この素晴らしい世界に●●を!めぐみんのターン   作:めむみん

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皆さん新元号あけましておめでとうございます!
令和も当作品と誕生日シリーズをよろしくお願いします!!
今回はめぐみんが大胆な行動にでます。


お屋敷に帰りたい

-OYASHIKINIKAERITAI-

 

私の記憶が失われてから四日。

まだ記憶は戻らない。

それでもみんなは、優しく接してくれている。

だから早く気持ちに応えて記憶をと思うけど、何も出来ない私はとても無力だった。

そんな自分に嫌気がさして、昼食を食べ終えた後。

私は何も言わずに屋敷を飛び出した。

行く当てもなく、街中を駆け回っていたが、気付けば迷子になっていた。

何となく辿り着いたこの場所で、何だか終着点のような気がして、動くのを止めた。

此処には何も無く誰も居ない。

ただ草花が生い茂っていた。

景色の良い場所だった。

日も暮れてきて、空は紅く染まっている。

今頃カズマ達が大騒ぎして、私を探し回っているだろう。

みんなの気持ちに応えられない自分が嫌で飛び出して、更にみんなに迷惑をかけてる自分が余計に嫌いになってきた。

カズマは私を許してくれるだろうか?

こんな馬鹿な事をしても私を仲間として扱ってくれるだろうか?

カズマならしょうがねえなって言いながら、許しくれるとさっきから思ってしまうけど、そんなのは甘えだ。

早くみんなに会って謝りたいけど、みんなにはまだ会いたくない。

そんな矛盾する考えが私の頭の中をぐるぐると回っていた。

記憶が戻ってくれればとも思う。

でも記憶が戻る前にみんなに謝りたい。

私は何がしたいのだろう。

 

 

 

時間だけが徒らに過ぎていく。

日も暮れて、暗闇にぽつんと居る私。

お腹が鳴っているけど、どうしようもない。

夜風も強くなってきて、飢えと寒さに震えている私。

自己満足でしかないが、これも良い罰だ。

孤独の苦しみも味わいながら自分の行いにあった罰を受けているのだ。

ふとした瞬間に、カズマに会いたくなる。

やはり私はカズマの事が好きなようだ。

みんなと言うよりカズマに早く見つけて欲しいなんて、今の私には願う事も到底許されない、烏滸がましい願いをしてしまう程に。

早く屋敷に帰りたい。

そしてみんなに……みんなに…………

 

「うぐっ、か、かじゅまっ」

 

今まで我慢していた涙が限界を越えて、止まらなくなってしまった。

情けない。

独りでもやっていけるなんて、里を出る前は考えていたのに、今じゃ孤独で寂しくなって泣いているなんて、昔の私に言っても信じてくれないだろう。

そんな事を考えていると身動きが取れなくなった。

あまりにも急な出来事に理解が追いついていない。

 

「もう何処にも行かせないからな!心配させやがって!家出なんて何考えてんだ!」

 

またカズマの覚えておかないといけない言葉が増えた。

私はカズマに捕まったみたいだ。

カズマに上から何か温かい物をかけられた。

 

「記憶もまだ戻ってないって言うのうわっ!」

 

あれ?

体が勝手に動いて・・・

 

「めぐみん?お前泣いてたのか?」

「ごめんなさい!かずま寂しかったですぅぅ」

 

結局私はカズマに甘えてしまった。

いつから私はこんなにも弱くなってしまったんだろう?

 

「はあ、もうこんな無茶するなよ?」

 

呆れられた。

こんなにも情けなく泣いていたら当然か。

 

「泣き止んだら爆裂しに行くぞ。今日はまだだろ?」

「やめておきます。迷惑かけたんですから今日は撃ちません」

 

カズマは何処までも優しい。

これにまで甘えてしまったら、ダメ人間になってしまう気がして、受けられなかった。

 

「そうか」

 

カズマはそう言うと何も喋らなくなった。

 

 

 

 

 

時は遡り、めぐみんが居なくなった事にみんなが気付いた頃。

 

「ダメだったわ。こっち側の部屋は何処にも居なかった」

「こっちもだ。あいつ何処行ったんだ?」

 

最悪の事態だ。

部屋に居ると思って、誰も気付かなかった。

ダクネスが玄関で、靴の整理をしていなかったら、もっと遅れていただろう。

 

「取り敢えず、俺は外を探してくる。この事はまだ大事(おおごと)にするなよ。俺が探し終わって、見つからなかった時は、警察に届ける。これで頼む」

「分かったわ。ダクネス達にもそう伝えておくね」

「あと、みんなはここで待っててくれ、伝言頼んだぞアクア」

 

言い終わると同時に俺は屋敷を出た。

 

 

 

全員で探せば早いかもしれないが、それだと大事になってしまう。

それだけは避けないと。

めぐみんが何を思ってこんな事をしているかは分からないが、追っ手に気付けば更に見つからないような場所に行ってしまうかもしれない。

とは言え、全く手掛かりがない。

記憶のない今。

めぐみんが逃げるとしたら何処だ?

 

「あっ、カズマさん。急いでいるようですが、どうされたんですか?」

「ウィズか。悪い説明してる余裕は・・・そうだバニルを知らないか?あいつなら」

 

あの悪魔ならめぐみんの場所位分かるだろう。

 

「すみません。バニルさんは今日私の買った商品の返品に出てまして」

 

こんな時に限って居ないとは俺もついてない。

 

「あっ!そう言えばカズマさんに伝えてくれと頼まれていました」

「バニルはなんて言ってたんだ?」

「確か、探し物は秘密の場所にあると話してました」

 

あそこか!

俺に教えた事を知らずに、見つからないと思って逃げたって所か。

 

「ありがとうウィズ。また店に商品買いに行くからな」

「えっ、はい。お待ちしてますね」

 

くそっ!

場所は分かったけど、今からじゃ着く頃には夜になってしまう。

最近は風が冷たいから軽装のめぐみんが危ない。

急がないと!

 

 

 

何とか辿り着いた。

予想通り、日は暮れてしまった。

めぐみんは蹲って震えていた。

寒さにやられているのだろう。

潜伏スキルで気付かれないように近付き、めぐみんの背後に着いた。

ここに来るまで、どうやって声を掛けようか悩んでいたが、めぐみんの泣き声を聞いて、考えるより先に体が動いた。

気付くと、俺はめぐみんを抱き締めていた。

めぐみんは何が起こったのか分からず、焦っている感じだった。

 

「もう何処にも行かせないからな!心配させやがって!家出なんて何考えてんだ!」

 

抱き締めためぐみんは冷たく。

冷え切っていた。

俺の上着を羽織られせて、少しでも温めようとした。

さっきまでどれを言おうかと悩んでいた言葉がどんどん出てくる。

 

「記憶もまだ戻ってないって言うのうわっ!」

 

全部言い切る前にめぐみんが抱き着いてきた。

今じゃ慣れてきたこの行動だけど、とは言えやっぱり恥ずかしい。

めぐみんの様子を見るために、下を向くとめぐみんの顔は濡れていた。

 

「めぐみん?お前泣いてたのか?」

 

俺の質問にめぐみんは顔を上げて言った。

 

「ごめんなさい!かずま寂しかったですぅぅ」

 

いつものめぐみんなら否定していただろう。

でも今のめぐみんは泣きだした。

もしかすると、ここへは無意識に来て、帰り方が分からなくなっていたのかもしれない。

こうやって泣いている所を見ると怒る気も失せる。

不覚にも可愛いとか守ってあげたいとか思ってしまったし、今じゃ守りたい気持ちの方が大きい。

俺ってチョロ過ぎないか?

 

「はあ、もうこんな無茶するなよ」

 

未だに俺から離れようとしないめぐみんに頼むように言った。

めぐみんはまだ泣いていたが頷いてくれた。

何か元気の出る言葉はないだろうか?

そうだ今日はまだあの音を聞いてなかった。

 

「泣き止んだら爆裂しに行くぞ。今日はまだだろ?」

 

俺の睨んだ通りめぐみんは泣き止んだ。

でもめぐみんの言った言葉は予想外だった。

 

「やめておきます。迷惑かけたんですから今日は撃ちません」

 

あのめぐみんが爆裂魔法を撃たないと言ったのだ。

相当反省しているのだろう。

初めにキツく言い過ぎたかもしれない。

 

「そうか」

 

言動に気を付けようと思いながら空を見上げた。

 

 

 

 

 

カズマが黙ってから数分経ち、移動しながら何故こんな事をしたのか説明をした。

 

「そんなの気にしなくていいって前にも言っただろう」

 

またカズマに注意された。

 

「ですが」

「ですがじゃない!今は自分の事だけ考えていればいいんだよ。俺らに気を遣う必要なんてない」

 

カズマは怒っているようで、此方を見ずに歩く速度を上げた。

 

「よし、着いた。さっさと済ませて帰るぞ」

 

カズマの指す方向には爆裂魔法を放つのに丁度良い岩があった。

 

「ちょっと待ってください!今日は撃たないと言ったはずです!」

「そうだな。でも俺はめぐみんの爆裂魔法が見たい。だから迷惑かけたって思ってるなら、早く爆裂魔法見せてくれよ」

 

カズマはずるい。

そんな事言われたら撃つしかない。

折角決意したのに。

そして私は詠唱を始める。

 

「分かりました。カズマ。ありがとうございます。では見ていてください。我が最強魔法を!『エクスプロージョン』ッ!」

 

自分でも分かる程に今日の出来は最高級だ。

カズマの採点が気になる。

少し不安になりつつも訊ねた。

 

「今のは何点ですか?」

 

カズマは直ぐには答えず、ためてから答えた。

 

 

 

 

 

 

百二十点

 

 

 

 

 

 

カズマの採点を聞いたその瞬間、走馬灯のように今と同じ様な光景が見えた。

私が上級魔法を習得しようとカズマに頼んでいる。

カズマは私の決意を無視して、スキルポイントを割り振った。

私はそんな事には気付かずに帰ろうとするが、カズマに催促されて爆裂魔法を放つ。

私はカズマに点数を聴き、カズマは百二十点と答えた。

そしてカズマは私の存在を肯定してくれた。

これを皮切りに色んな記憶が蘇ってくる。

多分、今見ているのは前世の記憶だろう。

私は本当に幸せ者だ。

 

「もう動けるはずだぞ。おーい、めぐみん?って、また泣いてるじゃねえかどうした?」

「カズマ、何処にも行かせないって言いましたが、私とずっと一緒に居ると言う意味で良いのですか?」

 

何だか告白されたみたいだと今になって思う。

 

「は?お前何言って・・・まさか記憶が戻ったのか!?」

「ふふふ、どうでしょうね?私がまた何処かに行かないように、ちゃんと傍に居てくださいね?」

 

そう言って私はカズマの腕に抱き着いた。

カズマが悶えているのが可愛い。

 

「お前な!こっちがどれだけ心配してたと思ってるんだよ!」

「記憶を失くした私に寄り添ってくれて、ありがとうございました。お礼にカズマの言う事をなんでも聞きますよ」

 

記憶がない間に負けた分を取り返さなければならない。

カズマが紅魔族のように目が紅く光るのではと思う程、顔を真っ赤に染めながら言った。

 

「もういい!治ってるんだな。あのしおらしくて、可愛いかっためぐみんを返せ!」

「何を!仲間が元に戻ったと言うのに何ですかこの口は!」

 

可愛いと言ってくれるのは嬉しいけど、何だかモヤモヤする。

 

「ひはいひはい!何すんだよ!チェンジだ。チェンジ!チェンジを要求する」

 

よくもまあ、こんな事が言えるものだ。

アクアが女神チェンジと言われて怒っていた時の気持ちが分かった。

 

「この男!分かりました!カズマには教育が必要のようですね。いいでしょう。私以外の私なんて忘れさせてあげますよ!」

「ちょっ、何言ってんの!それ男の台詞って言うかやめっ、やめろください!」

 

 

 

カズマに教育を施した後。

屋敷に戻り、みんなにまず逃げて心配を掛けた事を謝った。

そして、記憶を失くしていた時に面倒を見てくれた事へのお礼もした。

カズマが挙動不審でみんなが気にしていたけど、何があったかまではバレていない。

今はゆんゆんと先程の酷い言葉について話していた。

 

「カズマがそんな事言ってたんだ。確かに酷いね。でもそれって照れ隠しなんじゃないかな?」

「もしそうだったとしても酷いですよ」

 

ゆんゆんの言っている事くらい分かっている。

とは言え流石に見逃す訳にはいかない。

 

「まあ、でもカズマの言う事も分からなくはないかな」

「親友に対して随分な御挨拶じゃないか!」

 

まさかゆんゆんまでもがこんな事を言ってくるなんて、また家出しようか本気で悩むレベルだ。

 

「ご、ごめんね。そんなつもりじゃなくて、ただ、記憶のなかっためぐみんってなんて言うか、その。如何にもな恋する乙女って感じだったし、普通に恥じらいもあったし、カズマとアクアさんに出会う前のめぐみんって感じがしてね」

 

普通に恥じらいがあるって、これではまるでいつもの私が恥じらいのない悪女か痴女みたいだ。

そんなつもりがないと言ったのは何処へ言ったのだろう?

 

「よーく分かりました。私は家出します。カズマとゆんゆんが考えを改めるまで帰る気はありません!」

「えっ?・・・ぇええええええ!!」

 

ゆんゆんが後ろで叫んでいるけど関係ない。

こうして私はまた屋敷を飛び出した。

その後、私が宿を取り、ゆっくりしていると一時間もしない内に、二人が謝罪しにやって来たとだけ付け加えておく。

 

 

 

私の記憶が戻り少し経ったある日。

ギルドから呼び出された。

酒場に着くとクレアとレインが居た。

アイリスも来ているのではと辺りを見回したけど、居なかった。

二人は私達を見つけると近付いて来てクレアが言った。

 

「貴方がサトウカズマか?私は王都より来た騎士クレアだ。貴方に報酬を渡しに来た。この書類に署名を貰おう」

「お断りします」

 

カズマの返答にその場の全員が驚いた。

 

「いやあの。受け取って貰わないとですね」

 

レインが困惑しつつも、書類を渡そうとする。

 

「失礼ですけど、あなた方が本当に王家の騎士か貴族の騎士かも分からない状況で署名は出来ません」

 

カズマは何言ってるんだろう。

こんなに装備の揃っている人達が、王都から来た人でないはずがないのに。

 

「えっと。我々は王都から来た騎士だと言ったはずなのだが」

 

クレアが少し怒ったように言った。

 

「まあそこは聞きましたけど。単に王都からやって来ただけの騎士からお金を貰って、後から恩を返せとか言って、強制労働させられたら、困るので現段階では署名出来ません」

 

カズマは丁寧に断ってはいるが、クレアからすればわざわざこんな田舎まで来てやったと言うのに、一介の冒険者風情が生意気なと言った所だろう。

クレアはわなわなと震えていた。

 

「勿論、身分証とか見せて貰えれば署名はしますよ」

「貴様!私を愚弄するつもりか!此方が下手に出ていれば調子に乗りおって!」

 

クレアの我慢が限界を越えたようだ。

レインが慌てて止めに入った。

 

「レイン!どう言うつもりだ!今すぐ離せ!」

「クレア様落ち着いてください!カズマ殿の言い分は確かに正しいです。正式な遣いである証拠を持って来れば、この方は署名すると言っておられるので、私が急ぎ持ってきます。それまでどうか抑えてください」

 

レインは泣きながらギルドを出て行った。

カズマはと言うと全く悪びれず、クレアの事を疑いの眼差しで見ていた。

ギルド全体はどよめき、クレアもレインに止められたとはいえ、腸が煮えくり返るような思いはしているだろう。

そんな中ダクネスが幸か不幸かやって来た。

 

「何があったのだ?皆騒いで居たが・・・」

 

ダクネスの登場にクレアは目を見開いていた。

 

「だ、ダスティネス卿!」

 

クレアの叫びに状況を理解したのかダクネスはカズマの後ろに隠れた。

 

「ダクネスどうしたんだ?さっきあの白スーツがなんちゃら卿って言ってたけど、お前貴族だったのか?」

「ち、違う!あの騎士の見間違いだろう。私がそんな大層な身分だと思うか?」

 

今のダクネスの行動は十分怪しいと思う。

 

「思う。だってダクネスって俺に負けず劣らずの常識知らずだしな。お嬢様って言われたら納得だわ」

「おおおお前、そこは普通思ってもいなくても合わせる所だろう」

 

カズマにそんな事を求めても意味は無い。

カズマはやる時はやる男なのだから。

 

「何で俺がそんなお約束に付き合わないといけないんだよ。なあダクネス。あいつ知り合いなんだろ?王都から来た騎士って言ってるけど正式な使者で合ってるのか?」

「ああもう、そうだ。あの方はシンフォニア家のクレア殿。王女様の護衛をいつもなさっている方だ」

 

ダクネスは観念したみたいだ。

 

「ダクネスがそう言うならさっきの書類署名しますよ」

「くっ、これが報酬の受け取り証だ。此処にパーティーメンバーの本名を直筆で書いて貰う。引渡しの証人はこのギルドの者達だ」

 

アイリスなしで喧嘩しているのを見ているとカズマとクレアは犬猿の仲ではないのかと思えてくる。

カズマはクレアに渡された書類に名前を書き、私達にも渡して来た。

そんな中豪快にギルドの扉が開かれた。

 

「クレア様!カズマ殿!王家直々の勅命である証拠の書面をお持ちしまし、た?えっと、ダスティネス卿が如何して此方に?それにもう署名始まっているんですね」

 

無駄足に終わったレインはいつものゆんゆんのように一人で落ち込んでいた。

 

「これで全員か?パーティーは五人と聞いていたのだが」

「二人は遅れてくるので、もう少し待って貰えますか」

 

アクアとゆんゆんはウィズの店に寄ってから来ると言っていたから仕方ない。

 

「分かった。ではそれまでここで待っていよう。・・・このめぐみんと言うのは貴女で間違いないか?」

「そうですが、私の名前に何か?」

 

いくら貴族相手とは言え紅魔族は売られた喧嘩は買うものだ。

 

「いや、紅魔の者なら問題ない。レイン!いつまでそうしているつもりだ!仮にも私達はアイリス様の護衛をしているのだ。アイリス様の品位を損なうような行動は慎め!」

「はっ!すみませんでした!以後気を付けます!」

 

レインが不憫に思えてきた。

 

「カズマー!王都から騎士が来たって本当?あっこの人達がその騎士さんなのね?」

「嗚呼、書類にサインしてこい」

 

アクアはカズマに言われるとフラフラっと歩いて行って、ささっと名前を書いて戻ってきた。

 

「私なんかが名前書いても良いんですか?」

「何言ってんだよ。突っ立ってただけのダクネスと違ってゆんゆんは大活躍だっただろ。早く書いてこいよ」

 

思わぬ口撃に悶えるダクネスと、照れながらペコペコ頭を下げて署名して戻って来たゆんゆん。

 

「これでメンバー全員の署名が終わったと言う事でいいな?」

「嗚呼、そうだ一つ聴いていいか?」

 

何か疑問に思った事があるのだろう。

カズマがクレアに質問した。

 

「答えられる範囲なら答えよう」

「ダクネスのフルネームなんて言うんだ?」

「ダスティネス・フォード・ララティーナ。これがダスティネス卿の本名だ」

 

この瞬間、ギルド内では再びざわめきが起こり、ゆんゆんに至ってはダクネスの身分を知って顔面蒼白になっていた。

 

「なあ、アクア。何でこんなにざわついてんだ?あれか?ダクネスがララティーナって予想外に可愛い名前だったからか?」

「私も分からないけど、そうなんじゃない?ダクネスにはララティーナって言う可愛い名前があったなんて驚きだもの」

 

周りについていけてない二人は違う意味で盛り上がっていた。

 

「カズマもアクアさんも如何してそんなに普通にしていられるんですか!ダスティネス家と言えば王家の懐刀として有名な大貴族ですよ!」

「えっと、つまりダクネスって貴族の中でも凄い貴族のお嬢様なのか?」

 

王女に遣える護衛が気を遣う相手なのだから、それ位想像がつくと思うけど、色んな事が起こり過ぎて今のカズマは頭が回っていないのだろう。

 

「そう言えばダクネスの親御さんが霜降り赤蟹とか高級酒を送ってくれてたわね」

「そうは言ってもダクネスはダクネスだしな。貴族のお嬢様だからどうとかって話じゃないだろ」

 

カズマはやっぱりカズマだった。

ダクネスはカズマの言葉に頬を赤く染めていた。

不味い。

またダクネスが恋敵になってしまうかもしれない。

 

「コホン。それではサトウ カズマ殿とその一行にデストロイヤー討伐、並びに魔王軍幹部バニル討伐の賞金。金、十億エリスをここに進呈する」

「「「「「じゅっ、十億!?」」」」」

 

流石の私も予想外の額に驚いた。

前回は借金を差し引きして四千万だったはずなのに。

まさか借金が過剰報告されていたのではないだろうか。

あの領主なら有り得る。

 

「また後日、王女アイリス様との謁見をし、今までの冒険譚を語って貰う事になっている。それまでにその賞金を使い、身なりを整えて貰おう」

「は、はい。本日はありがとうございました」

 

あまりにも飛んだ話が続いた事でこの場の者は皆、クレアとレインが退出した後もクリスがギルドに入ってくるまで固まったままだった。




遂にめぐみんの記憶が戻りました!
この後は王都編になります。
改めて令和もよろしくお願いします!!

カズマさんの誕生日話は誰視点が良いかについて

  • カズマ視点(天界)
  • カズマ視点(討伐後)
  • ヒロインズの誰か視点(天界)
  • ヒロインズの誰か視点(討伐後)

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