今回はめぐみんがカズマさんを質問攻めにします。
-NAKAMAKARANOHYOUKA-
紅魔の里へ向かう途中、アクシズ教の総本山であるアルカンレティアにやってきた俺達であったが、早速面倒事に巻き込まれた。
魔王軍が温泉に毒物を仕込むと言う地味ながら経済的に大きな打撃をくらわせる工作活動が実行に移されていた。
アクアが汚染に気付き、初めは理解されず大泣きもしていたが、巫女を名乗って、話を聞かせているようだ。
ダクネスに話を聞いたところ、巫女を名乗る案はゆんゆんが出したらしい。
アクアだけなら多分、実は女神アクアですとか言ってそうだもんな。
とまあ、アクアの頑張りで、温泉協会が全面的にバックアップしてくれて、源泉近くまで辿り着き、ダクネスのお家柄を利用して、源泉の調査が始まった。
俺は人数を考えて、めぐみんとウィズ、その他アクシズ教徒達と共に街へ戻った。
街に着くとウィズは、この街の魔道具店を調査すると言ってどこかへ行ってしまった。
そして、二人きりになった俺とめぐみんは何をして過ごすか話し合っていたのだが、途中からめぐみんの様子がおかしくなってきた。
ぼーっとして、話しかけても直ぐに返事が来ない。
熱があるのかとも思ったが、大した熱はなかった。
毒にやられている可能性とか、軽度の風邪なんかだったら不味いと思って、デート期間消費を諦め、俺はめぐみんをおぶって宿屋へと向かった。
「あのう。カズマ?おんぶは嬉しいのですが、そこまで重症じゃないと言いますか、歩けますよ?」
「おんぶ嫌なのか?なら下ろすけど」
「いえ、さっきも言ったように嬉しいですよ」
じゃあ何が言いたいんだ?
歩かなくていいし、楽だろうに。それも認めてるし。
「じゃあ、このままでいいだろ?」
「分かりました」
この話が終わってから直ぐにめぐみんは眠りに落ちた。
そして、俺の服がめぐみんのよだれ付きになった。
・・・やっぱり歩かせとけば良かったと今更ながらに後悔する俺であった。
部屋に到着。
めぐみんをベッドに寝かせて、様子を見ているが、今の所変わったことはない。
調査組が帰ってくるのが先か、めぐみんが起きるのが先か。
前者であれば、アクアにめぐみんを診てもらえる。
後者であれば、めぐみんから症状を聞いて近くの医者に診せる事ができる。
どっちでもいいのだが、出来れば前者であって欲しいと願う自分がいる。
めぐみんと二人きりになると絶対にからかわれる。
魔性のめぐみんは伊達じゃない。
「かずま・・・なんてんで・・・」
こいつ夢でも爆裂散歩してるのか。
本当に爆裂魔法が大好きなんだな。
何かに熱心になれる所にちょっと憧れてたりもするが、まあ、めぐみんの場合は熱心というより、熱狂だから、違う気もするけど。
「ごほうびの・・・きすを・・・」
ご褒美が鱚って渋いな。
でも今度高得点取った時にあげるのありだな。
本人が寝言で言ってる以上欲してる物だろうから。
こうやって普通の夢見てるってことは案外大丈夫なのかもしれない。
「かずま・・・・・・あいしてます・・・」
え?
今あいしてますって言わなかったか?
同じ部屋に泊まるとか言ってたのもそういうことなのか?
いや落ち着け佐藤和真。
かずまと聞こえてから間があった。
多分、俺に爆裂魔法に対する想いを語ってただけだろう。
そうだ。
絶対にこれだ。
もしこの後俺が変に意識したら、それでまたからかわれるとかそういうオチだ。
クールになれ佐藤和真。
って、これは別のやつか。
「・・・ふわぁ〜、カズマおはようございます」
「お、おはよう。気分はどうだ?」
「普通ですよ。私の寝ている間に何かありましたか?」
「なにもなかったぞ」
「・・・寝ている私に何かしましたか?」
「してないっての!」
眠ったことで体調は元に戻ったみたいだ。
よく考えたらおぶってる時に、なにも仕掛けてこなかったのは疲れが出ていた現れかもしれない。
「怪しいですね。挙動不審ですよ?」
「調査結果とか、お前の体調とか色々心配で、気になってたんだ」
「心配ありがとうございます。もう大丈夫みたいです」
「なら良かった」
めぐみんが元気そうで、ほっとしたのもつかの間、この後少し面倒なことが起こる。
目が覚めるとカズマの様子がおかしかった。
色々探って見たものの、真相は分からなかった。
しかし、カズマに質問する予定が寝てしまった事で、二人きりで話す時間が減ってしまったのは勿体ない。
ということで質問を始めた。
「カズマは、私のことどう思ってますか?」
「えっと、仲間だけども、そう言うのじゃない?」
「はい。私で言うとゆんゆんは仲間以前に同郷の友人です」
私の例を聞いて安堵しているようなカズマ。
もう少し攻めた質問の方が良かったかもしれない。
「そうだなあ、頼りになるけど、時々抜けてて、やらかす時はやらかしてくれるちょいと問題児な妹って感じかな」
「妹ですか?」
「前にゆんゆんが俺らのこと、仲の良い兄妹みたいって言ってたし、この街でも言われたろ?」
なるほど、ゆんゆんに言われたことによる刷り込みか。
シスコンの入ってるカズマにはある意味有効的かもしれない認識とも言える。
しかし、今のカズマはなんだか気が気じゃない感じがする。
「・・・抜けてるとか問題児とかそこら辺については?」
「自分で仕掛けといて周り見えてなくて焦ってる時とか、すぐ揉め事起こすとか」
確かに、何度か夢だと思って抱きついたり、みんなの前でデートがどうのと何も考えずに言ってたような。
「揉め事と言いますが、全部カズマのためですよ?」
「デストロイヤー戦の時に言ってたあれか?」
「そうですよ。ほかのも大抵同じです」
「・・・例外は?」
「私を本当は男なんじゃないかとか、まな板だとか言った連中に制裁してます」
私から喧嘩を吹っかけるのはこっちではしてない。
カズマに迷惑をかけないように頑張っているのだから。
「・・・喧嘩に関しては分かったけど、爆裂魔法の約束破りは?」
「それは、黙秘します」
カズマがなかなか帰って来ないのが悪い。
と言っても怒らせるだけだから言わない。
「この話はもういいので、次の質問です。デートのことはどう考えてますか?」
「デートか?まあ、普通に楽しんでるけど、アクセルだと周りの目が気になるんだよな。だから出来ればこういう知り合いのいない所でやりたい」
「嫌とかではないですか?」
「全然そんなことないぞ。そもそもデートとは無縁な人種だったからな。どっちかって言うとデートするの好きだぞ・・・急にどうしたんだ?」
先程からの質問を不思議に思ったのだろう。
怪訝そうにしている。
「ちょっと気になっただけです。嫌なことを強要するのはしたくないので」
「めぐみんのこと好きだから付き合ってるに決まってるだろ?」
「それは分かって・・・好き?」
なんと言うことでしょう。
あのカズマが好きと言いました。
明日は嵐かもしれない。
「いや、あの、ほら。仲間つうか妹っていうか家族的な意味で好きって意味だからな!」
「そうですか」
本音がポロリなのかどうかはさておき、カズマの慌てようが面白い。
カズマがなんとなく避けているように思ったのは、私の気の所為だったのかもしれない。
一緒に居すぎて感覚が麻痺していたのかも。
ここは一つ仕掛けてみよう。
「・・・めぐみん?まだ体調悪いのか?」
「カズマが添い寝してくれたら治ると思います」
「俺の心配を返せ」
と言いながらもカズマは笑っていた。
なんと言うか落ち着く。
カズマの笑顔は世界を救うと思う。
「私と添い寝するの嫌ですか?」
追撃に出た私であったが、あることに気付いた。
そして、カズマはそれに気付いていない。
「・・・デートの代わりにって言うなら添い寝する」
「やはり二人はそういう関係だったのか」
「だ、ダクネス!?」
いつの間にか扉から顔を覗かせていたダクネスが、満を持して入ってきた。
カズマは顔を真っ赤に染めて、パニック状態である。
かく言う私も先に見えてなければ同じ反応だったと思う。
「調査は一応問題なかった。あとは二人でのんびりするといい。あっ、そうだ。隣の混浴温泉が復旧したらしいぞ」
ダクネスが恋敵にならなければ、後押ししてくれる事がわかった。
付き合っていれば添い寝も混浴も止めるどころか、勧めてくるとは。
「いや、俺らは別に・・・」
「カズマ、これでゆんゆんに加えてダクネスにも私達恋人だと思われてしまいましたね」
「・・・残るはアクアだけか。いや、あいつそもそも俺らくっつけようとしてたな」
「仲間公認のカップルですね私達」
これで正式にお付き合いしていたら、満点なのだが、現実はそう甘くない。
「本当は付き合ってないけどな・・・お前はそれでいいのか?」
「別に気にしてませんよ?」
いずれ事実になれば、問題なし。
報告しても、まだだったのかと驚かれるだけだろう。
実際、実家に報告に行ったらとっくに結婚してると思ってたと言われた。
挨拶もなしにするわけないと言ったら、何度か家に来てるから問題なしとのこと。
金に目が眩んでいたのもあるだろうが、それにしてももうちょっとあるだろう。
「そうか・・・あっ、風呂どうする?」
「ダクネスが言ってた所に行きましょう」
「今からか?」
返事もせずに私はカズマの手を取り、部屋を出ようとした。
しかし、カズマは動かなかった。
「カズマ?行かないんですか?」
「着替え用意してねえから、止まってる。あと、混浴しかなかったらどうするよ」
「つい先日一緒に入ったばかりではないですか。カズマと二人きりならタオルなしでも私は構いませんよ?」
「こっちが構うわ!お前ホント俺のことなんだと思ってんだよ思ってんだよ」
「一緒に居て、楽しくて安心できる人です」
好意を伝えず、かつ、カズマを意識させるには十分な回答だと思う。
「わ、分かった。確かに怖いことあったら俺のとこよく来るもんな。それと、俺もめぐみんといるの楽しいし好きだ」
こちらのカズマは焦ると好きとかストレートに言ってくるのが、嬉しい半面、慣れずにこっちまで焦ってしまう。
・・・最近カズマをからかうのが諸刃の剣となっている。
「ありがとうございます。用意できたら行きますよ」
この後、お互い一度も喋らず、温泉に着く。
そして、結局各々の性別の方へ行き、何事もなく、宿屋へと戻った。
部屋に戻ってからも、特に何も話さず就寝した。
翌朝、目覚めるとカズマが私の布団に入っていた。
と言うことも無く。
全く進展しない。
どうすればカズマから告白させられるのだろうか?
やはり私から好きだと言わないとダメなのだろうか?
カズマの警戒心をここまで高めてくれた幼馴染とやらを恨むしかない。
「おはよう。体調はどうだ?」
「おかげさまで、完全に治ったみたいです!」
「良かった。今日はどうする?安静にするか?」
「カズマと、普通にデートしたいです」
いつもとは違い明らかに動揺している。
真剣に想いを乗せて言うとまだ耐性がないようだ。
「・・・えっと、それは一日使うってことでいいのか?魔王軍対策とかしないのか?」
「あっ、忘れてました」
いけない。
カズマのことしか考えていなかった。
ハンス討伐がまだだった。
「・・・で昨日結局みんなと話せてないけどどうする?」
「今日の夜。また源泉を見に行きます。私達だけで」
「分かった。無事に終わったらデート行くか」
言ってやったと言わんばかりにキメ顔をしているが、カズマらしくない発言である。
発言自体もだが、この状況下で言うのが完全にズレている。
「それフラグですよね?」
「・・・俺もアクアのこと言えねえな」
バツが悪そうに、頬をかき最悪の事態を想像したのか、カズマは顔を強ばらせていた。
「安心してください。カズマのことは私が守りますから!」
「俺この街に来てから既に守られてるし、これ以上情けない事態になるの嫌なんだけども」
「私は何度もカズマに救われてますから、気にしなくていいですよ?」
「・・・俺そんなにめぐみん助けてるか?」
カズマは自分が心から助けたことを忘れがちだ。
本人は助けたと言う認識をしてないのかもしれない。
「爆裂散歩に付き合ってくれるのが、毎日私の救いです。カズマの採点がないと満足出来ないのですよ。だから記憶を失った時も、あの採点で思い出したんだと思います」
「・・・」
「私、カズマじゃないとダメな体になってしまいました」
「・・・え?」
何を言い出すんだとこっちを見るも、私の口が動いていなことに困惑するカズマ。
振り返ってその声の正体に気付いた。
「お前、ホントなんてタイミングで入ってくんだ!あと、めぐみんの声真似て変なこと言うな!」
「いやあ、中々進展しない二人見てるとさっさとくっつけと思うでしょ?だからおせっかいしてるのよ」
こちらではアクアが私をダシにカズマをからかうことが多い。
私達が付き合っていると思っていてやっているのか、ただ単に面白いからやっているのかがよく分からない。
「いらんわ!てか何しに来たんだ!」
「また温泉が汚染されてるみたいなのよ。それで、今行ったら犯人がいるかもしれないから私達だけで源泉の所に行こうって話になったのよ。そうかっかしないでちょうだい」
アクアの言う通り、全ての温泉が浄化されたら、ハンスも焦って行動を早める可能性は高い。
提案者はダクネスかゆんゆんのどちらかだろうが。
「分かった。着替えたら行く」
「そう言えば二人って着替える時ここで一緒に着替えてるの?」
「してねえよ。俺らをなんだと思ってんだよ」
「混浴いつもしてたのに、今更な気がするんだけど」
裸で混浴したことはない。
経験上ないと言えば魔道具が反応してしまうだろうけども、それは別の話だ。
「あれは、タオル巻いてだ」
「まあ、何でもいいけど早くお願いね」
「言われなくてもやってる。はぁ、またこれかよ」
「またですね」
実質的に付き合っている二人になっているこの状況下ならカズマもヘタレない可能性は充分ある。
とは言えカズマはカズマだから、ヘタレないとも言いきれない。
「この話は置いとこう。多分デート期間が終わって、時間が経てば分かることだろうしな」
焦っているのがバレバレである。
耳まで真っ赤にして、こちらを見ようともしない。
やっぱりカズマはヘタレだった。
次回の投稿はどのシリーズか未定です。
投稿をもって発表とさせていただきます。
カズマさんの誕生日話は誰視点が良いかについて
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