この素晴らしい世界に●●を!めぐみんのターン   作:めむみん

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今回、カズマさんがときめきます。
お察しの通り、カズマ視点ありです。


交流で得たモノ

-KOURYUUDEETAMONO-

 

リザードランナーが活性化し始めた今日この頃。

私達は姫様ランナーの討伐に来ていた。

何故こうなったかと言うと遡る事、数時間。

 

「クエスト受けようぜ。王女様に会う前に話す事増やす為にも」

 

珍しく、いや、こっちのカズマからすれば普通だがクエストに積極的なカズマ。

それに対してアクアは前に同じく、やる気皆無であった。

 

「嫌よ。行くなら私抜きにしてちょうだい。私はこのソファーの上でゆっくりするの」

 

言って近くにあったクッションで耳を塞ぐアクア。

是が非でも行く気はないらしい。

 

「そうか。ならクエスト帰りに夕食をみんなで食ってくるけど、お前は独りで飯作って食ってろよ。外食はさせないからな」

「さあ!行きましょう!冒険が私達を待っているわ!」

 

ここまで潔いと逆に尊敬する位のチョロさだ。

 

「受けるのはリザードランナーの姫様ランナーと王様ランナーの討伐ってやつだ。ルナさん曰く問題ないだろうって話だったけど気を付けて行くぞ」

「「「「おー!」」」」

 

 

 

移動中にリザードランナーについての説明を終え、前回のようなミスが起こらないようにした。

これでカズマが死ぬ事はないだろう。

万全の体制で迎えるクエスト。

今回はドレインもされていないしゆんゆんが居るから尚の事安全だ。

 

「おっ、見えて来たぞ。所でどれが姫様ランナーだ?」

「確か、赤いやつだったと思うのだが」

「あれか、一匹だけ赤いのがいるし間違いないだろう。『狙撃』ッ!」

 

カズマの狙撃により姫様ランナーは敗れ、殆どのリザードランナーが散って行ったのだが、王様ランナーがこちらに向かって走って来ている。

 

「なんか近付いて来てるが大丈夫か?」

 

カズマが言う通り段々距離を詰めてくる王様ランナー。

そして、気付いた時にはあの時の様にカズマ目掛けて飛んだ。

このままだとまずい!

 

「ゆんゆん!早くあの王様ランナーを倒してください!」

「『ライト・オブ・セイバー!』ッ!」

 

これで助かったと思った私が迂闊だった。

驚いたカズマが足場を踏み外す可能性など、考えても見なかったのだから。

 

「うわああああああぐっ!・・・・・・・・・」

「カズマ!?おい!大丈夫か!しっかりしろ!アクア回復魔法を!」

「わ、分かってる。でも、これまた死んじゃってるから早く治さないと」

 

またしてもカズマを死なせてしまった。

ダクネスを真下に配置するとか方法はあったというのに。

 

 

 

 

 

気が付くと俺はまた神殿のようなこの場所に来ていた。

何も喋らずに見詰め合う俺と女神エリス。

相変わらずの人間離れした美しさだ。

何処かの駄女神とは比べ者にならない程に神々しさを感じる。

 

「・・・あの、もうちょっと気を付けてくださいね?以前の蘇生の時もあの後苦労したんですから。また先輩が蘇生しちゃうんでしょうけど、お願いしますよ?」

「すみません。俺の不注意で、すみません!」

 

勝利の余韻に浸っていた所に飛んで来た王様ランナーの頭に驚いて、枝から踏み外して死亡。

我ながら馬鹿だと思うアホな死に方だ。

アクアの時みたく嗤ってくれた方が楽な気がする。

 

「冒険者と言う仕事柄、危険は付き纏う物です。とは言え今回は油断し過ぎですよ」

「仰る通りです」

 

俺はエリスにペコペコ頭を下げるだけだった。

またこの優しい女神様に苦労かけるのが嫌だったが。

彼女の言う通り、アクアは蘇生するだろう。

 

「・・・それにしても随分と落ち着いてらっしゃいますね。二度目とは言え亡くなった後は多かれ少なかれ動揺するものですよ?」

「これで三回目ですからね。慣れですよ」

 

言い終えるとエリスも話題がなかったのか沈黙が訪れた。

ただ見詰め合うだけの時が流れる。

凄く気まずい。

キョロキョロ周りを見てみたが、数秒で飽きた。

やばい、どうしよう。

最近は大丈夫と思ってはいたが、根っからのコミュ障は治らないと言う事なのか?

 

「こんな何もない所で退屈しないんですか?それとも休む間もなく次々と来るんですか?」

 

見渡す限り無の世界。

俺なら耐えられないと思う。

日本で死んだ時、アクアが次もあるから早くと言っていた。

ならば日本よりも死者の多いここはひっきりなしでもおかしくはない。

 

「そうですね。ここへはモンスターによって亡くなった人達がやって来ますから普段はそこそこ忙しいですね。でも冬場はクエストに出る方が少ないので、喜ばしい事に暇をしておりましたよ。とは言ってもずっとここに居た訳ではありませんがね」

 

笑顔で語り掛けてくるエリス様に心が奪われる。

やばい。胸が苦しい。

めぐみんにからかわれる時とはまるで違う。

浄化されるようでいて、締め付けられるこの感じ。

そうか、俺のメインヒロインはここに居たんだ。

 

「実はですね。仮の姿になってコッソリ地上に遊びに行ったりもしてるんですよ。カズマさんにもお会いした事がありますし。・・・この事は内緒ですよ?」

 

いつかのイタズラっ子の様なポーズにうっとりしながら頷く俺。

もう少しこのままで居たいと思った矢先。

俺の望みは打ち砕かれた。

 

 

 

 

 

「『リザレクション』ッ!カズマー!カズマ聞こえるー?リザレクションかけたからもう戻れるわよ。エリスに門を開けて貰いなさい」

 

何度も見た蘇生の光景。

そして今でも慣れないカズマの死。

ゆんゆんは初めての経験だった事もあり、泣き崩れている。

ダクネスが慰めているが、その本人だって泣いている。

確かこの時カズマがもう戻らないとか馬鹿な事言い出したような気がする。

 

「はあー!?何バカな事言ってるのよ!あんたエリスに何吹き込まれたの?ゆんゆんは泣き崩れるし、めぐみんはカズマから離れようとしないしでこっちは大変なんだから、早く戻って来なさいよ!」

 

気がするじゃなくて言っていた。

そして今回も。

 

「戻らないって何言って、・・・ちょっとめぐみん何してえええ!?めぐみん?服を脱がせて何をする気なの?」

 

勿論カズマのカズマに名前を付けるだけだ。

聖剣エクスカリバーと。

 

「ちょっとカズマさん早く!早く戻らないと、めぐみんが!めぐみんが!カズマの初めて取っちゃうわよ!」

 

・・・私はアクアにどのように思われているのだろうか?

痴女ではないしこんな状況で変な事する訳ないと言うのに。

よし、これで後は服を戻すだけだ。

後ボタン二つと言った所でカズマが目覚める。

 

「・・・なあ、お前何したんだ?短気な所と名前を除けば、数少ない常識人だと思ってたのに、一体何してくれたの?」

 

勿論答える気はない。

 

「私の名前に文句があるなら聞こうじゃないか!・・・帰らないとかバカな冗談言い出すカズマが悪いんです。次同じような真似をしたらもっと凄い事しますからね!」

 

言い終えると何か言いたげなカズマを尻目に、こちらの騒ぎにも気付かず泣き続けていたゆんゆんの元へと移動した。

ダクネスはと言うと私が何をしていたのかチラチラ見ていたから、今は顔を伏せて、ひたすらゆんゆんをさするだけであった。

カズマの方を確認すると何やらアクアと話しているようだったが、後から話していた内容をアクアに聞いても教えて貰えなかった。

 

 

 

カズマの死から数日。

特に変わらぬ生活を送っている。

変わったと言うとゆんゆんがカズマといる時間が増えた事くらいだろう。

まあ、私が頼んでいる面もあるが、自主的にそうしているのは間違いない。

カズマは私のした事に気付き、以前のように怒り狂うかと思っていたが、風呂場からの叫び声だけで終わった。

一応直ぐに逃げられるように準備していたのだが、上がって来たのはいつも通りのカズマだった。

そう言えば帰り道は、なんと言うか距離を置いて歩いていたが、カズマがチラチラ見てきたのは何だったのだろう?

前はそんな素振りを見せていなかったのに。

今日は少し早起きして臨時の女子会を開いていた。

 

「まず、カズマの件についての反省からだな。今回で二度目だ。三度目がないように私達でも対策を考えねばならないだろう」

 

本来有り得ない二度目のいや、三度目の蘇生。

どちらにせよ常識的に一度しか出来ないはずのモノだ。

ゆんゆんが大泣きしていたのも蘇生不可の死を目の当たりにしたからだ。

実際はアクアが蘇生させた訳だが、ゆんゆんに蘇生したから大丈夫と言っても信じずに首を振っていたし、カズマが目の前まで来てやっと泣き止んだのだった。

 

「私が悪いんです!私がもっと早くにあの王様ランナーを倒していれば、油断していなければあんな事には......」

 

またもや泣き始めるゆんゆん。

あの時の涙には自責の念もあったようだ。

 

「落ち着いてゆんゆん。あれは誰が悪いとかの問題じゃないわ。私達も油断してたし、カズマだってそうだったんだから気に病む事はないわ」

「アクアの言う通り、誰の所為とかではなく、今後の話なんだから気にする必要はない」

 

二人に言われて何も言えなくなり、その後も暫くは黙ってただ頷くだけだった。

 

 

 

「でも意外だったのはゆんゆんも過保護だった事よね。めぐみんがそうなるのは分かってたけど、もしかして紅魔族って母性本能の高い種族だったのかしら?」

「前も言いましたが私は過保護なんかじゃないですよ。最後のもないと思います」

 

我が母はまだ気持ちの整理も出来ていない私を男とくっつけようとするし、父とて娘の飢えよりも自分の作りたい物を追い求めていたし、血筋の問題ではないと思う。

ゆんゆんの方はどうなのか知らないけれど。

 

「私も同じです。そんなに過保護でしたか?普通の補助だと思いますけど」

 

その通りだ。

ゆんゆんがカズマといる時間が増えたとはいえ、それはカズマの心配をしての行動だから当たり前の事だ。

二人体制で見守る事が大切だと思っている。

 

「めぐみんはまあ言わずもがなだが、ゆんゆんも凄かったと言うか、私もアクアの言う通り紅魔の者の特徴ではないかと思う」

「昨日なんて二人ともカズマに付きっきりだったじゃない」

「「それがどうかしたんですか?」」

 

見事なまでにハモる私達。

ここまでゆんゆんと共鳴したのは初めてかもしれない。

付きっきりになっていたからなんだと言うつもりなのだろう?

 

「・・・ダクネス。この二人は言っても無駄だと思うの」

「嗚呼、もはや手遅れだな」

 

この二人にだけは言われたくない台詞だ。

ゆんゆんも同じ思いのようだった。

 

「逆に聴きますが、お二人はカズマの事心配じゃないんですか?」

「いや、そういう訳では無い。多少の面倒は看るつもりだが・・・その必要がない程にお前達は一緒に居るだろう?」

 

そんな事はない。

アクアとダクネスが私達に代わってカズマを見守ると言うなら勿論交代する。

静観しているだけの二人には任せられないだけだ。

 

「二人がちゃんとカズマを看ると言うなら任せますよ?」

「・・・カズマとずっと一緒にいればいいって事?」

「それは当たり前でしょう。カズマが危険を冒さないように手助けするのですから」

 

ゆんゆんも頷いている。

何処にもおかしい点はない。

 

「・・・今回、出血はしてないし、ヒールで骨も完治してるから今のカズマはそこまで危険じゃないのよ?プリーストの私が言うんだから間違いないわ」

「でも心配なモノは心配です。偶に首周りが痛いとも言ってますから余計にです」

 

ゆんゆんの言う通りだ。

完治してるとはいえ、痛みを感じるのならば無理をさせたくない。

 

「それはカズマの嘘ね。二人に甘えてるのよあのヒキニートは」

「カズマの辛そうなあの表情を見てもそう言えますか?」

 

あれが演技ではないと長年連れ添ったこの私が言うのだから間違いない。

 

「だからそれも演技で、今日はここまでね。部屋から出たみたいだから」

「?何故そんな事が分かるのだ?」

 

ダクネスの質問は最もだが、幽霊に聞いたのだろう。

 

「教えて貰ったのよ」

「誰にですか?」

 

ゆんゆんが少し怯えながら聴く。

ダクネスも怯えているようだった。

 

「前に言ってた貴族の子よ」

 

急に真顔になる二人。

これは信じていないと思う。

しかし、カズマがこの後直ぐに来たのも事実だ。

だからと言って考えが変わったようには見えなかった。

恐らく結界で知ったと思ったのだろう。

 

 

 

起きて来たカズマは、人と会う約束があると言って朝食も摂らずに出ていった。

数分後、アクアとダクネスにぶつぶつ言われながらも屋敷を出た。

そして私達は後を追ってカズマを見守っていた。

すると珍しい人物が出てきた。

 

「・・・久しぶりだな。で何の用だ?」

「君たちが王女様に会うと王都で聴いて、前の件の謝罪と併せて話をと思ってね」

 

相手はまさかのキサラギであった。

昨日手紙を読んでから機嫌が悪かったのはこういう事だったのか。

 

「謝罪って言うならあの取り巻き二人は如何したよ?俺としてはお前よりあいつらに謝って貰いたいんだが」

「取り巻きじゃない!あの二人は僕の仲間だ!・・・申し訳ないがクレメア、フィオの二人はアクセルに行くと言ったら何かに怯えるように行きたくないと駄々をこねられてね。あの時は二人が失礼した」

 

怯える?

裁判でもカズマを貶めて、事ある毎に食って掛かっていたあの二人が?

 

「怯えるって俺は何もしてないぞ?それにお前に謝られてもな・・・所で話って何だ?」

「それは分かっているさ。・・・話というのは王女様との謁見についてだ。実は延期になるらしい。近々連絡が入るんじゃないか?」

 

流石は王都で先陣切って戦ってる勇者候補の一人だ。

情報が早い。

 

「延期?如何してそんな話に、てか何でお前が知ってんだよ?」

「先日王女様と会った時にね。確か、王子様の外遊でその出国式とかだったかと」

 

そう言えばあの時城に居る王族はアイリスしか居なかったような気がする。

でも第一王子が居なかったのってもっと前からだったような?

 

「・・・・・・・・・魔王軍幹部二人と天災のデストロイヤーを討伐した俺らがまだなのに、お前が先に会ってるっておかしくないか?」

 

確かに功績で言えば明らかに私達の方が上だ。

これは待遇改善を王都に要求すべき案件かもしれない。

 

「それは君たちが王都で活動していないからではないか?」

 

ご最もな意見だった。

アクセルの街は、王都からすれば辺境の地。

考えてみれば当然の事ではないか。

 

「それもそうか。そういや王女様ってどんな感じの人なんだ?冒険譚聞きたいってくらいだから庶民的な人か?」

「庶民的かどうかと言われると僕にも分からないが接しやすい方ではあるよ」

 

接しやすい?

クレアを通してしか話してなかったあのアイリスが?

まさかイケメン相手なら直接話すなんて言う、おかしな事が起こっているのではと疑いたくなる。

 

「情報ありがとう。これで用は済んだだろうし帰るわ」

 

早く切り上げたそうなカズマ。

それにカツラギは焦って止めた。

 

「ちょっと待ってくれ。最後にアクア様がどうなさっているかだけ教えてくれないか?」

 

やはりカブラギはアクアの事が好きなのだろうか?

前の世界でアクアが告白されたと言う話は聞いていないが、どうなのだろう?

 

「アクア?あいつなら宴会芸の女神として日々楽しく過ごしてるよ。気になるんだったら会ってくか?」

「いや、僕はまだまだ強くならなければならないからね。もっと強くなって、君に負けない程の戦績を上げてからじゃないとアクア様にお見せする顔がないよ」

 

こうやって見てるとカブルギが小説か何かの主人公のように見えてきた。

 

「ならいいけど。じゃあまたなミツルギ。出来れば会いたくないが」

 

またカズマに名前を間違われるメブルギ。

にしても何故ここまでメダルギは名前を間違われるのだろう。

魔剣を持っていて印象的だと思うのに。

 

「・・・嗚呼、サトウも元気でな。アクア様を頼む」

 

もはや名前の事は諦めたのであろうメダルキは少し落ち込んだ様にカズマを見送った。

カズマが出ていったのを確認してから私達も店を後にした。

 

 

 

カズマとメタルキが別れてから数分、現在も尾行を続けている。

しかし私はある約束を思い出した。

 

「ゆんゆん。少しの間カズマを一人でお願いします。そろそろ約束の時間ですので」

「分かったわ。任せておいて!」

 

やはり持つべきは親友である。




今後のこのすば誕生日イベントは投稿しない事と致しましたので受験生の間は作り置きを毎月更新していく形となります。
受験が終わってからは誕生日イベントに投稿するかもしれません。と言うかやります!

前回の次回予告にもありましたが王都編とか言いながら行かなくなってすみませんm(*_ _)m

カズマさんの誕生日話は誰視点が良いかについて

  • カズマ視点(天界)
  • カズマ視点(討伐後)
  • ヒロインズの誰か視点(天界)
  • ヒロインズの誰か視点(討伐後)

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