登場人物をここにのせます。
・上里月夜
神樹館中等部に通う15歳。
過去に例のないほどの巫女適正を持っており、好きな時に神樹と話せるというおっそろしい人。
後のちひろの母。
・天王寺和人
讃州中学に通う15歳。
全スポーツの全国大会で優勝するというとんでもない運動神経の持ち主。
後のちひろの父。
・雨宮焔
月夜の幼馴染かつ親友。
社交的で活発、みんなの人気者。
家は土居家の分家で、後の風、樹の母。
・犬吠埼海
月夜の幼馴染かつ親友。
物静かで三人の中の抑え役。
家は伊予島家の分家で、後の風、樹の父。
・ユウナ
いつ来るかもわからない月夜にしびれを切らした神樹の神々が、月夜の話し相手兼神託伝達係として用意した神(高嶋友奈)である。
月夜とは非常に仲がいい。
・天王寺十香
280年前、初代勇者。郡千景といとこ関係。
1. 神世紀280年 星魔殲滅作戦
ーーー月夜sideーーー
月夜「焔〜!ハロハロー!!」
焔「お、月夜ー!ハロハロー!!」
(私は上里月夜!家が少々お金持ちの普通の人だ!!)
海「…お前らさぁ…」
月夜「ん?何よ海。何か言いたいことでも?」
焔「話に入ってけてないからって話切るのはどうかと思うゾ?」
海「…今授業中だ。」
月夜、焔「「あっ。」」
先生「…月夜さん、焔さん?」
月夜、焔「「ナナナナンノコトカナー?チョチョットナニイッテルカワカンナイ。」」
先生「…次はないですよ。ではここは…」
(…あっっっぶな…冷や汗かいたわ…てか暇。うん暇。)
月夜「…よし、行くか〜!」ボソッ
そして私の意識は移動する。
ーーー神の間ーーー
ユウナ「…お?月夜ちゃんおっはよー!」
月夜「ユウナさんおはよーです!」
ユウナ「今日も元気だね!」
月夜「そりゃ元気ですよ〜!」
ユウナ「今日はなんの話する?」
月夜「じゃあ昨日うちで起こった騒ぎのこと話しますか!」
ユウナ「おお!なんか面白そう!」
月夜「えーっとですね…」
(この人はユウナさん、神さまである。私はなんかいつでも神樹様と話せるんだよね〜一般人だけど。)
ーーー学校・昼休みーーー
焔、海「「いやそれを普通とは言わない。」」
月夜「な、なんですと…!?そんなバナナ!!」
焔「いや大赦の最高位家の娘のどこが普通!?!?」
海「おまけに神樹様と好きな時に対話可能とかいうチート仕様だしな。」
月夜「純度100%で普通じゃない!?」
焔、海「「普通じゃない(ねえ)!」」
月夜「そうだったの…」
焔「…ってこのやりとり何回めよ笑笑」
月夜「さあ?15回目じゃない?笑笑」
まあこんな感じで平和に過ごしてます。
…ただ、平穏は簡単に崩れるものだ。
ーーー10月14日ーーー
月夜「朝だー!!」ガバッ
(今日のご飯はなんじゃら…ってあれ?)
月夜「ここ…神の間…?」
目の前にあったのは見慣れた寝室ではなく、ユウナさんとの話し場所である神の間だった。
月夜「えーっと?ついに私は寝相で来るようなっちゃったのか?大問題じゃない?これ。」
ユウナ「違うよー!」
月夜「あ、ユウナさん!!」
声のした方を見るとユウナさんがいた。
月夜「違うってどういうことですか?まさか…」
ユウナ「…そのまさかだよ。月夜ちゃんに神託を伝えにきた。」
(…マジか…)
ユウナ「まず一つ目。
…来年の3月からバーテックスが侵攻してくる。」
(…は!?)
月夜「待ってくださいよ!今勇者適正あるのって…」
ユウナ「…うん、焔ちゃんだけだよ。」
月夜「無理ですよ!焔の適正だってギリギリじゃないですか!!その上一人なんて…」
ユウナ「それはこっちもわかってるよ。
…だから、もう一つある。これは月夜ちゃん自身にもすごい大事なこと。」
月夜「!?」
(私自身が…?過去にそんな事例なかったはずだけど…)
ユウナ「いい?月夜ちゃんの巫女としての実力は過去にいたどの巫女よりも強い…別次元とも言っていいくらいに。」
月夜「は、はい…」
ユウナ「…あなたが協力してくれるなら、バーテックスの侵攻時期を大きく遅らせることができるの。」
(…あー…そういうことか…)
月夜「奉火祭…ですか。覚悟は今できました。」
ユウナ「んん!?違うよ!?」
月夜「違うんかい!?」
ユウナ「私たちの案は…神樹の力を集めた巨大なエネルギー砲、通称『神樹砲』で、バーテックスやその元の星屑を大規模殲滅、それによってバーテックス再形成の時間を作るって作戦なの。」
月夜「…な、なんかすっごい壮大…」
(…ん?)
月夜「…それ、私いります?」
ユウナ「うん!えーっとね…神樹様が何百もの神様の集合体っていうのはわかるよね?」
月夜「ま、まあ…」
(だてに何年も話してないからね〜)
ユウナ「だからいつもはバラバラでとても殲滅出来るような力は出せないんだよ…そこで月夜ちゃん!月夜ちゃんの高い巫女適正で神樹の神々の力を一時的にまとめてもらいたいってこと!!」
(…え?そんな私すごかったん?)
さすがに盲点だった。自身がそこまですごいとか思ってなかったのである。
ユウナ「…でも、それは結界の外じゃないとできないから危険も伴う。私たちもバーテックスとかにダメージ与えれるように神力込めた武器は支給するけど…」
(…なるほどね…でもここで私がやらなきゃ、焔はひとりぼっちで戦わないといけなくなるんだ…)
月夜「…やりますよ、私。私しかできないんですもん。やるしかないですよ!」
ユウナ「ほんとにいいの…?」
月夜「もちのろんですって!任せてください!」
ユウナ「…うん。ありがとう!」
ーーー寝室ーーー
メイド「月夜様!起きてください!」
月夜「はい起きた!!」
メイド「起き…キャッ!?」
月夜「あ、ごめんなさい…それより大至急大赦に連絡をお願いします!!早く!」
メイド「え!?あ、はい!一体どうしたのですか…?」
月夜「…神託が降りた。緊急会議開かないと!」
ーーー10月21日、大赦大会議室ーーー
大神官「では、これより緊急会議を始める。まずは今回の神託の内容を、上里月夜様、お願いします。」
月夜「もちでーす!今回の神託の内容は主にふたつ。1つは、3月からバーテックスの侵攻が始まることです。」
神官A「なんだって!?」
神官B「今、まともに勇者できるほどの適正を持った人なんてほとんどいないのに…」
焔「…マジかぁ。さすがに1人ではこの焔様でもキツいってぇ…」
海「自分で様付けするなよ…だがどっちにしろまずいよな。」
大神官「静粛に!月夜様、続きを。」
月夜「はいはーい!んで、勇者適正値の高い者がほとんどいないこの状況を受けて、神樹様は別な手段を編み出した。これこそが今回の作戦、神樹砲によるバーテックス殲滅作戦になります。」
神官A「神樹砲!?聞いたことがないぞ!」
神官B「一体神樹様は何を考えて…」
焔「ちょいみなさん落ち着きましょーよ!月夜の話の途中ですって!」
月夜「サンキュ焔!神樹砲っていうのは、神樹様を形成してる何百もの神様の力を私の高い巫女適正で一時的にまとめ、それを放つことで一気に星屑ごとバーテックスを殲滅する、というものです。」
神官C「おお!」
神官D「なんとすばらしい!さすが神樹様…」
海「…あんたらは黙って最後まで聞くこともできんのかよ…」
月夜「海、気にしなくていいよー!で、これには弱点がありました。それは壁の外でしかすることができないこと。つまり私は装填中の無防備な間が大量にできてしまう。だから主にこの間の護衛についてです、今回は。」
大神官「補足をつけさせてもらいますと、今回の事態にあたり、神樹様が自らの力を宿された神器をいくつか提供してもらえることになっております。」
月夜「大神官さんナイスフォロー!」
ザワザワ、ザワザワ
(まあ前代未聞だしそりゃザワるだろうねぇ。大赦なんてマニュアル人間だらけだし。)
焔「まず大前提として私は行くっきゃないしょ!」
月夜「焔!いいの?」
焔「あったぼうよ!元からある程度は覚悟持ってたしね!神器とはいえ適正ある方が強くはなるしょ?」
大神官「はい。その通りでございます。」
焔「なら他の適正が高い方の子達も含めてやりましょうよ!運がいいのか悪いのか大赦関係の子ばっかだし。月夜にだけ背負わせるわけにはいかないってもんですよ!」
月夜「焔…感謝感激雨あられだよー!!」
焔「礼を言われるこたぁないさぁ!私とあんたは親友だし?」
月夜「そうだったね!」
海「…おーい、俺の立場がなくなるんだがー?」
焔「海のことだって忘れちゃいないって!」
月夜「海も親友に決まってる!」
海「わかりきってたことでもほっとしたわ…」
大神官「…話は終わりましたか?」
月夜、焔、海「「「あ、ハイ。」」」
大神官「では勇者候補の方々にはしばらく弓や銃の訓練に励んでもらいます。」
焔「了解でーす!」
(ん?でもそしたら…)
月夜「さすがに全員後衛って無理があるんじゃ…?」
大神官「はい。よく考えてみてください。3月に襲撃してくる以上、多少の誤差も含めて決行日は2月中盤になります。それまでに全く訓練をしてなかった者達を鍛え、前衛としての戦力にするのは無理がある。だからこそです。これとは別に前衛としてすでにやっていけそうな者を見つける必要があります。」
(なーるほどね…いやでも一般人にそんな人いるとは思えないんだけど…)
海「…俺、1人心当たりありますよ。大神官さん。」
焔「え?海ま?」
海「おう。って言っても知り合いとかそーゆーわけじゃねえけどな。ほらいるだろ、ほとんどのスポーツで他を寄せつけずの一人勝ち優勝し続けてる最強人類、天王寺和人。」
ーーー11月3日、讃州中学ーーー
ーーー海sideーーー
(俺と焔、そして月夜は今讃州中学を訪れてる。無論理由は和人のスカウト。大神官さん曰くあれほどの強さなら未完成星座級にも対応できるのではないか、とのことだし絶対協力してもらわねえと。)
月夜「てか今更私たち来たとこで意見変わるもんじゃなくない?」
焔「いや〜、意外と私たちバケモノかなんかと思われてるかもしれないし、戦うのが自身となんも変わりのない人達だって知ったら協力してくれるかも!」
海「そうだな…てかそれにかけるしかねえんだが。」
天王寺和斗のスカウト。実はすでに3度ほど大赦の神官さんが行ってたものの、事情も全て聞いた上で却下されていた。とりつくさまもなかったとか。
(…さて、ここが待ち合わせの部屋だな。)
海「入りますよー?」コンコンッ
和斗「どうぞ。」
月夜、焔「「失礼しまーす!」」
海「失礼します。初めまして、ですね。天王寺和斗さん。」
和斗「別に同学年なんだろ?なら敬語じゃなくてもいいぞ。」
焔「海は堅苦しすぎんのよー!」
月夜「そうそう!もうちょいリラックスして…」
海「だからといって最初からタメ口もどうかと思うがな…」
月夜、焔「「ゑゑゑ!?」」
海「そりゃそうだろ…二人とも自己紹介。」
月夜「改めてこんにちわ!大赦の巫女の上里月夜だぜぃ!!」
焔「後方部隊隊長の雨宮焔だぜぃ!!」
(真面目にやれよ…まあこいつらだから仕方ないけどさぁ。)
海「俺は犬吠埼海。よろしくな。」
和斗「ん、知ってるだろうけど俺は天王寺和斗。よろしくな。…で、要件は?」
(…やっぱ要件は聞くだけ聞いてくれんのな…)
海「ああ、説明するぜ。」
ーーー説明後ーーー
海「…ってことだ…世界の、いや焔のためにも力を貸してほしい。」
焔「海カッコイイこと言ってくれるじゃん〜。…私からもお願い。」
月夜「お願いします。守りたいんです。何もかも。」
和斗「ふーん…
無理だ。」
(なっ…)
海「どうして…だよ…?」
和斗「逆にだがなんで今日初対面のやつのために命の危険まで顧みずに力を貸さなきゃいけえ?そんな作戦、バーテックス?だかが知れば全勢力を持って止めに来るだろ。そしたら1番あぶねえのは俺じゃねえかよ。」
焔「っ…でも侵攻が始まったら私一人じゃキツくて…」
和斗「たとえそれで終わっても協力するよりは長い間日常を過ごせるだろ。協力するとなりゃ訓練は必須。まともに日常なんて過ごせやしねえ。成功するかもわかんねえ作戦に日常ほとんど奪われるなら限りある日常を謳歌することを選ぶぜ、俺は。」
月夜「…」
海「あんたの判断でこの世界の全ての人々が救われるかどうかが決まるんd「いいよ海!!」焔…」
焔「帰ろ。あっちが正論。前衛も他に探せばいる。神器だってまだあるんだから複数人にすればなんとかなるよ。最悪失敗しても私一人でどうにかすればいい話。」
海「だがな…」
焔「つべこべ言わない!貴重な時間奪ってごめんね、もう来ないように大赦の方々にも言っとくから。」
ーーー帰り道ーーー
ーーー月夜sideーーー
(…)
焔「まーさか断られるとは想定外だったよー…」
海「…あんな人でなしとは思ってなかったぜ…」
焔「いやそりゃ誰でもあんな反応するでしょ。むしろあれが普通。私たちがお人好しすぎただけ!」
海「でもなぁ!世界すら守ること放棄ってふざけてんだろ!?」
焔「いやそもそもあいつがいなかったら作戦絶対成功しないとか、作戦成功しなくて私一人の迎撃なっても負けるとか誰も決めてないでしょ。むしろそれ遠回しに私もディスってるよ?」
海「うっ…そういうつもりじゃなかったんだけどさぁ…」
焔「だろうね!」
(…私は前代未聞なほどに高い適性を持った巫女として小さい頃から多くの人と触れ合ってきた。だからこそなんとなくわかる…)
焔「…月夜珍しく静かだよね。どした?そんなショックだった?」
月夜「ん!?いや全然!大丈夫!」
海「お、ならよかったよかった。」
(…あれは、本心じゃない。)
ーーー11月4日、神樹館中等部ーーー
ーーー焔sideーーー
焔「おっはよー!」
海「焔おはよ。…あれ、月夜は?お前と来るって聞いてたけど。」
焔「え?私は海と来るって聞いたわよ?」
先生「みなさんおはようございます。」
焔「あ、先生。月夜からなんか連絡来てます?」
先生「え?私は「今日から何週間か休みまーす!詳しくは海か焔に聞いてください!」と…」
焔「…まさか、ねぇ?」
海「…ああ、さすがにあいつでもそれはないだろ。」
焔「そうよね。そんなことないはず、うん。」
海「ああ、ないない…」
焔「…」
海・焔「「絶対あいつ讃州市行ったよね!?」」
ーーー放課後、讃州中学ーーー
ーーー和斗sideーーー
(んーと、今日は…)
和斗「空手だな。さっさと行くとするか。」
トントン
和斗「ん?誰d「どーもどーも!!」うおっ!?」
振り向いたそこには昨日の巫女がいた。
和斗「なんでお前がいんだよ!?来ないんじゃなかったのか!?」
月夜「焔が言ってたのは神官でしょ?私巫女だし対象外だねっ!!」
和斗「いやそうだがなぁ!?てか来たところで俺は協力しねえぞ?」
月夜「なん…だって…」
和斗「逆にしてもらえると思ってたのかよ!?」
月夜「YES!I AM!!まあそれよりどこ行くのー?」
和斗「はあ!?お前に言う必要なくね!?」
月夜「だって人類最強って言われてんでしょ?なにやってんのか見てみたくない?」
和斗「…まあいいけどよぉ…」
月夜「マジで!?やったー!!そうと決まれば全速前進!!」
和斗「お、おう…」
(いや調子狂うな…何が目的なんだ…)
ーーー11月10日、ホームルームーーー
(はあー…これで五日連続…別に協力を求めてくるわけでもない…わけがわからねえぞ…)
あれから月夜は毎日のように現れていた。
先生「そうそう、今日は転校生がいます。」
(ん?転校生??んな唐突に?)
先生「どうぞー。」
月夜「はいどーも!上里月夜です!みんな、よろしく!!」
和斗「…はあああああああああ!?!?」
先生「あ、隣は和斗君、お願いします。」
和斗「はああああああ!?!?!?!?」
月夜「よろしくね、和斗♪」
ーーー休み時間ーーー
和斗「…で、何が目的だお前。」
月夜「え?私の勝手じゃない?」
和斗「そうだけどなぁ!?普通転校してこねえよ!?友達はどうすんだよ!?」
月夜「大丈夫大丈夫。1月にはこっちも準備しないといけないから戻らないといけないし。」
和斗「えぇ…」
(マジでわけがわからねえ…なんなんだこいつは…)
月夜「ってことで転校祝いで美味しいうどん屋連れてってね!無論そっちの奢りで!」
和斗「いやなんでそうなる!?そっちが勝手に来ただけだろ!?」
月夜「色々あげたんだけどなー。」
和斗「それはお前が無理やり押し付けてきただけで…」
月夜「でも受け取ったのは事実じゃん?」
和斗「うっ…」
月夜「ってことで、よろしくぅ!!」
ーーー12月31日21時、天王寺家ーーー
月夜「いやぁ、ついに夜があけるねぇ〜!」
和斗「そうだな…」
あれから約2ヶ月近く、すっかり俺と月夜はお互いの家に遊びに行く仲になっていた。
(自分でもビックリだぜ…いや、こいつのコミュ力が高すぎるんだろうが…)
月夜「…ねえ和斗。」
和斗「ん?なんだ?」
月夜「…協力拒む理由って?」
和斗「あ?前も言っただろ。そもs…」
月夜「だってあれ、嘘でしょ?この2ヶ月接してきたらわかるよ。あんたは自分よりも他人を優先する人だって。」
和斗「たかが2ヶ月だぞ?」
月夜「こう見えても巫女適性の高さは前代未聞でねー、小さい頃からいろんな人と触れ合ってるからなんとなくわかった。」
(…なんとなくでバレてちゃあざまあねえぜ…)
和斗「…先祖様からの言い伝えだ。」
月夜「…先祖様?」
和斗「ああ。天王寺十香。旧世紀の時代の人…いや、初代勇者だ_______。」
===旧世紀===
天王寺十香。
彼女は初代勇者であったそうだ。
武器は布都御魂剣と呼ばれる薙刀。
そこそこ大きな家系であったらしいが、両親はバーテックスの襲来で他界していたそうだ。
13歳にして家を引っ張っていくとともに御役目につくことになった十香さん。その唯一の気晴らしが…
十香『今日こそ勝たせてもらうわよ、C.シャドウ!!』
千景『それはこちらのセリフよ…T.シャイン。』
郡千景、十香さんのいとこだった。
千景さんも家庭や学校の環境が悪く、十香さんとのゲームが唯一のストレス発散だったらしい。
彼女もまた勇者に選ばれ、訓練などであまり遊ぶ暇はなくなったそうだが。
十香『ふぃー…勇者って大変ねぇ。千景。』
千景『そうね…でも、悪くはないわ。』
十香『あんたなら言うと思った。』
ーーー十香sideーーー
みんなでバーテックスを退けていた私達。
そこに立ち塞がったのは後に蠍座と命名される、大型バーテックスであった。
球子『生まれ変わったら…また…』
杏『今度はきっと…本当の姉妹に…』
そして…その蠍座によって、杏と球子が死亡。
友奈が酒呑童子の力をもって撃退するも、その反動で入院を余儀なくされた。
そして私もその次の、双子座の2体の融合体との戦いで…
十香『あんたらは…球子と杏を殺して…友奈を…若葉を…千景を…!!傷つけた!!絶対に…許してたまるもんかァァァァァァァァァァァァ!!!私に力を貸しなさい!!九千坊!!』
高位精霊の九千坊を身に宿し、戦い後に意識不明になってしまった。
…そして、意識を取り戻した頃には、時すでに遅しだった。
十香『…何、言ってるの若葉…そんなこと…』
若葉『嘘じゃない…千景は、私を庇って…死んだ。すまない…ッ!』
最初はとても理解できなかった。
多分理解したくなかった、と言った方がいいだろう。
私が意識不明になったあと、敵は数でゴリ押しする戦法に切り替えたらしい。
それにより若葉も千景も精霊の使用回数が増加、結果として千景が暴走し、神樹様に力を奪われた、とのことだった。
何よりも…許せなかったのが…
十香『別に若葉は悪くない…誰も悪くなんかない…それよりも、千景が勇者から除名って…!』
ひなた『…すいません。私達も反対したのですが…』
一般人への暴行未遂、精霊の悪用、若葉への攻撃。数々の原因が重なり、すでに千景は勇者から除名、遺体は彼女の実家へと引き渡されていた。
そんな遺体も、父親の失踪のせいで行方がわからなく。
勇者としての役目に人生を散々振り回されて、本人の意思とはいえその役目によって命を散らした彼女は、よりにもよってその役目に人生を否定された…
十香『…おのれ大社ぁぁぁ!』
若葉『動くんじゃない!!そんなボロボロの身体で何をするつもりだ!?』
十香『決まってるでしょ!?大社に殴り込みに行くのよ!!なんで…なんで勇者だった千景が勇者としての…この2年間を否定されなきゃいけないのよ!!』
ひなた『気持ちはわかります!でも冷静になってください!!そんなことをして千景さんんが喜ぶと!?』
十香『…そう、だけどさぁ…』
若葉『…みんな同じ気持ちだ。…ほんとうに、すまなかった…ッ!』
そして、最後の戦い。友奈は神樹様と同化、超大型バーテックスによって外の世界は火の海と化し、人類は奉火祭によって、天の神から壁の中の平穏を得た。
かりそめの平和。一般人は何も知ることはない。卑怯かもしれないけど、千景のような犠牲者が出るよりはマシだと思った。
…そして、私は決断を下すことにしたのだ。
若葉『…お前の勇者としての記録を消してほしいだと…?』
十香『そう。私が勇者じゃなかったことにするの。』
ひなた『なぜそんなことを…』
十香『…若葉もひなたも大社…今は大赦か。の改革よくやってくれてると思う。でも、それでも完全には変わらないと思う。むしろ私たちが死んだあと、さらに規模を拡大する気がする。
だから…天王寺家が大きいのは知ってるよね?そして私は当主。それを利用して四国に散らばる大家をまとめる。いずれかは吸収されるだろうけど…時間かせぎにはなるはず。』
若葉『なるほど…だが、それだけなら何も記録を消す必要は…』
十香『それはもう1つの理由。…ひなた、千景の大葉刈、持ってるよね?』
ひなた『…はい。千景さんの唯一と言える勇者であった証拠ですので。』
十香『大赦に残しておけば処分される危険があると思う…まとめあげたあと、私が死んだ時には権力は配下に分配するつもりなの。ただの一般民が…そんな大切なもの、持ってるとは思わないしょ?勇者の家系なら別として。』
若葉『…たしかにな。…頼んだ。』
十香『言われなくても。ちょくちょく同窓会しようね!』
ひなた『はい!もちろんです!』
そして、私は言った通り四国中の大家をまとめ、大赦に吸収されないよう色々と仕組んだ。
精霊の穢れの影響も多少あるんだろう。だけど、私は許せなかった。千景…彼女にした仕打ちを。だから…
ーーー今ーーー
ーーー月夜sideーーー
和斗「『大赦に協力するな。たとえ何があろうと。』俺もしぶしぶってわけじゃねえ。言われても仕方ないくらいのことだと思ってるし、現に俺に協力を求めてきた時もお前ら3人以外はとてもこっちのこと考えてるようなやつらじゃなかった。とまあこんな感じだ。助けてやりたい気持ちもあるが、御先祖様の…何より千景さんのこと考えるとな…」
(…郡千景…!?)
月夜「まさか、ねぇ…??」
和斗「ん?なんか心当たりあるのか?根本から消されてるって聞いてるが…」
月夜「いや、記録はないんだろうけど…ユウナさんの話によく出てくる人に似てるなって…」
和斗「…は?」
月夜『あ、そーだ!ユウナさんって友達いないんですか!?私にとっての焔や海みたいな!!』
ユウナ『え!?んーとね…あっちが思ってるかはわかんないけど…』
月夜「ってな感じでね…」
和斗「…そうだったのか…じゃあお前の目的って…」
月夜「イエース!気になったことはとことん追求する系女子だから!」
(…あ、そうだ!!)
月夜「…千景さんの大葉刈、あるんだよね?」
和斗「ん?ああ。勇者服と一緒にな。」
月夜「うちに勇者関係の博物館あるんだけど、1度入れたら取り出せないシステムなのよ。そこに入れれば…!」
和斗「んなとこが!?…いやでもそっちの願い断ってんのにそれは…」
月夜「え?そんなこと気にしてるの?別にいいよ?私自身がそう思うし何より…「友達」の願いでしょ?聞かないわけないじゃん!」
和斗「…する。」
月夜「え?」
和斗「協力するよ。殲滅作戦。」
(嘘…)
月夜「なんで…!?十香さんの言い伝え…」
和斗「速攻で受け売りしてあれだけどまあ…御先祖様より友達の願い、だろ?それに千景さんのが展示されれば少しは報われるだろーし。」
月夜「やったぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
ーーー1月4日、訓練場ーーー
ーーー焔sideーーー
焔「1!2!3!4!」
候補生『5!6!7!8!』
焔「ふぅ…さ、一旦休憩としましょ!」
候補生『はーい!』
月夜が転校してから2ヶ月…彼女は未だに帰ってきていなかった。
(何考えてんのかねぇ…まあ絶対考えあってなんだろうけど。)
焔「もうそろそろ姿見せてくれないと、さすがの私でもつらいよ?」
月夜「え?なにそれ嬉しい!」
焔「当たり前でしょ〜親友なんだs…って月夜!?」
月夜「たっだいま!!」
焔「あんたねぇ!!大晦日も正月も帰ってこないてどういう考えよ!?」
月夜「めんごめんご〜。そのかわり、きちっと仕事は果たしたぜ?」
和斗「そういうこった。」
(なっ!?)
焔「和斗!?どうしてここに!?」
和斗「そりゃ作戦加わるからな。俺の神器どれだ?」
(嘘…あんな反対してたのに…)
月夜「まあ詳しい説明は訓練後にでも、ね?とりあえずレッツ特訓!」
焔「…はいはい。」
(ほんと…いつも月夜はすごいことやってのけるわね…)
そして…
ーーー2月24日ーーー
大神官「これより、星魔殲滅作戦を、開始します。」
決戦が、始まる。
ーーー月夜sideーーー
大神官「では、月夜様。」
月夜「様付けいらない!って言っても無駄かぁ。ま、行くか!」
神樹様の結界を、超える。
その瞬間に景色は塗り変わる。
何気ないキレイな景色から、地獄絵図を具現化したかのような炎の海へ。
(これが…世界の真の姿…聞いてはいたけど相当ひどいねこりゃ…)
焔「あれが星屑?めっちゃいるじゃん!?」
和斗「で、あのでかそうなのが星座級ね。だいぶでけえな。」
海『油断するなよ。気づき次第襲いかかってくるからな。』
焔は銃撃隊の隊長、和斗は刀と篭手、盾で前衛、海は指揮系統担当。
私が神樹様の力を束ねる間、バーテックスたちを引き受けてくれる。
(…さて。)
月夜「私はそろそろチャージ始める。みんな、しっかり守ってよ!!」
焔「任せろっての!!」
和斗「もちろんだ!!」
ーーー神の間ーーー
月夜「…なにこれぇ?」
神樹様の力を束ねるための神の間。
そこには何百もの糸が複雑に絡み合っていたのだ。
ユウナ「それが神様の力だよ!!」
月夜「あ、ユウナさん!」
ユウナ「って言ってもすぐいなくなるけどね…
月夜ちゃんにやってほしいことはその絡まった糸をほどいて、まとめてひとつの太い手綱にしてほしいの!そしてそれを引くことで神樹砲は発動できる!!」
月夜「あ、そんな感じなんですね…」
(ひたすらなにか念じるのかと思ってた…よっしゃ!)
月夜「…了解です!やってやろうじゃないのぉ!!」
ーーー和斗sideーーー
(言われてないけどなんとなくわかるな…月夜の周りに神聖な感じが出てる。)
焔「お、月夜入ったね。」
和斗「やっぱか。俺のとこ来てる時はそんな潜ってなかったみたいだからあんまわかんなかったぜ。」
銃撃隊A「あの白いヤツ、来ますよー!!」
(予想以上に気づくのが早かったな…)
和斗「さぁて、異形ども!!俺が相手だ!!」
焔「私達も行くよ!!銃撃開始!!」
銃撃隊『はい!!!』
和斗「オラあぁああああ!!!!」ズバババ
焔「右と左から来るよー!狙い撃て!!」ドパンドパン
今のところ、俺達は優勢だった。
やはり訓練がよかったのだろう、焔たちの射撃がかなり正確で助かる。
和斗「このまま行くz…なんじゃありゃ!?」
遠くから星屑よりもはるかに大きいバーテックスが迫ってきていたのだ。
海『あれが星座級だ!確認できるのは三体!左から水瓶座、射手座、魚座!!』
(あれがか!!大きさが桁違いだな…)
先手は、あちらからだった。
シュババババババババババババババ
和斗「うおっ!?」ガキキキキキキ
突如として射手座から発射された大量の針を盾で防ぎきる。
(この距離からでもやってこれんのかよ!?)
和斗「…焔!大丈夫か!?」
焔「あんたねぇ!!はじく方向考えなさいっての!危うく当たるとこだったじゃない!!」
和斗「はあ?こっちだって急だったんだからそこまで求めんなよ!!」
焔「なんですってー!?いいから早く倒しなさいよ!!」
和斗「いや届かねえっての!遠距離はお前らの仕事だろーが!任すぞ!!」
焔「随分と上からね!任されたわ!!」
(なんだかんだ言って二言でOKしてくれんのがお前のいいとこだよ!!じゃあ俺は残り2匹やらねえとな!!)
ブポポポポポ
和斗「オラよ!!」
水瓶座の水球を盾で防ぎ、そのまま接近する。
グゴゴゴゴゴゴ
(…下か!)
和斗「フンッ!!」シュバッ
下から現れた魚座を間一髪かわす。
そしてそのまま魚座を足場にして飛躍し…
和斗「大人しくあの世に行けっての!!」ズバババババババ
水瓶座に斬撃を食らわせ、撃墜する。
ブオオオオオオオ
和斗「ブオオオってお前はクジラかよっての!!」ボゴォォォォォォオンズガァァァァァァァン
さらに魚座に篭手でダメージを与えた上、刀で一刀両断にする。
和斗「さて、2丁上がりっと!海、敵は?」
海『ちょうどお前に向かってさらに三体行ってんぞー。さそり座にてんびん座にかに座!』
和斗「りょーかいっと。何体来ようとぶっ倒してやんよ!!」
ーーー焔sideーーー
焔「第三部隊、撃て!!」
第三部隊「はい!!」ドガガガガガガガ
焔「…ダメかぁ。」
現れた星座級、射手座。
同じ遠距離として私たちが対処していたが、どれも浅めの傷にしかならず、すぐ回復されるのであった。
焔「うーん…海!どうしたらいい!?」
海『俺に頼んのかよ!!』
焔「当たり前でしょ!!なんのためにあんたいると思ってんの!」
海『あのなぁ…まあいいか。別に効いてないわけじゃないだろ。傷が浅いだけで。ならやるべきことはひとつしかねえよな?』
焔「…ハッキリ言え!!」
海『はあ!?こちとら和斗のサポートもしなきゃなんねえんだよ!!十分なヒントは出したわ!!』
(ケチりよって…浅いだけで効いてないわけじゃない、か…)
焔「あーわかった!!全部隊、一斉に連射よ!!」
銃撃隊「ええ!?」
焔「塵も積もれば山となる!たとえ一つ一つじゃ浅い傷でもそこに何度も何十回も攻撃を当てれば!!」
銃撃隊「な、なるほど…!!」
焔「わかってくれた!?じゃあ行くわよー!!撃て!!」
ドガガガガガガガズガガガガガガガキキキキキズシュシュシュシュシュシュ
ギイヤアアアア
(おっしゃきたァ!!)
焔「やったわね、みんな!!」
ワーワー
海『やんじゃねえか。てっきり分かってねえもんだと。』
焔「はあ!?じゃあなんでもっと言わなかったのよ!?これでやられてたらどうしてくれてんですかー!!」
海『うっさいなぁ。最終的に倒せたんだから結果オーライだ。』
(仕方なくそうしておいてやりますか…さて星屑を…)
その時だった。
グラララララララララララ
焔「うわっ!?何これ!?」
海『大丈夫か!?』
焔「大丈夫!!なにこれ地震!?そっちは!?」
海『こっちもめっちゃ揺れてる!!何が起こってんだ!?』
銃撃隊B「…何、あれ…」
(…ん?あれって一体…ってえ?)
海『おいおい…あんなのデータにねえぞ!?』
炎の海から、顔らしきものと4つの腕を持った超大型バーテックスが迫ってきていた。
ーーー和斗sideーーー
(おいおい…明らかにでかさが違くねえか!?)
和斗「海!あれが獅子座か!?」
海『いや、あんなのデータにはなかった!!獅子座っぽい部分はあるけどな…』
(…まさかじゃないよな?)
和斗「…合体したってのは?」
海『はあ!?んなわけ…って言いてえとこだがバーテックスは侵攻の度に力を増してるらしいからな…ありえる!!』
(マジ勘弁だなおい…)
キュイイイイイイイイイイン
和斗「焔!来るぞ!!」
焔「わかってらぁ!!」
そしてそれは撃たれる。
1つは何もまとわずに
1つは炎をまとい
1つは雷をまとい
1つは何もまとわないが尖って
和斗「ぐおっ!?」ガキキキキキ
そしてそれらをかわし、時には盾で防ぐ。
ボガァァァァン
(何もまとわないやつは爆発すんのかよ!?全部やべえじゃねえか!?)
焔「キャッ!!」
海『焔!?』
焔「あっぶな…何人か負傷したからそっち行かせるよ!!」
海『分かった!!無理すんなよ!?』
焔「無理しなきゃ世界終わるでしょーが!!」
(あっちは平常運転…とりあえずこれすぐ倒さねえとヤバすぎる!!…たしかバーテックスは強さに比例して硬さも変わるはず…)
和斗「焔!左上の腕を銃撃してくれ!!そこに少しでも傷つくりたい!!」
焔「ええ!?わかった!当たらないことを最優先にして左上の腕撃ってって!!」
銃撃隊「はい!!」
ガキキキキキキキ
銃撃隊の攻撃が左上の付け根にヒットし、鈍い音を立てる。一見無傷にも見えるが…
和斗「…微妙に残ってんな!!オォォォラよ!!」
ズガァァァァァァァン
わずかに見えた傷に渾身の斬撃が直撃。切断に成功する。
(よっしゃ!!)
だが…
和斗「この調子d…は?」
…壁に着地した時にはすでに腕は再生していた。
…それも、数を2つに増やして。
(切ったら増殖って…)
和斗「ヒドラかよ!?」
海『和斗!!』
和斗「なんだ!?今それどころじゃねえんだが!?」
海『今のでわかった!!おそらく敵は獅子座、牡羊座、乙女座、山羊座の融合体だ!!』
和斗「うわぁ…えっぐいチームだな!?」
近遠こなす万能の乙女座、地震などの範囲攻撃を得意とする山羊座、分裂し、雷を操る牡羊座、そして最強であり、世界をこんなにした元凶と言われてる獅子座。
和斗「やるっきゃねえか…援護頼むぞ!!焔、海!!」
焔「言われなくても!!」
海『微力だが任せろ!!』
まさにその時だった。
ビュウウウウン
超大型の腕があらぬ方向へと向かったのである。
和斗「一体どこ見てやが…」
(…待て、あの方向は!?)
ーーー月夜sideーーー
…ジュッ
(!?!?)
月夜「アッツ!?…何これ…急に熱くなった…?周りの温度が上がってるとか?…やり直しじゃんかー…」
神の力を束ねる作業、それはちょうど折り返し地点を迎えていた。
ぐっちゃぐちゃにからまってた糸をほどくことはできた、しかし目的はそこで終わりじゃなくそのバラバラにした糸を束ねてひとつの大きな糸にすることなのである。
それを始めたさなか、突如糸が熱を持ったのだ。
(外の影響?ほんとに何が…)
ボオオオオオオオオオオ
そして今度は凄まじい熱風が。
月夜「ッ!?今度はなn…え?」
気づくと神の間から引き戻されていた。
そして…巨大な腕が私に突き刺さらんと迫ってきていたのだ。
(嘘…死ぬの?私。…短い人生だったな…ごめん焔…1人で戦わせることになっちゃう…)
死を悟った。そして目を閉じた。痛みに歪んだ顔で死にたくなかったから。
グジュザザッ
…ただ、鋭い痛みが来ることはなかった。
来たとしたら軽く擦ったような痛み。
(…え?)
和斗「っっっっっあっぶねえ!!!大丈夫か!?」
月夜「和斗!?」
和斗「間一髪だ!!もうちょい下がってろ!!今海に戦車やら飛行機やら戦闘機やらともかく遮蔽物になりそうなの用意させてる!!いっ…」
月夜「う、うん!…って腕…」
…和斗の左腕は、根元から消え去っていた。
月夜「もしかして…私のせいd「ちげえわ!!」」
和斗「俺がミスっただけ!!この程度大した問題じゃねえよ!それよりも早く避難して神樹砲に集中しろ!!」
月夜「わ、わかったけど…!?」
ーーー和斗sideーーー
(とりあえず止血しねえと…敵が炎使いで助かったわ。)
ジュウウウウウウウウウウ
超大型の炎弾の残骸を腕の断面に押し付ける。
和斗「ッ…とりあえずこれでしばらくはよしだな…」
焔「ど!?こ!?が!?あんたほんとに大丈夫!?重症どころじゃないでしょそれ!?」
和斗「こいつほっといたら世界が重症じゃおさまらなくなるだろーが。やるっきゃねえんだよ!!」
海『…凶報だ。』
和斗「…どうした。」
海『…こいつの力が強すぎる。このままだと神樹砲を放っても死なずに残る可能性が高い。』
焔「…えーっと、つまり?」
海『世界滅亡待ったナシ。』
焔「デデドン!!」
(いよいよ引けなくなったな…)
和斗「とりあえず腕全部切って回復までの一瞬を穿ってもらうか…」
焔「なんで淡々と作戦考えてんのよ…もういいわ、本人のあんたがそこまで言うならサポートする。ただヤバいって思ったら即引っ込めさせるからね!?」
和斗「それでいいぞ。まあやれるならだけど」
焔「ムッキー!!銃撃隊メンツ総動員してすれるわ!!」
ーーー神の間、月夜sideーーー
…焦りが出ていた。
(違う、こうじゃない…急がないと和斗や焔が…!!あーもうこうでもない!)
圧倒的力を持った超大型、そしてなくなった和斗の左腕。
その2つの事実がひたすらに私から冷静さを奪っていく。
「…なんで…こんな時に限って上手くいかないのよ…!!なんで…!!」
(このままじゃ…このままじゃ…!!)
月夜「…一体…どうしたらいいのよ…」
心が折れかけた。その時だった。
???「…どうすればいいか?答えは1つしかないわ。信じることよ。」
月夜「…へ?」
目の前に、黒髪の女性がいた。
月夜「だ、誰ですか…?」
???「名前は…そうね。C.シャドウとでも名乗っときましょうか。…それであなたはどうすればいいかって言ったわよね。その答えは1つしかない。ずばり信じることよ。」
月夜「…ど、どういうことです…?というか今それどころじゃ…!!」
ハッと神樹砲のことを思い出し、作業に戻ろうとする。
C.シャドウ「…そんな錯乱状態じゃできることもできないわ。よく聞きなさい。…あなたは、とてつもなく大きなものを背負ってるのよ。」
(とてつもなく大きなもの…?)
月夜「そりゃ世界の命運握ってm「それだけじゃないわ。」え?」
C.シャドウ「…もちろんそれもある、でもあなたが背負ってるものは他にもあるわ。それは「歴代巫女の無念」よ。」
月夜「歴代巫女の…無念…?」
C.シャドウ「ええ。巫女はいつの時代も神託を受け取り、勇者のサポートに回っていた。
…神託を伝えたあとは、ひたすら無事に帰ってくることを願うことしかできなかったのよ。
自分が戦えれば救えた勇者が…友達がいたかもしれない。それはいつの時代の巫女も、感じてきたことよ。
でも、あなたは違う。今あなたは神樹砲によって友達を助けることができる。たとえ戦い方が違えども、今あなたは勇者たちとともに戦えてるのよ。…たしかに敵は強大よ。でも、あなたの友達なら、絶対に耐え忍んでくれる。
だから信じなさい。己の力を、そして友達の力を!」
(…友達の…力…)
月夜『私はそろそろチャージ始める。みんな、しっかり守ってよ!!』
焔『任せろっての!!』
和斗『もちろんだ!!』
(焔…海…和斗…待ってて。すぐ完成させてみせるから。)
…シュバババババババババババババババ
ジュウウウウウウウウウウ
熱くても関係ない、ものすごいスピードで糸を束ねていく。
C.シャドウ「…ゾーンに入ったわね。…フッ、あの時、友達を信じきれなかった私が信じることの大切さを説くなんて…奇妙なこともあるもんね。」
ーーー和斗sideーーー
和斗「くっ!!」ズバッ
ドゴゴゴゴゴォォォォオォォン
神樹砲ですら余波では倒しきれないという超大型。
必死に倒そうとはしてるものの、圧倒的に数が足りないのである。
いくら腕を切ってもすぐに再生される。
すでにやつの腕は12本、徐々に負傷で減っていってる銃撃隊では同時に傷をつけるなど不可能に近かった。
焔「どうするのよ和斗!!これ同時破壊なんてやれる!?」
和斗「ぶっちゃけキツイ!!でもやるしかねえだろ!?」
海『それくらいしか弱点がねえ…どうすりゃいいんだこれは…』
その時だった。
ギュウウウウウウウウウウウウウウウウ
焔「んん!?何この音!?もしかしてもっとヤバいの来る!?」
海『…いや、違う!!神樹砲の装填の速度が跳ね上がった!!この調子なら5分で貯まるぞ!?』
焔「それヤバくない!?本来ならめっちゃ嬉しいことだけどさ!?」
(…急に?…あいつ、あの調子なら絶対俺の事引きずってた…それが急に早くなったってことは…)
和斗「…海!ともかく人を集めてくれ!!焔!人が集まったらある遠距離系の神器でまとめて左側の腕を撃て!!」
海『はあ!?』
焔「わかったけどなんで左側だけ!?」
和斗「…よく考えてみろ。あいつがガードするタイミングを。
…連続攻撃だ。片方の腕を増やしたあとにその方をさらに攻撃しようとするとあいつは反対の腕でガードしてくる。…バランスを取ってんだよ!!
一斉の攻撃で左の6つの腕全てに傷をつけ、そこを俺がぶった斬る!!そうすりゃあ左は12、右は6!確実にバランスを崩す!…それも神樹砲の発射口になぁ!!」
海『神樹砲を直接ぶつけるつもりか!?直接ならやれるなんて保証は…ねえがやるか!!』
焔「なーる!!全隊!銃撃用意!!!!」
(月夜…お前が俺たちを信じてくれてるなら…俺達はそれに応えるのが仕事だもんな!!)
和斗「うぉぉおおおおお!!!!」
超大型へと攻撃をかわしながら突っ込む。
和斗「どらぁ!!」
そして飛んできた右腕の攻撃を盾を使って弾き飛ばす。
焔「今よ!!全員一斉射撃ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ
そうして剥き出しになった左腕の各所に射撃が的中。
(ここを逃せば…次はない!!)
和斗「俺の人生で積み上げた剣術の数々…受けてみやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
ズババババババババババババババババババババババババババズガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン
左の全ての腕を切り落とす。
そうして生えてきた腕は無論2倍。
超大型は大きくバランスを崩す。
(…ギリ足りねえか!!)
しかし、神樹砲が直接ぶつけられる位置のギリギリで止まる。
(なら…もう一押しをしてやんよ!!)
壁から大幅に跳躍をするため、超大型から離れようとする。
…しかし
ザシュッ
和斗「っっっっ!?!?」
(足が…!?しまった!?)
抗おうととんできた右腕の1つに、右足の膝より下が持っていかれる。
(…これじゃ跳躍力が足りねえ…!!)
和斗「…でもなぁ!!俺は!諦めねえ!!そうだろ!!焔、海!!」
ーーー焔sideーーー
ザシュッ
(あいつ…足が!?)
和斗の足が超大型に切り落とされる。
(超大型も沈みきってない…もう1回?いやあそこまで下がってたら和斗でも無理…ならどうすりゃ…)
和斗「…でもなぁ!!俺は!諦めねえ!!そうだろ!!焔、海!!」
(和斗…何か作戦があるってことなのね。…何だ…急がないと…!!)
ーー1回思考をリセットして別ゲーで考えタマえ。そうだ!サッカーだとしよう!!ボールはゴール目前、そしてキーパーが取ろうとしてたらどうする!?ーー
(…そういうことか!!)
ーーお、わかったようだな!!じゃあ行きタマえ!!ーー
ーーー海sideーーー
(ヤバいな…)
和斗渾身の作戦はたしかに成功した。しかし超大型は神樹砲の発射口目前で傾きを止め、これ以上傾けれない状況に。
加えて神樹砲装填まであと30秒しかない。
(ここまで来て手詰まりだっていうのかよ…?)
和斗『…でもなぁ!!俺は!諦めねえ!!そうだろ!!焔、海!!』
…そう、聞こえた。確かに聞こえた。
(…あいつは諦めてなんかいねえんだ…なら俺はどうすりゃいい!?あいつは俺が何をすることを信じてる!?)
ーー阿修羅極道 って小説、読んだことありますよね。最後の勝てない強敵相手に、主人公は何をしましたっけ?ーー
(…あいつの身体能力なら、これをやる!いや、これしかないはず!!なら俺は!!)
ーーほんとに優秀ですね。最後まで頑張ってください。ーー
ーーー和斗sideーーー
そう、言い放ち超大型から跳躍。
宙を舞う。
(…信じてるぜ。お前らなら…)
海、焔「うぉぉおおおおお!!!!」ドドド
和斗「必ず来てくれるってな!!」
2人が両手を伸ばし、そこに着地する。
膝の曲げ方が、2人の手の動かし方が、スピードを落とさないための動きと完璧にマッチする。
そして…
焔、海「行っけええぇぇええええ!!!!」
跳躍する。
高く、超大型よりも高く。
刀をぶん投げ、超大型に刺す。
さらに盾に持ち替え、落下中に今までの人生で積み上げた全ての経験を活かし、速度を上げる。
和斗「バーテックス…たしかにお前らは強いよ。人間が勝てることなんてほとんどねえだろうな。
…だが、それでも一つだけ勝っていると断言できる。
それは!仲間を…友達を!!信じることだ!!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン
盾を初めとしての俺の体が超大型に刺さった刀にぶつかる。
凝縮された衝撃は刀を介し、超大型へと流れる。
…大型が沈む。神樹砲の発射口へと。
…そして。
ーーー月夜sideーーー
…糸を、神樹砲の発射糸を完成させる。
月夜「これでぇぇぇ!!!終わりだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
どんなに熱くても。痛くても。これで終わり。
私はその糸を、引いた。
そして、世界は
光に包まれた。
ーーー和斗sideーーー
和斗「…あ、やべえ。」
神樹砲が輝く。
和斗「帰りのこと全く考えてなかった。こりゃ死んだな…
…悔いは、一つだけあるか。」
(…焔、海…そして月夜。)
その光が、世界へと…
(…お前らと、もっと過ごしたかった。)
放たれる
ーーやることはやってるし若葉とかならこれで許すんだろうけどね。あいにく私は1人だけ復讐に走った外道だから。…自分たちが掴み取った幸せ、謳歌しやがりなさいーー
(…?)
そう、聞こえた。
…そして、誰かに吹き飛ばされた。
ーーー??月??日ーーー
(…う、うん…?ここは…?)
光に目が慣れない。
(ベッド…点滴…病院か?たしか…)
意識が少しずつ覚醒し、状況を整理しようとするまさにその時。
月夜「…和斗!!」ガバッ
和斗「うお!?月夜!?」
月夜「よかった…もう目覚めないのかと…!!」
和斗「んな大袈裟な…もしかして俺そんな寝てたか?」
月夜「バッチシ。」
和斗「マジかよ…心配かけたな…」
手を動かそうとして、左腕がないことを思い出す。
(そういやなくなってたな…こりゃもう大会は無理だな。)
焔「あ、和斗!!起きたの!?」
海「全然元気そうだなおい…かなりの重症だったんだぞ?」
和斗「二人とも来てくれてたのか。見ての通りだ。…ところでほんとに俺どんくらい寝てた?月夜が過去例に見ないほど泣いてるから聞き出せなくてな。」
焔「今日は3月31日。この意味、わかるかしら?」
(…えーっと?たしか作戦が2月24日だから…)
和斗「…1ヶ月以上寝てたのかよ俺。」
海「そうだ。ほんとに心配したんだからな?
左腕と右足欠損にそこの傷による出血多量、おまけに神樹砲の余波で四肢…っていっても右腕と左足しかないがの骨折、あっちこっちの筋肉の損傷、体中の打撲。ぶっちゃけ生きてるのが奇跡レベルだ。
…まあもう結構治ってはいるだろうがな。」
(想像を遥かに超える重症だわ我ながら…
…あの時の誰かがいなきゃ死んでたな…誰だったんだあれ…)
月夜「ともかくほんとに…ほんとによかったよぉぉぉぉ!!うぅ…グス…」
焔「月夜一日と欠かさずに看病してたのよ?」
和斗「は!?お前学校どうしたんだよ!?てかなんで!?」
月夜「だって私のせいじゃんその重症は…私がもっとしっかりしてればぁぁぁぁぁ…」
海「あ、また泣かせたな?」
和斗「ええ!?今のはノーカンだろ!?てか月夜も泣くなって…ちょいと不便なっただけだしケガだって俺のミスだわ…」
月夜「うぅ…うああああん…」
焔「もう…月夜もいい加減泣きやも?みんなでパーリーしないと!」
和斗「え?もしかしなくてもここでか?」
海「あたり前田のクラッカー。」
和斗「えぇ…」
月夜「パーリー…する…グスッ」
ーーー287年3月12日、焔sideーーー
…和斗から連絡があった。月夜が手術だと。
2歳になった風に樹を任せ、海と急いで来た。
(ほんとはどっちか残るべきだったんだろうけど…)
風『わたしちゃんとできるよ!!だからおかーたんとおとーたんはいってきて!!でもすぐかえてきてね!!』
樹『あーうー』
風『なにー?おしめとりかえてほしいのかなー?まかせんしゃい!!』
病室にたどり着いて扉を開ける。
焔「はあ…はあ…和斗…」
海「…月夜は…?」
和斗「…うう…」
(まさか…嘘よね?)
月夜は…眠っていた。安らかに。
海「…嘘、だろ…?」
焔「嘘って言ってよ…月夜…!!」
現実を受け止めれず、月夜の身体を揺らそうとする。
まさにその時。
月夜「あーよくねt」ゴンッ
月夜、焔「いったぁ!?!?」
海「月夜!?!?」
(…って!?)
焔「…何も生き返らなくても…」
月夜「え、何言ってるの。最初から死んでないけど。」
和斗「…成功、したよ…うう…」
(…かーずーとー…)
焔、海「紛らわしいわ!!!!!!!!心配して損したじゃんか(だろうが)!?!?」
月夜「あーね…和斗君に言いなさいよー。いい加減泣きやもってばー。」
焔「てかなんであんたはそんな平気でいられんのよ!?手術終わって間もないよね!?」
月夜「寝たら治った。」
焔「うそぉ!?」
海「…まあ月夜のやべえのは置いといて…成功したってことは…だよな?」
和斗「ああ。…ほれ。」
和斗の腕の中には…生まれたての命がいた。
(わぁお!?)
焔「可愛いーー!!樹と風の次に!!」
月夜「はあ!?たしかに風ちゃんも樹ちゃんも可愛かったけどこの子の方が上だし!?」
焔「はあ!?うちの子二人にまさるものはないわよ!?」
海「変な張り合いすんなし。名前とかってもう決まってたりすんのか?」
和斗「それに関しては月夜が案あるって。」
海「てかお前いつのまに泣き止んでたんだよ…」
和斗「月夜、頼む。」
月夜「オウイエ!!ズバリこれよ!!」
「千広」と書かれた紙を取り出し、バンバンと叩く。
3人「…」
月夜「…ん?変だった?」
3人「…変だ!!」
月夜「ええ!?」
和斗「ま、まあ意味聞くか…」
月夜「うーんとね…輪を広めてほしいのよ。友達との…絆の輪を。千人もの大人数へ、友情の輪を広めてほしいという願いを込めて「千広」どう?あ、フリガナはちひろね。」
焔「うーん…意味はいいと思うけど…」
海「さすがにそれはなんか違うと思うぞ…」
月夜「マジ?じゃあ別案考えるしかないかねぇ…」
和斗「…いっそひらがなにするのは?たしか先祖もひなたってひらがなだったはずだが。」
焔「お、それならいいんじゃない?」
海「たしかに違和感ねえな。月夜はどうしたいんだ?」
月夜「…いいねぇ!!正直私だけので決まっちゃっていいのかなって思ってたし。「ちひろ」で決まり!!」
焔「おめでたいね!しっかし可愛い…」
ちひろ『きゃっきゃ!!』
海「お、笑った。」
和斗「…俺この笑顔だけで死にそうなんだけど。」
月夜「親バカになる予感ー。」
焔「あんたが言えることじゃないと思うけどね。」
海「たしかに。むしろお前の方が可能性高ぇよ。」
月夜「なんだって!?こうなりゃ維持でも可愛がらん!!…ごめん無理!!」
海「秒殺だな。」
焔「秒殺ねぇ。」
和斗「ちひろ、これからよろしくな。」
月夜「…ようこそ、上里家へ。」
〜外伝1 星魔殲滅作戦 fin