今回はカズマ視点のみの閑話です。
独自設定ありです。
*原作との矛盾を訂正するため加筆しました
-TENTOJIGOKU-
ここはめぐみんが転移した後の天界。
「カズマさん、本当に良かったんですか?」
「いいんですよ。これで。あいつに苦労させる訳にはいきませんから」
今俺がここで働いているのは、これまでの規定破りの分の埋め合わせだ。
それにめぐみんを巻き込みたくない。
「そうですか。めぐみんさんなら事情を話せば喜んで手伝ってくれると思いますけど」
「だからダメなんですって。これは俺が落とし前つける事なのに、めぐみんの手を煩わせるなんて出来ないんですよ」
俺の一貫した考えにエリスは諦めた様に溜息を吐いた。
俺だって楽はしたいけど、 これに関しては俺とアクアの問題であってめぐみんとダクネスは関係がない。
だからこそ、めぐみんとダクネスが俺に会いたいって言っても、嘘をついて、生まれ変わって次の人生を歩んでるって言って欲しいと頼んだんだけど。
「所でエリス様。如何してめぐみんにはあんな嘘吐いたんですか?」
「それは、私なりの配慮ですよ」
エリスはドヤ顔でそう言ったけど。
「エリス様、すいません。ちょっと何言ってるか分からないです」
予想だにしなかった俺の返答に困惑している様だ。
「いや、その・・・ダクネスを案内した時にはカズマさんの事は聴かれなかったですけど。その時に思ったんです」
その時に思い付いたなら教えてくれればいいのに。
いきなり事実を言われて冷や汗をかいた。
「もし、めぐみんさんにカズマさんの言った嘘を吐けば、その場所に行きたいと願うだろうと、そしてその願いを叶えた時、カズマさんの居場所がバレてしまうと」
なるほど、エリスの言う通り、めぐみんなら有り得るな。
「そこで本当の事を織り交ぜながら、会いたいと思わせない嘘を吐く事にしたのです」
「配慮については感謝しかないですけど、俺が神になるとか言ってた時はもうバレるんじゃないかと思いましたよ」
俺の柄じゃないし、めぐみんが疑う事無く信じたのが驚きだった。
「バレなかったですし、カズマさんならそれ位の事が起こっても不思議じゃないと思いますよ」
もしかしてめぐみんもそんな風に思ったのか?
「実際起こって無いですからありえませんって」
「それはそうですけど、カズマさんの評判はいいですから何かの拍子に推薦されるかも知れませんよ」
確かに気に入られていると思う事は多いけど、邪険に扱われる時もあるしな。
神様は感情を読み取りずらい人も多い。
正直、あまりそういう神とは一緒に居たくない。
「もし、そうなってもやりませんよ。この仕事が終わったら・・・」
「すみません!カズマさん地獄の方から臨時の呼び出しです。直ちにそちらへ向かって欲しいとの事で」
俺の世話役になった女神見習いの子が来た。
地獄からの呼び出しという事はバニルからだろう。
「・・・またあの悪魔に会いに行くんですか?」
「まあ、これも仕事の一つですから。もしかして焼きもちですか?」
こんな冗談でも言わないとこの重い感じには耐えられない。
エリスは悪魔を毛嫌いしているから、この状況が面白くないのだろう。
「そう言うのでは・・・コホン、えっと頑張って来てください」
「では、行ってきます」
俺はそう言って天界から地獄へ転移した。
「おー、やっと来たか。愛しの爆裂娘との久しぶりの再会にも関わらず、見る事しか出来ず、悶々としている小僧よ。そんな汝にはこのサキュバスサービスのタダ券をやろう」
「ありがとう」
偶にバニルって優しいよな。
「まあ、天界に居る貴様には使えんだろうがな」
それを聞いたその瞬間に破り裂いた。
前言撤回だ。
結局こう言う事かよ。
「うむ、なかなかの悪感情。たいへん美味であるな。フハハハハハ」
「・・・なあ、俺もう帰っていいか?」
ここまでされて、やる気が無くならない訳が無い。
「落ち着け、今日はもう弄ったりはせんから安心するがよい」
「はあ、分かったよ。で、話って何だ?」
先程までの巫山戯た様子は無く、真剣な面持ちのバニル。
「ああ、それなのだが・・・爆裂娘が平行世界に飛ばされただろう」
「そうだけど。本当、何でも知ってるな、お前」
俺の問いには答えず当然だといった顔のまま話を続けた。
「その後あの娘は今までの経験を活かして、小僧らの歩んだものよりは少し楽な生活を送っていく様なのだが、そこに問題があってだな」
「問題?楽な暮らしをしてるのにか?」
始めの頃の苦しさを考えると楽な暮らしが送れているなら問題ないはずだ。
「貴様の考える事も勿論ではあるが、問題はそこではない。我輩が言いたい事は爆裂娘の行ったのはあくまでも殆どの条件が一致している平行世界であって、過去に行った訳ではないという事だ」
「それはどう言う・・・ってまさか」
「その通りである。頭のおかしい娘は自分は過去に戻ったと思っているが、そうではない。その世界にはほんの少しの差異があり、その差異によってパーティー全滅の未来が見えておるのだ」
嘘だろ。
こんな事なら、変な事せずにめぐみんに会って一緒に働いておけば。
「まあ、焦るでない。今からならまだ間に合うであろう。天界に戻れば丁度、世界調整をしている神がその事で騒いでいるであろうからな」
じゃあ今すぐにでも。
「そう焦るな!まだ話は終わっておらぬわ。今回の件は勘違いからの事故であるから、何とかあの娘を止められれば良いのである」
「止めるって言っても平行世界に行く事自体が特例なのにどうやってそこに行くんだよ」
これは天界規定で決まっている事だ。
平行世界への移動及び干渉は、世界軸統括の神の許可なく行なってはならない。
めぐみんの場合は神からお礼という事だったから一つ返事で許可されたが、既にお礼を貰った、ただの下働きの俺にはそう上手くいかないだろう。
「思う所はあるだろうが、兎も角、天界に戻るがいい。貴様の頭ならば何とかなるであろう」
「答えは教えてくんないのな」
「仕方なかろうて。流石の吾輩も眩しい奴らがうじゃうじゃいる場所の事は見通せんのでな」
そう言えばアクアの事は見通せてなかったか。
てかあいつの所為で回避出来た困難があったんじゃないだろうな。
「狂犬女神が居たとして、ある程度の事は見通す事が出来る故、そのような事は無いと断言しよう」
「じゃあなんであんなに巻き込まれるんだ?」
「それは駄女神の悪運が小僧の幸運を打ち消し、マイナスにしているからであるな」
結局アクアの所為か。
何となく分かってたけど、改めて聞くと何か腹が立ってきたな。
戻ったら取り敢えずあのアホの頭しばきに行こう。
「それをするのは一向に構わんが、先に爆裂娘の事を済ませるのが吉と出ておるな」
「分かったよ。教えてくれてありがとな。じゃ、俺はこれで」
「当分こちらからの呼び出しは無くなるだろうが、用があればいつでも来るがいい」
やっぱりバニルも優しくなっ・・・
「貴様の悪感情は大変美味であるから楽しみに待っておるぞ」
今度来る時はエリスを連れてこよう。
そう心に決めて俺は地獄を去った。
去り際にバニルが慌てた様子だったけど、俺には関係ないな。
「はあ、疲れた。こんな時はめぐみんの膝枕・・・は無理だな」
変な事考えずにこっちに呼べば良かったかもな。
「あ!カズマさん戻られましたか。今ちょっとした騒ぎが起こっていまして、至急会議室に来てください!」
「騒ぎねえ、分かったすぐ行く」
俺が会議室に着くと、殆どの神がいたのだが。
「久しぶりね。まさかこんな所で会えるとは思ってなかったわ」
懐かしむ様に笑顔で手を振ってくるウォルバク。
取り敢えず手を振り返したけど、如何して此処に居るんだ?
魔王軍に加担したから罰を受けてるんじゃなかったっけ。
「もしかして忘れちゃったの?一緒にお風呂に入ったりもした仲なのに」
確かにそうなんだけども、今言う必要ないよな。
周りの人じゃなくて神からの視線が痛い。
特にアクアとエリスからのが凄い。
「勿論覚えてますよ。ウォルバクさんって、処罰を受けてたんじゃないんですか?」
「それなんだけど、邪神認定されたのが原因だからって事で、情状酌量でお咎め無しとまでは行かなかったけど、少しの奉仕活動で済みました」
なるほどな。
確か、アクアのとこの信者達が邪神だー!って騒ぎ出したんだっけ。
アクアの方を見るとふいっと目を逸らした。
いや、待てよ。魔王軍に所属してから邪神認定されたんじゃなかったか?
後が怖いから言及はしないでおこう。
「そうなんですか。あっ、めぐみんの最後の爆裂魔法どうでしたか?あいつ恩人を殺してしまったってあの後『コホン』・・・」
「そういった話は後でお願いします。これは急を要する重大案件なんですから」
バニルの言っていた世界軸を司る女神様に叱られた。
「「すいません」」
「分かって頂ければそれでいいです」
真面目系な第一印象だな。
それよりも今のこの状況が気になる。
「あ、あのー、所で如何して、俺は円卓の中心に立たされてるんでしょうか?」
「それはあなたが重要参考人だからですよ。佐藤和真さん」
なんで?
気付かぬうちに天界のルールを破ってたとか?
「警戒する必要はありません。これはただの参考人招致ですから。では本題に入りたいと思います」
いや、普通、参考人に選ばれたら警戒するだろ。
多分裁判の証言者的な立ち位置なんだろうけど。
「自己紹介などは割愛させて頂きます。今回皆さんに集まって貰ったのは、先日転移させためぐみんさんの及ぼし得る影響についてです」
バニルの言った通りに事が運んでるな。
「めぐみんさんが転移したのは、この世界に限りなく近い世界です。しかし、その世界にもこちらとは違う流れが存在する事を確認しています」
「それが、どうしたって言うの?めぐみんの願いが叶う様な世界を準備したんでしょ?めぐみんがちょっとぐらいの違いを気にしたりしないと思うわよ」
アクアの言う事も分からなくはないが、そんな事でわざわざ会議は開かないだろう。
「言いたい事は分かりますが、事はそんな単純な問題ではありません!めぐみんさんは過去にタイムスリップしたと思っています。多少の差異は既に経験している様ですが、気には留めていません。ここが問題です!」
「何が言いたいのか分からないんですけどー。カズマ、あんた分かりやすく説明しなさいよ」
担当の女神様の顔が強ばってるからやめて欲しい。
女神様の方を見ると。
「説明してあげてください」
呆れ顔でそう答えた。
俺は苦笑いしながらアクアに説明を始めた。
「めぐみんは違う世界に行っただろ。そうだけどめぐみんは過去に戻っただけだと思ってるから俺達の経験した通りの対策をしてしまうんだよ」
「ふーん。それで何が問題なの?」
こいつホント馬鹿だな。
こんなのが日本担当ってのは、俺ら日本人が馬鹿にされてる気がする。
「めぐみんが行ったのは別の世界だから、こっちとは違う事もあってだな。分かり易く言うと向こうのダクネスが真っ当な聖騎士だとか、デストロイヤーが存在してないとかな」
「なるほど。ダクネスが変態じゃないとかそれはもうダクネスでは無いわね。て事はカズマがスケベじゃなくて引きニートじゃない世界もあるって事?」
こいつ!
後で覚えてろ。
ダクネスも酷い言われ様だな。
間違ってないけど。
「・・・まあそう言う事だ。それで今のはそこまで問題にはならないけど、これが敵の弱点だったりが違ったとして、知らずにそいつの討伐に行ったらどうなる?」
「それは、負けちゃうんじゃない?」
こう言う事はゲームやってるから分かるんだろう。
「そうだ」
ここで体の向きを女神様の方に変えて尋ねた。
「だから問題なんですよね?」
「はい、仰った通りです。このままめぐみんさんが行動を続けるとパーティー全滅の可能性が非常に高くなっています」
可能性があるとかじゃなくて確実なんだよな。
そういや、バニルはどうしてこの事を教えてくれたんだ?
正直ここで初めて知らされても問題は・・・いや、多分取り乱してたな。
それに向こうの自分への保身かな。
俺が居れば知的財産権で商売できるからな。
「そこで、機転を利かせて魔王軍を壊滅に追い込んだ英雄で、めぐみんさんに寄り添い続けた佐藤和真さんなら解決出来るのではないかと判断し、重要参考人としてこの臨時会に召喚した次第です」
英雄ねえ。
こっちに来てから急に言われる機会が増えたけど、まだぴんと来ないんだよな。
「一つだけいい案はありますけど」
「どうぞ言ってください」
期待の眼差しが凄い。
この女神様は検察官のセナみたいな感じで苦手だ。
「向こうの世界での担当の神様と連絡は取れますか?」
「大丈夫です。向こうのエリスとは連絡を取り合っていますから」
仕事が早い。
というか当然か。
ここに居るのは基本的に公務員的なしっかりした神ばっかりだからな。
何処かの駄女神を除いて。
「それじゃあ向こうのエリス様にこう伝えてください。めぐみんに━━━」
「・・・そういう事ですか。分かりました。ではこの旨伝えておきます。本日の会議はこれで終了としたいのですが、よろしいでしょうか?」
異論のある者は居ないようでそのまま閉会した。
今回のこの会議で一番思った事は、わざわざ多くの神々を呼ぶ必要があったのかって事だ。
殆ど二人の対談だったしな。
まあ、問題はある意味、解決出来たしやる事やるか。
「アクアちょっといいか?」
「何?もしかして私の事が恋しくなったの?」
「なってないし、ならないから安心しろ。で、これなんだ?俺の所に届いてるけど」
俺は請求書をアクアに突き出した。
「えーと、それは・・・野暮用を思いだしたから私は行くわね」
「逃がすか!」
首根っこを掴まえ、逃げられないようにして聞いた。
「ちちち違うの」
「何が違うんだ?」
違うって言うならそれなりの理由があるんだろう。
「ほらみんなと一緒にいた時によくカズマさんにツケてたでしょう。だからその癖で・・・ごめんなさい。そろそろ言いに行こうとは思ってたのよ。別にカズマさんが怖くて言わなかったとかじゃなくて」
「言いに来ればいいとかじゃなくて、何勝手に俺のツケにしてんだ!この間なんて初めての店に行った時にも、ツケの分の請求を今日中に出来ればお支払い下さいって言われて先月の給料全部飛んだんだぞ!」
その時一緒に飲みに行った全員に同情されて、給料日まで生活出来る分のお金は貰えたけど、その事でその面子に金返すまでこき使われたからな。
「分かった。返す。返すから待って!今取ってくるから」
今はアクアの方が金持ってるんだよな。
天界の金だからこっちに来たばかりの俺が金持ちな訳ないけど。
「話は終わりましたか?アクアさんと仲がいいんですね。佐藤和真さん」
振り返るとさっきの女神様がいた。
「まあ、一緒に冒険者してましたからね。あの、俺の事は呼び捨てで構いませんよ。無理ならエリス様が呼んでるような感じでお願いします。俺なんて下っ端ですから」
「そうですか。分かりました。・・・では、本題に入ります」
俺の呼び方を言うのかと思ったけど、違うのかよ。
「実は先程向こうの世界のエリスからめぐみんさんとの接触を行うと連絡がありました。それに際して、その後の起こり得るパーティー全滅の可能性はゼロに近いモノになりました」
「ゼロに近いって大丈夫なのか?」
「現在のパーセントはどこのパーティーも背負っているリスクと変わりませんから、心配の必要はありません」
まあ、カエル相手に全滅しかけてたから、そんなもんか。
「ありがとうございます。わざわざこんなアシストまでして貰って」
「私はただ自分の仕事をしただけですから」
女神の鑑だな。
借金の女神にも見習ってもらいたい。
「あー!カズマあんたここに来て、浮気とはいい根性してるじゃない。めぐみんの代わりに私が制裁してあげるわ!」
「お、お前!ふざけんな!俺は今でもめぐみん一筋だし!それにええと、この女神様にも失礼だろうが」
さっきまで話してたのにそう言えば名前聞いてなかったな。
「失礼も何もその子は私の後輩なんだから問題ないのよ。それよりもあんた今の状況分かってんの?」
「それはこっちのセリフだ。俺達はそんな仲じゃないですよね」
肯定してもらう為に顔を見たら、赤面してぼーっとしてる女神様がいた。
「ふぇ?は、はい。私達はそういう関係では無いです。アクア先輩」
これはダメだ絶対疑われてる。
この女神様はきっと恋愛経験がなかったんだろうな。
でも俺だって怪しんでる二人のどっちかがこんな反応したら、間違いなく付き合ってると思う。
アクアは今にも俺に襲い掛かって来そうな格好してる。
どうしよう。
逃げるのも一つだけどそれだと、さらに疑われるし、金が取り返せない。
いや、金は何とかなるか。
「黙り込んじゃって、やっぱり図星だったのね」
「違うって言ってんだろ!何なら嘘ついたら鳴る魔道具持ってこい」
「騙されないわよ!これは前にカズマの言ってたブラフってやつでしょう?私を甘く見過ぎよカズマ」
まじで面倒くさい。
何でこんな時は変な方向に頭が回るんだよお前は!
「ブラフでもないから、早くその臨戦態勢を解け、怯えてるだろう」
「容疑者はみんなそう言うのよ。観念なさい」
お前はコ○ンの見過ぎだ。
やっぱりこうするしかないか。
「あっ、ゼル帝が危ない!」
「え!どこ!?早く助け『スティール!』な、いと」
よし金袋が盗れた。
後は逃げるだけだ。
女神様の手を取って俺は話しかけた。
「逃げますよ」
「えっと、はい」
無事アクアを撒くことに成功したが、俺とこの女神様の関係が疑われる様になったのは言うまでもない。
今回の話が本編に関わるのはもう少し後になります。
オリキャラの女神様の名前は決まってない訳じゃなくて、次の閑話に出てくる時に紹介します。
カズマさんの誕生日話は誰視点が良いかについて
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