-BERUDEXIATOUBATUSAI MEGUMINver-
ギルド内はベルディア討伐記念の宴会で賑わっている。
やはり斯ういう時に飲むお酒の味はいつもと違う。
報酬減額のショックが大きいのか、カズマは積極的な参加はしていない。
私は借金が出なかったから、それだけで満足している。
とても悩んでるようだったけど、踏ん切りが付いたようで良かった。
「カズマ!いつものアレやってくれ」
「おう!任せとけ」
カズマに声をかけた戦士風の男はハンカチを持って、待っていた。
いつもの余興が出来るぐらいに回復したみたいで何よりだと思う。
「「「スッティール!スッティール!」」」
「いくぞ!『スティール』!」
あれ、カズマが失敗するなんて珍しい。
「おい、カズマ取れてねえぞ!」
・・・何だろう、このスースーする感じ。
凄い既視感を覚える。
「あれ? 手にはちゃんと布地の物があるんだが・・・あっ・・・・・・」
確認するとやはり私のパンツが盗られていた。
カズマは他の人に気付かれないように隠してくれているみたいだ。
カズマに盗られるのは問題ないけど、他の人に見られるのだけは絶対に嫌だ。
「・・・カズマ、それはあげるので、何も言わずにしまってください」
気難しい顔をしているので断るつもりだろう。
「いや、それは・・・分かった」
目力で何とか伝わったみたいでよかった。
でもカズマが怯えている気がするのは、気の所為だろうか?
「どうしたんだ?カズマ何盗ったんだよ?」
カズマの様子から、ある程度理解出来ている冒険者に質問されるカズマ。
如何、言うべきか悩んでるようなので、ここは私がフォローしよう。
「ハンカチですよ。今日買ったばかりのだったので、ちょっとあれでしたけど、さっきも言いましたが、それはカズマにプレゼントします」
安心出来たみたいだ。
「買ったばかりなら、返した方がいいんじゃないか?」
さすがカズマ、ここで小芝居をするとは。
「魔王軍幹部討伐の記念に受け取ってください」
もう、このままあげてもいいかもしれない。
「そう言う事なら、ありがとう」
「ふふっ、どういたしまして」
カズマは顔を赤らめ急に視線を逸らした。
そろそろ意識してくれていると言う事なのだろうか?
「何だ。そういう事か。なんかヤバイ物でも盗ったのかと思ったぜ」
さっきの人は納得がいったみたいだった。
実際は盗られているけど。
「悪いけど、今日はもうやめとくから、俺はちょっとゆっくりするな」
「ああ、分かったよ。ゆっくり休め」
「ありがとな」
その後カズマは宴会の中心から離れ、私の所にやってきた。
「めぐみん。本当にごめん。これ返・・・」
「いいですよ、返さなくて。さっきも言いましたけど、それは記念に取っておいてください」
焦ってるカズマはいつ見ても面白い。
「何言ってんだよ?それはさすがに」
「ぷっ、冗談ですよ。冗談。真に受け過ぎですよカズマ」
まあ、本当にあげてもいいのだけど。
「やっぱ、気が変わった。これは貰う事にする」
おお、珍しく頑張るカズマ。
「そうですか。別にカズマが欲しいならあげますよ」
「なっ・・・」
顔真っ赤になってるカズマが可愛い。
にやけ顔になってないか心配だ。
「そうか。ならこれは貰うからな。今から文句言うのはなしだぞ」
したり顔のカズマだけど、元から渡す気の私が動じる事は無い。
「文句なんて言いませんよ。ただアクアやダクネスにバレないようにさえしてくれれば、私は何も言いませんから」
凄く焦っているカズマ。
諦めたような感じなので、もう終わりのようだ。
もう少し続けたかったな。
「降参だ。はいこれ、もう俺の負けだから、からかうのはやめてくれ」
「ありがとうございます。そうですか。もう少し遊びたかったのですが、残念です」
私の言葉を聞き、悔しそうにしながら、カズマは人混みの中に消えて行った。
カズマが居なくなってから、一人でゆっくり休んでいた。
するとそこに警察官がやってきた。
「すいません。アクアさんのお仲間ですか?」
「ええ、そうですけど・・・アクアが何かしたんですか?」
まさか損害賠償で借金を背負うなんて事にならないだろうか?
「こちらのギルドの物品を盗んだ疑いが掛かってまして、現在窃盗の現行犯で身柄を拘束しております」
多分、あの本当にタネも仕掛けもない芸をしたのだろう。
「本人は否定を続けており、魔道具を通しても大丈夫と言っていたので、その確認が済み次第、釈放にはなるのですが、手続き上、身柄引き受け人が居ないといけないので、御手数ですが署まで来て貰えませんか?」
「分かりました。こちらこそ、私の仲間が迷惑をおかけしてすいません」
「いえいえ、ではこちらに」
そして署に到着後、数分経ち、無事アクアは釈放された。
アクアはドヤ顔で取り調べ室から出てきた。
物を消したのは事実だから、ドヤ顔は違う気がする。
今はギルドに戻って宴会に復帰しようとしているところだ。
「あ、めぐみん。どこに行ってたのだ?声をかけようと席に向かったら居なくなっていたから、探していたんだが、・・・アクアの身元保証人になっていたのか?」
「まあ、そうですね」
そのアクアはもう普通に遊びに戻っているけど。
「ご苦労様。疲れたのではないか?何か飲むか?」
「いえ、喉は乾いていないのでいいです」
それより早くカズマの所に行こう。
バニル討伐の賞金の話をすれば、カズマの気分も良くなるだろうし。
「そうか、めぐみん。少しいい・・・か?あれ、めぐみんはどこに行ったんだ?」
この時、ダクネスが私に用があったと知ったのは、次の日だった。
やっとカズマを見つけられた。
「カズ・・・ま」
声を掛けようとしたが出来なかった。
「カズマさん、今お一人ですか?」
「そうだけ、ど・・・」
そこには五人の女性冒険者がいた。
まさか、カズマの魅力に気付いてしまったとか。
「その、良ければなんですけど、私達、カズマさんにお聞きしたい事があるんです」
「いいですよ」
ああ、しかもカズマも嬉しそうな感じだ。
「ありがとうございます。あの私達に敬語はいいので、仲間の方と話すような感じで大丈夫です」
「そうか、で話って何だ?」
仲間と話すようにって、絶対にカズマを狙ってる発言だ。
カズマも照れてるし。
「それは、その・・・」
さっきまで話していた子が急に口どもった。
そして、その子は他の子達と話し合い、決心し口を開いた。
よし、告白した瞬間にカズマを押し倒・・・
「如何すれば、カズマさんみたいに、魔王軍幹部と対峙しても、物怖じせずにいられる勇気を身に付けられるんですか?」
あれっ?告白するんじゃあ?
「実は私達、クエストのモンスター討伐が怖くて出来ないんです。そこでカズマさんに対処法を教えて欲しいんです」
・・・まあ、取り敢えず、何も無くてよかった。
「えっと・・・参考にはならないと思うけど、それでもいいか?」
「はい!お願いします!」
その子達の目は輝いていていた。
余程困ってるのだろう。
「頼りになる仲間がいたからだと思う」
「信頼関係が大事って事ですか?」
頼りになる仲間。
誰の事でしょう?
「うーん、合ってもいるけどちょっと違うかな、なんだろう・・・こう、この子の自信満々な所見てたら大丈夫だって思うんだよな」
うーん、思い浮かばない。
カズマの支えになれるなんて羨ましい。
「仲間の表情を見ればいいんですね?」
「まあ、俺の場合はだから、その特殊な境遇だと思うし、本当に参考にならなくてごめん」
後で、誰の事か聞いてみよう。
何となくゆんゆんな気がする。
「いえいえ、そんな事は無いですよ。とても参考になりました。お話をお聞かせ頂きありがとうございました!」
「「「「ありがとうございました!」」」」
カズマはとても楽しそうだった。
「どういたしまして。また、何か有ったらいつでも相談に乗るから、その時は頼ってくれ。後敬語は要らないから」
・・・何だろう。
今になって、急に嫉妬的なモノがふつふつと湧いてきた。
「「「「「ありがとうございます!さようなら」」」」」
手を振り合って別れていく、女性冒険者達とカズマ。
いつもあんなには楽しそうにしていないのに。
「またな」
別れの言葉を口にしたカズマは、私の視線に気付いたのか、ゆっくりと振り返った。
「カズマ、やっと終わりましたか。で何の話をしてたんですか?」
聞いていたので知っているけど、一応聴いてみる。
「えーと、あの子達がクエストでモンスターが怖くて戦えないらしくて。その対処法を教えて欲しいって事で、俺の場合の話をしてたんだよ」
「そうですか。頼ってくれる可愛い後輩が出来て良かったですね」
駄目だ。どうしてもきつく当たってしまう。
ここはあまり喋らないようにしよう。
「まあ、初めて後輩が出来たって、実感出来たから良かったよ・・・」
確かに後輩が出来るのは嬉しい。
「なあ、もしかして、まだあの事怒ってるのか?」
「別に怒ってなんかいませんよ。あれは事故みたいなモノですから気にしてません」
嘘はついてない。
ただ、自分の嫉妬心を抑えられてないだけだ。
何か、怒られる心当たりでもあるのかカズマが口を開いた。
「それじゃあ、前にバニルの言ってた事か?」
「ですから私は怒ってませんよ!何も。その事も全然気にしてませんから」
怒っては居ないけど、傍から見れば、怒ってるようにしか見えない気が自分でもする。
・・・カズマの表情がどんどん曇ってきた。
「何、ヘコんでるんですか?元気出してくださいよ」
「へコんでなんかねえよ」
「そうですか」
大丈夫なのだろうか?
「「・・・」」
どうすれば!
・・・このカズマの顔は何か変な事を考えている顔だ。
「カズマ、今私を見て何を思ったのか、正直に話したら、許してあげます」
正直に言ってもしばくけど。
「めぐみんは可愛いなって」
・・・え?今可愛いって。
しかも、適当な言い訳なんだろうけど、無意識に出たみたいだから、これは本心!
「そ、そうですか。ならいいです。正直に話してくれましたし」
ど、どうしよう。
こんな形で可愛いって言われるのは、恥ずかしい。
取り敢えず、話題を変えよう。
「その、カズマ。ところでその手元に有るのはなんですか?」
「ゆんゆんに書く手紙だ。めぐみんも何か書くか?」
ゆんゆんに手紙。
特に伝えたい事もないから書く必要はないだろう。
「私はいいです。カズマが適当に書くのが、一番良いと思います」
?カズマが何かに悩んでいるみたいだけど、何を悩んでるんだろう。
「分かった。じゃあ適当に書いて出しとくわ」
「お願いします。では私はアクアの所に行ってきますね」
私が居ても邪魔なだけだろう。
話はまた今度にしよう。
「ああ、またな」
私はカズマに手を振りながら、アクアの居る中心部に向かった。
二話目はカズマverです。
カズマさんの誕生日話は誰視点が良いかについて
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