この素晴らしい世界に●●を!めぐみんのターン   作:めむみん

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初期の頃ぐらいの分量です。


恐怖の再来

-KYOFUNOSAIRAI-

 

みんなから祝って貰えた翌日。

カズマとアクアの三人でウィズの店に来ていた。

 

「いらっしゃいませ。ひっ!ア、アクア様!」

 

・・・どっちがリッチーか分からない。

ウィズはカウンターから身震いしながら様子を伺っている。

店内を見渡すとバニルは居ないようだ。

 

「ふふっ、控えなさいリッチー。浄化されたくないなら、さっさとお茶の一つでも出しなさい」

「はい!!今すぐに!」

 

アクアが(たか)りに来たチンピラに思えてきた。

 

「ウィズその必要は、お前なあ。恐喝じみた事はやめろよ」

「相手はなめくじリッチーなのよ!見逃してるんだからこれ位いいの。それより今日は何しに来たの?」

 

カズマは諦めた様で追及するのをやめた。

アクアにはまだ伝えていない目的は、例のアレである。

 

「お茶です。みなさんどうぞ」

「わざわざ悪いな。ありがとう」

 

お茶を貰ったカズマはアクアと同じく椅子に座った。

 

「ありがとうございます」

「いえいえ、これ位気にしないでください。あの、めぐみんさんその指輪はどうされたんですか?」

 

ウィズは目を光らせて聴いてきた。

 

「これは昨日カズマから誕生日プレゼントに貰ったんです」

「そうなんですか。おめでとうございます」

 

ふっふっふ、この調子で皆が誤解してくれれば、外堀は埋められる。

私がウィズに返事をしようとしていると、カズマが本題に入った。

 

「今日来たのは、この前話してた悪霊騒ぎの件なんだけど」

 

アクアがサボり始めた事による弊害の解決だ。

この前、カズマとダクネスの二人が店に来ていた時に話を聞き、アクアなら何とか出来るかもしれないと言う話になったらしい。

 

「その件ですね。不動産屋の方に確認した所、除霊してそのまま住んで貰えると助かると仰っていました」

「住んでいいのか?」

 

カズマはマッチポンプになっている事を知らない。

もし知っていたら依頼として受けたりしないだろう。

 

「はい、噂が広まってしまって買い手が居ないらしく、幽霊屋敷と言われなくなるまで住んで欲しいと言う事でして、家賃はタダで良いそうです」

 

カズマは少し悩んだ結果。

 

「分かった。宿代も浮いてお得だから、その依頼受ける事にするよ」

 

家で暮らす事も依頼に含まれていて、報酬と言う形ではなかった事が決め手になったのかもしれない。

 

「えっと、こちらがお屋敷の鍵です。受け取った日から暮らしても構わないそうなので、今日からでも大丈夫ですよ」

「ありがとう。という訳でアクア、お前には屋敷の悪霊退治して貰うからな」

「ちょっと待って、勝手に決められても困るんですけど。私はやらないわよ」

 

気持ちは分かる。

自分の知らない所で話が進んでいて、しかも自分任せの依頼をさせられるのは嫌だ。

これがアクア自身の所為でなければ、私は止めていたけど。

この件については仕方ない。

 

「そうか、ただでさえ役に立ってないのにプリーストとしての仕事も放棄するって言うんだな。なら今からギルドに行ってエリス教徒のプリーストをパーティーに・・・」

「やる!やるから待って!私を追い出そうとしないで!それにエリスのとこのプリーストに手柄取られるなんて絶対に嫌よ」

 

半泣きになってカズマに縋り付くアクア。

 

「ちゃんとしろよ。もし、お前がサボって怖い思いさせられたら本当に他からプリーストを募集するからな」

 

カズマの事だからただの脅しだろう。

 

「うん、しっかりするから見捨てたりしないでね」

 

いつもなら威勢よく言い返している所だけど、しおらしい反応だ。

カズマも照れてるみたい。

 

「お、おう。頼んだぞ」

 

此方では、アクアもマークしておかないといけないかもしれない。

 

 

 

「この屋敷か」

「そうみたいですね」

 

懐かしの我が家だ。

やっと此処に辿り付けた。

 

「悪くないわね。私が住むに相応しい屋敷だわ」

「あ、あのー、如何してこんなお屋敷に住めるようになったんですか?」

 

未だに説明を受けていなかったらしいゆんゆんが質問をした。

 

「あれ?話してなかったっけ?ほら、アクアが除霊する依頼を受けるって話があっただろ?その流れで住めるようになったんだけども」

 

此処で暮らせるようになった経緯を説明するカズマ。

 

「・・・聞いてないです」

 

まさかのハブられていたゆんゆん。

回復するのに半日かかりそうな位に落ち込んでしまった。

カズマとダクネスは互いに相手が話していると思い込んでいたのだろう。

目を合わせたり、ゆんゆんの方を見たりして、焦っている。

 

「見える、見えるわ!・・・この屋敷には貴族とそのメイドの間に産まれた隠し子が幽閉されていたのね。貴族の男は病弱で病に倒れ、母親のメイドは行方不明。そんな中、一人ぼっちになった女の子は、父と同じ病に伏して、一人で寂しく亡くなったの。その子の名前はアンナ=フィランテ=エステロイドよ。好きな物は、ぬいぐるみや人形、あと冒険譚も好きみたい。・・・ふーん、ちょっと大人ぶった事が好きなのね。甘いお酒を飲んだ事があって、好みらしいから、カズマ、そう言うお酒の準備よろしく。あと、この子は悪い子じゃないから除霊の必要は無いわ」

 

急に胡散臭い話をし始めた所為で、三人の顔は不安の色に染まっていた。

 

「・・・・・・なあ、これ大丈夫か?安請け合いした気がして不安になってきたんだが」

 

その質問には誰も答えようとせず、ただ目を逸らすだけだった。

 

 

 

粗方準備も終了し、後は家具の細かい配置を済ませれば、あの頃と変わらない部屋の完成である。

一つだけ違うのはカズマの隣の部屋になった事。

違う部屋にしようか悩んで、見て周った結果。

前の部屋と同じ部屋に決定した。

すると偶然にもカズマの選んだ部屋の隣だっただけ。

決して隣の部屋を選びにいった訳ではない。

訳ではないのだが。

 

「めぐみんってば、カズマの事好きなの?わざわざ隣の部屋を選ぶなんて」

 

くっ、せめてカズマよりも先に、この部屋を選んでおけば、こんな事にはならなかったのに。

恥ずかしくはないけど、まだ会ってからそこまで日が経っていない状況で好きだとか言ったら、アクアからチョロインだって言われそうで嫌だ。

 

「偶々です。気に入った部屋が偶々隣だったんですよ」

「本当に?・・・まあ、そうよね。めぐみんがカズマの事好きだとか有り得ないわよね。カズマにめぐみんは勿体な過ぎるもの」

 

私は逆に、カズマが私には勿体ないとよく思っていたのだが。

どうやら違うらしい。

 

「そう言う事を言っているから、カズマから雑な扱いを受けるんですよ」

「大丈夫、大丈夫。カズマの荷物は多かったから準備に時間が掛かってるはずよ」

 

そういう問題じゃないけど、言っても無駄だろうから諦めた。

 

「バレても知りませんよ。そう言えばアクアは随分と早かったですね。私よりも荷物は多かったと思うのですが」

「必要な物以外は箱詰めしたまま置いてきたから当然よ。あっ、出し忘れた物を思い出したから、それ取ってくるわね」

 

この後アクアは戻って来る事はなかった。

重大な事を忘れている気がしながらも私は部屋に戻り、眠りに付いた。

 

 

 

お風呂に入り忘れていた事を思い出し、目を覚ますと、机の上に置かれている人形と目が合った。

あんな所に人形ってあっただろうか?

いや、なかった。絶対にない!

あ!!思い出した。

確か幽霊騒ぎに、カズマと巻き込まれた事があった気がする。

勇気を振り絞ってもう一度、その人形を見るとそこには何も無かった。

辺りを見回しても何も居な・・・

 

「きゃあああああああ!!」

 

ニンギョウタクサンコワイ。

 

「めぐみん!如何した?大丈夫かああああああああ!?」

 

カズマが隣の部屋から私を心配して出て来てくれた。

この光景を見て、顔を真っ青にしながらも手を引いて一緒に逃げてくれた。

 

 

 

私達は何とか人形を巻いた。

逃げた角に、空き部屋が有って助かった。

 

「めぐみん、何があったんだアレ」

「お風呂に入ろうと思って、起きたら急に現れて・・・」

 

思い出しただけで身震いしてしまう。

 

「ごめん、嫌な事思い出させて。まずアクアの所に行こう。何とかなるはずだ。それまでは俺が守ってやるから安心してくれ」

「・・・ありがとう、ございます」

 

今のカズマはカッコよすぎる。

カズマがイケメンに見えて周りにキラキラが出てる。

駄目だ直視できない。

それに多分、顔真っ赤になってるだろうから、下を向いておく。

 

「そろそろ行くぞ。大丈夫か?」

「ええ、行きましょう」

 

扉を開けてみるも、何かがいる気配は無かった。

警戒しながら進んでいくと、後ろに気配を感じ、振り向こうとした時。

 

「めぐみんにカズマさん二人で何してるんですか?挙動不審ですよ」

 

ゆんゆんに声を掛けられた。

声の主が分かり少し安堵する私達。

 

「なんだゆんゆんか焦らすな、よ・・・」

「そうですよ。急に声を掛、け・・・」

「「うわああああああ!!」」

 

ゆんゆんの後ろに無数の人形が這い寄って来ていた。

それを見た私とカズマはほぼ同時に踵を返して、走りだした。

 

「ちょっと、待ってください。どうしたんですか?後ろに何が有、る・・・きゃああああああああ!!」

 

この後三人で、アクアの部屋まで全速力で走って逃げた。

部屋に着いてからは、ゆんゆんに先に教えてくれと怒られたが、そんな余裕は私達に無かった。

ただ、問題はまだ続いている。

部屋に着いたはいいが、アクアが居ないのだ。

 

「なあ、思ったんだけど、俺ら詰んでるんじゃないか?外にはアイツらが大量に居るし、アクアも居ないし」

「それに、私達は神聖魔法が使えないですから、やっぱり私達もう終わりなんじゃ」

 

二人揃って暗い方向にしか考えられなくなっている。

目も死んでいる。

さっきまでのカッコよかったカズマは何処かに行ってしまった。

 

「何諦めてるんですか!しっかりしてください。多分、除霊をしていると思うので、時間が解決してくれますよ」

「本当か?じゃあ、此処にいれば何とかなるのか?」

 

期待の眼差しで見てくる二人。

私に期待されても困る。

 

「いや~今日のは手強かったわね。ダクネスもちょっと飲んでかない?私の部屋にいいお酒があるのよ。ってダクネスどうしたの?さっきから何処を見て・・・みんな如何して私の部屋に居るの?」

「えっと、人形から守って貰おうと思ってな。もう除霊は終わったのか?」

 

何とか助かったみたいで良かった。

何故こんなにも重大な事を忘れていたのだろうか。

 

「勿論よ。でも、ここのお屋敷の貴族の子はまだ残してあげてるけど、その子はいい子だから気にしなくても大丈夫よ」

「助かったよ。・・・今なんて言った?もしかして、屋敷に入る時に言ってた子か?」

 

一瞬、安堵した様だったが、すぐに顔を引きつらせるカズマ。

 

「そうそうその子よ。歳は大体めぐみんやゆんゆんぐらいの子なの」

「分かった。確か、お酒と冒険譚が好きなんだよなその子。覚えとくよ」

 

前回は全く信じなかったと言うのにあっさり受け入れた。

その後各自部屋に戻って寝る事になった。

でも寝ようとベッドに入っても、あの恐怖が蘇ってきてそれ所じゃない。

前は如何していたっけ?

確か、ちょむすけを数えていた気がする。

 

「ちょむすけが一匹。ちょむすけが二匹。ちょむすけが三匹・・・」

 

駄目だ。

ちょむすけが恋しくなるだけで眠くならない。

・・・トイレに行きたくなって来た、どうしよう。

部屋の外に出るのは怖いし、かと言ってこのまま我慢する訳にもいかないし。

 

「めぐみん、起きてるか?ちょっと付き合って欲しいんだけど」

 

丁度いいタイミングでカズマの登場。

 

「起きてますよ。私も付き合って欲しい事があるのでいいですか?」

「嗚呼、その・・・」

 

何か重大な決断をした様な目で、少し恥ずかしがりながらカズマは言った。

 

「悪いんだけど、トイレまで着いてきてくれるか?情けない話だけど、あれを思い出すと怖くて・・・」

 

どんどん声が小さくなっていくカズマ。

なるほど、男としてのプライドを捨てる決心だったのだろう。

 

「そんな事ないですよ。私の用事も同じですから」

「そうか。ありがとう。此処で話してても変わらないし、行くか」

 

この後問題なく用事を済ませられたのだが、やはり寝付けなかった。

そこでカズマのベッドに転がり込んでみたらぐっすりと眠れた。

カズマは如何して居たかって?

勿論、寝ていました。

起きていたら、追い返されていただろう。




明後日はクリスとエリスの誕生日で、めぐみんの誕生日から丁度三週間目です。
またみなさんと盛り上がれる事楽しみにしています。

カズマさんの誕生日話は誰視点が良いかについて

  • カズマ視点(天界)
  • カズマ視点(討伐後)
  • ヒロインズの誰か視点(天界)
  • ヒロインズの誰か視点(討伐後)

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