-URIKOTOBANIKAIKOTOBA-
ダクネスが回復し、ひとまず安心とも言える。
だけど私の心はまだ休まらない。
カズマは、先程からぼーっとしている事が多く心配だ。
「カズマ、その大丈夫ですか?荷物くらい持ちますよ」
「いや、いいよ。いくら死んだって言っても、荷物を持って貰うのは悪いし」
カズマは此方を見ようとせず、下を向いたままだ。
「そうですか。無理だけはしないでくださいね」
「ああ、分かった」
それだけ言ってカズマは、歩くスピードを上げ、アクアの所に行った。
私から距離をとる為に。
これも落ち着かない一つの理由。
感極まって抱きついたりしなければ、こんな事にならなかったかもしれない。
「どうかしたのか?カズマと何かあったのか?」
ダクネスに心配されてしまう位にこのやり取り続けている。
話し掛ける内容は違うけど、やっている事は同じ。
「・・・カズマが蘇生した時に、感情が昂ってその、カズマに抱きついてしまったんです」
「なるほど、それでカズマは恥ずかしがってめぐみんを避けているのだな」
ダクネスは察しが良くて助かる。
いや、流石にこの場合は誰でも気付くだろう。
アクアを除いて。
「はい、私が悪いんですけど、ここまで話が出来ないのは辛いです」
街に帰ってもこの調子だと思うと憂鬱な気分になる。
「まあ、カズマもそのうち普通に戻るだろうから、それまでの我慢だ」
「そうですね。ありがとうございます」
「仲間なのだから、これ位の事を気にするな」
こう言う時のダクネスは心強い。
ダクネスにはいつも助けられてばかり、・・・ばかり?
・・・この事は置いておこう。
「めぐみんも無理せずに、困った時は私やアクアを頼るんだぞ」
「その時はお願いします」
この後、結局カズマとは話す事なく、街に着いた。
ギルドに着いてから、カズマはお酒が入ったおかげか、話してくれるようになった。
「今日は散々な目に遭ったけど、報酬が二百六十万も貰えて良かったな」
お酒を飲む前は割に合わないと言っていた人の発言とは到底思えない。
「めぐみん、ありがとな。心配してくれて」
「えっ、まあ私の所為でもありましたし、仲間の事を案じるのは当然の事です」
話を振られるとは思っていなかったから声が少し変になった。
でもカズマは酔っているからか、気にしていないみたいだ。
「めぐみんがパーティーに入ってきてくれて、ホント良かった」
カズマはズルい。
こう言う時に急に素直な気持ちをぶつけてくる所が。
「そ、そうですか。此方こそ私をパーティーに入れてくれてありがとうございます」
駄目だ、ニヤけるのが抑えられない。
取り敢えずカズマから視線を逸らす。
するとその先にはニヤついたアクアとダクネスがいた。
早く此処から離れたい。
「これからもよろしくな」
満面の笑みでカズマはそう言った。
見惚れてしまいそうになるのを堪えて、私は返事をした。
「こちらこそお願いします」
今度は逆に私が、カズマから逃げてしまった。 あの後何があったのか私は知らない。
雪精クエストから数日経ち、カズマの休養期間が終わったある日。
朝からカズマとアクアは喧嘩をしていた。
「お前は何で直ぐに金を使い切るんだ!」
「仕方ないでしょう!お金は直ぐに無くなるんだから」
アクアはいつものように、後先考えずに豪遊して、文無しとなった。
「そんな話をしてるんじゃない!お前の借金を誰が肩代わりしてると思ってるんだ!」
「そそれは・・・」
言い逃れが出来ずにあたふたし始めるアクア。
「これ以上何か言うならこれからは自分で借金返せよ」
カズマのこの一言でアクアも危機感を覚えたようだ。
「カズマさんごめんなさい。もうしないから、それだけは勘弁してください」
「はあ、しっかりしてくれよ」
カズマは呆れ果てたといった感じで、アクアは安心したようにしている。
そこへダクネスが依頼の紙を持ってやってきた。
「カズマこのクエストはどうだ?」
「どれどれ、凶暴化した一撃熊の討伐・・・舐めてるのか?こんなの受けたら俺とめぐみんは即死だぞ」
ダクネスが私利私欲の依頼を持ってきた事でまた、カズマの機嫌が損なわれてきた。
「いや別に舐めている訳ではないのだが、分かった。カズマが選んできてくれ」
カズマは溜息を吐きながら掲示板の元に行った。
戻って来たカズマは、荷物持ちの依頼の紙を持っていた。
「この前死んだばかりだから、比較的安全なやつを受ける事に・・・」
「おいおい、嘘だろ!荷物持ちの仕事なんて、上級職が多いのに巫山戯てるのか?」
ダストがカズマにちょっかいを出してきた。
「おい、もう一度言ってみろ」
カズマは怒りを抑えながらそう言った。
「何度だって言ってやるよ。荷物持ちの仕事だと?上級職が揃ってるのに、もっとマシなクエストがあっただろ。どうせお前が足引っ張ってんだろう?最弱職さんよ!」
ダストは同じテーブルにいた男達と笑い合っていた。
カズマは揉め事を起こしたくないからか、黙っていた。
それを萎縮と捉えたチンピラは更に強く出た。
「何か言い返せよ最弱職!いい女三人も引き連れて、ハーレム気取りか?おい!」
こんなに言われてもなお、握り拳を作るだけで言い返さないカズマ。
近くに居たカズマの事をよく知る冒険者達とリーンが止めようとしている。
「さぞかし良い思いしてるだろうな?」
カズマの表情から察するに怒りの限界は近いと思う。
「カズマ、相手にする必要はない」
「そうです。酔っ払いなど気にする事はありません」
「そうよ。あの酔っ払いは私達と一緒にいるカズマに妬いてるだけなんだから」
私達の言葉を聞き少しだけ落ち着いたみたいだ。
「上級職におんぶに抱っこで楽しやがって、苦労も知らずに良いご身分だな。俺と代わってくれよ兄ちゃん」
「大喜びで代わってやるよおおおおお!」
沸点を越えたカズマが叫びだした。
流石に予想外だったらしく、気の抜けた様な声を出した。
「だから代わってやるって言ったんだよ!さっきから黙って聞いていれば、言いたい放題言いやがって。確かに俺は最弱職だ。そこは認めるけど、おいお前その後なんて言った!」
「カ、カズマ?」
急に怒り出したカズマにアクアはおどおどしている。
「そ、その後?・・・いい女三人も連れてハーレム気取りかって・・・」
「いい女三人?ハーレム気取り!?何処にいい女が居るんだよ!」
私達の方に指を向けようとしたが、何故か途中で辞めた。
「お前いいビー玉持ってんな。これがハーレムに見える位に。なあ俺の濁ったこの目とそのビー玉を交換してくれよ!」
ダストはカズマの変貌ぶりに呆気に取られていた。
アクアとダクネスは素っ頓狂な声を上げている。
「なあおい!教えてくれよ!いい女が何処に居るのか教えろよ!さっきそう言ったよな。羨ましそうに言ってたよな!それにおんぶに抱っこで苦労知らずだあああ!」
完全にキレたカズマを目の前に、酔いが覚めたダストは逆に萎縮していた。
「そ、その悪かった。俺も酔ってたからキツく言い過ぎた・・・。でもあれだ、隣の芝生は青く見えるってやつだ。それにお前さんのパーティーは確かに恵まれてるんだよ。だから、一日だけ、一日だけでいいから代わってくれ。・・・お前らもいいよな?」
ダストはテイラー達に同意も求めた。
「俺は構わないぞ、ひよっこ一人増えても変わらないからな」
「俺も別にいいぞ」
「あたしもいいけど。そのまま帰って来ないとか言わないでね」
話が決まり乗り気な感じのカズマに、アクアが恐る恐る訪ねた。
「ねえ、私達に拒否権は、」
「ない!それじゃあな。俺の名前はカズマ。今日一日だけだけど、どうぞよろしく」
「「は、はあ」」
テイラーとキースは戸惑い気味だった。
「カズマ君、ウチのアホが迷惑かけてごめんね」
「リーンだったのか、この前は本当に助かったありがとう」
リーンは一応知っている間柄なので戸惑いはなかった。
来週やるやる詐欺にならずに済みました。
短くなってすいません。
言い訳をすると感謝祭でごたついてました。
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