-ARATANATYOUSEN-
めぐみんと別れてから小一時間。
カズマはアクアさんと合流した。
何やら話をしてこちらに向かってくる。
ここは自然を装って合流しよう。
「あっ、ゆんゆんじゃない。何してるの?」
アクアさんは知っているのに意地悪だ。
忘れている可能性も否定出来ないけど。
「街探索をめぐみんとしていたのですが、さっき別れまして」
「今からアクシズ教会に行く所なんだが、一緒にどうだ?」
断る理由もなく、二人に同行する事となった。
「吹けば飛びそうな教会だな」
それはカズマの言ったありのままの感想だった。
アクアさんの手前絶対言えないけど。
「なあ、アクシズ教徒って恐れられてるけど、流石に神官とかは大丈夫だよな?」
「何言ってるのよ。ウチの子はみんないい子なのよ?周りの評価が間違ってるのよ。なんならエリスの所がデマ流してんのよ。・・・多分」
この人はまだ自分を女神だと信じ込んでいるみたいだ。
アクアさんの容姿は本当に女神の様に美しいのに、言動はなんと言うか幼いし、あまりにも運が無さすぎる。
一つ確かなのは他のアクシズ教徒より少しマシって事くらいかな?
「・・・お前が言うと逆に不安になってきたんだが」
カズマがそう言う中アクアさんが扉を開けようとしたその時。
中から声がした。
『ほら、言われた通りの物だ。確認してくれ。・・・まったく、こう言うのはあまり頼まないで欲しいのだがな』
なんだろう。
危険な取引が行われている気がする。
『・・・確かに。あなたに頼んで正解だったわ。これは間違いなく一級品ね。心配は要らない、これは私が個人的に使うのだから』
?
何処かで聞いた事のあるような声。
何か嫌な思い出が蘇るようなそんな感じがする。
『ならいいんだがね。とは言え、こいつの所為で毎年死人が出るんだ。楽しむのも程々にな』
兎に角、分かるのは非常に危険な物の売買がここでされている事。
カズマも鬼の形相となり、アクアさんは気が気でない感じで緊張が走る。
「アクア、これは流石に駄目だろ。警察行くぞ」
「ちょっと待って、まだよ。と言うか現行犯じゃないと逮捕できないじゃない」
アクアさんに言われて私達は突入の構えを始める。
そんな中、聞こえてきたのは意外な人物の声だった。
『まったく。あなたは少しも変わってませんね。そんなにこの白い粉が美味しいのですか?』
それはさっき別れためぐみんの声だった。
突然の出来事に理解が追い付かない。
ただ顔を見合わせるだけの私達。
『しかしこうやって見ていると好奇心をそそられますね。私も試してみたくなって来ました』
『お嬢ちゃん、サービスするよ。これはお湯に溶かして・・・』
めぐみんが危ない物に手を出そうとしている!
止めなきゃ!
でも偶々めぐみんに似た声の可能性も・・・
『そうそう。心配は要らないわ。最初は誰でも怖いモノ。でも一度食べたらめぐみんさんもきっと病みつきに・・・』
先程の女声がセシリーさんだと私が気付いたその瞬間。
カズマが扉を蹴飛ばし、アクアさんと二人で乗り込んで行った。
「そこまでだ!邪教徒ども!俺のめぐみんに何やってんだ!ぶっ殺すぞ!」
中に入ると、大胆なカズマの発言に驚いたセシリーさんと商人の男が居た。
そして・・・
「か、カズマ!?急に俺のだとか、何ですか?新手の告白ですか?」
私達の心配とはかけ離れた、お花畑なめぐみんがモジモジしていた。
当然カズマも反応に困っている。
「お前...こんな時に何言ってんだ!そんな事よりそこの犯罪者共、動くなよ!これでも一応名うての冒険者だ。抵抗するようなら分かってんだろうな!」
めぐみんを庇いながら、二人に啖呵をきった。
今のカズマは凄く格好良く、めぐみんが惚れるのも納得だ。
アクアさんもいつになく活躍している。
ただここでの取引はおそらくアレだと思う。
「ちょっちょっと落ち着いてお兄さん。これは私が使うだけで・・・」
「そんなもん信じるか!ウチの仲間にさっき勧めてただろが!これ以上何か言うなら『ゴッドブローッッッッ!』ティンダーで、燃やし、てやるからな!」
アクアさんが商人の男をぶっ飛ばした。
それによって少しペースを乱されたカズマ。
「カズマ!?待ってください。これは誤解で」
「うるさい!めぐみんは黙ってろ!無知な子供を騙して、邪悪な物を勧めるとはダークプリーストめ!大人しくお縄につけ!」
カズマはバインド用の紐を出した。
「カズマ、待って一旦話を聞いて・・・」
「ゆんゆん!?お前ゆんゆんに何をした!おい!事と次第によっては分かってんだろうな!」
何か勘違いしているカズマが人殺しをしそうな目になっていた。
・・・殺したりしないよね?
「ま、待ってカズマ。この粉は・・・」
アクアさんも止めに入ったが、火に油を注いだだけだった。
「よし、お前をきぜっ、めぐみん何すんだ!離せっ!」
「落ち着きましょう!今のあなたは感情的になり過ぎです!」
「そ、そう。お兄さん落ち着きましょう。話せば分かる!話せばっ!」
こうしてカズマがやっと対話をする気になった。
「つまりこれは、子供や老人が喉に詰まらせて危険だから、ご禁制になっただけの粉なのか?」
「そうそう。ほんと焦っちゃうわよね。お姉さん殺されるかと思ったわ」
何とか首の皮一枚繋がったセシリーさんは冗談めかして言った。
「それはすまなかった。てっきりみんなに洗脳でも掛けたものかと」
「そんな事プリーストに出来るわけないでしょ。めぐみんさんには感謝しないとね。助けてくれてありがとう」
言ってめぐみんを抱き締めるセシリーさん。
感謝と言う名目で抱き着きたいだけのようにも見えるけど。
「離れてください。私が止めたのはカズマに犯罪者になって欲しくなかったからです。お姉さんの事はその次です」
「めぐみんさん可愛いわね。めぐみんさんはツンデレでふぐっ!」
めぐみんはこれ以上言わせてたまるかと言った感じで口を塞いだ。
「裏取引してた方も悪いとは思うが、過度な面も否めないからなんかして欲しい事とかあるか?」
「ぷはぁ、そうねえ・・・あっ、魔剣持ちのイケメンを紹介してくれる?」
もしかしなくてもミツ何とかって人の事だろう。
この街で魔剣持ちと言えばその人しか居ないし。
「・・・分かった。連れてくるが紹介だけだからな。その後の事は知らないからな」
「ええ、分かっているわ。それじゃあ交渉成立ね。お兄さんとは仲良くやっていけそうだわ」
片手を差し出すセシリーさん。
カズマもそれに応える。
そして不機嫌になるめぐみん。
「まあ、よろしく」
握手が終わるとセシリーさんはアクアさんの元へと向かった。
そしてカズマはめぐみんに近付き話し掛けた。
「めぐみんごめんな。見苦しい所見せて。それに知り合いに酷い事してた訳で」
「気に病む事は無いですよ。私が悪い遊びを教え込まれていると思って助けてくれたのでしょう?」
めぐみんに言われるも、未だにカズマは罪悪感に苛まれているようだった。
「でもさ」
「それにカズマが私の、いえ、私達のためにここまでしてくれて嬉しかったです。『そこまでだ!邪教徒ども!俺のめぐみんに何やってんだ!ぶっ殺すぞ!』でしたっけ?それと『ゆんゆんに何をした!事と次第によっては分かってるんだろうな』ですよね?あの時のカズマ凄くカッコ良かったですよ。ふふ、また、カズマの覚えて置かなければならない言葉が増えました」
・・・なんだろう。
この甘い感じは。
羨ましい。
それにまた増えたって事は、めぐみんってカズマ語録みたいな物を作っているのだろうか?
今度見せて貰おう。
「や、やめろよ。俺も焦ってて余裕がなかったんだって、頼むから忘れてくれ」
「俺のめぐみん・・・」
「だからやめろって!」
・・・私は何を見せられているのだろうか。
この二人はさっさと付き合えばいいと思う。
「ニヤニヤするのもやめろ!頬っぺた引っ張るぞこら!」
ツンデレマ。
いつもめぐみんが言ってるやつだ。
めぐみんは言われてもニヤけたままで、あの二人の邪魔は誰にも出来ない、
「あーっ!」
事もなかった。
二人だけの世界は、空気を読まないセシリーさんの大声で無くなってしまった。
「なっ、なんですかこの人は!めぐみんさんに微笑まれてツンデレオーラ出しちゃって!めぐみんさんも満更でもなさそうな緩みきったその顔は!めぐみんさん可愛すぎです。ギュッとしてもいいですか?」
「駄目です!と言うか既にしてるじゃないですか!はあ、カズマとアクアは初めてですよね。紹介しますこの人は私の」
「姉です。なのであなたがめぐみんさんに相応しいか私が見てあげましょう」
急な嘘に気付かず、そうだったのかと呟くカズマ。
あそこまで堂々と言えるセシリーさんは逆に尊敬出来るかも。
「違いますよ!何サラッと捏造してるのですか!それに何が見てあげるですか!」
「俺のめぐみんなんて言うんだからそういう人でしょ?まあめぐみんさんは渡さないけど」
カズマを品定めするように上から下まで見て回るセシリーさん。
めぐみんがそれを見て少しイラついているのが分かる。
「あれは仲間って意味だから!別に俺がめぐみんの事どうとかそういうのじゃ・・・今なんて?」
「渡さないって言ったのよ」
「・・・ちょっと待って貰えないか」
そう言ってカズマはこっちへとやって来た。
「なあ、あの人ってイケメン好きかロリコンかシスコンかどれなんだ??」
「・・・ロリコンかな?金持ちイケメンに養って貰いつつ、美少女と戯れるのが夢だとか。ある意味シスコンかもだけど」
かなり引いてる模様のカズマ。
誰だってこんな理想を聞かされたら引くだろう。
あの街ではさも当然かの様にみんなが聞いていたが。
「・・・マジか」
「・・・マジです」
その後は何も言わずに戻って行った。
「あら、戻って来たの?ゆんゆんさんとも仲がいいならめぐみんさんは私が・・・」
「めぐみん爆裂散歩行くぞ」
その一言でさっきまで無抵抗だっためぐみんは抜け出した。
「あっ!めぐみんさん待って!爆裂魔法で釣るなんて卑怯よ!この泥棒猫!」
「痛っ!何すんだよ!石投げるな!あと誰が泥棒猫だ!」
この街の人にアンケートを取れば百パーセント泥棒猫はセシリーさんだと思う。
アクセルで最も有名なバカップルランキング一位を四週連続でとり、殿堂入りしたのだから。
勿論、二人はそんなランキングがある事を知らない。
「私の美少女ハーレム要員を取ってタダで済むと思っているの!」
「お前金に困ってんだろ?」
「それが何なのかしら?」
カズマに対して高圧的なセシリーさん。
しかし、カズマが何かを耳打ちすると今までの態度からうって変わり、
「お兄さん結婚しましょう!この際イケメンかどうかは妥協するわ!そしてめぐみんさんを養子に、痛い!痛い!めぐみんさんやめないで!」
アクシズ教徒にはろくな人が居ないと再認識させられる一日だった。
ミタラシから延期の情報を得てから二日経ち。
カズマとクリスの密会からは一週間。
未だに尻尾は掴めていない。
あの日の謎のうち解明したのは、カズマのタイプがやはり、私の聞いた人物像と変わっていないという事だけだ。
昨日来た封書に書かれていたから間違いない。
それにしても昨日と一昨日のはどうかと思う。
記憶を失っていた時の私とか、私とゆんゆんの二人でとかどう言うつもりなのか色々聴きたい。
前者については再教育しなければならない。
「これって王都からの手紙よね?もう日程が決まったのかな?」
「多分そうでしょう。カズマ宛ですから、起きてくるのを待ちましょう」
恐らくこの封筒の中に延期の知らせが入っているのだろう。
あの日カズマが話していたから一応全員知っているけど、正式な情報はこれが初めてだ。
「おはよー、その封筒はどうしたんだ?」
「おはようございます。王都からカズマ宛で届いたので、この前言っていた延期の件かと」
「ほー、どれどれ、王子警護への人員導入に伴う警備体制の建て直しにより、手配していた人員確保が出来なくなったねえ、王族も大変だな」
他人事の様に呟くカズマ。
ゆんゆんもそれに頷くだけであった。
「延期の日程は後日改めてか。でもこれって流れたも同然じゃないか?どうせただの冒険者との面会なんて後回しだろうしな」
「そうですね。少なくとも半年ぐらいは掛かりそうです」
「でも、ゆっくり出来る日が増えたしいいんじゃないかな?」
呑気な事を言うゆんゆんだったが、確かにその通りだ。
「ではカズマ。爆裂に行きましょう」
「俺まだ飯食ってないんだが」
カズマが何か言ったようだが、どうせツンデレが発動しているだけだろう。
「ほら、行きますよ!」
「・・・はあ。しょうがねえなあ」
女子会が凄く役に立っていると実感する今日この頃である。
数日後。
今日も何気ない一日を過ごす予定だったが問題が発生した。
「カズマ!大変だ!これを見てくれ!」
「・・・あんた誰?てかどうやって入ったんだ?」
急に入ってきた女性は何か写真のような物をカズマに見せて騒いでいた。
「おおお前!今はふざけている場合では……」
「あっ!ダクネスか!ごめん。誰か分からなかった」
私も一瞬誰だか分からなかった。
まあ、この時期に来るのはお見合いで騒ぐダクネスくらいだろう。
「・・・兎も角これを見てくれ!」
「どれどれ、あっ…」
カズマは反射的に写真を破ってしまった。
「おい!カズマなんて事を!これでは見合いが断れないではないか!」
「すまん。イケメンが写ってたからつい、アクア、米粒で修復頼む。酒買って来てやるから」
「任せなさい!」
お酒に釣られたアクアが修復を始めた。
「・・・見合いって言うけど急にどうしたんだ?」
「実は家に領主からの借金があってな。そこでその息子と結婚する事になったのだ」
前と殆ど同じ状況だが、今回はダクネスが何でもするって言ってないのに、如何して断れなかったのだろう?
「政略結婚みたいなやつか。俺としては何とかしてやりたいけど、どうすりゃいいんだこれ?ダクネスのとこの借金肩代わりとか?」
「いや待て、それには及ばない。この話をなかった事に出来ればそれでいいのだ。そこで何かいい案はないかカズマ?」
「親御さんはお見合いについてどう言ってるのですか」
「いつもは突き返してくれているのだが、相手が相手なだけに今回は父も乗り気なのだ」
イグニスさん、お気持ち分かります。
カズマは勘違いしているようだが。
「うーん、何か方法は・・・・・・・・・」
いかにも悩んでますって格好のカズマがカッコイイ。
途中から何か変な事考え出してる気がしてきたけど、それを差し引いてもイケメンだと思う。
「カズマ出来たわよ」
「ありがとう。・・・・・・・・・あっ!これだ!!」
以前同様に写真を再び引き裂いた。
アクアが努力の結晶を破られ泣き喚いていた。
可哀想だったから五千エリスを渡しておいた。
今回の試みはゆんゆん視点で書くという物でした!
昨日はフォロワーさん300人記念の作品を投稿して、参加させて頂いているリレー小説が更新され、すずみやみつきさんに依頼していた「いつかまた、」のイラストが完成し、pixivの方にもイラストを入れる事が出来て本当に良かったです!
みなさんありがとうございます!!
『いつかまた、』のイラストはすずみやさんにリメイクして頂きましたので是非pixivに足を運んで頂けると幸いです!こちらでは引き続き元のシリアスめぐみんを使わせて頂いております。
リレー小説第二弾も参加する事となったのですがまた場違い感に苛まれています笑
しかも私めちゃくちゃやらかしましたし笑
今回の更新は第二話を務めているCeroさんのお話です。私の書いた第一話は読まなくてもいいので、Ceroさんの第二話をよろしくお願いします!!
リンク
すずみや みつきさん
https://www.pixiv.net/member.php?id=32023954
リレー小説第二弾『この紅魔の乙女達に恋愛を!』
https://syosetu.org/novel/205900/
『いつかまた、』pixiv
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10728159
フォロワーさん300人記念作品
https://syosetu.org/novel/206218/
カズマさんの誕生日話は誰視点が良いかについて
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