めぐみんに災いが降りかかります。
-NAKUSHITAMONO-
カズマとのデート期間も終わり、魔物の活動が活発になってきた今日この頃。
久し振りにパーティー全員でクエストを受ける事となった。
今回のクエストは初心者殺しの討伐。
目撃場所が広い平原だった為、私の爆裂魔法で仕留めればそれでいいと言う話になった。
「初心者殺し何処なのよ。早く帰りたいんですけど」
アクアは歩き疲れた様子だ。
「もう少し待て。目撃情報があった場所までもうすぐなのだ」
ダクネスに言われて文句を言うのをアクアはやめた。
「おっ、ここら辺じゃないか?あの小屋って、この小屋だろ?」
「多分合ってると思うけど、私も初めてだからなんとも」
「みんな見てください。あそこに黒いのが居ますよ」
初心者殺しと思われるものを見つけた。
みんなの視線がそこへ移った。
「間違いない。あれが初心者殺しだ。報告通り親子だな。めぐみんここから撃てるか?」
「すみません。もう少し近付かないと狙いが定まらないです」
この距離だと狙いを定めている間に魔力で気付かれてしまう。
「ならちょっとあいつに近付くぞ」
そして初心者殺しに気付かれないように即狙いを定められる場所に移動した。
「ここからなら大丈夫です。では行きます『エクスプロージョン』ッ!」
今日は何も起こらずにクエストが終わりそうで良かった。
「よし、初心者殺し三匹討伐だ。めぐみんお疲れ様。って危ない!」
私の冒険者カードを見て、討伐の確認をしていたカズマに注意されるが、何も出来なかった。
声を発する事もなく、ただ頭に激痛が走り、私の意識はここで途絶えた。
目が覚めると知らない天井だった。
そして知らない人が居た。
ここは何処だろう?
昨日は普通に、ではなくゆんゆんにスリープを掛けられて・・・
あっ!
あの子が馬鹿な事をしてるから止めに行かないと!
そして起き上がろうとすると頭に激痛が走った。
「っあああああ!」
「めぐみん!大丈夫か!おい、アクア起きろ!めぐみんが目を覚ましたぞ!」
「ん?ってめぐみん大丈夫?まだ痛い所とかない?」
・・・誰だろう?
名前を知っているみたいだし、知り合いなのだろう。
それにゆんゆんも此処に居る。
もしかすると事後と言う奴かもしれない。
もう一人の私が覚醒したとか、そんな所だろう。
その時に負った傷で、今私は苦しんでいて、此処に居るのは、その時一緒に戦ってくれた人。
我が使い魔の為に戦ってくれたのだからお礼をしなければ。
「頭が痛いですが、大丈夫です。その、助けて頂きありがとうございました」
そう言えば、ちょむすけは何処に行ったのだろう?
治療の邪魔だったから別室に移されたのだろうか?
「何水臭い事言ってんだよ。でも、まだ痛むのか。ならもうちょっと休んどけよ」
結構仲が良くなっているみたいだ。
でも、何故だろう。
ぱっとしない感じの人なのに、何と言うか心、惹かれる。
あと、この人の周りが輝いて見える。
「そうね。一応大丈夫みたいだけど、今日は、私が此処に居るから何か有ったら言ってね。カズマ達は戻っても構わないわ」
凄く頼りになる事を言ってくれるが、そこまで迷惑を掛ける訳にはいかない。
「いえ、そこまでして貰わなくても大丈夫です。お礼は後日しますので、今日はゆんゆんと一緒に帰らせて貰えませんか?」
「何言ってるの?此処はめぐみんの部屋なんだから帰る必要ないわよ。寝ぼけてるのかしら?」
え?
此処が私の部屋?
こんなに広くて、高そうな家具の多い部屋が?
でも、確かに部屋にあるのは、私好みの物が多い。
「アクア、ちょっといいか」
「どうしたの?」
キラキラしている妙に惹かれる人が暗い表情で近付き、私の治療をしてくれたプリーストのお姉さんと金髪碧眼の如何にもな女騎士を連れて部屋を出て行った。
部屋には私とゆんゆんが残された。
「ちょっと混乱してるみたいだけど、めぐみん大丈夫?」
「はい、ちょっと頭痛はしますけど、他は特に問題はないです」
「良かった。みんな心配してたんだよ。カズマなんてずっとうろうろしながら、俺の所為だ、俺の所為だって言って落ち着かない感じだったし。好きな人にここまで心配して貰えるなんて、羨ましいわね」
好きな人?
それにゆんゆんが私以外の人を呼び捨て!
しかも相手は多分あのキラキラしてた人だろう。
「あのゆんゆんが何言ってるか分からないのですが。まず此処は何処なんですか?あとちょむすけも何処に居るのか知りたいです」
「え?此処は私達の屋敷で、めぐみんの部屋だよ。ちょむすけは確か、カズマの部屋で寝てたと思う」
私達の屋敷?
駄目だ。全く訳が分からない。
そうこうしている内にあの三人が戻って来て、プリーストのお姉さんが質問してきた。
「ねえ、自分の名前は分かるのよね。あとゆんゆんの事も」
「はい」
確認するかのように尋ねてくる。
他の二人は、心配そうに私を見ている。
「じゃあ、私の事は?」
「すみません。分からないです。此処に居る方の事も、ゆんゆん以外は誰か分からないんです」
私の答えを聞くと三人は顔を合わせて固まっていた。
ゆんゆんも一緒になって固まっている。
「あの、どうかしたんですか?」
気になり質問してみたが、あまり反応は良くない。
「めぐみん。あなたはその、記憶を失ってるの」
「やはりそうですか。それでもう一人の私はあなた達とどんな関係だったのでしょうか?」
思っていた以上に、もう一人の私が活動していた時間が長いみたいだ。
それにしても、記憶を引き継げないのは不便だ。
「・・・パーティーメンバーよ。此処は私達が暮らしてる屋敷で、今居るのは、めぐみんの部屋。私はアクアでアークプリーストよ。めぐみんはみんなの事、呼び捨てだったわ」
「私はダクネス。クルセイダーだ」
「俺はサトウ カズマ。名前はカズマ。冒険者で一応このパーティーのリーダーだ」
状況は把握出来た。
でもこの後、私はどうすればいいのだろう?
「カズマ何言ってるの?こんな時だからって嘘ついちゃだめよ。このパーティーのリーダーは私なんだから!」
まあ、そりゃそうだろう。
上級職揃いのこのパーティーで、冒険者のカズマがリーダーとは考えにくい。
さっきから私に質問していたアクアがリーダーだと言うのは頷ける。
でも何故だろう。
何かが引っかかる。
「お前こそ何言ってんだ!話がややこしくなるから変な事言うな!」
「そうだぞアクア。めぐみんは記憶を失っているのだ。あまり嘘を教え込むのは良くないぞ」
あれ?
アクアが嘘をついていた?
つまりカズマがリーダー?
冒険者なのに?
でも、ダクネスがアクアに説教を始めたから事実なのだろう。
ゆんゆんも頷いていたし。 それに何だかそんな気がしてきた。
「えっとな。状況説明なんだけど、初心者殺しの討伐クエストを受けていてな。めぐみんがそれを爆裂魔法で倒したんだが、倒れた場所に岩が有って、そこに頭を打ち付けて今に至るんだ。・・・そのごめん!一番近くに居ながら何も出来なくて」
カズマが説明を終えるなり、頭を下げてきた。
私が倒れる先の安全確認を怠った事が原因の様だ。
それはカズマの所為ではないだろう。
「カ、カズマが、そ、のあ、謝る、事は、な、いですよ」
あれ!?
如何してこんなに緊張してるんだ?
声も上擦ってる。
それにカズマを直視できない。
「めぐみんどうした!大丈夫か?」
カズマが心配して、顔を近付けてくる。
どうしよう凄く恥ずかしい。
「ななななんでもないです。大丈夫です!」
可笑しい!
絶対、今の私は可笑しい!
カズマの周りが輝いて見える時点で、充分可笑しいけど、何があったらこんなに緊張してしまうんだ?
「本当か?でも、顔赤いし、熱あるんじゃないか?」
そう言ってまたカズマは顔を近付けてきた。
え!
顔を押さえられた。
まさかキス!?
と思っていたらおでこをくっつけて止まった。
「やっぱりちょっと熱いな。冷やしたタオル持って来るから待ってろよ」
「は、はい」
あっ、カズマが行ってしまった。
カズマが居なくなると同時にさっきまでの胸の高鳴りが収まった。
さっきゆんゆんが言ってた通り、私はカズマの事が好きなのだろうか?
「ゆ、ゆんゆん。ちょっといいですか」
「如何したの?もしかしてカズマの事?」
くっ、分かってるクセに勿体ぶって、ニヤけてるゆんゆんが鬱陶しい。
でも、ゆんゆん以外には聞かない方がいい気がした。
「私はその、カカ、カズマの事がす、す、す、好きなんですか?」
ここまで動揺してる所をゆんゆんに見せるなんて一生の恥だ。
と言うか間違いなく、私はカズマを好きだと思う。
「そうだね。この事は私とめぐみんの二人の秘密って事になってるの。結構めぐみんから攻めてるけど、カズマは気付いてないって感じだよ」
「成程、カズマ鈍感なんですね」
さっきのおでこをつけるのだって普通異性にはやらないと思う。
なんなら男の人って家族としかしないんじゃないだろうか?
「いや、それはちょっと違うかな。めぐみんのやり方が問題というか。ね?」
私のやり方?
何が問題なんだろう?
「めぐみんってその、カズマが良く魔性のめぐみんって呼ぶ程に、カズマの事からかったりしてて、それがめぐみんなりの攻めなんだけど、からかってるのも事実だから、真意に気付きにくいのは当然と言うか、何と言うか」
私はどんな悪女になってしまったのだろう。
こんな喋ってるだけで、鼓動が早くなって、普通に話していられないのに。
そんな余裕が何処に有るのだろうか?
「めぐみん。冷やしたタオル持って来たぞ。まあ、記憶の事もだけど取り敢えず風邪を治して、元気になってくれ。アクアとダクネスは連れてくから、ゆっくり休んでくれよ。何かあったら部屋隣だから、遠慮なく声掛けてくれ」
「あっ、ちょっと待っ・・・」
カズマは何も聞かずに、二人を連れて出て行った。
「私もそろそろ行くね。そうだ。ちょむすけ連れて来るね。その方が安心出来ると思うから」
ゆんゆんはそう言って、隣からちょむすけを連れて戻り、そのまま私に寝るように促して帰って行った。
・・・私はどうなるのだろう?
最後の方は間に合わせで適当になってしまいすみません。
次週、めぐみんの記憶は戻るのか!
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