この素晴らしい世界に●●を!めぐみんのターン   作:めむみん

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今日が水曜日だと思ってたら木曜日でした。
ということで一日遅れで更新します。すみません。


紅魔族かずま

-KOUMAZOKUKAZUMA-

 

歓迎ムードの商店街入口まで残り数分。

カズマの男性恐怖症が始まって以来最大のピンチが今、カズマを襲っている。

私とゆんゆんはカズマを守るべく防御陣形を形成し、カズマを安心させようといている。

しているのだが……

 

「ウィズ、これが前に話してたカズマ親衛隊よ」

「二人はカズマのことになると過保護になるからな」

「なるほど。カズマさんとしては、心強い存在ですね」

 

なんて他の三人は呑気なことを言っている。

怯えている人を守るのは当然だと言うのに。

これだから、アクアとダクネスには任せてられない。

カズマは私とゆんゆんから離れまいと私達のローブをずっと握っている。

この状況で過保護と言えるだろうか?

いや、適切な対応で間違いない。

 

「二人とも目付き悪いわよ?カズマを安心させたいなら笑顔の方がいいんじゃないの?」

 

アクアの言う通りかもしれない。

心を落ち着かせて、笑顔を作る。

 

「・・・うん。こっちの方が落ち着く。あと、手繋いでくれた方が落ち着くかな」

 

とカズマが言うので左にゆんゆん、右に私が移動して手を繋いでいる。

確かにこの状況で、カズマにナンパしようとか考える輩は居ないだろう。

 

「こうなると仲のいい三姉妹みたいに見えるな」

「後ろから見る分には、カズマの髪を黒く染めれば完璧ね」

 

三姉妹。

カズマが姉なら、我が家も少しはマシだったかもしれない。

ゆんゆんがニヤけてるのが見て取れる。

カズマもさっきまでの緊張がほぐれたようで、引きつった顔から戻っている。

 

「里には紅魔族なりきりセットが売ってるので、黒髪カズマにしてみますか?」

「何それ、面白そう。そのお店後で行こう!」

「カズマは大丈夫なの?」

「二人が手繋いでくれてたら大丈夫」

 

斯くして、カズマを皆から隠すという当初の計画など忘れて私達は商店街へと入っていくのであった。

 

 

 

商店街の入口に着くと予想以上に人が集まっていて驚いた。

今日は祭りか何かだったのだろうか?

里の殆どの人が集まってる。

中にはどどんこやふにふら、ねりまきもいる。

あっ、あるえも後から来たみたいだ。

 

「めぐみん、ゆんゆんおかえり」

「ようこそ紅魔の里へ」

 

正門から入るとこんな大歓迎を受けられるのか。

知らなかった。

旧友と話をしたい所ではあるが、それは後回しにしよう。

あと、カズマとあるえが喧嘩を始めたら厄介だ。

紅魔族なりきりセットはデートの時に買おう。

 

「お久しぶりです。ちょっと急いでるので、話とか後でいいですか?道開けてください」

 

これを聞いた皆が道を開けてくれる。

早くゆんゆんの家に荷物を置いて、カズマとデートしなければならないのだから。

カズマを隠す?

もう既に大勢に見られた以上必要のないこと。

 

「ちょっとくらいいいんじゃないかな?」

「カズマは、早くデートしたくないですか?」

「よし、早くゆんゆんの家行こう!」

 

カズマなら乗ってくると思っていた。

欲望に忠実な所は変わらない。

 

「さすがカズマです。行きましょう!」

「あっ、ちょっと待って!二人ともどうしてそんな息ピッタリに走り出せるの?」

 

行きましょう!と言ったら普通駆け出す合図だと思う。

ゆんゆんが一人遅れて走って来ようとしていたが、諦めたのかアクアたちの所へ戻って行った。

・・・ゆんゆんが来ないと結局ゆんゆんの家の前で待つことになってしまう。

 

「めぐみん?走らないの?」

「ゆんゆんが居ないと家の前で結局待つことになるじゃないですか」

「でもめぐみんかゆんゆんが居ないと後ろのみんなは場所分からないよ?」

 

言われてみればそうだった。

てっきりみんな一度は来ているものだと錯覚して、ここが二回目の人生だと言うことを忘れていた。

「カズマ。よく考えたら荷物は馬車ですから、私達は先にデートしておきませんか?」

「でも、今夜泊めて貰うから、ちゃんとゆんゆんの御家族に挨拶しないとだよ?」

「やっぱり、カズマはカズマですね」

 

何も考えてないように見えてしっかり考えている。

特に天然が増してる今のカズマは常に何も考えてない風に感じる。

 

「えっと、何言ってるか分からないんだけど」

「分からなくてもいいですよ。ほら、みんな追いつきましたよ」

「やっと追いついた。二人とも急に走り出すから驚いたぞ?」

 

ゆんゆんから説明を受けてないらしい。

いや、よく考えたらゆんゆんは里のみんなから話振られて惚けてたから、しっかり聞こえてなかったのかもしれない。

 

「早くゆんゆんの家に行って、街のみんなと話したいなあと思いまして」

「凄ーく棒読みだったけど、そういうことにしときましょう。私も早くゆんゆんの家でゆっくりしたいわ」

 

ただ、惰性を貪りたいだけらしい。

さすがは駄女神。

 

「私は寄りたい店があるから、そこへ向かう予定だ」

「そう言えば、ウィズはどうしたんですか?」

「この数分の内にまたアクアにやられたとか?」

 

カズマが言ったこの説だろうと思っていたが、アクアの膨れっ面からして、違うらしい。

 

「失礼ね。ウィズは日差しが強いから馬車に避難しただけよ。寄りたい所があるから、ゆんゆんの家までは眠って体力を温存するって言ってたわ」

「それならいいんだけど。ゆんゆんは家族と話してゆっくりするの?」

「そうなるかな。二人は商店街だよね?」

「ええ、この後カズマを独り占めです」

 

待ちに待ったデートの時。

いつもとは違うデート。

カズマが男のままじゃないのが少し残念だけど、そこは妥協するとして!

 

「カズマカズマ」

「アクアどうしたの?」

「カズマは男の人よりも、めぐみんを一番警戒した方がいいと思うの」

 

それを聞いたダクネスとゆんゆんも頷いている。

私の何処を警戒した方がいいと言ってるのだろうか?

カズマのことを誰よりも心配して、行動しているのが誰かを考えれば警戒の必要などないと理解出来るはずなのに。

 

「一番私の事考えてくれてるのめぐみんだよ?大丈夫だって、めぐみんが喧嘩したりとかは私がいつもみたいに止めればいいでしょ?」

 

カズマはカズマで、私をどう思っているのだろうか?

紅魔族は喧嘩売られれば買う種族。

ゆんゆんが大人し過ぎるだけだ。

 

「大丈夫ですよ。仮に何かあっても責任を取りますから」

「それって、全然大丈夫じゃないような気がするんだけど」

「アクア、商店街で里随一の美味しさと言われるお酒を買って来ますよ」

 

もちろん、里に酒造をしている店がそこだけと言うオチだけれど、嘘は言ってない。

 

「二人とも商店街楽しんできなさい」

「・・・」

 

ゆんゆんが非難の視線を向けて来るけど、気にならない。

これからカズマから誘ってきたデートなのだから!

 

「ここが私の家です!」

 

気付けばゆんゆん家に着いていた。

ゆんゆんが何も言わなければ、デートに思いを馳せていたから通り過ぎるところだった。

 

「ゆんゆんの家も大きいわね!」

「族長の家ですからね。これくらい立派な建物じゃないと威厳がないですよ」

「確かに、族長の家が慎ましい建物だったら心配になるね」

 

と私達が話している間に、ゆんゆんが鍵を開ける。

 

「ただいま!」

 

ゆんゆんが大きな声で帰宅を告げるも屋敷からは返事はない。

虚無に向かって挨拶してるゆんゆんを見ていると、本当に何かいるのではないかと言う気を起こさせる。

ゆんゆんなら、家も家族とか言い出しそう。

 

「外の人が家の前に集まっていると思ったら、ゆんゆんか。おかえり。めぐみんも久しぶりだな」

「・・・お、お父さん。ただいま。この時間なら家にいると思って」

「買い物に行ってた所だ。もしかしてこちらがゆんゆんのパーティーの人達でいいのか?」

「うん。紹介するね。めぐみんと手を繋いでる人が冒険者のカズマさんで、今はポーションで女の子になってるけど、元は男の子で、このパーティーのリーダーなの」

 

族長が困惑している。

初対面の人が性転換を一時的にしてると告げられても理解が追いつかないだろう。

手紙では男性だと言ってるだろうし、余計に混乱してそう。

 

「我が名はカズマ!性別を変えられし者!」

「・・・カズマくんか。いい名前だ。それに名乗りも素晴らしい」

 

族長は名乗りを見て再起動した。

族長の言う通り、カズマの名乗りはいつ見てもいい。

と言うか族長相手には男性恐怖症が発動していないみたいだ。

 

「カズマ、族長は大丈夫なんですか?」

「うん。多分ゆんゆんのお父さんだからかな?」

 

という事はうちの家も大丈夫かもしれない。

まあ、カズマが男に戻ってから行く予定だけど、こめっこが拗ねると厄介だから、急遽帰るかもしれない。

 

「次はアークプリーストのアクアさん。蘇生魔法も扱える凄い人だよ」

「我が名はアクア!魔王を倒さんと降臨せし水の女神にして、やがて世界に平和を齎す者!」

「アクアさん。凄いですね」

 

誰だってこう言う反応になると思う。

 

「ゆんゆんのお父さんにも信じて貰えなかったんだけど」

「落ち着けって、そもそもゆんゆんにも信じてもらえてないんだから」

 

カズマに救いを求めたものの、ハシゴを外されたアクアはカズマに襲いかかってきたので、私が前に出る。

 

「・・・めぐみんどいて、そいつ殴れない」

「嫌ですよ。カズマを守る義務が私にはあるんですから」

「カズマあんた年下の女の子に庇われて恥ずかしくないの?」

「私今女だし、アクアがめぐみんのこと私の彼氏とか言ってたこと考えたらこの状況普通だと思う」

 

アクアは自身の発言により、不利となり、諦めたのかゆんゆんの方へと向かって行った。

一悶着してる間に、ダクネスの挨拶は済んでいたようで、中に入るよう促された。

ダクネスは顔を真っ赤にして俯いていた。

どんな名乗りをしたのかすごく気になる。

何かを忘れていると思いながらも、族長の案内に従った。

「それで、今日は何をしに里へ?」

「この手紙とあるえの小説の組み合わせが悪過ぎるって話がしたいのと、あとはみんなに紅魔の里を知ってもらいたくて」

「組み合わせも何も普通の手紙と小説だろう?そうだっただろうめぐみん?」

 

あれの何処が普通なのかと言いたい。

確かに時候の挨拶ではあるけれども、この里の情勢を考えれば焦るのは間違いない。

でも良く考えれば、あるえが小説を書いている時点で平和なのは察する事が出来るか。

とりあえず、頷いておくことにした。

 

「手紙が届く頃には私はこの世に居ないだろうって」

「時候の挨拶じゃないか」

「・・・魔王軍の施設の破壊も叶わないって」

「それが連中の作った施設をすぐに見つけて占拠したんだが、破壊するか、新たな観光地として活用するかで意見が割れているんだよ。ゆんゆんにも意見を聞こうと思って手紙を書いたんだ」

 

こればっかりは察することは出来ない。

魔王軍施設を破壊するか観光地化するかで、意見が割れているとか誰に分かるだろうか?

里にいる人しか分からないだろう。

 

「ゆんゆん、親父さん殴っていい?」

「・・・いいですよ。私が抑えますからどうぞ」

「ゆんゆん!?」

 

出来ることなら私も族長を殴るのに参加したい所だが、族長は悪くないと言えば悪くないので、ここは擁護しておこう。

二人が立ち上がり、動こうとするのを止めて私は言った。

 

「二人とも落ち着いてください。私が言った通り何もなくて良かったでは無いですか」

「それはそうだけど」

「因みに二人は手紙を見て、キスしようとしてましたよ」

 

言ってから思った。

言わなくていいことを言ったと。

でも二人の族長への恨みを断つにはこれしかなったかもしれない。

 

「「「えっ?」」」

 

みんなの驚く所が見れたしよしとしよう。

 

「めぐみん!何言って、ち、違うんです!これはその」

「あの時は私とゆんゆんが子作りしないと世界が滅びるって本当に信じてたよ」

 

カズマは私が巫山戯て言ったと解釈したらしく乗っかってきた。

性別が変わって出来た余裕なのかは、分からないけど、カズマのノリの良さはこういう時は助かる。

 

「カズマまで!」

「カズマくん。家の娘をどうかよろしく頼む」

 

族長はキス未遂が起こった経緯を理解したのか、悪ノリしてる。

カズマもイタズラっ子みたいな笑みを浮かべて言った。

 

「任されました!・・・なんちゃって」

 

なんちゃってと言いながら舌をペロッと出すカズマに私は見とれていた。

手を頭にコンっと当てる仕草も可愛すぎる。

カズマを今すぐギュッとハグしたい衝動を何とか抑える。

 

「なんちゃってじゃないって!お父さんも変なこと言わないで!」

 

手紙の内容を見れば分かることなのに、何を焦っているのだろうか。

現にダクネスはあるえの小説を読んで、なるほどと言っている。

そんな中アクアは一人で恐ろしいことを呟き始めた。

 

「ゆんゆんとカズマがキスしてたって話は誰に広めようかしら?まずはギルドに行って、次は八百屋の・・・」

 

事実とは異なる事が広まろうとしている。

この噂が広がろうものなら、カズマは私とゆんゆんと同時交際しているかのように思われてもおかしくない。

それだけは避けなければならない。

 

「アクア、広めるならカズマがうつ伏せで膝枕をしていた話にしてください」

「それって、めぐみんの膝で?」

「そうですよ。その代わり、カズマとゆんゆんのキス未遂の話は内緒でお願いします」

「分かったわ。カズマが如何に変態か広めればいいのね!」

「違いますが、まあ、それでいいです」

 

多分、アクアがカズマは変態であると広めたくても「バカップルがイチャついてた話か」程度にしか思われないだろう。

この前、クリスからこんなランキングがあると知らされたバカップルランキングには、私とカズマの名が一位に記されていた。

もはや仲間公認どころか町公認レベルだと言う事実をカズマは知らない。

 

 

 

挨拶も終わり、部屋に荷物を運ぶこととなったのだが、ウィズを置いて中に入ったことにこの時みんなが気付いた。

幸いなことにウィズはまだ眠っており、放置されたことには気付いていない。

アクアが起こすと事故る可能性があると判断して、アクア以外でじゃんけんをして、ウィズを起こす人を決めた。

結果はダクネスが起こす役となった。

そして、その様子を見守ろうとしているとカズマに声をかけられた。

 

「早く紅魔族なりきりセット買いに行こう?」

「カズマは大丈夫なの?男性恐怖症になってるのに」

「それは、こうすれば大丈夫!」

 

言ってカズマは恋人繋ぎと言うか、腕にしがみついてきた。

腕にあたる柔らかい感触が心地いい。

このままでもいいと思う気持ちがどんどん高まっていく。

不味い。

そうだ。カズマと愛し合った前世のことを思い出せば!

でもお互いがどうなろうとも私達は夫婦で、裏切らず支え合うと約束していたことを考えると、やっぱりこのままカズマちゃんと新たな道を切り開いて行くのも正しいような気が・・・

 

「・・・カズマが大丈夫ならいいんだけど」

「じゃあ、行ってきます!」

「カズマ、待ってください。お財布持ってませんよ」

「ふっ、この私を誰だと思ってるの?早く行こ!」

 

言ってカズマは胸の間から財布を出して見せた。

・・・さすがにこの動作にはイラッとした。

商店街でイタズラしよう。

 

「はい!」

 

 

 

商店街に到着し、紅魔族なりきりセットを買うべく雑貨屋に来ていた。

挨拶は一通り済ませ、今はセットを探している。

 

「めぐみん、久しぶりね。今日は何を買いに来たのかな?」

「紅魔族なりきりセットです。置いてないんですか?」

「なりきりセットはこっちにあるよ。お姉さんが付けるならこれかなあ」

 

勧めらたのは長髪用のなりきりセット。

今のカズマにはちょうどいいセットになってる。

 

「これ買います。めぐみん、付けるの手伝ってね?」

「いいですよ。そこの椅子に座ってください」

「それにしても、めぐみんとゆんゆんが付き合ってるなんて噂あったけど、違うみたいね」

「・・・はい?どうしてそんな噂が?」

 

なぜ私がゆんゆんと恋仲にならなければならないのか。

理解に苦しむ。

私は爆裂魔法とカズマ一筋と決めているのだから。

 

「めぐみんとゆんゆんに同時期に彼氏が出来たのは実は二人が付き合ってるからだって専らの噂だよ」

 

そもそも私たちに彼氏など出来ていない。

こう言うのはぶっころりーの仕業と見て、後で絞めにいこう。

 

「でもまあ、めぐみんにそっちのけがあったって情報は間違ってなかったのかもだけど」

「あのう。一応私男なんですけど」

 

失礼なことをと思ったものの、今のカズマとならと思ったりしてるあたり、否定は出来なかった。

そこにカズマが事情を話し出した。

 

「またまたご冗談を」

「これ、冒険者カードなんですけど」

「・・・えっ!?」

 

今のカズマから男性であったなんて、想像もつかないだろうが、冒険者カードに記載されてる通り、カズマは男なのである。

 

「オーク対策に性別が変わるポーションを買ったのですよ。性格まで女の子になってしまいましたが」

「・・・て、てことはこのお姉さんがめぐみんの彼氏さんなの?」

「私とめぐみんはただの仲間ですよ?」

 

おっと、これは思わぬダメージが・・・

ただの仲間としてしか認識されてないらしい。

 

「そもそも私もゆんゆんも彼氏なんていませんよ」

「そこからデマだったのね。でも族長とひょいざぶろーさんが会議で話してたってみんなが言ってたよ?」

 

二人して何言ってるのだろうか。

間違ってぶっころりーを絞める所だった。

危ない危ない。

 

「・・・それって二人のお父さん?」

「ええ、手紙の内容を勘違いしたのかもしれません」

 

私の場合は勘違いではなく、好きな人がいると書いているけど、ゆんゆんは多分、族長が仲のいい男の子がいるって話だけで飛躍した解釈をしたとかそこら辺だと思う。

 

「よし、これで完成です!どうですか?カズマが本当に我が姉のように見えます」

「そうかな?」

 

カズマとしては、まだ紅魔族になっている自覚はないらしい。

実感を持たせるために鏡を指さし、見るように勧めてみる。

 

「凄っ!眼の光加減までしっかり出来てる」

「永久版じゃない、簡易版も最近は力を入れてるからね。本当に二人が姉妹みたいに見えるよ。写真撮る?」

 

永久版とは、一度付けると着脱不可能。

大抵の場合は外の人が紅魔族になろうとして、利用する。

まあ、魔力が強くなったりする訳ではなく、あとから騙しやがったな!とかクレームつける人が多くて、一時期問題になってたりもした。

 

「魔道カメラあるんですか?」

「私物だけど、サービスするよ」

 

断る理由もなく、写真を撮ることにした。

カズマとのデートの記録を残せるとは、この店に来てよかった。

 

 

 

先程の店は女性店主だったから、安心だった。

しかし、カズマの男性恐怖症は更に強くなっているようで、男の人とすれ違う度にしがみついてくる。

今はもう私の右腕が常時ホールドされている。

 

「め、めぐみん。やっぱり帰ろ?私もうダメかも」

「早くゆんゆんの家に戻りたいですか?」

「うん」

 

デートの続行は困難となった今は帰るしかない。

デート中にイタズラする予定が崩れてしまった。

とは言え、男の人がくると腕にしがみついたまま動かなくなるカズマをこのまま家まで連れて帰るのは厳しい。

となると、カズマを連れ帰るには私が運ぶしかない。

 

「では、一旦私から離れてください」

「えっ、えっと」

 

絶望感を漂わせるカズマを見ていると一瞬でも離れたくなくなってしまうが、これもカズマのためと、割り切るしかない。

 

「すぐ帰るために必要なんですよ」

「わ、分かった」

 

よっぽど怖いのか手を離してからはブルブルと震えながらこちらをじっと見ている。

・・・今度はこの怯えてる所をずっと見ていたい。

私は何がしたいのだろう。

一つ確かなのは、カズマが魅力的だと言うことだ。

 

「よっと、カズマしっかり捕まっててくださいね」

 

華奢なカズマちゃんは男の時よりも軽々と持ち上げることが出来た。

お姫様抱っこでカズマを運ぶのは爆裂散歩中に足を挫いた時以来だろうか。

今は本当にお姫様になってると思う。

 

「め、めぐみん、これは、恥ずかしいし、男に戻ったら泣くよ!」

「大人しくしててください。これが一番早いんですから」

「・・・めぐみんって本当に男らしいよね」

 

逆にカズマは女々しいと思う。

ここぞって時はカッコよく決めて欲しい。

まあ、グダグダしてしまう所もカズマらしくていいのだけれど。

 

「カズマまで、私を彼氏だとか言い出しますか?」

「そこまでは言わないけど、私だったら絶対お姫様抱っこなんてしないもん」

「それもそうですね」

 

カズマからお姫様抱っこされたのなんて、指で数えるくらいしかない。

私がお願いしたのを含めると回数は増えるけど、それはまた別の話だ。

 

「・・・私がヘタレだったって言いたいの?」

「・・・カズマの体力だと持たないかなあと」

 

ダクネスをお姫様抱っこで連れ去った後に、すぐバテていたから、間違いない。

 

「それはそれで酷い。私だってその気になれば、爆裂散歩の帰りにお姫様抱っこで帰るくらい出来るはず!今は無理だけど」

「じゃあ、男に戻って初めの爆裂散歩はお姫様抱っこで帰ってもらいますよ?」

「ヘタレじゃないことを示すためにもやってやろうじゃない。それこそめぐみんが恥ずかしがってもやめないから!」

 

カズマが後悔する姿が目に浮かぶ。

後に引けなくなったらやけくそでやるのは知っているけど、始めるまで心の準備がとか言って時間がかかりそう。

 

「楽しみにしてますよ。着きました。次は私とゆんゆんのファッションショーですね」

「ありがとう。・・・私抱き抱えたまま、走って普通に喋れるめぐみん強すぎじゃない?」

「そうでしょうか?とりあえず中に入りましょう」

 

この後、ゆんゆんを呼び出して、ファッションショーという名の、着せ替えショーが始まるのであった。




来週はしっかりと曜日感覚をもって水曜日に投稿します!
紅魔族かずま(女)はサトウカズマ(男)に戻れるのか、先に言うと次回は三日目までしか進まないので、次々回以降をお楽しみに!

カズマさんの誕生日話は誰視点が良いかについて

  • カズマ視点(天界)
  • カズマ視点(討伐後)
  • ヒロインズの誰か視点(天界)
  • ヒロインズの誰か視点(討伐後)

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