この作品は基本めぐみん視点です。
初投稿なので拙い文ですがよろしくお願いします。
Web版の内容も少し取り入れています。
*読み直しで気になった所をいくつか変更しました。
*地の文を一部変えました。(2/11)
*加筆しました。(1/11)
この素晴らしい世界に決別を?
-KONOSUBARASHIISEKAINIKETUBETUWO?-
私は今、見知らぬ場所に居る。
そして目の前には美しい女性が一人。
何故この様な状況になったかと言うと・・・
「めぐみんさん。ようこそ死後の世界へ。私は、あなたに新たな道を案内する女神、エリス。あなたは先程、天命を全うし、亡くなりました」
そう、私は家族に看取られながら、静かに息を引き取ったのだ。
この人がいつもカズマの言っていたエリス様。
長くて白い髪が神々しさを感じさせる。
まあ、一度会ってはいるけど、ゆっくり話すのは初めてだ。
「そうですか。本当に死んでしまったのですね」
此処に来て、自分が死んだと言う実感が湧いてきた。
カズマみたいに何度も死んだ経験がないからあまり理解出来ていない所も多い。
「はい、今、御家族が葬儀の準備を始めていますよ」
流石、私の子達だ。
手際がいい。
「めぐみんさん。あなたは魔王軍討伐に多大な貢献をされました。そして、あなたのパーティーは、実際に魔王の討伐を成し得ました」
懐かしいな。
魔王に関しては、ある意味カズマが一人で倒したようなモノだったけど、魔王城の結界の破壊は楽しかった。
なにせカズマが全財産を使って私にくれたプレゼントのマナタイトで、大好きな爆裂魔法を連射出来たのだから。
またやってみたいと思っていたけど、カズマやダクネスに止められて、結局出来なかった。
「そして今あの世界に平和が訪れています。その事を我々、神々は深く感謝しています」
魔王討伐後は何処の国も祝祭をしていて、戦争も起こらずに平和な時間が流れている。
魔王がいなくなった事で、街を襲う脅威は、モンスターか犯罪者集団以外には存在しなくなった。
「いえ、私達は冒険者として当然の事をしただけです」
「ふふっ」
何故か思った通りに言ったら、エリス様に笑われてしまった。
「あの、何か変な事を言いましたか?」
不安になり、確認してみる。
「すいません。そういう訳では無いのですが、カズマさんがめぐみんさんならこう言うだろうと言っていた通りの事を仰られたので」
そんな事を頬を掻きながらエリス様は言った。
そして私はまた尋ねる。
「カズマがですか?」
「ええ、三年前カズマさんが亡くなられたあの日に」
カズマは三年前に病気で死んだ。
勇者殺しと名高い感染症にかかったのであった。
多くの人はこのウイルスに感染しても、微熱程度で収まる。
しかし、何かしらの力を持った勇者候補は重症化しやすく、死に至ることも多いと知られている。
世間一般では魔王軍による、工作だろうとする説が有力視されているが、彼らが異世界から来たことを考えると単純に免疫がないだけなのだろう。
カズマのお葬式は王族や各地の貴族も集まり、それはもう盛大に執り行われた。
「やはりそうでしたか。あの一つ聞いてもいいですか?」
聞きたい事は山ほどあるが、必要な事だけにしよう。
「別に構いませんよ。私が答えられる範囲なら、いくつでもお答えします」
カズマの言っていた通り、エリス様は何処かの駄女神とは違う。
私の質問をしっかり聞いてくれる。
「では、二つ聞かせて頂きます」
まずは、一番聞きたかった事からにしよう。
「カズマは今、どうしていますか?」
「一つ目の質問はカズマさんの事ですね。カズマさんは現在、天界で暮らしています」
「えっ、天界って、此処の事ですよね?それではカズマと会えるのですか?」
カズマが天界で暮らしているのなら、私も一緒に暮らしたい。
「はい、その通りですが、今のカズマさんに会うのはお勧め出来ませんよ」
「如何してダメなのでしょうか?」
質問すると暗い表情になり、少し沈黙してからエリス様は口を開いた。
もし、こっちで彼女が出来たとかなら実力行使する他ないだろう。
「それはですね・・・」
エリス様の話を要約するとこう言う事だった。
カズマは死後、神々の選抜により天界で働く様に勧められて、そのまま働く事にしたのはいいが、働いている内にカズマの中の人格は擦り切れて消えてしまい、そこには神格が宿ったらしい。
つまり今のカズマはカズマであって、カズマではないと言う事だ。話によると記憶はあるらしいが、もはや別人だそうで、エリス様はそんな事から、カズマとは会わない方が良いと言ってくれたのだった。
浮気を疑ってた自分が情けない。
「分かりました。では会わない方を選択します」
カズマはカズマだとも思いはしたが、やはりいつもの様に会話が出来ないのは辛い。
だから私はこの選択をした。
「それでは、二つ目の質問に移らさせてもらいます」
そう、これも前から気になっていた事だ。
「私のもう一つの質問はですね。エリス様はカズマの事をどう思っていたのですか?」
「えっと、それはどういう意味ですか?」
エリス様は冷や汗をかき、またもや頬を掻きながら話した。
この仕草、何処か懐かしいと思うのは何故だろう?
「一人の人間としてです」
「そういう事ですか。分かりました。ではお答えします。私のカズマさんに対する思いは、頼れる相棒と言った所ですね。私が、無理な頼み事をしても聴いてくれましたし、その逆も然りです」
やはりカズマとエリス様は、親密な関係だった。
なんだか浮気された気分。
「ですが、その、めぐみんさんが一番聞きたい所だと思いますが、私はカズマさんを異性として好きと言う事は、無かったので、気にしないでくださいね」
うっ、図星を突かれて何も言い返せない。
「めぐみんさんの弱々しい所を見るのは久しぶりですね」
久しぶりと言う事は、私達の行動は見られていたのだろう。
「ぁあの、その位にして貰えませんか」
「分かりました。これ以上は言いませんから、少し落ち着いて下さい」
数分後、私はようやく平常に戻れた。
「エリス様、情けない所をお見せしてすみませんでした」
「気にする事は無いですよ。それに私の所為でもありますし、お互い様という事で」
頬を掻き、バツが悪そうにしている。
その方が話も進みそうだから、話に乗って置こう。
「そういう事にしましょう。あの、一つ気になったのですが、私はどうなるのでしょうか?」
此処に来てから天国行きとも地獄行きとも言われていないから、少し不安になってきている。
そもそも死後の行先が天国か地獄と言う考えであっているのだろうか?
「それはですね」
待ってましたといった感じで、含みを持たせて話すエリス様。
イタズラっ子ぽい所が可愛い。
時たまエリス様はメインヒロインだとかカズマが言ってたのも何となくわかるような気がしないわけでもないが、やっぱり妻の前で他の女をメインヒロインだとか言うのはどうかと思う。
「めぐみんさんのこれからの選択肢は二つあります。まず一つ目は、天国に行き、そこでのんびりと過ごすと言うモノ」
なるほど、それも悪く無い。
余生をゆっくり過ごすのも良いかもしれない。
いや、もう死んでいるのだった。
「そして次の選択肢は、記憶は無くなりますが、再び生まれ変わり、二度目の人生を歩むと言ったモノで」
これはこれでありだけど、記憶が残らないのがちょっと残念だから、天国に行こう。
カズマとの思い出、みんなとの思い出、ウォルバクさんとの思い出、家族との思い出、どれも忘れたくはない。
「本来ならこの二つの選択肢から選んで貰うのですが」
ん?本来ならとはどういう事だろう?
「めぐみんさんにはもう一つの選択肢があります。それは、めぐみんさんの願いを叶える事です」
「・・・」
エリス様が何を言っているのか分からなかった。
私が固まった事で、目の前には、決めポーズのまま動かなくなってしまったエリス様がいる。
気不味くなってきた。
取り敢えず質問してみる。
「ええっと。願いを叶えると言われましても、私はもう死んでしまったのですが」
やっとポーズをやめたエリス様が説明を始める。
「言い方が悪かったですね。今めぐみんさんが仰った通りなんですが、実は神々の間でめぐみんさんの功績を称えて、何か一つ願いを叶えて上げましょうと言う事になりまして、その願い事で、例えば記憶を残したまま生まれ変わると言ったような事が可能なのです」
恥ずかしさが込み上げてきたのか、顔を赤く染めて、捲し立てて説明された。
「なるほど、何となく理解出来ましたが、何を願うか悩みますね」
こう何でも願いが叶うと急に言われると直ぐには出てこない。
「ゆっくり考えて頂いて結構なので焦る必要は無いですよ」
「ありがとうございます」
折角ならこの一生で出来なかった事をしたい。
うーん...
あっ、あるじゃないですか!
どうしても出来なかった事が。
そうです何も悩む事など無かったのです。
そう私の願いは・・・
「記憶を残したまま、もう一度カズマ達と冒険をさせて下さい」
「もう一度と言うのは、昔に戻るという事ですか?」
先程までとは違い表情が硬くなり、真剣に聞いてくれているようだった。
「はい!!また魔王軍と戦う事に成りますが、また、あの楽しい日々を味わいたいのです!!」
「願いは分かりましたが、少し待って下さい時間軸に関わる話は、確認を取らないといけないので」
そう言ってエリス様は何処かへ行ってしまった。
この願いは叶わないのだろうか?
私の一生での一番の悔いを晴らせる良い機会だと思ったのに。
そうこうしている間にエリス様が戻ってきた。
お願いですから、せめてあの男の初めてが奪われる前日に!
「めぐみんさん。今確認してきましたが、問題ないそうです」
「本当ですか!!」
「はい、ただ戻れるのは、めぐみんさんがカズマさんに会う数日前までです」
これなら大丈夫だ。
ただ話す時に少しだけ目が泳いでいたのが引っかかる。
多分、気の所為だろうけど。
「そんなに戻れるんですか!!充分ですよ!!」
「めめぐみんさん、落ち着いて下さい!!」
思わず詰め寄ってしまい、エリス様は焦っている様だった。
「・・・すみません。取り乱して」
私とした事が、つい興奮して冷静さを欠いてしまった。
天界に来てから少し情緒が不安定気味だから、自重しよう。
冷静沈着な魔法使いのイメージが崩れてしまう。
「はぁ、めぐみんさんは、もう短気な所が無くなったと思っていたのですが、そこは変わってないんですね」
やはりこの感じの反応、身に覚えがある。
あと話し方が全く違う所為で、気づくのに時間がかかったが、あの頬を掻く癖はあの人。
それにこの推理が当たっているとすると腑に落ちる事が多い。
私の事に詳しいのも説明がつく。
よし、ここは短気とか言われたことは聞かなかったことにして。
「願いを叶えてくれてありがとうございます。お頭様、向こうに戻ったら、カズマと一緒に手伝いますよ」
「えっ、ホントに?いやぁ、助手君が居ると助かるんだよね。めぐみん、ありが・・・・・・」
女神エリスこと我らが盗賊団のお頭様クリスは、先程までの笑顔を浮かべたまま、私の前で固まっていた。
「いえ、ずっと不思議だったんですよ。カズマとクリスの仲が急に良くなった事とか、あの事なかれ主義のカズマがクリスに協力的な事が、これで納得出来ましたよ」
「――クリス様じゃないですよ。エリス様ですよ」
エリス様は笑顔を強張らせたまま、訳の分からない事を言い出した。
「・・・あの、流石にそこまで動揺されるとこちらが反応に困るのですが」
「めぐみんさん。何を言ってるんですか!私は幸福の女神エリスで」
「もあり神器回収をする義賊のクリスなんですよね」
「ああ、被せないで下さい」
なかなか認めないエリス様だが、これは誰がどう考えてもクリスだと思う。
「何故認めないのですか?私は、女神様が義賊をやっているというのは、すごくカッコイイと思いますし、もうバレたらバレたでいいじゃないですか」
「うぅっ、如何してめぐみんさんまで、カズマさんみたいにカマかけをするんですか?」
どうやらカズマも同じ事をしたらしい。
それはそれで嬉しい。
「カズマもこっちでエリス様を論破したんですか?」
「いえ、違います。カズマさんは私がクリスの時に『エリス様、この間の神器、何処にやったんですか』といった感じでカマをかけられまして」
悔しそうでいながら、気付いて貰えたのが嬉しいのか、微妙な表情になっている。
「一度経験しているなら、何故また引っかかったのですか?」
「まさか、まだエリスとしては二度しか会っていないめぐみんさんに気付かれるなんて、想像もしていなかったので」
確かに、たった二回会っただけで見抜かれるとは、同じ立場なら思いもしないだろう。
「そうですか。後幾ら何でも『クリス様じゃないですよ。エリス様ですよ』はないと思いますよ?」
「えっと、いきなり過ぎて、とても焦っていたからで。そう言えばカズマさんに騙された時も同じような台詞を言っていたと思います」
だんだん声が小さくなっていき、心無しか神オーラが少し減った気がする。
「そこも一緒でしたか。あっ、ふと思ったのですがエリス様の素はやっぱりエリス様の時ですか?それともクリスの時ですか?」
あんなに活発なクリスとこの大人しいエリス様を見ていると、ギャップが凄い。
以前アクアが言ってたギャップ萌えとやらが起こりそうだ。
「またカズマさんと同じ質問を、その、どちらが素なのかは正直答えにくいですね。どちらも嘘偽りのない私なので」
「分かりました」
たぶんエリス様の中にはクリスとエリスが別々にいるのだろう。
「あの今更な気もしますが、私のレベルとかはどうなるのでしょうか?」
「えーっとですね。それは確か、現在のステータスやスキルはそのままで、レベルは当時のモノになるとの事でした」
「そうですか。と言う事は、威力が落ちてガッカリする事もないんですね。良かったです」
案外今回の願いを思い着いた時の一番の悩み所はここだった。
「ではめぐみんさん。準備が整いましたので、今から転移を行いますね」
そう言われて始めて気付いた。
私の足元に大きな魔法陣が出来ている事に。
魔力感知には長けている筈なのに、どうして分からなかったのだろう?
「はい。お願いします」
これでこの世界とはお別れ。
少し寂しいような気もするが、これからの事を考えると早く行きたいという気持ちが勝ってしまいまう。
「めぐみんさん、またカズマさん達と魔王討伐をお願いします。後、向こうの私、クリスの事を頼みますね」
「ええ、ベルゼルグ王国随一の魔法の使い手である私がしっかりサポートしますよ」
「ありがとうございます。それでは、最後に私からの贈り物です。『●●』」
エリス様が唱えた言葉は分からなかったが、その後に私の体が白い光に包み込まれ、アクアのブレッシングをかけてもらった時の様だった。
そして私はエリス様に感謝しつつ決意するのであった。
カズマのファーストキスは、この私が、絶対に貰うと。
●●にしている理由はweb版からの独自解釈でエリス様がカズマにした『祝福』は日本語だったという事にしたので、そのため主人公のめぐみんは理解できないという設定だからです。これ以上特に深い意味はありません。(この独自解釈が合っていたので凄く嬉しいです)
今の所、独自設定は子供たちだけです。嘘は付いてません。
pixivでも投稿しています。
カズマさんの誕生日話は誰視点が良いかについて
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