まあ、皆さんご存知だと思いますが。
*加筆及び修正をしました(12/31)
-KYUUYUUTONOSAIKAI-
カズマと別れた私達は大浴場にてカエルの粘液を落としていた。
「今日は疲れたわね。こう言う時は、キンキンに冷えたシュワシュワが美味しいのよ」
アクアが一番好きな飲み方だ。
確かに疲れた後に飲む冷えたシュワシュワは美味しい。
「そうなんですか?私はまだ飲んだ事がないので、分からないですが、飲んでみます」
上手くアクアの宣伝に乗せられているゆんゆん。
嘘はついていないから、素直に受け取ってしまったのだろう。
「それが良いわ。ゆんゆんもきっと気に入ると思うの。めぐみんも一緒に飲まない?」
アクアは機嫌が良くなり、私にも勧めてきた。
「私はいいです。それに多分カズマに止められると思いますよ」
この頃のカズマとダクネスは、なにがなんでも私にお酒を飲まそうとしなかったから、この予想は合っていると思う。
それに母親になってから分かったが、今の私の体で飲むのは早過ぎる。
「大丈夫よ。もしあのヒキニートがそんな事言ってきたとしても気にする事はないわ。アクシズ教の教えには『飲みたい時に飲みなさい』と言うのがあるのよ。だからめぐみんがアクシズ教に入れば問題ないわ」
流石アクシズ教の元締めである女神だ。
息をするように勧誘をしてくる。
「入りませんよ!あと別にお酒を飲みたい訳じゃないですし、ただ成長期にお酒を飲むとパーになると聞いた事があるので」
ダクネスから嫌ほど聞かされてきた、大人になっても嘘かどうか判断に迷う脅し文句である。
「そうなの?じゃあ、私もやっぱりやめておきます」
ゆんゆんもパーになりたくないのだろう。
「あなた達そんな大人の脅し文句に騙されてはいけないわよ」
アクアが言うと説得力が全くない。
ゆんゆんも怪訝な顔をしている。
「別に騙されてませんよ」
ある意味では事実だから、騙されてはいないだろう。
「これだから子供は駄目ね。保護者の言う事をそのまま信じちゃうんだから」
子供と保護者と言われても、私とカズマは数え年で言うと二歳しか離れていないから成立しないと思う。
それに私を子供扱いした事が解せない。
「あの、実際にそう言う人を見ているから言っているのですが」
現在進行形で見ているのだから。
「そそうなのね。でもそれは偶々そうなっただけかもしれないでしょ」
「里にいる酔っ払いの殆どがそれでしたよ」
嘘は言ってない。
例を挙げるなら、ぷっちんとか、ぶっころりーとかその他にも色々。
「そこまで言われるとさすがに誘えないわ。でも飲めるようになったら一緒に飲みましょう」
アクアは諦めて、未来の話に変えたみたいだ。
まさか自分が含まれていたとは思ってもみないだろうけど。
「はい、その時はお願いします」
「私もお願いします」
「みんなと飲めるのが楽しみだわ」
アクアは満面の笑みでそう言った。
入浴が終わり、集合場所の馬小屋に戻るともうカズマは着いていた。
「ただまー」
「「お待たせしました」」
カズマは布団にくるまっていて、私達に気付くと直ぐに出てきた。
「おかえり。ちょっと長かったな。やっぱ洗うのに時間がかかったのか?」
「そうよ。結構大変だったのよあれ。だから私は今疲れてるの。優しいカズマさんなら奢ってくれるわよね」
アクアは何処から湧いてくるのか分からない自信を持って、カズマに強請っていた。
「なんで俺が奢らないといけないんだよ。お前が飲み込まれてたのは、俺の指示を聞かずに突っ込んで行ったからだろ。どっちかっていうとお前が俺らに迷惑料として奢れ」
当然、無茶な要求は通る訳もなく、カズマが怒ってしまった。
「なんで私がそんな事しなきゃいけないのよ!」
「お前!自分がしたくない事人にさせるな!」
「違うわ!カズマが私に奢るのと私がみんなに奢るのは違うから!別にされたくない事したワケじゃない!」
「屁理屈こねやがって!いい加減にしろよ!」
いつも通り、喧嘩が始まってしまい、ゆんゆんはあたふたしてる。
私は傍観者を決め込んでいると。
「おい、商売の邪魔になるからどっか行ってくれ」
宿屋の人に怒られ、そのまま私達は外食に出掛け、その後就寝した。
勿論私もゆんゆんもお酒は飲んでない。
翌朝、目が覚めるとカズマが居なかった。
カズマの寝ていた場所には、石を並べた書き置きが残されていた。
「用事ができたから今日は自由行動にしてくれ、ですか。何があったのでしょう?」
「おはよう、めぐみん。カズマさんは?」
私が何の用事なのかを考えている間にゆんゆんが目を覚ました。
「ゆんゆん起きたのですね。これを見てください」
書き置きを見たゆんゆんは少し悩んで答えた。
「取り敢えずアクアさんを起こして朝ごはん食べましょう」
「そのアクアもいませんよ」
「えっ、本当だ気付かなかった」
カズマとアクアの行き先の検討がつかない私達はまず朝食をとり、ギルドに向かったのだが二人には会えなかった。
結局この日は街中をぶらぶらするだけで終わってしまった。
そして私達が一日一爆裂を済ませて帰っていると工事現場に、
「カズ!あと五分で終わりだ!しっかりしろ!」
「オッス!」
死にそうなカズマと、
「おおー、やっぱアクアの姉ちゃんは仕事っぷりが違うな」
「いやー、それほどでもあるわよ」
得意になってるアクアがいた。
「ねえ、あれってもしかして」
「ゆんゆんの思ってる通りだと思います」
私達は二人を見つけてからその場に立ち尽くしていた。
すると作業員の一人が近付いてきた。
「嬢ちゃん達どうかしたか?危ないから用がないなら離れてろよ」
ここに来ても子供扱いとは。
いや、今は成長期前だから仕方がない。
「あの、カズマとアクアの仲間なのですが」
「あー、君らがカズとアクアさんの言ってた子か。あの二人は今、日当貰ってるからすぐ戻って来るぞ。ここら辺で待ってな」
気の良い人で良かった。
「そうですか。ありがとうございます」
「いいって事よ。カズマとアクアさんの事、頼むぞ」
「「任せてください」」
そんなやり取りをしていると二人が戻って来た。
「めぐみんとゆんゆんじゃない。どうしてここにいるの?」
「爆裂魔法を撃った帰りに二人を見かけたので待ってました。用事というのはバイトだったんですね」
「ああ、急に人手不足で呼ばれたから、二人に説明出来なくて悪かった」
そういえばこの街に来てすぐの頃は、土木作業のバイトをしていたと言っていた気がする。
・・・説明出来なくて悪い?
書き置きで悪かったって意味だろうか?
「でも書き置きがありましたし、大丈夫でしたよ?」
カズマを安心させようとして言ったけど、逆にカズマは困惑していた。
「書き置き?そんなのした覚えないぞ」
えっ?
でもあの字は確かにカズマの字だったはず。
長年見てきた人の字を忘れる訳が無い。
「それは私がしたのよ。カズマっぽい感じで」
なるほど、アクアなら余裕で出来る芸当だ。
「お前急ぎで来いって言われたのに、そんな事してたのか?」
半ギレ状態でカズマはアクアに聴いた。
「別にいいじゃない!めぐみんとゆんゆんには伝えられたんだし!それにあれ書くのは十秒ぐらいだったんだから」
あの数の石を十秒で並べるとかアクアはどうやってるのだろう?
一度アクアの宴会芸とかについて詳しく聞いてみたい。
「十秒で石文字が作れるわけないだろ!」
普通の人ならそう考えて当然だ。
まあ、アクアなら一瞬で終わらせるのだろうけど。
「嘘ついてないですー、ほら見てなさい!これをこうしてこう!ほら出来たじゃない!」
アクアの無駄技術にカズマは何も言えなくなってしまった。
「ふふん。どう?私、凄いでしょ!ほら分かったら今日の晩御飯奢りなさいよ」
また調子に乗っていらない事言ってしまったアクア。
「はあ?なんで今の芸見て奢らないといけないんだ?確かに凄いし、今のがクエストで役に立つならいいけど、そうじゃないよな」
カズマが問いただし、アクアは半泣きで答えた。
「そそ、そんな事ないわ。どこかで使うことがあるかもしれないでしょ」
「つまりお前自身使い道が分からないんだな。だったら俺が奢る必要はない」
そう言ってカズマは足早に離れていった。
私達の見える範囲で。
「くっ、いい感じに奢ってもらえると思ったのに」
アクアは全く反省などせず、どこが悪かったかを考えているみたいだ。
私とゆんゆんはカズマに置いていかれないようにアクアを置いて動き出した。
「カズマさんとアクアさんの事なんだけど、あの二人って付き合ってるのかな?」
「なんでそう思うんですか?」
確かに初めて会った時はそう思ったが、一緒に居ればそうじゃないと気付くと思うのだが。
「それは、ほらカズマさんとアクアさんっていつも一緒にいるし、あと、さっきみたいにお互い遠慮なく喧嘩してる所とか」
もじもじしながらゆんゆんはそんな事を言ってきた。
「それで付き合っていると言うなら、まず前者は私達もカズマと付き合ってることになりますし、後者はそれだと紅魔族のみんながすぐに恋人になってしまいますよ」
紅魔族は売られた喧嘩は買う種族なのだから。
「あ、うん。そうだね」
何故か赤面したまま、ゆんゆんが喋らなくなった。
ぼっちあがりのゆんゆんにはこういった話題は早かったのだろうか?
「カズマカズマ」
「どうした?めぐみん」
はいはい、カズマですと言って欲しかった自分がいる。
そのうち言ってくれる日が来るだろうからその日を待とう。
「今日はこの後どうするのですか?」
「適当に飯食って風呂入って寝るだけだぞ。あ、そうだ。悪いけど明日もバイト行かないといけないからクエストには行けなくてな。適当に時間潰しといてくれ」
何故こんなに勤勉なカズマがあんなニートになるのだろうか?
「そうですか。では私もバイト手伝いますよ」
予想外だったのか、カズマは驚いていた。
「俺らの事は気にしなくていいんだぞ」
「二人が働いているのに自由行動なんて出来ません」
それこそ子供と言われても言い返せない行為だ。
「そうか。この感じだとゆんゆんもか?」
「はい、私もお二人が働いているのにその間何もせずにいるというのは気が引けますから」
こうして私達はキャベツ狩りのあの日まで土木工事のバイトを続ける事になった。
あとカズマとの爆裂散歩もスタートした。
勿論まだあの廃城には撃っていない。
バイトが終わった私達はギルドに来ていた。
「なあ、ゆんゆん。スキルってどうやって覚えるんだ?」
「スキルですか?たしか、冒険者なら一度自分の使いたいスキルを他の人に見せて貰うとそのスキルがスキル習得欄にでるので、後はスキルポイントを貯めてから習得すれば覚えられるはずです」
最近ゆんゆんがカズマと普通に話せるようになってきた。
そろそろゆんゆんをマークしないと危ないかもしれない。
ゆんゆんはカズマが言っていたタイプの女性に合う所が多いからだ。
「へえー、そんな感じなのか。て事は俺もゆんゆんに教えて貰えば中級魔法を使える様になるのか」
今から覚えるであろう未来の自分に思いを馳せるカズマは可愛いかった。
「そうですね。ただカズマさんは冒険者ですから、スキル習得に必要なスキルポイントが高くなるのであまりオススメ出来ませんけどね」
「お、おう。なんか手軽なスキル探すわ」
ゆんゆんの無自覚口撃でカズマが心を傷めた。
ゆんゆんは何故カズマがへこんでいるのかまだ理解出来ていないらしい。
「カズマ大丈夫ですよ。私の知り合いに殆どのスキルを覚えて、更に爆裂魔法をも覚えた人がいるので」
「本当か?ただそいつが素から才能が有っただけじゃないのか?」
ひねくれた性格も変わっていない様だ。
「そんな事ないです。普通の人でしたよ」
誰でもないカズマなのだから。
「そこまで言うならそうなんだろうけど。なあ、めぐみん。俺が今覚えた方がいいスキルとかあるか?」
「それはカズマ次第だと思いますよ。自分に合ったスキルを覚えれば・・・」
「なになに、カズマさんスキル教えて欲しいの?なら良いのを教えてあげるわ」
アクアが割り込んできてカズマに宴会芸を教え、それに気付いたカズマに怒られていた。
すると、
「あっはっは!面白いねキミ!キミがダクネスの入りたがってるパーティーの人?使えるスキルが欲しいなら盗賊スキルなんてのはどうかな?」
クリスがダクネスを連れてやってきた。
「盗賊スキルってどんなのですか?」
「よくぞ聞いてくれました。盗賊スキルはね、まず罠の解除に敵感知、それに潜伏や窃盗もあるよ。今ならクリムゾンビア一杯で教えるよ」
「いいのか!おっちゃん!こっちの人にキンキンに冷えたの一つ!」
クリスにぼったくられてるとは、知らずに高い授業料を払うカズマだった。
そういえばクリスは女神なのに、この世界に来たばかりのカズマを騙したりするとは、女神エリスもアクアとあまり変わらないのではないだろうか?
所謂同じ穴の狢と言うやつだ。
前の時とは違い、へこんでいるアクア以外全員で、クリスのスキル講座を見に来ていた。
クリスとダクネスのやり取りが面白い。
そして今、カズマがあの禁断のスキルを教わっていた。
「今から使うのは窃盗スキルだよ。『スティール』」
「あっ!俺の財布!」
流石幸運の女神。
一発で財布を引き当てるとは。
「おっ、当たりだね。まあこんな感じのスキルだよ」
カズマがサイフを返して貰おうとしたがクリスは手を引いた。
「ねえ、あたしと勝負しない?今から窃盗スキルを習得してみなよ。それから私から何か一つ奪って良いよ。それがキミのこのサイフの中身よりも高価でも文句言わない。どう、この賭けに乗ってみない?」
自分の幸運値に自信のあるクリスはそんな事を言っていた。
それを聞いたカズマは少し悩んでから。
「よし!乗った!何取られても文句言うなよ!」
半ばやけくそで挑戦する事にした様だ。
「いいねキミ!そういうノリのいい人好きだよ!一等はこのマジックダガー、四十万エリスはくだらない一品!そしてハズレはさっきの小石だよ!」
・・・カズマは散々カスマとかクズマとか言われてきたけど、こっちの方がよっぽど鬼畜だと思う。
「ああ!きたねえぞ!!」
「これも授業料だよ。それにキミがこのダガーを盗れば私の方が損だしね」
これはさすがにやり過ぎではないだろうか。
盗られないと言う完全な自信のもとやっているのだから。
やっぱりこの人はアクアと同類なのかもしれない。
「くっ、分かったよ!頼むぞ『スティール』」
そしてカズマの手元には、当然のようにクリスのパンツがあった。
「当たりも当たり!大当たりだあああ!!」
「あっ!私のパンツ返してえええ!!キミのサイフ返すからあああ!!」
「分かった、返すけど自分のパンツの値段は自分で決めろよ」
こうしてクリスはカズマの財布と自分の財布を渡し、パンツを返して貰っていた。
こう言う事ならカズマは悪くない。
あの時はカズマを軽蔑の目で見てしまったが、悪い事をしてしまった。
「うぐっ、酷い目にあったよ。ううっ」
被害者面をするクリスに耳元で私は囁いた。
「確かにそうですが。タダで教えて貰えるスキルにクリムゾンビアを貰って、さらにカズマのなけなしの金を盗って、それを授業料としようとしていたんですから、それ位仕方ないじゃないですか?」
「えっと、でも...うんそうだね。あたしが悪かったよ。カズマくんさっきのは事故みたいなものだから気にしなくていいよ」
「おう、こっちこそなんかごめんな。盗った後に振り回したりしてたし。あとこれ返すよ」
クリスの財布を返そうとするカズマ。
「あ、ありが...やっぱり受け取れないよ。その私もキミを騙してたしね」
「?」
私の視線に気付いたクリスの反応に疑問を抱くカズマ。
しかし、その異変の原因には気付いていない。
カズマに気付かれないようにしているから当然だが。
「というかキミが受け取ってくれないと私がダメなんだよ」
「そこまで言うなら分かった」
カズマはたぶんクリスが罪悪感に苛まれて財布を渡していると思っているだろう。
クリスが怯えている事に気づいていないし。
「ありがとう。そうしてくれると助かるよ。あたしはこれで失礼するね」
「こっちこそスキル教えて貰えて助かった。またな」
カズマの返事を聞き終わるとクリスは脱兎の如く走り去って行った。
「どうしたんだろ?金がなくなったから稼ぎにいったのか?」
未だに察しがつかないカズマだが、ダクネスとゆんゆんはもう気付い・・・あれゆんゆんが居ない?
そう言えばゆんゆんがこっちに来てから一度も話していなかった。
アクア以外全員来ていたと思っていたのだが。
もしかするとアクアと一緒にギルドに残っていたのかもしれない。
「そう言えば、あんたはクリスの事追わなくていいのか?」
ダクネスと関わりたくないのが見て取れる対応をするカズマ。
「うむ、昨日体調が優れないと言って帰ってしまったので、改めてあなたのパーティーについて話をしようと思って来たのだからな」
「あー、それなら無理です。ごめんなさい」
「即断!だと!」
カズマの拒絶に身をよじらせるダクネスを見てカズマが明らかに引いている。
このままではダクネスのパーティー入りが出来なくなってしまうし、どうしたら良いのだろうか?
『緊急クエスト!緊急クエスト!街にいる冒険者各員は、直ちに冒険者ギルドに集まってください!繰り返します。・・・』
丁度良いタイミングで緊急クエストが入った。
このまま緊急クエストを受ければ、なけ崩し的にダクネスがパーティー入りする事が出来る。
「モンスターの襲撃か?」
「いえ、この時期だとキャベツだと思います」
何言ってんだこいつといった感じの目で見られているけど気にしない。
カズマはこの世界に来たばかりで常識を知らないだけなのだから。
「今なんて?キャベツって聞こえた気がするんだが」
「間違ってませんよ。そういえばカズマはこういった事に疎い所がありましたね。実はキャベツが自我を持って逃げるのです。なのでそれを収穫する為の招集ですよ。たぶん」
「マジか?」
「マジです」
私の返しにカズマは思考停止に陥ったようだ。
「あの、二人ともそろそろ行かないと出遅れるのではないか?」
「へっ?あ、そうだな、俺達も早く行くぞ!ってゆんゆんは何処だ?」
「ゆんゆんというのはもう一人の紅魔族の子か?その子ならギルドに残っていたと思うのだが」
「そうか?一緒に来てたと思ったんだけどな」
仲間から認識されていないゆんゆんって一体なんなのだろうか?
ギルドに着くと殆どの冒険者が準備万端といった感じで、ギルド職員からの説明を受けていた。
カズマはギルド職員の説明を聞き始めた時は帰りたそうな顔をしていたが、報酬の内容を聞いてからはやる気に満ちていた。
ちなみにゆんゆんはダクネスの言っていた通りアクアと一緒に居た。
「今回の報酬は歩合制にしましょう」
唐突なアクアの提案。
これが自分の首を絞める事になるとは思いもしないだろう。
「どうしたんだ急に?」
「だってこのクエストってキャベツを狩れば狩るだけ報酬が貰えるのよ!それで均等に振り分けなんてしたら頑張った人が損するじゃない!」
「確かにそうだな。異論のあるやつはいるか?」
「「大丈夫です」」
アクアにはクエスト終わりに捕まえたのが全部レタスだと教えてあげよう。
「それじゃ、行くぞ」
「「「オーー」」」
少し遅れてダクネスも見よう見まねで。
「お、おー」
ダクネスはこんな事には普通に恥ずかしがるから未だにダクネスの羞恥の基準が分からない。
「ホントにキャベツが飛んでる」
何も知らずに聞くと変な人としか思えない発言をするカズマ。
実際にゆんゆんが大丈夫なのかこの人はといった感じの目で見ている。
「キャベツだからな。飛ぶに決まってるだろう」
「まあ、そうだよな。初めて見たから驚いただけだ」
「そうか、なら分からなくもないな」
こうやって冷や汗を流しながらもしっかりと返事ができる所が、カズマの凄い所の一つだと思う。
「では今から私はキャベツ達の所に突っ込んで行くので、私の戦績を見ていて欲しい」
「分かった」
正直どうでもよさそうなカズマは、ダクネスの事など気にせずキャベツ狩りを始めた。
ゆんゆんはカズマのフォローに回りながらクエストをこなしている。
なんかムカついて来た。
よし、ここらで一発撃って気晴らしでもしよう。
「カズマ!危ないので離れてください!」
「えっ、どうし・・・分かった。ちょっと待ってくれ」
カズマの安全地帯への移動を確認できた。
「ちょっと!待って!めぐ・・・」
『エクスプロージョン』
「「きゃあああああああ」」
「「うわあああああああ」」
他の冒険者が飛ばされた?
知りませんね。
カズマが無事ならそれで大丈夫。
アクアがいるのだから。
「めぐみん!今!私達ごと飛ばそうとしたよね!」
「してませんよ。ちゃんと事前通告はしましたし」
「事前通告って!あんたそれカズマさんにしかしてなかったでしょ!」
「別にいいじゃないですか。誰も死んでませんし」
ゆんゆんが説教してくるのがウザイ。
ゆんゆんがカズマといい感じになっていたのが悪いと思う。
「なあ、喧嘩はいいから取り敢えずめぐみんを安全な所に運んでもいいか?」
「ではギルドの人の所まで運んでください。お願いします」
「分かった。ゆんゆんはキャベツ狩りを続けてくれ。後から合流するから」
「うっ、分かりました」
まだ何か言いたげな目をしたゆんゆんが引き下がり、静かになったと思ったのだが。
「めぐみん、今日の爆裂魔法はどうにかできなかったのか?ゆんゆんが言ってた事はないと思うけど、一歩間違ったら大惨事だぞ」
「すいません、キャベツがある程度まとまっていたので、そこに爆裂魔法を撃ちたいという衝動に駆られて、後先考えずにやってしまいました」
言えない。
ゆんゆんに嫉妬して撃ったなんて口が裂けても言えない。
「やっぱりか、今日の爆裂魔法は平常心で撃った感じがしなかったからな。でも次からは衝動的にするのはなしな。指示を出すまでは待機だぞ」
「分かりました」
なんとかカズマには誤魔化せた。
後はゆんゆんを納得させるだけ。
「そうだ、クエストが終わったらみんなに謝れよ。俺も一緒に行くから」
「ありがとうございます。カズマは優しいですね」
「ほ、褒めても何も出ねえぞ」
「そんなつもりで言ってないですよ」
カズマは顔を赤くして話さなくなってしまった。
その後、私はギルド職員に引き渡され、カズマはすぐに戦場に戻って行った。
そしてクエストは無事に終わり、私は戻って来た冒険者にカズマと謝罪をし、時間をかけながら、なんとかゆんゆんへの謝罪も済ませた。
アクアはお馴染みのレタス狩りをしていたらしい。
ダクネスはと言うとパーティーの中での多数決でカズマ以外の賛成を得て、晴れてパーティー入りをした。
カズマは嫌そうにしていたが仕方ないといった感じで諦め、歓迎する方向でいくようにしたらしい。
今は、みんなと一緒に歓迎会を楽しんでいるからだ。
カズマさんの誕生日話は誰視点が良いかについて
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カズマ視点(天界)
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カズマ視点(討伐後)
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ヒロインズの誰か視点(天界)
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ヒロインズの誰か視点(討伐後)