発言注意
-HATUGENTYUUI-
カズマに連れられて、商店街にやって来た。
これからデートと思っていたけどそう上手くはいかなかった。
まだ照れが残っているみたいで、中々話が出来ないのだ。
「あの店のお菓子美味しそうですね」
「そうだな」
「・・・」
「・・・」
「カフェでゆっくりしませんか?」
「そうするか」
「・・・」
「・・・」
顔を見ようともしないし、さっきからこの調子だ。
話し掛けても生返事しか返って来ないから会話が成立しない。
「いらっしゃいませー。お好きな席へどうぞ」
「ありがとうございます。何処に座りますか?」
「めぐみんが好きなとこでいい」
「ではここで」
窓側の席を私は選んだ。
「・・・」
「・・・」
席に着いてもカズマの様子は変わらない。
何とかならないものか?
と悩んでいると知った顔が入店する所が見えた。
向こうも此方に気付いたみたいで。
「あっ、さっきぶりだね。・・・もしかしてお邪魔だったかな?」
クリスは空気を読んで離れた席に行こうとしたが、私は止めて言った。
「別に構いませんよ。良かったら一緒に飲みませんか?」
「じゃあお言葉に甘えて」
これで多少は会話が出来るだろう。
楽観的に考えていたけど、現実はそう上手くはいかなかった。
「・・・二人とも何があったの?やっぱり邪魔だったんじゃ。カズマくんさっきから黙ってて、機嫌悪そうだし」
自分の名前が出た事でやっとカズマが話し始めた。
「そんな事ないって、ただ、ギルド出てから色々あっただけだ」
「ふーん、で色々あってめぐみんとお茶してるんだね」
「まあ、そんな所だな。そういや課長さん大丈夫だったのか?」
会話が弾むようになってきた。
カズマの表情も明るくなってきたし。
クリスには感謝しかない。
「アクアさんの回復魔法で何も無かったかのように綺麗に治ってたよ」
「そうか。なら良かった。また今度挨拶しに行かないといけないな」
今のカズマからはさっきまでの恥じらいは消えていた。
「そうですね。私も個人的に課長さんへお礼したいので、明日行きませんか?」
カズマとゆんゆんを尾行してた時の報告とか色々したい事はある。
カズマは了承してくれた。
雑談を始めもはやデートではなくなって来た。
丁度いい機会だからエリス様との約束を果たそう。
「それでね。この前、急に先輩から無茶な事頼まれて、まだやらなきゃいけない事がいっぱいあったのに大変だったよ」
多分、カズマの蘇生の事だろう。
確か、天界規定で蘇生は一回しか出来ないらしい。
それをアクアがエリス様にパワハラして、通してくれていた。
そう考えたら、私がカズマと結婚出来たのもアクアのおかげという事になるのか。
今日帰りに高級ワインを買って帰ろう。
「お疲れ様です。あの良ければ、クリスのいつもやってる義賊の活動手伝いますよ」
「いいの?最近出来てなかったから助かるよ」
クリスは満面の笑みで喜んでいた。
「・・・義賊の活動ってなんだ?義賊って事はクリスは泥棒してるのか?」
カズマの指摘を受け、笑顔が張り付けられたようなモノに変わった。
「そんなわけないって!めぐみんの冗談に付き合っただけ、そう!話を合わせただけ!」
こうやって焦ってる所を見てるとアクアと似てるなと思う。
「分かったって、それでめぐみん、何手伝うんだ?俺が居るこの状況で頼んだって事は、俺にも手伝わせるつもりだろ?」
「ちょっとカズマくん全然分かってないよね!めぐみんも説明始めないでって言うか如何してそんな事まで知ってるのさ!」
「クリス諦めた方がいい。めぐみんに情報戦で勝とうとしても無駄だからな」
「なんでさ!」
あの後すったもんだあったが、詳しい話は後日にする方向で決まった。
そして、クリスとは別れて、私達はデートを再開していた。
「な、なあ、手繋ぐ必要あるか?」
「ありますよ。デートなんですから」
「そ、そうか」
恥ずかしがってるカズマが可愛い。
早くカズマから告白してくれないだろうか?
そうすれば恋人繋ぎも出来るというのに。
「そういや、今日の目的ってなんだ?」
「なんだと思いますか?四択で当てられたら手を離してもいいですよ。間違えたら恋人繋ぎですけどね」
「本当か!よし、絶対当ててやる」
ここまで喜ばれると私が嫌われてるみたいで悲しくなってきた。
どうしよう涙が。
「あっ、えっと、ごめん。別にめぐみんと手繋ぐのが嫌な訳じゃなくて。恥ずかしかったからで」
「分かってますよ。嘘泣きですから気にしないでください」
自分でもなんて弱々しい声なんだろうと思う程、小さい声になっていた。
「ほんとごめん!罰ゲームの恋人繋ぎもするから許してくれ」
こうして私はカズマと恋人繋ぎをする事になった。
街中だとカズマが話さなくなるかもしれないから、爆裂散歩の行きと家までの帰り道だけにした。
とは言っても手を繋いで、距離は近くなっている訳で。
「あのすいません。串団子二個ください」
「デート中かい?羨ましいねえ。オマケにもう一個付けといてやろう」
「ありがとうございます」
さっきから色んな露店でオマケが付いてくる。
後、カズマが照れなくなってきた。
それに何か悪い事をして、警戒してる感じになってきた。
「めぐみん、そろそろ爆裂しに行かないか?」
「急にどうしたんですか?まだ、遊び足りないのですが」
「いや、だって・・・俺ら付き合ってないのに色々貰ってるの悪い気がしてきて、それにめぐみんの目的これだろ?デートに付き合うって言った手前あまり言えないけど」
カズマの警戒していた事は分かった。
けど、失礼にも程がある。
私がいくら貧しいからと言ってもそんな事を考えたりはしない。
「そんなつもりはないです!私はただ、カズマと・・・カズマと一緒に街を回りたかっただけです!」
しまった!
ちょっと怒ってるのを伝えたかっただけなのに。
これでは告白してるのと変わらないじゃないか!
周りに人も集まってきたどうしよう。
折角、話せるようになってきたのにまたカズマが喋らなくなってしまう。
「・・・ごめん。めぐみんの気持ちも考えないで変な事言って」
「いえ、いいですよ。ちゃんとデートに付き合ってくれればそれで」
気持ちも考えないで?
私の気持ちに気付いているのだろうか?
「分かった。もう文句は言わずに付いてくわ。今日はそれで謝ってばっかだからな」
いや、この感じは気付いてないか。
「では、明日にする予定でしたがちょっと付き合って貰いますよ」
「いらっしゃいませ!めぐみんさんにカズマさん今日はお二人ですか?」
「はい、デートですから」
隠す事なく言い切った。
「ちょっ、お前何言って!」
「まあ!」
ウィズから送られる暖かい視線。
結婚の報告に来た時も確かこんな感じだった。
「そんな事より頼んでいたアレ出来てますか?」
カズマが突っかかって来るのを抑えて聞いた。
「はい、バニルさんから預かってますよ。先払いなのでお代は大丈夫です」
「ありがとうございます。カズマ行きますよ。レッツ爆裂です」
「めぐみんは何で直ぐにそういう事をってえっ、嗚呼、分かった」
一人でぶつぶつ言ってたカズマを引っ張って店を出た。
「なあ、さっき貰ったそれってクラッカーだよな?」
「そうですよ。実はそろそろクリスの誕生日なので、その準備です」
ダクネスは独自に準備しているかもしれないが、まだ、誰にも話していなかった。
「なるほど、それで誕生日はいつなんだ?」
「今月の二十五日です」
「へえー、えっ!・・・いや何でもない」
今の反応が凄く気になる。
何があったのだろう?
「二十五日ってそんなに余裕ないし、準備はどうすんだ?」
「準備はしません。ぶっつけ本番です」
「ぶっつけって何でそんな事するんだよ」
訳が分からないといった感じのカズマ。
「クリスの情報網は諜報機関並ですからね。下手に動くと気付かれるんですよ」
やろうと思えば二十四時間体制で私達の事を見られる人だから、本当に困る。
「何でそんな事知ってんのとか、クリスが諜報機関並の情報網を如何して持ってるんだとか色々聴きたいけど、取り敢えず分かった。プレゼント買うぐらいはいいだろ?」
「それは大丈夫ですよ。買う時に誰のかを言わなければいいんですから」
買う瞬間を見られたとしても、それが誰への物かは分からないはず。
「じゃあ今日は爆裂魔法撃って終わりか?」
「そうですね。今日のデートはこれで終わりです。という事で恋人繋ぎですよ」
「いやちょっと待て、街出てからじゃないのか?」
「そんな事一言も言ってませんよ。爆裂散歩の行きと言ったんです」
カズマは騙されたとか言ってるけど、この辺は人通りも少ないから大して心配する事はないだろう。
日課は無事終了し、少しモンスター討伐も出来たから、ギルドに報告して帰るだけの筈だったのだが。
「カズマ先輩。お久しぶりです!今日はご迷惑おかけして、すみませんでした!」
「いや、いいって、元はと言うと俺の為に動いてくれた訳だからな」
カズマが後輩ちゃん達に囲まれて、それ所ではなくなっていた。
「でも、何かお詫びを」
「そうは言ってもなあ」
ぐっ!
カズマが鼻の下伸ばしてるのがムカつく!
そりゃあ若い子に先輩って言って貰えるの嬉しいかもしれないけど、妻の目の前でこれは、これは・・・・・・そういやまだ付き合ってすらいなかった。
と言うかあの子達よりも多分、私の方が年下だ。
今日のデートが楽しかったから完全に忘れてた。
「悪い、仲間が戻ってきたし帰るな。また今度」
私に気付いたカズマがそう言うと。
「はい。ではまた今度」
後輩ちゃんも手を振って別れていた。
そしてカズマがこっちを向いたと同時に睨まれた。
何なのあの子!
許せない!
こっちが黙って見てやってるのに!
そっちがその気なら私にも考えがある。
「ちょっめぐみん!?」
「どうかしましたか?さあ、早く帰りましょう」
「いや、何でこぃ、分かった帰り道な。そういやそうだったよちくしょう!」
カズマは恥ずかしさでどうにかなりそうだったけど、あの睨みつけて来た子が悪い。
帰ったらこの分甘やかしてあげよう。
家に着いた私達はお風呂に入り、夕食を食べていた。
「・・・なあ、カズマ。さっき風呂からめぐみんと一緒に出て来なかったか?」
「そうだけど。それがどうかしたか?」
カズマは何言ってるんだろう。
こっちのカズマはちょっとネジが飛んでるかもしれない。
「え!カズマとめぐみんが一緒にお風呂に!」
「ひひ広めなきゃ、ギルドのみんなに広めなきゃ」
ゆんゆんとアクアが分かりやすく反応していた。
「みんなして何騒いでんだ?」
「カズマ、聴き直すが、めぐみんと一緒に風呂に入ってたのか?」
「当たり前だろ?一緒に出てきたんだから。てか今までも入ってる事はあったぞ?なあゆんゆん、アクア」
ダメだ。このカズマ。
鈍感系主人公にでもなろうとしているのだろうか?
ゆんゆんはむっつりスキル発動で、顔を真っ赤にしていてカズマに反応できていない。
アクアは私がギルドに行かないように、取り押さえてるからそれ所ではない。
「当たり前って、如何して二人で入っていたのだ?」
「日課のすぐ後に、めぐみん一人で風呂に入れとくのは危険だから一緒に入ってんだよ」
あー、今日は甘やかすと決めた手前何も言えない。
言えないけど、普通そこは誤魔化すでしょ!
「それは私達の誰かでもいい話ではないか?」
「それは・・・そうだな。今度からそうするわ」
カズマの全く動じない態度にダクネスと私は困惑し続けていた。
「嗚呼、・・・つまり何もなかったのだな?」
「?何もないってな、に、が・・・」
今更赤面するカズマにダクネスはため息をついていた。
今日みんなにクリスの誕生日会の話をしようと思ってたのに、出来る雰囲気ではなくなってしまった。
それに今から私がカズマの事を甘やかそうものなら、確実にアクアが広めに行って面倒な事になるだろうから、甘やかすのも出来なくなった。
来週こそはクリスマスやってやりますよ!
でもその次にゆんゆんの誕生日が待ってるしどうしよう問題が山積みです!
カズマさんの誕生日話は誰視点が良いかについて
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