先週は出来上がってそのまま寝てしまい、投稿したものだと思ってそのまま何の報告もせずに一週間が経ってしまいました。
本当にすみませんでした!
今回は二話分を一つにまとめたのでこれで許してください。
冬の風物詩
-FUYUNOFUUBUTUSHI-
ベルディアの討伐から数日。
私がギルドに着くと叫び声がした。
「・・・お金が欲しいっ!」
そう呻いたのは、カズマではなく、アクアだった。
「何言ってんだ?この間の賞金が有るだろ?」
アクアは、朝食を食べるカズマを羨ましそうに見ながら、何も頼まずに机に伏していた。
「そんなの全部使っちゃったわよ!それに昨日の夕食はツケで払ったからお金が必要なの!」
アクアは冬を越す気がないらしい。
「いやいや、あの額をどうやったら、三日足らずで使い切るんだ?」
「それは・・・その、賭けに負けちゃって・・・」
なんともアクアらしい。
「自業自得じゃねえか!俺は知らないからな。もし、助けて欲しかったら、めぐみんかダクネスに頼め」
「ふんっ!優しいめぐみんなら、快く引き受けてくれるに決まってるわ!」
アクアは狙いを私に変えて、向かって来た。
嫌だなあ、カズマが来るならまだしも、来ないのに行きたくない。
アクアをコントロール出来る自身が無い。
「ねえ、めぐみん。一緒にクエスト受けてくれない?」
「・・・カズマが行くなら行きますよ」
私の言葉を聞いたアクアの顔が引きつり始めた。
「えっと、カズマは行かないって言ってるけど、別にカズマがいなくても、私達だけで大丈夫よ」
「カズマは参加しないんですね。では悪いですが、私は行きません」
今のがトドメの一撃だったのか、アクアは目を潤ませ始めた。
「うぅぅ、いいわ、めぐみんが行かなくても、私にはダクネスが居るんだから!」
アクアはそう言い捨てて、泣きながら走っていった。
「めぐみん。何があったんだ?」
騒ぎを聞き付けたカズマに尋ねられた。
「・・・アクアからクエストに誘われたのですが、カズマが行かないなら行かないと言ったら、走ってダクネスを探しに行ってしまいました」
「それは、ご苦労さん。所で如何して俺がいないと行かないんだ?」
「私はカズマみたいな指揮はとれませんからね。それにカズマの採点がないですし」
これは重要な事だ。
カズマの採点の有無で、モチベーションが違う。
「めぐみんらしいな。俺はてっきり手伝うと思ってたんだけど」
何処か落ち込んでるような気がする。
何故だろう?
「二人ともおはよう。何か良い仕事はあったのか?」
「おはよう、ダクネス。まだ掲示板見てないから分からないんだ」
「そうか、なら今から見に行こう」
「そうですね」
そして私達が掲示板の方に向かおうとすると。
「ダクネスここに居たのね。実は、雪精の討伐クエストを受けたんだけど、一緒に来てくれない?カズマとめぐみんは手伝ってくれないから、ダクネスだけが頼みの綱なの!」
アクアは拒否されないか怯えている感じだった。
「雪精か。まあ、私は構わないが、どうして二人は協力しないのだ?」
アクアの表情が少し晴れた。
カズマは面倒くさそうに答えた。
「こいつがクエスト受けようとしてる理由が、博打で負けて文無しになったからだ」
「それなら確かにアクアが悪いが、偶にはクエストをして、レベルを上げる方が良いのではないか?」
「そうよ!だからカズマさんも一緒に行きましょう!カズマさんが来ればめぐみんも来てくれるって言ってるし。それに雪精は攻撃してこないから大丈夫よ」
必死にカズマを連れて行こうとするアクア。
一方カズマは、気だるそうに答えた。
「はあ、しょうがねえなあ」
久しぶりにカズマのこのセリフを聞けた。
嬉しい。
「で、その雪精討伐ってのは何だ?」
カズマはダクネスに質問したが、当の本人は困惑していた。
一般常識である雪精の事を聞かれたのだから仕方がないけど。
「雪精は冬になると出現する雪の精霊で、雪精を討伐すると春が早く来ると言われています。なのでその雪精を討伐するクエストです」
「へえ、何か簡単そうだな」
ここだけ聞けばその通りだ。
「ええ、これだけなら確かにそうなのですが、実は雪精を討伐していると雪精の親玉である冬将軍がやって来るので、油断できません」
前回は私がこの事を伝えておかなかったが為に、カズマが死んでしまったのだ。
今回はしっかり伝えられて良かった。
「冬将軍?・・・なあ、アクア。冬将軍ってあの天気予報とかで聞く?」
「ええ、そうよ。実はね他の転生した日本の人がね、冬といえば冬将軍って感じで想像したから、冬の大精霊が冬将軍になっちゃったの」
「なっちゃったの、じゃねえよ!お前の送った奴には碌な奴がいないな。それに、何危険なクエスト受けてんだよ!」
静かに話していた二人だったが急にカズマが怒りだした。
「大丈夫、大丈夫!冬将軍はね、寛大なの。武器を捨てて土下座すれば、見逃してくれるわ。そうすれば問題なんて何もないわ」
「・・・二人ともアクアがこんな事言ってるけど本当か?」
カズマは真偽を確かめる為に私達の方を見た。
「「間違いないです(な)」」
「そうか、なら冬将軍が出てきたら直ぐに撤退って事で行くぞ」
カズマも報酬額を見て乗り気になったみたいだ。
「やったー!さあ行くわよ。雪精狩りに!」
クエスト場所である一面雪に覆われた平原地帯に到着した私達は作戦会議をしていた。
「取り敢えずこの捕虫網で雪精を捕まえて、討伐。もし冬将軍が来たら直ぐに土下座して、冬将軍が居なくなったら即撤退。これでいいな」
「「「はい」」」
始めはアクアの捕虫網を馬鹿にしていたカズマだが、雪精がすばしっこいと聞くと直ぐに捕虫網を導入した。
「よし、じゃあひと狩りいこうぜ!」
「「おー!」」
「あ、ずるい!私もそれ言いたかったのに!」
いい感じに纏まってきていたのに、訳の分からない事を言い出したアクア。
「別にいいだろ。それに俺も一度は言ってみたかったんだよな」
「うぅー、じゃあ次は私が言うからその時は言っちゃ駄目だからね」
「ああ、もしその時がきたらな」
カズマに適当に遇われているが、満足したようで、そのまま雪精を捕まえに行った。
「なあ今の会話は・・・」
「さあ俺らも雪精捕まえるぞ」
ダクネスに聞かれると面倒なのか、話を切り替えてカズマも行ってしまった。
「・・・めぐみん、私達も始めようか」
「そうですね。私が雪精を集めるのでダクネスはその雪精を捕まえると言った作戦はどうですか?」
前回どれだけ追い回しても、一匹しか捕まえられなかったから、これが一番いいと思う。
「作戦はいいが囮は私がしよう。私は攻撃がまるで当たらないからな」
恥ずかしさ半分、興奮半分といった感じでダクネスの顔が少し赤くなっていた。
「ではそれでお願いします」
こうしてクエストが始まった。
「めぐみん、ダクネス!そっちに行ったやつを頼む」
カズマも途中から私とダクネスの作戦に参加する事になった。
「任せてください。えいっ!」
私の狙いは当たり、杖で叩かれた雪精が砕けた。
「ナイスめぐみん!そうだ、今アクアの方に雪精が集まってるから、そこに爆裂魔法を撃てば、討伐数を稼げるんじゃないか?」
カズマも爆裂道が理解出来ているようで良かった。
「撃っていいんですか?」
一応、確認をしておく。
「大丈夫だろ。アクアとはそこそこ離れてるし」
そう言われて見てみると、雪精はアクアから逃れるようにして、集まっている。
アクアはその事に気付いていない様で、近くの雪精をずっと狙っていた。
「分かりました。十匹位は倒してみせます!」
「「頼んだぞ」」
「任せてください!『エクスプロージョン』!」
私の魔法は、雪精を十五匹屠り、辺りに温かい風を送った。
「はあ、最高です。・・・あ、そろそろ冬将軍が来ると思うので回収は後でいいです」
「分かった。アクアー!もうちょっとしたら冬将軍が来るらしい・・・大丈夫か?」
カズマに呼ばれて、爆風で雪を被っているアクアが泣きそうになりながらやって来た。
「だ、大丈夫よ。ただ、ぐすっ、雪がっ、かかっただけだし。ひくっ!」
「いや、大丈夫じゃないだろ。取り敢えず雪払う、か・・・」
急にカズマが青ざめた顔になったのでその方向を見るとそこには冬将軍がいた。
「どどど、土下座よ!土下座!ほ、ほらカズマも固まってないで早くするの!」
「ああ、分かった」
二人は直ぐに土下座を敢行した。
ちなみにダクネスはアクアによって顔を凍った雪の上に叩きつけられて気絶してしまった。
ある意味都合がよかった。
「なあ、何でまだこっちに狙い定めてんだ?あの冬将軍は」
「分かる訳ないでしょ、そんな事。そこをカズマが何とかするんでしょう!」
二人が揉めだしたが理由はアクアの捕まえた雪精が解放されてないからだろう。
「おい、何丸投げしてんだよ。お前が受けたクエストだろうが。・・・思ったんだが、その腰のやつが原因じゃないか?」
カズマも気付いたようだ。
「何を言って・・・分かったわ。今すぐ解放するからカズマも手伝って」
「しょうがねえなあ」
アクアとカズマは焦りからか、震えながら瓶の蓋を開けている。
「よしこれで最後だ」
この瞬間、私達は安心していた。
否、安心してしまった。
私が気付いた時にはもう手遅れだった。
私に出来た事はただ、
「カズマ!」
と叫ぶ事だけだった。
・・・ここは何処だ?
アクアと始めて会った時のあの感じに似てる気がする。
まさかまた死んだのか?俺?
さっきめぐみんに名前を呼ばれた所までは覚えてるけど、そこから先が思い出せない。
「佐藤和真さん、ようこそ死後の世界へ。私はあなたを新たな道へ導く女神、エリスです。こちらの世界でのあなたの人生は終わったのです」
やはり俺は死んだらしい。
視線を声のする方へ向けると、そこには白銀の髪をした女神様がいた。
死を自覚したからか、頬には熱い物が伝っていく。
俺、あの世界の事が好きだったんだな。
日本の時はこうはならなかったし。
「あ、あの・・・落ち着かれましたか?」
「えっと、まあそうですかね。お見苦しい所を見せてすいません」
「いえいえ、気にしなくていいですよ。亡くなられたばかりなのですから、恥じる事はありません」
優しく俺を案じる様に目を閉じる女神、エリス。
ここに本物の女神がいる。
何処かの駄女神と違って、この女神様はちゃんと俺の死を労わってくれる。
「・・・あの、聴いてもいいですか?」
エリスは慈愛に満ちた顔で頷いた。
「あいつらは大丈夫ですか?あのモンスターはどうなりましたか?」
俺が殺された事で、めぐみん辺りが敵討ちだって言って戦っていないか心配だ。
「冬将軍はあなたを斬った後、消えてしまいました」
「そうですか、じゃああいつらは無事なんですね」
無事でよかった。
でも、よくよく考えたらめぐみんは動けなかったし、ダクネスは気絶してたから心配はいらなかったか。
「ええ、皆さん無事です。ダクネスはまだ気絶していますが、問題はないでしょう」
そりゃあ、あんなに勢いよく叩きつけられたら気を失うだろう。
「あの、もう一ついいですか?俺は何で殺されたんですか?」
一番の謎を聞いてみた。
「それは、推測になりますが、和真さんが剣を持ったまま立ってしまったからではないかと思われます」
そう言えば、クエストの前にめぐみんが『冬将軍が出てきたら、まず初めに武器を捨ててください。そうすれば敵対しない事の証明になります』って言ってたな。
「佐藤和真さん。せっかく日本からこの世界に来て頂いたのに、この様な事になり・・・。せめて私の力で、次は平和な日本で、裕福な家庭に生まれ、幸せに暮らせる様に転生させて上げましょう」
なんていい人、いやいい女神様なんだ!
ゆんゆんと別れたきりになったのが惜しいけど、もういいか。
そう俺が決心し、エリスが俺の方に手を向けた瞬間、
〈カズマ〜、聞こえる?〉
アクアの声がドップラー効果を伴って聞こえた。
〈カズマ、帰って来なさい!身体の修復も済んだから大丈夫よ〉
「えっと、聴こえてるぞ」
「えっ!この声は、アクア先輩!先輩によく似た人がいるとは思ってたけど、まさか本人!?」
エリスは信じられないといった感じで目を見開いていた。
〈あんたの身体に、『リザレクション』って言う蘇生魔法かけたから、もう帰って来れるわよ。今目の前にいる女神に門を開けてもらいなさい〉
えっ、俺生き返れるのか?
初めてアクアを特典にしてよかったと思えた気がする。
「おし。分かった今からそっち行くから待ってろ」
「だ、駄目ですよ!申し訳ありませんが、和真さんは一度生き返っているので、天界規定により二度目の蘇生は不可能です。・・・あの、私の声は向こうには聞こえてないと思うので伝えてもらってもいいですか?」
エリスは申し訳無さそうに頭をさげながらそう言った。
「アクアー、聞こえるかー?俺って一回生き返ってるから、天界規定とやらで、もう蘇生は出来ないらしい」
〈はあー?誰よそんなバカな事言ってる女神は!仮にも日本担当のエリートな私に、こんな辺境の女神がどんな口利いてんのよ!〉
その辺境担当の女神様が凄く顔を引きつらせている。
「えっと、エリスって女神様なんだけども」
〈なっ!エリス!!この世界で国教としてちょっと崇められて、調子こいてお金の単位にまでなった、あの上げ底エリス!カズマ、エリスがそれ以上何か言うようなら、その胸のパッド取ってやりなさい〉
「ま、待ってください!あー、和真さん蘇生はするので、早く先輩を止めて下さい」
パッドである事をバラされた、エリスは相当焦っている。
「アクア!もう大丈夫だから、これ以上言うのは止めてあげてくれ」
〈そう、なら待ってるわね〉
この返事の後、うるさかったアクアの声が止んだ。
「はぁ、・・・こんな事普通はないんですよ。特例ですからね。本来ならどんな身分の人でも生き返れるのは一回だけなんですよ。・・・まったく。カズマさんと言いましたね」
「はっ、はい」
急に話を振られた所為で変な声になってしまった。
いや、単純に緊張してるだけか。
飛びっきりの美少女が目の前にいるのだから当然だ。
それも常識的で優しい。
やがてイタズラっぽく片目を閉じ、少し嬉しそうに囁いた。
「この事は、内緒ですよ?」
俺は苦笑しながら、その白い門をくぐった。
時は少し遡り。
カズマが死んでしまった。
この世界では一度も死なせないようにと思っていたのに、この始末。
何故気付けなかったのだろう。
前回も剣を持っていたから切られたというのに。
今アクアが身体の修復をして、カズマは膝枕されている状態だ。
「めぐみん、大丈夫よ。私が蘇生させるから心配なんてしなくていいのよ」
「ありがとうございます。少し楽になりました」
これは嘘だ。
本当は自分の不甲斐なさに失望している。
でもこれ以上アクアに迷惑はかけられない。
「よし出来たわ。『リザレクション』!」
蘇生魔法はもう出来たみたいだ。
「カズマ〜、聞こえる?カズマ、帰って来なさい!身体の修復も済んだから大丈夫よ」
天界にいるカズマに話しかけるアクア。
カズマの声は私には全く聞こえない。
けどアクアは普通に応える。
「あんたの身体に、『リザレクション』って言う蘇生魔法かけたから、もう帰って来れるわよ。今目の前にいる女神に門を開けてもらいなさい」
アクアがそう言った後、少し経つと急に顔色を変えて怒り出した。
「はあー?誰よそんなバカな事言ってる女神は!仮にも日本担当のエリートな私に、こんな辺境の女神がどんな口利いてんのよ!」
多分、エリス様と揉めているのだろう。
「なっ!エリス!!この世界で国教としてちょっと崇められて、調子こいてお金の単位にまでなった、あの上げ底エリス!カズマ、エリスがそれ以上何か言うようなら、その胸のパッド取ってやりなさい」
エリス様ってパッドだったのか。
不自然だとは思っていたけど、そういう事なら納得がいく。
・・・カズマがいる中でバラされるエリス様が不憫に思えてきた。
「そう、なら待ってるわね。めぐみん、交渉も上手くいったから安心しなさい」
どうやら交渉(という名の脅迫)が成功したらしい。
「アクアは凄いですね。あっ、膝枕変わりますよ。アクアはダクネスの方をお願いします」
「分かったわ。カズマが起きても動かないようにしっかり言っといてね」
「分かりました」
・・・なかなか起きない。
まさか蘇生に失敗したとか?
そんなのは嫌だ。
折角、戻ってきたのに、こんな事になるなんて。
「カズマ、カズマ!起きてくださいカズマ!」
私が不安になり叫んだその時。
「ぅ、あ・・・めぐみん?」
カズマが目を覚ました。
「カズマー!」
私はカズマに負担が掛からないようにかぶさった。
「めめめ、めぐみん!?」
カズマは真っ赤に顔を染めて焦っている。
「ごめんなさい私がもっと、もっと早く気付いていればカズマは、カズマは」
「な、何言ってんだよ。てか謝る事ねえだろ。めぐみんの所為じゃないし、俺がめぐみんに言われてた事忘れてたのが悪いんだからな」
カズマは優しすぎだ。
だから好きになったのだけど。
「ち、違うんです。だって、私は、ひくっ、わたしは」
駄目だ。
涙が抑えられない所為でちゃんと話せない。
「な、泣くなよ。な、俺は生きてるからな。それで十分だろ?」
「うぅっ、そう、ですね。見苦しい所を見せてすいません」
結局カズマに甘えてしまった。
「ぷふっ」
何故かカズマに笑われた。
「いや、ごめん。ただ、さっき自分も言ってた事をめぐみんに言われたから、そのなんか、な?」
「・・・そうですか。あっ動いてはいけませんよ。アクアがそう言ってました。ダクネスが気を取り戻したら、帰るのでそれまではこのままです」
「分かった。動かねえよ」
この後私とカズマは気まずい雰囲気になり、アクア達が来るまで一言も話さなかった。
来週こそはしっかり投稿するのでよろしくお願いします。
カズマさんの誕生日話は誰視点が良いかについて
-
カズマ視点(天界)
-
カズマ視点(討伐後)
-
ヒロインズの誰か視点(天界)
-
ヒロインズの誰か視点(討伐後)