登場人物紹介
・犬吠埼焔
風、樹の母。
家事万能、女性らしさ満点のお母さん。
大赦務めでそこそこ地位は高い。
元土居家の分家。
・犬吠埼海
風、樹の父。
そこまで喋る方ではないが根は優しい。
大赦務めでそこそこ地位は高い。
伊予島家の分家。
・上里月夜
ちひろの母。
今は大赦関係にあまり関わらずにちひろ、和斗との暮らしを優先中。
・上里和斗
ちひろの父。
元々あまり大赦とは関わらず、今は春信の指導を担当。
・犬吠埼風
犬吠埼家の長女。
姉御肌で、女子力好き。
・犬吠埼樹
犬吠埼家の次女。
控えめで、お姉ちゃんっ子。
・乃木園子
現勇者の1人。
ーーー神世紀298年、10月9日ーーー
ーーー焔sideーーー
焔「たっだいまー!!樹、風!ちゃんと帰ってきてるかい?」
樹「うん!私もお姉t…」
風「いーませーん!!」
(…ほほう?)
焔「となるとこの机から出てるお尻は何かな?」
風「ギクゥ!?」
焔「ほれほれ」ツンツン
風「くっ…アハハハハハハ!!!嘘ですごめんなさーい!!だからツンツンするのやめてー!!」
焔「だが断る!嘘ついてたお仕置きだぁ!!」
風「アハハハハ!!ちょー!くすぐったいってー!!」
樹「あわわわ…お母さんもお姉ちゃんも落ち着いてよぉ…私もうお腹ぺこぺこなのにぃ…」
海「…焔、風?」
焔、風「イッ!?」
海「帰っきてそうそう戯れるのはいいが、先にご飯作ってからな?風も樹に勉強教える約束どうしたんだ。」
焔「へーい…」
風「あ、そうだった!!ごめんね樹…」
樹「いいよ別に…でここなんだけど…」
私は犬吠埼焔、大赦務めのサラリーウーマン!
夫は同じく大赦務めの犬吠埼海、さっきのを見ればわかるけどめっちゃしっかりしてる。
娘は二人いて、風は私似で活発的かつ姉御肌。
樹は少し引っ込み思案なとこがあるけど優しくていい子。
これが犬吠埼家。私の何よりも大事な幸せ。
ーーー夕食中ーーー
風「…ってことなよ!食べることは女子力繋がるわよね!?お母さん!」
焔「あったりまえよ!食量は女子力に直結ス。たらふく食べるのだァ!!」
風「はーい!!」
樹「あーさらに盛り付けないでー!私もうおなかいっぱいなるのに…」
海「2人は食いすぎだし別に気にすることはないけどさすがにもうちょい食った方がいいと思うぞ?樹。」
樹「お父さんが言うなら…」
風「ちょ、樹!?何気に傷つくわよ!?」
焔「おのれ…海許すまじ。」
海「事実を言ったまでだ。」
焔「それを言っちゃあおしまいなんですけど!?」
(…あ、そういや。)
焔「風、樹、明日は留守にするからね。」
樹「え?なんで?1日中?」
焔「そうそう。ちょっと重大行事の担当に当てはまってね…」
海「大橋市まで行かなきゃ行けねえんだよな。明後日には帰ってくるさ。だから風、家事頼めるか?」
風「お母さんの女子力を受け継ぎし私に任せなさい!」
焔「お、いいね〜その意気よ!!」
風「で行事かぁ…母さんと父さんってことは大赦絡みでしょ?明日なんかあったっけ?」
樹「…あ!祝樹祭!!」
海「お!?樹知ってたのか?」
樹「偶然テレビで見たから…」
風「さっすが樹!!」
焔「二人とも将来が有望ですなぁ!」
ーーー10月11日、大橋ーーー
ーーー海sideーーー
祝樹祭、それは1年で唯一、大橋に人が踏み込む日。
殺人ウイルスの溢れる(建前)大地から安全な四国へと生き延びさせてくれた神樹様へ、その架け橋となった大橋で感謝をする儀式。
今はもう夕方。
一通りのことは終わり、人々は神樹様に感謝しながら数少ない西暦からの遺産である大橋を堪能している。
海「…見方変わるよな。真実知ってると。」
焔「…そうねぇ。ここで勇者達は戦い…命を落としてきたもんね…最近だと銀ちゃん…」
海「…つらいだろうな。4人とも仲良さそうだったし…」
焔「ちひろちゃん…前話した時あんな楽しそうに話してたもんね…」
海「…勇者システム改良されたんだっけか?死なないように。」
焔「そうらしいね。私も担当外だから詳しくは知らないけどさ。」
海「…これ以上、命を失う勇者が現れないことを祈る。怪我も込で。」
焔「…和人でもあれだしね。…なんかしんみりしすぎ!!せっかく選ばれたんだし少しは見てこ!?」
海「お前なぁ…いいけどよ。」
焔「やったね!さあ奥へGOG…」
カチッ
カチッ
ギギギギギギ
(ん?何だこの音…)
焔「なんか変な音しない?」
グジュグジュグジュ
海「俺もだ。一体なんだ…!?」
ジジジジジジ
焔「…とりあえず連絡しないと。念を入れて一般人避難させn…」
ジジ…ボガァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!
次の瞬間、あらゆる方向から凄まじい熱と風が襲った。
ーーー焔sideーーー
焔「…は?」
何が起こったかがわからなかった。突如の爆音、続いて熱風。
それらが晴れる頃には…大橋はあちこちが燃え、崩れていっていた。
海「…なんだよ、これ…一体何が…」
月夜『焔!?焔!?返事して!?』
(あ、連絡してたんだった!?)
焔「もしもし!?突然大橋のあっちこっちで爆発が!!」
月夜『えっ!?…ついさっき大規模な襲来が確認されたの…まさか…』
(…そういうことか!!)
焔「海!!」
海「言いてえことはわかる!!フィードバックだろ!?やべえな…」
月夜『ほんとなら2人にすぐに避難してって言いたいんだけど…』
焔「ん?何かやってほしいことが?」
月夜『…神樹様が力を消費しすぎたせいで、勇者の2人が大橋に取り残されてる。』
海「…嘘だろ?」
焔「そんな…時間が惜しいわね。月夜!?切るよ!?」
月夜『うん!!お願い…!!私も和人もすぐ向かうから…!』
焔「任せなさいって!!私を誰だっと思ってんの!」ブチッ
海「状況が一変したな…一般人避難させながら行くぞ。」
焔「言われなくてもわかってらぁ!行くよ!!」
ーーー大橋最奥ーーー
焔「おーい!!園子ちゃーん!」
海「鷲尾さーん!どこだー!!いたら返事しろー!!」
一般人を避難させつつ奥へと進み、いよいよ海が見えてきていた。
(途中からもう落ちてる…まさか巻き込まれていないよね…!?)
海「…おい!あそこ!!」
焔「…ほんとだ!!」
橋の端っこ、ギリギリの部分で横たわる3人を救出する。
(…3人?勇者は銀ちゃんがいない以上2人のはずだけど…しかもこんな子供…)
海「一般人か…?親がいないとなると…」
焔「…そういうことね…とりあえず3人とも大丈夫!?意識あるなら返事して!?」
園子「…ん、んん…」
焔「園子ちゃん!!私だよ!?分かる!?前チラッとあった焔!!」
園子「…焔…さん…?私…やったよ…守ったよ…世界のこと…わっしーのこと…もう…いつも通りは暮らせないけど…」
焔「え?それってどういう…」
海「…止まってる。心臓が止まってる。」
(…え?)
焔「心臓が…!?そしたらなんで生きて…」
その時、はっと気づく。
そう、勇者システムのアップデート。
こんなにもの大規模なフィードバックが出る戦闘だ。
凄まじい数の敵が来たに違いない。
ならなぜ世界は無事だったのだろうか。
…もし、アプデによって代償ありの強化が加えられてたとしたら?
焔「…海。」
海「…その顔、似たようなこと考えてそうだな…」
焔「…真偽はあとからよね。今は崩れる前に避難しないと。園子ちゃん、ありがとう。あとは休んで。」
園子「…はい…」
海「…俺が他の2人を持つ。お前は園子ちゃんを頼んだ。」
焔「OK。じゃあ急g…」
園子ちゃんを背負って立ち上がる。
…その時、遠くから白い物体が向かってきているのが見えた。
白くて、丸っこくて、口だけしかない異形。
海「…冗談キツすぎだろ…
…逃げるぞ!!」
焔「ええ!!」
月夜『…神樹様が力を消費しすぎたせいで…』
これは、複数に影響を与えていたんだ。
結界が緩んで、バーテックスが300年ぶりに現実世界に顕現した瞬間であった。
焔「うおおお!?!?」
星屑「ギイヤアアアア!!!!」ドガン
海「殺る気満々!さすが世界の人口を1割以下にしただけあるな!?」
焔「そういうお世辞言ってる場合じゃなくない!?」
海「お世辞ではないだろ!?」
ドカンドカンドガガガガガガガン
迫り来る大量の星屑。
ただの知能のない雑魚と見れば和人に特訓つけられてた私達からは楽勝である。
しかし、これは神の使い。
神器がなければダメージなど入りはしない。
もし入れば人類はこんな狭い大地に逃げ込まざるを得なくはなってないだろう。
焔「どうする!?増えるばかりよこれ!?」
海「どうも何もねえよ!!ただ逃げるくらいしかできることはない!!遮蔽物もねえしな!!」
焔「だよねー!!でも3分の1は進んだよね!?」
海「多分な!!あとこれの2倍分!!」
焔「なんか行ける気がしてきたわ!!」
その時だった。
ボゴッ
焔「…へ?」
前からの衝撃、続いて鈍い痛み。
後ろに吹き飛ばされる。
海「焔…ガハッ!?」ボゴッ
(な…にが…)
前を見るとそこには星屑が。
(…はは…そっか…そういや別に後ろからだけなんて限らないわよね…盲点だったわ…)
挟み撃ち。今の体当たりだけでもすでに体は動かなく、溢れんばかりといる星屑から逃れるのは不可能に近い。
…さらに、遠くに乙女座が見えた。
(…ごめんね園子ちゃん…逃がしてあげれなかった…風…樹…これからはご飯作ってあげれないわ…)
ーーー海sideーーー
海「か…は…」
(…ここで…朽ちるのか…思えば全然、ダメな人生だったな…殲滅作戦の時も1人だけ安全なところからサポートしかできず、今も戦い疲れた勇者たちすら逃がしてやれねえ…風や樹だって2人だけにしちまう…ほんとにダメだな、俺…)
ーーー焔・海sideーーー
諦め、目を閉じる。
焔(…これって…)
その時、映像が見えた。
海(風と…樹…だよな?)
少し成長した風と樹が。
焔(…勇者服…ってことは?)
大剣と糸を武器に。
海(…星座級があんなにいるのに…次々と…)
バーテックスと戦う姿が。
焔(…そっか…勇者に選ばれるんだ…)
海(…怖いはずだ…絶対…でも…)
焔(諦めてない…仲間と立派に戦ってる…)
海「…なら…」
焔「親である私たちが…」
海「こんなところで…」
焔「諦めるわけには…!!」
海「行かねえだろ…!!」
焔「たとえこの身が!!」
海「なくなろうと!!」
焔「この子達だけは…」
海「未来を生きる勇者たちだけは…」
焔・海「守る!!!!!」
力が溢れる。
自分のものではない…過去と、未来の力。
ーーその意気、たしかにタマが受け取った!!ーー
ーーたとえ選ばれてなくても、あなた達は今、誰よりも勇者です。なら…ーー
ーーお母さんとお父さんへの感謝を込めてーー
ーー私たちの力を!頑張って、母さん!父さん!!ーー
焔「…おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ズバァァァァァァァン
襲いくる星屑を切り裂く。その手には盾と大剣。
ギイヤアアアア!!!!
そして後ろから迫り来る敵を…
海「はあ!!」ズババババ
海がボーガンと、糸で切り裂く。
焔(…ご先祖さま。そして。)
海(風、樹。ありがとうな。)
焔・海「…命ある限り諦めない。私(俺)たちは!勇者になる!!!!」
ーーー焔sideーーー
焔「そぉぉぉぉぉい!!!」ズバァァァァァァァン
海「そこだッ!!」ズガガガガガ
ご先祖さま、そして未来の娘達から借り受けた勇者の力。
それにより星屑相手に善戦することができていた。
焔(とはいってもよくないけどね…)
海「どうする!!ここら辺でもすでに崩壊始まってんぞ!!」
焔「うーん…海!あんた糸で上手く3人運べるよね!?」
海「んあ!?たしかにできなくもないが…お前はどうするんだよ!?」
焔「ここで止める!!あれを見なさい!」
そうして私が指さした先にはさっき見た乙女座。無論近づいてきている。
焔「あれを町まで持ってくつもり?」
海「…無理してもいいから悔いは残すなよ。」
焔「あら?無理はするながテンプレじゃない?」
海「この展開がすでにテンプレじゃねえからな!」
焔「たしかに!ピンチに覚醒するならあるけど力借りるなんてテンプレじゃないわ!!」
海「…任すぞ!!」タタタッ
焔「おうとも!!さぁて…」
星屑を、乙女座を見据える。
焔「私は勇者、犬吠埼焔!!たった一夜の大活躍、その身で受けられることを感謝しなさい!!そして!お代はその命じゃああ!!」
ーーー海sideーーー
海「オラオラオラァ!!」ズガガガガガ
追ってくる星屑をボーガンで撃ち落とす。
(明らかにすくねえ…焔が抑えてくれてんのか?急がねえとな…)
そうして走っているうちに目的の…橋の入口が見えてくる。
(よし!!あと少しか!!)
だいぶボロボロではあるが、まだ人が通ってもなんとかもちそうであった。
月夜「ッ!?海!!」
和人「ほんとだ!?海!!こっちだ!!」
海「二人とも!!」
脱出も目前、いざ越えようとする…その時だった。
ビジジジジジ
バチッ
海「ガっ!?」
何かに弾きとばされる。
和人「はあ!?なんだ今の…」
月夜「…え?…嘘…でしょ…?嘘だよね…」
続いて月夜の錯乱。
海「月夜!?落ち着いて何が起こったか話せ!!俺は大丈夫だから!」
月夜「…星屑が…四国に入るのを…防ぐために…結界貼ってる…って…力が…足りないから…完璧なのは作れないからって…」
和人「まさか人も弾くってのか…!?」
(マジかよ…!?俺はまだいいが子供3人は…!!)
さらに…
ビキビキッ
和人「ッ!!海、退け!!」
海「んあ!?」バッ
咄嗟に後ろへと跳躍する。
次の瞬間…
バリバリバリッ
ギイヤアアアア!!!!
ガラガラガラガラ…
下から星屑が。
(下通って来てやがったのか!?いやそれより…)
海「おいおいマジかよ…」
そして、それにより元々ボロボロだった入口付近の橋は完全に崩壊。
…どうやっても届かない溝ができてしまったのである。
(糸で橋…いやこんなボロボロな状態で人を運べるような数の糸をかけれはしねえ…)
ギイヤアアアア!!!!
オマケに後ろからも星屑。無論橋の下から。
海「…かんっぜんに孤立したな!?」
海の上の崩れゆく橋。
逃げ場はなし、オマケに星屑からの挟み撃ち。
月夜「ごめん…ごめん海…私じゃ…私じゃ親友も救えない…」
和人「ちくしょうが!!待ってろ!!今行く!!」
(不幸のバーゲンセールじゃねえか…あそこは使えそうだな。ならこうすれば…3人は逃がせる!!)
…しかし、諦めはしなかった。
海「…月夜!!!和人!!!勝手に諦めてんじゃねえぞ!!受け取り準備、万全にしときやがれ!!」
ーーー焔sideーーー
焔「はああああああ!!!」ズババババ
迫り来る爆弾を切り裂き、
ヒュウウウウウウ
焔「ふんっ!!」ガキィィィィィィィィ
横からとんでくる布攻撃を盾で防ぐ…が。
ギギギギギギ
威力を防ぎきれず、足が地面と擦れる。
焔「いっっっっっったいのよ!!」ズガァァァァァン
(いやぁ参った参った…あっちのは防御しても防ぎきれないのにあっちはろくに入ってない。入ってもすぐ回復と来た…やはりテンプレじゃないわこれ、テンプレだったら圧勝だもんこれ。)
焔「どうしたものか…風に女子力を伝道してる身として女子力対決じゃ負けれないんだけど…」
…その時、ふといつぞやかに思った疑問が浮かび上がる。
(…だとしたら、あれでやれるわね…でも外れてたら…)
焔「…当たって砕けろ!!物は試し!ダメだったらその時!!勇者犬吠埼焔の大活躍もいよいよ大詰め!フィニッシュ、行くわよーー!!!!」
そういい、大きく跳躍した。
ーーー海sideーーー
海「…よし!できた!!」
星屑を壊滅させ、そう言って見据える先には巨大なパチンコのような物が。
結界からはみ出していた柱に糸を巻き付け、それらをこっちの中心にギリギリまで引っ張って人3人分を載せれるようにする。
そしてあの3人を糸で作ったシェルターで覆う。
最後にこれを乗せれば…
海「巨大な人輸送パチンコの完成ってわけだ。」
すぐに離れないように糸と矢の二重で橋と拘束している。
(よし、離すz)
ガブッ
海「…かは…!?」
確認すると疎かになっていた左腕に星屑が噛み付いていた。
(もうこんなに沸いてたのかよ…でも…)
後ろには15体ほどの星屑。
しかし…それ以外の星屑が一切確認できなかった。
(結界が修復されたか…?ならこいつらさえ倒せりゃ…!!)
海「…やってやろうじゃねえか!!」
両手から凄まじい数の糸を展開する。
海「おらァァァァァァァァ!!!」
それを大きく星屑全体に。
まるで、網のように。
ギイヤアアアア!?!?
切り刻むほどの力はない。でも、それだけで十分だ。
パチンコを離す。
このままじゃ離れても結界に弾かれて海に落ちる。
だから糸の結び方を工夫し、複数回の反復には耐えられるようにした。
…だから、その複数回のうちにケリを付ける。
(ご先祖さま…もう一度、力を…)
ーーそれであなたの思いが達成できるなら、喜んでーー
一回目の反復。
その時に叫ぶ。
海「…全てを凍てつかせろ!!雪女郎!!」
それによりパチンコと矢を繋げていた糸が凍り、反復時の勢いもあって矢はその勢いを増して向かう。
…橋の支柱へと。
ガギッ
支柱が凍る。
…もし、右に1、左に1.5あるバランスの悪い天秤に、16人分の重さが加わったならば?
そしてそれを支える柱が脆くなってたならば?
(西暦の時代、星屑に押しつぶされて死ぬ人も多かったと聞いた。つまり…)
ビキビキビキビキッ
海「星屑には!重量がある!!…仲良く落ちようぜ!!!」
答えはただ一つ。
ドガァァァァァァァァン
支柱は、橋は崩れる。
月夜「…海ィィィィィ!!」
(…星屑は消えた。乙女座は…あいつが確実にやってくれる。つまり…結界は意味がなくなり!)
パチンコから3人が入ったシェルターが離れ、空を舞う。
そしてそれは…あったはずの結界を超え、和人の腕へと。
和人「…たしかに…たしかに受け取ったぞ!!海!!」
(焔…やったんだな…そして和人…それでいい…)
海「和人!!間違いなく月夜は病む!お前が支えろよ!!わかったな!!」
和人「…おう!!任せ…ろ…」
海「そして月夜!!!!…たとえどうなろうと、俺達は親友だ。絶対に、何があろうと。」
月夜「…ヴン…!私だぢは…ずっど親友だがら…!!」
(…それでいいんだ…)
海「…幸せにな。」
ドボンッ!!
そうして俺は…星屑とともに海へと落ちた。
ーーー焔sideーーー
跳躍する。乙女座よりも高く。
そして叫ぶ。
(…借りるわよ。あんたの女子力。)
ーーええ!存分にやっちゃって!!ーー
焔「犬神ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
盾と大剣が巨大化する。
焔「焔犬一閃(仮)!!」
巨大化した大剣で、橋ごと支柱をぶった斬る。
そして
焔「仲良くシーダイブじゃあああああ!!」
盾を構え、乙女座に突撃する。
焔『ねえ月夜。思ったんだけどなんでバーテックスって大橋からしか来ないの?』
月夜『え?どういうこと?』
海『べつにどこ行っても変わらねえんじゃ…』
焔『だってさ。勇者って飛行手段ないのよ?なら大橋から離れた海から攻めればなすすべないじゃん。』
月夜『…たしかに!!どうしてだろう?フェア好き?』
海『それはないだろ…第一うお座は何回か海からの奇襲報告されてんぞ。』
焔『エッ…残念無念。せっかく何か法則あると思ったのに…』
(…あれは、法則がないわけじゃない。うお座がイレギュラーだったんだ。)
焔「よく考えたらあんたら炎の海出身だもんね…そりゃ火が消える「水」は!こわいわよねぇぇぇぇぇ!!!」
乙女座が反撃してくる。
だが。
焔「今の私は!!あんたなんかに負けない!!」
ものともせず、海へ…
(…風、樹。この世の何よりも最っ高に…
愛してる。)
落ちた。
ーーー月夜sideーーー
橋が…大橋が、崩れていく。
そして…完全に崩壊した。
しかし…私の2人の親友は、帰ってくることはなく。
月夜「…海…焔ぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
私の声は、すっかり暗くなった空に、虚しく響くだけだった。
ーーー???ーーー
焔「…ん、あ…?」
気づくと陸地に打ち上げられていた。
(身体は…手先くらいしか動かない、か…こりゃ死期が伸びただけだね…)
見える空は黒でも青でもなく、金。
(…もしかして、神樹様の根元とか…?)
焔「ハハッ…すごいとこに打ち上げられちゃったかも…」
…ふと横を見ると、そこには海がいた。
焔「…海…海!!!!」
海「…んお…?焔…?」
焔「そそ。あんたの妻の焔さんよ…身体動く?なら背負って運んでほしいんだけど。」
海「…いや、無理だわ。身体中痛いし。」
焔「二人揃ってダメと。これは死んだわね。」
海「そうだな…娘2人置いて逝くとか子不孝すぎるな俺ら…」
焔「あーたしかに。二人とも大丈夫かしら…風に女子力は伝道しておいたけどさ…
…伝道といえばだけど園子ちゃんたちは…?」
海「バッチシ。結界に阻まれたりしたが3人とも和人に渡せたよ。」
焔「やるぅ…月夜泣きまくってそうね。」
海「めっちゃ泣いてた。申し訳ないぜ…」
焔「なんだかんだ言って泣き虫だからなぁ…大人になったんだから少しくらいは変われっての…」
海「そうだな…」
焔「…ねえ、海。」
海「ん?なんだ…?」
焔「…私たちのやったこと、意味あるよね…?」
海「…さあな。未来のことなんて分かったら苦労しねぇわ…」
ジジッ
…まるで、神樹様がそれに答えたかのようだった。
…頭の中に、映像が見えた。
焔「…ねえ海、私今すっごい現実離れしたこと起こってんだけど。」
海「奇遇だな。俺もだ。頭の中に見たこともない映像ってどんなミステリーだよ。」
焔「うわぁドンピシャ。私もなんだけど。…ただ内容、これ風たちだよね?」
海「そうだな…須美ちゃんやあの助けた子もいないか?」
焔「ほんとだ…園子ちゃんもいるね。全身に機械付けてるけど。」
海「やっぱアプデで代償かなんか付けられたんだろうな…めっちゃ笑顔だけど。」
焔「…樹が歌手だって。信じられる?」
海「…いや、信じらんねえ。だってあんなに引っ込み思案だったんだぞ?歌も俺達以外には緊張して空回りしてたし。」
焔「よねぇ…でもあの笑顔、作り物で再現できる?」
ほんとは、分かっていた。
海「いや無理だな。」
この映像は、可能性に過ぎないって。
焔「即答じゃない…あ、あの子が樹と話してる…二人ともすっごい楽しそう。」
神樹様が、頑張った私たちにくれたせめてものご褒美だって。
海「あの時助けたあの子がいずれ樹の親友になるのか…」
でも、十分だった。
焔「…勇者に選ばれたことは確かよね。」
2人が幸せに笑えて。
海「…となると、退けたんだな…」
来る災厄を退けれて。
焔「私でも一体よ?さすが我が娘達。」
親友を見つけられる未来があるってだけで。
海「そうだな…」
私たちの戦いで。
焔「…もう1回聞くけどさ、意味、あったと思う?」
娘達の未来の親友を救えたのだから。
海「…あっただろうな…風も樹も、他のみんなも、幸せそうだ。」
そこに、意味はあったのだから。
焔「…あー、意識朦朧としてきた。もう旅立ち時ですわ。」
海「どこまでも被るのかよ。パクるな?」
焔「それはこっちのセリフ!」
海「…焔。」
焔「…何?」
海「俺は、犬吠埼海は。お前とあえて、結婚できて幸せだった。」
焔「私も、犬吠埼焔も、あんたとあえて、結婚できて幸せだった。」
海「…I Love You、だ。」
焔「Me Too、よ。」
ーーーーーーー10月10日ーーーーーーー
バーテックスとの超大規模戦闘発生。
フィードバック、神樹様の力が一時的に弱体したことにより星屑、乙女座が約300年振りに現実世界へと顕現。
大橋を崩壊へと持ち込むが、突如現れた2つの勇者システムの反応とともに海に消える。
一般の軽傷20名、重症8名、死者5名、行方不明者13名。
そして、大赦神官の犬吠埼焔、犬吠埼海もまた、行方不明。
ーーーーーーー10月11日ーーーーーーー
大赦本社、祈祷室にて行方不明だった犬吠埼焔、犬吠埼海の両者の遺体が発見される。
なぜ海に消えたはずの2人の遺体がここにあったのか、そして傷だらけであったはずの2人がなぜ一切の傷が確認できない状態で見つかったかは不明。
さらに2人の遺体から勇者システムの残留因子が確認される。
これにより昨日の勇者は犬吠埼焔、犬吠埼海であると断定。
後に、大橋の幻の勇者として伝説となる。
あの時、焔と海が見たのは神樹様が数ある可能性の中でも1番幸せであったものである。
しかし彼女たちはその可能性すら超えーーー
ーーー神世紀301年ーーー
ーーー風sideーーー
風「ふぃー。パーティー最高だったわねー!」
樹「お姉ちゃんもみんなも喜びすぎなんだよ…まだ決定しただけでこれからなのに…」
風「それでも十分すごいのよ!数にもの言わせて絶対売れさせて見せるわ!」
樹「いいよ〜そんなことしなくても〜。」
ついに決まった樹の歌手デビュー。私達はさっきまでその記念パーティーを勇者部全体で大々的に行っていた。
風「みんなめっちゃ祝ってくれてたじゃない。あんたの人望がある証拠ヨ!」
樹「高校の人達はお姉ちゃんの方ー!人望は部長だしなきゃダメだもん…」
風「たしかにそれもそうね。何か食べる?作るけど。」
樹「もうおなかいっぱい。明日にして!」
風「えー?なら私は唐揚げでも食べよっ!!」
樹「あんだけ食べてたのにまだ食べれるんだ…」
風「食べることは女子力に直結する!まだまだ食えるわよー!」
樹「…ねえお姉ちゃん。」
風「んー?どうした樹。」
樹「お母さんとお父さん、見てくれてるかな。」
風「…当たり前でしょ!あんな優しい母さんと父さんよ?死んでも幽体なって見てくれてるわよ、樹の晴れ姿。」
樹「天国から見てるんじゃなくて幽体はダメだと思うんだけど…あとまだ晴れ姿じゃないよ!」
風「あーそうだったわね。ついつい待ちきれなくて。」
樹「もう…でもちょっと嬉しい。ありがとう。」
風「いえいえ。」
…ふと視線を感じて窓の方を見る。
火と水の精が、仲良く見守ってくれてる気がした。
(そうよね…私たちのかけがえのない母さんと父さんだもの。…見守ってくれてるわよね。あの時みたいに。)
〜外伝2 大橋の幻の勇者 fin.
どうもここなです。ここまで見ていただきありがとうございました。
今回は何個かお知らせや補足があるので。
まず補足です。これは焔と海が見た未来の映像について。
彼女たちが見たのは当時の神樹が考えうる限りの最高のパターンです。
ちひろが7体同時襲来の時に真実を伝えられ、その情報を元にそれぞれのバーテックスに的確に相性がいい人を当てられたことにより、一気に攻勢に転じられたものです。
牡牛座には影響を受けずに遠距離から攻撃ができる東郷。
うお座には動きを止められる樹。
てんびん座には強力な攻撃をぶつけられる風。
双子座にはかつて戦ったことのあるちひろ。
水瓶座には手数と距離を取って戦える夏凛。
牡羊座には分裂させることのない打撃の友奈。
6人が各自これを撃破し、最後にしし座を全員で叩く。
これにより満開を誰一人行わず次の世代へとバトンを繋げたルートが未来映像ルートです。
満開の代償を無理に返すことがなくなったことにより、神樹様の寿命も伸び、あと数十年は持つようになってます。
園子はあのままになりますが、そこはちひろと東郷が無理やり動けるような機械を制作させ、それによる登校を可能に。
無論かなり不便なことに変わりはありませんが、園子はみんなと勇者部をやれるだけで満足なので全く気にしてません。
さすがに神樹様も東郷の謀反(壁破壊)やそれによる天の神の顕現までは想定できるはずないと思うので。
次は日常編10話の予定です。次の章である「防衛の章」それへの繋ぎの話になるかと。
それでは、これからも「上里ちひろは勇者である」を、よろしくお願いします