃の緑刃、二色の閃光が嵐となって合体バーテックスを襲う。

斬って斬って斬りまくる。

ただひたすらに、トリオンのあるだけを。

1本あたり、1秒につき2回の旋空じゃ足りない。

いつどこから再生するか予測のつかない断面に同じ長さの旋空じゃ最大火力を発揮できない。

もっと早く、もっと鋭く、もっとギリギリ、どこに当たろうと孤月の切っ先が当たるように。

忍田さんは一刀で1秒4撃の旋空を放てるんだ。ならば俺にだってできるはずだ。

(迅がいるんだ。不甲斐ねぇとこなんて見せられねえよなぁ!!!!)

剣戟は加速する。

 


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