一話目との関連はまだないです。
あの子が帰って来ます。
-ZENINSYUUGOU!-
パーティー入れ替え騒ぎから数日が経った。
カズマ曰く明日にはゆんゆんが帰って来るらしい。
現地で仲のいい冒険者が出来たらしいが、多分前にどどんこやふにふらに送っていた様な虚偽情報だろう。
話は変わるがリーンがカズマの手腕をギルドで話した事で、ギルド内ではカズマの事がよく話題に上がり、魔王幹部を倒したパーティーのリーダーと言う事もありで注目を集めている。
そのおかげと言うか、所為と言うか、あのクエスト以降カズマの引き抜きをしようとするパーティーが何組か現れるようになった。
この前カズマに戦い方を教えて貰っていた子達のいるパーティーとテイラーのパーティーだ。
テイラー達に関しては引き抜きと言うよりも手伝って貰いたいと言う感じだった。
それよりもあの後輩冒険者のパーティーが危険だ。
あの子達の目は完全にカズマに惚れてる系の目をしていた。
それに、他の仲間も即戦力となるカズマを手に入れようと必死になっていたから余計に気を付けなければならない。
ただ幸いな事にカズマは好意には気付いておらず、先輩面出来る様になったから嬉しいけど、パーティーを抜ける気は無いと言っていたので少し安心している。
「どうしたんだみんな?浮かない顔して」
とは言っても心配な事に変わりはない。
「別に、カズマがその内何処かのパーティーに行かないかなんて心配して無いからね」
「うむ、そのような心配は全くしていないぞ」
二人は嘘が下手過ぎる。
カズマが溜息を吐いて言った。
「そんな事気にしてたのか?確かに声は掛けられてるけど、一応このパーティーのリーダーだから抜ける気はないからな」
アクアとダクネスは安心したように息をついたが、アクアが急に表情を変えて反論を開始した。
「ちょっとカズマ何言ってんの?このパーティーのリーダーは私よ!私の下僕であるカズマが何調子こいてリーダーだって言ってるの!」
いい感じの雰囲気が台無しだ。
でもアクアらしくてこれはこれでいいかも。
「は?今なんつった?最後になんて言ったかもう一度言ってみろ!」
「落ち着けカズマ。相手はアクアだ。ここは大目に見てやれ」
カズマの怒りは限界を越えそうだったが、何とかダクネスが抑えようとしていたのだが。
「なんて言ったかって?私の下僕であるカズマがリーダーを名乗るのは
アクアの一言でカズマの怒りは爆発した。
「ふざけんな!誰が下僕だ!お前が俺の事どう思ってるのかはよく分かった。ちょっと今からテイラー達のパーティーに行って・・・」
「カズマ!気持ちは分かるが抑えて」
ダクネスは宥めているけど、ここまで怒ってしまったら時間を置かないと駄目だろう。
「嫌だ!ここまで言われてまで問題児達の世話はしたくない」
「アクアには私が言って聞かせるから落ち着いてくれ」
ダクネスもカズマの本気度が分かったのか、逃げられない様に腕を掴んでいる。
「離してくれ!俺はもう決めたから行くんだ」
「待ってくれカズマ!アクア早くカズマに謝るんだそうすれば・・・」
アクアは何処かに行っていた。
ここは私も加勢して止めないといけないかもしれない。
「いい加減離せよ。いつまで掴んで・・・」
カズマの視線の先には状況が飲み込めず、混乱しているゆんゆんが立っていた。
「どうしたんだ?」
そう言ってダクネスは振り返りゆんゆんに気付いた。
「「・・・おかえり」」
二人は取り敢えず挨拶する事を選んだみたいだ
「・・・・・・はっ、えっと、ただいまです。カズマさんダクネスさんと後めぐみんも」
混乱状態だった為に返答がおかしくなっているゆんゆん。
私がついでなのが腹が立つが。
「なあ、ゆんゆん。到着は明日じゃなかったのか?」
カズマがみんなの疑問を代表して聴いた。
「明日ですか?今日着くように連絡したはずですけど・・・もしかすると予定より届くのが遅れたのかも知れませんね」
「そう言う事か。にしても久しぶりだな。一ヶ月ぶりか?」
「うむ、ベルディアが越してきたのが大体それぐらいだな」
ゆんゆんが来た事でカズマが落ち着きを取り戻した様だ。
「あのー、アクアさんは何方にいるのでしょうか?出来れば皆さんが揃っている時にお土産を渡したいのですが」
「いや、アイツは本日付でこのパーティーを抜けたから気にしなくて良いぞゆんゆん」
冷静になったカズマはアクアだけを切り捨てる方針に決めたらしい。
「アクアさんパーティーを抜けたんですね。・・・めぐみん。今、カズマさんが本日付って言わなかった?」
「ゆんゆん、その事には触れない方がいいですよ。後で事情は話しますから」
カズマの機嫌が戻って来ているのだから掘り返す事はしたくない。
「ゆんゆんが帰って来た事だし、歓迎会をしないか?」
「それいいな。よし!今からゆんゆん歓迎会だ!」
さっきまで揉めていたとは思えない位いい雰囲気になってきた。
「私なんかの為にありがとうございます!」
「何謙ってるんですか。今日の主役はあなたなのですから堂々としてください」
こう言う所がゆんゆんのコミュ障たる原因だろう。
「そうだぞゆんゆん。気にする事は無い。楽しんでくれ」
この一言でゆんゆんの緊張は解けたみたいだ。
「そう言えば向こうで一緒にクエスト受けてくれた人ってどんな人何だ?」
「えっと、ウルさんという方なんですけど、穏やかな感じで優しい人です。実はこの街に知り合いの店があるからと言う事でさっき別れたのですが、暫くの間、この街に滞在するらしいです」
まさかあの冒険者が嘘ではなかったとは驚きだ。
「へぇー、そうなのか。じゃあ明日そのウルさんに会いに行こうかな」
「そうだな、お礼も兼ねて挨拶に行こう。それでウルさんの知り合いの店は何処にあるのだ?」
二人は興味津々の様だ。
「それは知りませんが、泊まっている宿の場所は分かりますよ」
なら話が早い。
この街に居ると言う情報だけでは範囲が大き過ぎる。
「では明日その宿に行きましょう。今日は歓迎会です」
「うん、ありがとうね。めぐみん」
照れて顔を赤く染めて、もじもじしてるゆんゆん。
「何水臭い事言ってるんですか。今日はあなたの奢りなんですか痛っ!何するんですかカズマ!痛いじゃないですか!」
何の前触れも無くチョップされた。
大して痛くはなかったけど。
「アホな事言い出すからだろ。ゆんゆんを歓迎するのに、その費用がゆんゆん持ちっておかしいだろ」
「何もおかしくないですよ。代々紅魔族では族長の一族が催し事の費用を払うと決まっているのですから」
「そうなのか。そう言う事とは知らずに叩いたりしてごめんな」
冗談のつもりが頭を下げられてしまった。
罪悪感が湧いて来た。
「ねえ、めぐみん何サラッと嘘ついてるの?カズマさんもめぐみんに騙されないでください」
ゆんゆんが本気で怒っている様なのでこれ以上ふざけるのは辞めておこう。
「嘘だったのか?本当の事ぽかったけど、てか俺の謝罪の気持ちを返せ」
「すいません。冗談のつもりだったんです。まさかツッコミが無いとは思っていなくて」
この世界のカズマは少し素直過ぎる所があるので、気を付けて欲しい。
「ボケだったのか。気付けなくてごめ・・・なんで俺が謝ってるんだ?」
カズマの問いに答えられる人はいなかった。
少しの沈黙の後、ゆんゆんが私に近付いて来て言った。
「所でアクアさんはどうしたの?」
「アクアはカズマを怒らせてそのまま逃げて何処かに行ってしまっただけです。その内帰って来ますよ」
帰ってきてもまたカズマと喧嘩するだろうけど。
「そうだったんだ。だから聴かない様に言ったのね」
「そういう事です。アクアがパーティーを抜けてる訳ではないので安心してください」
早いうちにカズマの機嫌を取っておかないと不味い。
「えっと、気を取り直して。バカがどっか行ったけどゆんゆんが無事帰ってきた事に乾杯!」
「「「乾杯!!」」」
カズマも酔ってきた事で落ち着きを取り戻してきた。
「なあ、アクアは何処行ったんだ?あいつの宴会芸が無いと盛り上がりに欠けるんだよな」
「私にも分かりませんが、この騒ぎを聞いて帰ってくると思いますよ」
なんだかんだでカズマはみんなの事が好きなのだ。
「あっ、ほら。あそこに」
私の指した方向にはこちらの様子を窺うように、逆に目立つ変装をしたアクアがいた。
「・・・あいつはホント馬鹿だな。知力が低いって言うのが納得いくよ」
「流石に言い過ぎではないか?」
ダクネスは止めてきたが本心は肯定だと思う。
「あのー、声掛けなくていいんですか?」
「アクアが謝るまでは話し掛ける気は無いからな」
流石に怒りは収まっていないらしい。
アクアは変装を解いて、ちらちらこっちを見ている。
カズマはそれを見てイラついてる様だ。
「よーし、今日はここら辺で帰るか。そうだゆんゆん、宿ってどうしてる?」
カズマのやりたい事が読めた。
「宿は、これから探そうかなと思っているのですが」
「なら、ダクネスの部屋に泊まればいい。丁度一人抜けたからな」
「えっ、いいんですか?」
ゆんゆんの反応を見て、限界を迎えたアクアが飛び出して来た。
「ダメー!カズマさんごめんなさい。私が悪かったから追い出そうとしないで!」
「はあ、謝る位なら初めから言うなよ。分かった。追い出さないから泣くなって」
うーん、やっぱりカズマとアクアはなんと言うか他の人には入り込めない間がある。
一番長い付き合いだからなんだろうけど、羨ましい。
「でも、ゆんゆんの宿どうする?ダストから聞いたけど、この時期から宿取るのは難しいらしいぞ」
「それなら私が実家の方に戻ればいいのではないか?」
なるほど。ダクネスが屋敷に戻れば、解決できる。
「いえ、そんな迷惑をかける訳にはいきませんよ。自分で頑張って探してみます」
如何してこの子はこうも遠慮するんだろう。
「そうはいっても、もう夕方だからな。そう言えば俺らの部屋ってダブルとシングルの両方が置いてあったよな」
「有りましたけど・・・あっ、分かりましたよ。ゆんゆんがシングルで寝て、私とカズマがダブルで寝るんですね?私はそれでも構いませんよ」
カズマと添い寝ができる絶好のチャンス。
「その通り。流石めぐみんだ。・・・なあ今俺とめぐみんがダブルって言わなかったか?」
「ええ、そう言いましたよ。何か問題がありますか?」
「いや、ないけど・・・」
ふふふ、これで添い寝確定。
「ちょっと待って下さい。問題大ありですよ。普通私とめぐみんがダブルですから」
ゆんゆんめ、余計な事を。
「ああ、そうだな。男女で同じベッドは不味いだろう。カズマ、お前は最近めぐみんに流され過ぎだ」
「うん、気を付ける」
後もうちょっとだったのに。
でもまあ、巫山戯てるだけって思われてるから丁度いいけど。
翌日、目が覚めるとカズマが隣に居た。
もしかして本当は私とカズマがダブルで、
「ウ・・・さん、そっち・・・お願いひまひゅー」
・・・寝てませんね。
ゆんゆんがダブルベッドで寝ている。
いつもこっちで寝ているから、トイレに行った時に寝ぼけてこっちに入ったのだろう。
「めぐみん、おはよう。・・・なんで俺の布団に入ってんの?」
馬小屋の時はすぐに顔を真っ赤にさせてたのに冷静な問いかけだ。
カズマも少し慣れてきたのかもしれない。
「おはようございます。寝ぼけて、いつもの癖でこっちの布団に入ってしまったみたいです」
「そう言う事か。明日からは気を付けろよ」
そう言いながらカズマは支度を始めた。
「あの、どうしたんですか?今日はクエストの予定はなかったと思うのですが」
鞄の中には多くの物が入ってる様だ。
「ゆんゆんが世話になったウルさんに挨拶するのと、ウィズの店に行く予定があるからその準備だ。そろそろゆんゆんを起こしてくれ」
「分かりました」
ベッドから降り立ち。
ゆんゆんのそばに行き。
「ゆんゆん朝ですよ。起きてください」
「んー、めぐみん?どうしてめぐみんが私の部屋にいるの?」
「何寝惚けた事言ってるんですか。早く起きて支度を済ませて下さい」
ゆんゆんって朝に弱いのかもしれない。
「おはよう、ゆんゆん。めぐみんの言ってる通り早く支度を頼む」
「カズマさん?・・・はっはい。今すぐ準備します。えっとおはようございます」
やっと覚醒したみたいだけど、テンパリ過ぎだと思う。
「カズマー、まだなの?こっちはもう準備出来たわよ」
「今ゆんゆんが、準備してるから待ってくれ」
扉越しの会話が始まった。
「すいません。今すぐ終わらせます。ってああっ」
ゆんゆんは焦り過ぎて鞄に入れてた物を全てばらまいてしまった。
「ゆんゆん大丈夫か?焦らなくてもいいから気を付けてくれ」
そうこうしている間にウルさんが宿を出てしまっている事を私達は知らなかった。
ウルさんはオリキャラじゃないとだけ言っておきます。
そんなやつ知らんって言われても言い張ります。
分かってくれる人がいればそれでいいんです。
これ以上はネタバレになるかもなので黙っときます。
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