上里ちひろは勇者である   作:☆ここな☆

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3話目です。


26話 剣舞ウ

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「…凄い…」

息を呑むような光景がそこにはあった。

太刀川さんの旋空弧月と迅さんの風刃による、凄まじいほどの連携、戦場じゃなければ見惚れてしまいそうな刃の乱舞。

しかも、それはただ斬りまくればいいというだけの話でもない。

風刃には銃における残弾とも呼ぶべき帯が存在し、それがなくなれば帯を再び装填するために少しの時間を要す弱点がある。

再生の勢いが増している今、風刃と太刀川さんの孤月が同時に途切れる事は再生完了による作戦失敗を意味するだろう。

だけど、そうはなってないし、ならない。

風刃の刃が途切れた刹那に入れ替わるように太刀川さんが、旋空の効果が切れ、再起動にかかる一瞬は迅さんが。

互いの隙を完璧なまでにカバーし合っている。

顔どころか姿さえ見えてないはずなのに。

(…って、見惚れてる場合じゃない!!私も私のやれる事を!!)

レッドバレット到達まで残り10秒。

このまま作戦が成功すれば次はスタクラの撃破、私の出番になる。

ちひろ「私の生存は当然として…太刀川さん達の邪魔にならないように火球を全部ぶった斬る…!!」

モードブレイドを片方だけ発動し近場の火球を切り裂きながら、1本だけ出したビッグビットを太刀川さんへと飛ばし、護衛代わりにする。

はずだった。

ドガガガガガガガガガガガガァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!

今までにないほどの爆風が戦場に吹き荒れ、同時にビッグビットが消し飛ぶ。

ちひろ「何が起きたの…!?バーさん!分かる!?」

バーさん『スタークラスターが発射する前の火球をまとめて爆破しよった!!』

ちひろ「なっ…!?」

未だに手を隠していた事に驚きつつ、顔から血の気が引く。

ビッグビットが消し飛ばされているのだ、それよりも近距離にいた太刀川さんや王子さんが無事で済むとは思えない。

ちひろ「太刀川さ「俺は無事だ!!!グラスホッパーが間に合った!!!!」」

私の声を遮るように、太刀川さんが王子さんを抱え、言葉と共に粉塵から出てくる。

間一髪グラスホッパーで離脱できたようだ。

だが、ただでさえ勢いよく跳んだにも関わらず同方向からここまで届くほどの爆風が吹いてきたのだ、その距離はドンドンと離れていく。

太刀川「だけどそのせいで距離が届かねえ!!!戻るまで誰か合体バーテックスの再生を止めろ!!!!!!」

そう、叫び声が響き渡る。

残り、9秒。

(考えてる時間すらない!!)

ちひろ「バーさん!!!!!」

バーさん『最短で十分な威力じゃな!!』

ビット全てをソードブレッドへ変換し、バーさんの指示の元できる限り威力を高めるべく空中を飛び回り始める。

だけどそれだけじゃ足りない、間に合わない。

だから。

風刃が途切れる、断面から棘が一気に再生されていく。

だけど…その回転は、決して再開される事は無い。

園子「船を解除、そしてウェポンフルオープン!!!!全部まとめて…食らええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」

園姉によって、空から凄まじいほどの武器の雨がクラスターへと降り注ぎ、大きく傾いていく。

しかし、再生が止まるわけではない。

残り8秒。

ついに棘が完全に再生し、回転を始めるべく体勢を建て直し始める。

が、直後風刃が直撃、再度棘を…

(…斬れてない…!?)

傷はできていても、切断にまでは至ってないのだら、

よくよく見るとクラスターの付近の地面が薄らと水に覆われているのが確認できた。

(…確かに園姉に押されてた時、備えてた水球が地面に接触してたと思うけど…その時に仕込んでたって事!?どこまで賢いの、コイツ…!?)

奥の手のように新たな攻撃を披露してきたのはもう何度目か。

私にすら負けないほど揃えてある攻撃手段と、それを隠し、適時に使用してくる高い知性。

バーテックスのスタークラスターよりも更に強化されたその脅威を目前として目を見開くしかなかった。

残り7秒。

ともかく、相当まずい事に変わりはない。

クラスターはもうほぼ起き上がっている、園姉もトリオン切れ、もう体勢を傾けて時間稼ぎをすることなんてできない。

(あと少しなのに…!!!!)

その時だった。

生駒「…屈んでもらってええやろか?」

すぐ隣に、生駒さんが来ていたのは。

鳥丸「…生駒旋空だ、伏せろ!!!!!」

生駒「旋空弧月。」

そして倒れるように身を伏せると共に…後方、40mも離れてる場所から、旋空弧月がクラスターの棘を切り飛ばした。

生駒旋空、居合の達人である生駒さんのみが扱える、極限まで起動時間を減らして射程を伸ばした旋空弧月。

ホントにギリギリ、クラスターを射程内に収めたその旋空が棘を再度切断したのだ。

そしてそれによって

バーさん『行けるぞい!!』

ちひろ「ぶちかませ!ソードブレッド!!」

ザザザザザザザザンッ!!!!

ソードブレッドが、間に合った。

レッドバレット到達まで、残り6秒。

 

ーーー迅sideーーー

(あの黄色の飛ぶ刃は…ちひろちゃんのか!!)

眼前に迫ったクラスターから飛び出たブレッドを見て、状況を確認する。

合体トリオン兵の出現から受けていたトリオン兵の集中攻撃を他の隊に引き受けてもらい、全力疾走して約1分半。

やっと合体トリオン兵のすぐ近くまで迫ることができた。

迅「ふん!!」

ザザザザザザザザンッ!!!!

左右の住宅の壁に三本ずつ、地面に二本、それぞれ風刃の刃を仕込み、間髪入れず発動する。

これでまた次の発動までに時間がかかる。

だが、それでいい、レッドバレットが直前まで来ている以上、下手な斬撃はレッドバレットの誤爆に繋がりかねない。

ならばどうするか…答えは1つ。

(直接、斬る!!)

旋空なしの孤月では火球すら切り裂ききれないが、ブラックトリガーとして孤月を大きく上回る性能を持つ風刃の刀身ならばそれも可能。

ただ1つ問題点をあげるとすれば距離が足りない事か。

だが、しかし。

迅「京介!!エスクード、頼む!!」

鳥丸「…!!了解!!」

残り5秒。

俺の声を聞いた京介によって俺の足元から合体トリオン兵へと斜めに生えたエスクードが出現。

ザンッッッッッ!!!!

その生えてきた勢いで一気にその距離を縮める。

その勢いのままに再生しかけの棘に一閃。

バキッ

ザンッッッッッ!!!!

そして近くの建物の壁を踏み台にし、更にもう一閃。

だがしかし。

(…まあそうなるよな。)

ドドドドドドドドドドドドドッッッッッ!!!!!!

火球の八割程度が俺へと発射される。

(避けてもいい…が、それだと爆発させてくる可能性がある。そうなりゃレッドバレットが巻き込まれるな。となると…全部倒すか。)

そう整理して俺は…

姿勢を低くして合体トリオン兵へと三度突撃した。

ドガガガガガガガガガガガガガガァァァァァァァン!!!!!!!

その瞬間、俺の頭上を通り大量の狙撃が火球へと炸裂し、ひとつ残らず破壊する。

残り4秒。

(なるほど、そこか。)

断面に更に攻撃を加えつつ、レッドバレットの位置を把握する。

場所さえ分かれば風刃の仕込み刃で誤爆させる事もない。

ザザザザザザザザンッッッ!!!!

遠慮なく帯の復活した風刃で八箇所同時攻撃を決める。

残り3秒。

ドドドドドドドドドドドドドッッッッッ!!!!!!

迅「チッ…!!」

火球の残りの2割も俺へと狙いを定め、大量の火球、その全てが俺へと狙いを定め、集中攻撃。

流石にこれは回避しきれずに、左腕と右足が吹っ飛ばされる。

が…

冬島『お届け物だぜ。』

太刀川「おらッ!!!!!」

ズババババババンッッッッッッ!!!!!

ここで冬島さんのワープによって太刀川さんが帰還、あと少しのとこまで再生してた棘を再び滅多切り。

残り2秒。

ドドドドドドドドドドドドドッッッッッ!!!!!!

(ついにか!!)

ここに来てついに目の前の異物…レッドバレットの危険性に気づいたのか、すでに飛ばした火球、これから装填する火球、あらゆる火球をレッドバレットへと差し向ける。

だが、当然。

樹「それには手は出させません!!」

出水「ギムレット!!」

嵐山「合わせるぞ充!」

時枝「了解です。」

蔵内・水上「「アステロイド!!」」

当真『全員外すんじゃねーぞ!!』

鳥丸「ブレードシフト!」

王子「旋空弧月!」

ちひろ「戻ってこい!!ソードブレッド!!」

ボガガガガガガガガガガガァァァァァァァァァァァン!!!!!!

総攻撃によって1つとしてレッドバレットには届かない。

 

残り、1秒。

レッドバレットが目と鼻の先に迫る。

最早未来を見るまでもない、再生による回転さえ防げばもう勝ちだ。

だから。

迅「風刃。」

太刀川「旋空弧月。」

最後のダメ押し。

形成されかけていた火球ごと、合体トリオン兵を斬撃の雨が切り刻む。

そして。

…プチ

ボコボコボコボコボコボコ!!!!!!!

レッドバレットがついに命中し、その箇所から凄まじい数の鉄塊が合体トリオン兵の棘を覆い尽くす。

結果、棘を刺しての回転はもちろんの事、水球さえも装填した傍から鉄塊で割られ、封じられる事となった。

 

ーーー竜治sideーーー

竜治「よし!!!!」

作戦が成功するのを確認し、そう叫ぶ。

当然だ、このために2分も死闘を繰り広げたんだから。

諏訪「やったじゃねーか竜治…だったよな?ほれ、ハイタッチすんぞ。」

竜治「…はい!」

パンッ!!

俺と諏訪さんの手が重なり、気持ちのいい音が鳴る。

堤「ハイタッチもいいけど、竜治君って合体トリオン兵の撃破係でもあったしょ?早く行った方がいいんじゃない?」

竜治「あっ確かに。」

忙しすぎてド忘れしていた。

まあ追尾火球の迎撃でかなり傷はできたがどれもかすり傷、トリオンが足りない心配はいらないだろう。

竜治「ちひろ、今どこだ?合流するから場所を…」

その時だった。

カラカラーン…

音が、鳴った。

神社の鈴を鳴らした時に出るような、乾いた感じの音。

反射的に音の聞こえた方向に顔を向けると、そこにはクラスターがいて…

ブシュウウウウウウ!!!!

竜治「…あ…?」

同時に、身体中のありとあらゆる傷からトリオンが吹き出した。

 

 

 

 

 

 

ーーーちひろsideーーー

ちひろ「何が…起きたの…!?」

空いた口が塞がらない。

起こったこと自体は単純だった。

クラスターが音を発した、周りのみんなからトリオンが吹き出てベイルアウトした、それだけだ。

だからこそ、わけがわからない。

コマ『タウラスの音波だ。』

そう、精霊バリアを展開していたコマさんが答える。

樹「…確かにクラスターには取り込まれてましたけど…でもアレは動きを止めるだけの…」

コマ『ああ、アイツの音波はトリオン兵となった今でもトリオンのバランスを僅かに乱すに留まっていた…だが、合体でその力が強化されてしまった。』

ちひろ「…つまり?」

コマ『トリオンのバランスを乱せる幅が増加し、そこにあの高い知性が組み合わさり、トリオン同士の繋がりが弱いとこ…トリオンの漏出を抑えるべく塞がった傷跡を集中的に破壊し、更にその傷口からトリオンを過剰噴出させれるようになった、ということだろう。』

ちひろ「…あっ。」

確かに、今の音でこの場に集ったほとんどのボーダーはベイルアウトした。でもその中にはしてない人だっている。

レイジさん、出水さん、影浦さん、隠岐さんを除いた生駒隊のみなさん、当真さん、ユズル君。

その誰しもがまだ無傷の面々だった。

私と樹ちゃんは傷を負いながらも無事だが、それはおそらく精霊バリアのおかげだろう。

(通信が切れたって事は竜治君はやられた…私がやるしかない!!)

鉄塊を引きずりながらなお本部へと向かい続けるクラスターを撃破するため、覚悟を固める。

ちひろ「満開でクラスターの御魂を破壊します!!援…」

しかし。

ブオンブオンブオン

空に突如としてゲートが空き、そこから大量のトリオン兵が現れる。

出水「おいおいここに来て大量投入かよ!」

水上「是が非でも俺らに邪魔させたくないんやろな。」

レイジ「くっ…まずい!!」

トリオン兵に私たちが群がられている間に、クラスターはドンドン先へと進んでいく。

…そして、ついに。

本部の正面に到達した…して、しまった。

 

ーーー本部司令室、亜耶sideーーー

ボガガガガガガガガガガガァァァァァァァァァァァン!!!!!!

グラグラグラ

亜耶「きゃっ!!」

ちーちゃん達の奮戦をも掻い潜り、ここまで来てしまったレオ・スタークラスター。

完全にこちらを標的に定め、火球による攻撃を開始します。

忍田「城戸司令、本部の職員の避難をお願いします。」

城戸「聞くまでもないが本部長は?」

忍田「合体トリオン兵を抑えます。まだ無事な部隊が集合するくらいの時間は稼げるでしょう。」

城戸「了承した。避難指示は私に任せろ。」

忍田「すいません鬼怒田さん、少し本部傷つけます。」

鬼怒田「構わん!全部壊されるよりはマシだ!」

そう、やり取りが交わされて。

忍田「トリガーオン!」

忍田さんがトリガーを起動した、その時でした。

ブオン

忍田「…ッ!?」

人1人が通れる程度の穴が空いて、その上にいた忍田さんが消えてしまったのです。

 

ーーー三門市南部、忍田sideーーー

忍田「くっ…!!」ドサッ

受身をとって落下の衝撃を和らげる。

してやられた、というべきだろう。

前回二宮隊、来馬隊と共に合体トリオン兵"ニンジャ"を撃破した時に目をつけられ、いざと言う時に隔離できるようにしていたのだろう。

(邪魔がなければ1分程度で戻れるが…)

当然、私を囲うように大量のトリオン兵が配置されている。

オマケにその多くがモールモッドやラービット、流石に時間がかかるだろう。

更に…

ブオン

遊真「うぶっ。」

新たなゲートから遊真くんが落下してくる。

遊真「いてて…あれ?シノダさん?」

忍田「時間がないから手短に状況を説明する。合体トリオン兵が本部に到達し、その邪魔になりそうな者はアフトクラトルのブラックトリガーによってここに飛ばされた。周囲にはモールモッド100体、バンダー100体、ラービット20体だ。」

遊真「なるほど、俺が"レプリカ"起動したから飛ばされたのね。じゃあ急ぐか。」

 

ーーー亜耶sideーーー

亜耶「避難通路はこちらでーす!!」

佳美「慌てず、だけど急いでお願いします!!」

そう大声で研究チームの方々やベイルアウトで戻ってきた隊員の皆さんを避難させる。

オペレーターは基本的に一応トリガーを使った状態で隊員の支援をするため、トリオン体が破壊されなければ安全です。

なので、とりあえずは後回し。いざと言う時すぐに避難できるように、非常口から100メートル以内で他の人の避難誘導をしています。

(多分この人で45人くらいでしょうか…?この付近の人は50人って言ってましたし、あと少し…!!)

避難が順調に進んでる事に安堵しつつ、残りの人も無事に終わらせようと意気込みます。

ですが…

カラカラーン…

ビギビキビキビキビキッ!!

亜耶「…え?」

ガラガラガラ…

それが果たされる前に、クラスターの音波によって本部の壁が崩壊しました。

 

ーーー冬島sideーーー

冬島「トリオンならどれでもぶっ壊せるのかよそれ、厄介だな…」

そう愚痴を零しながら作業を進める。

(ベイルアウトの帰還場所の変更はもう終えた。後は…)

ドドドドドドドドドドドドドッッッッッ!!!!!!

冬島「ぐっ!」

遠征艇への障害物を排除しようと無差別に振りまかれる火球に身体の大部分を持ってかれる。

冬島「…ッづ…本部から1キロ以内にワープポイントを設置!具体的な場所までは指定できなかった!!色を他と変えてある!!誰か…頼んだ!!」

場所は分からない、だが1人だけはここに来れる。

そういうワープポイントを最後に設置し、ベイルアウトする。

 

ーーー亜耶sideーーー

グラグラグラ

亜耶「こっちでーす!!急いでくださーい!!」

そう叫びながら最後の人たちを誘導する。

(あともうちょっと…!!)

そうして、非常口が見えてくる…そんな時でした。

目に、入ったのです。

レオ・スタークラスターと…

それに相対する、千佳ちゃんが。

亜耶「…まさか、冬島さんのワープポイントを千佳ちゃんが…!?」

始まる、始まってしまう。

クラスターと千佳ちゃんの戦いが。

…戦いは更なる局面に突入しようとしていました。

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