-MIENAITEKI-
私は今自宅の自室で眠っている。
今は朝。
まだ目を開けていないが何故か朝だと分かる。
窓は閉じられているはずなのに。
その原因は朝を告げる鶏の鳴き声でも、目覚まし時計でもない。
「姉ちゃん!早く起きて!ご飯できた!」
「うるさいですよ。こめっこ。静かにしてください」
「姉ちゃんの男がご飯つくってる」
「カズマがご飯?・・・」
そうだ。
昨日はカズマと二人でお家デートをして、そのまま寝たのだった。
「こめっこはいつ帰ってきたのですか?」
「今帰ってきたとこ。兄ちゃんのご飯美味しかった」
「そうですか。それは良かったですね」
こめっこがカズマを兄ちゃんと呼ぶのが早すぎる気がする。
カズマがそう呼ばせるようにした可能性も否定できないが、これは間違いなく母のせいだろう。
「あと、兄ちゃんから姉ちゃんのにおいがした」
「・・・カズマは昨日この部屋で寝てましたからね」
「うん。知ってる」
そう言えばカズマちゃんの時からずっと同じ部屋で寝てたか。
別にやましいことはない。
そう。
何も・・・
「姉ちゃんが兄ちゃんに引っ付いて寝てたから」
「・・・え?」
「兄ちゃんが苦しそうだったから姉ちゃんから離して起こしたってお母さん言ってた」
全部見られてる!?
今帰ったと言ってたからてっきりカズマが先に起きていたと思ってたのに。
こめっこに目撃されなかったのが救いかもしれない。
「姉ちゃんの寝相が悪過ぎて困るって兄ちゃん言ってた」
「・・・カズマに謝らないとですね」
良かった。
変な誤解をこめっこに与えなくて済んだ。
いや、違う。
こめっこが変な言い方して他の誰かを困惑させる可能性が減った。
「兄ちゃんご飯出来た?」
「おう。出来たぞ。めぐみんもおはよう」
「おはようございます」
居間に入るとカズマと母が朝食を用意していた。
「所でお父さんは何処ですか?」
「疲れたと言って眠ってるわ」
また眠らさせられてるみたいだ。
しかし、今回は父も窓を板で閉じるとか協力的なのにどうして眠らさせられてるんだろうか?
「それで昨日はどうだったの?」
「家でゆっくりしてただけです」
「本当に?カズマさんに絡み付いて寝てたじゃない」
こめっこが聞いたと言ってたから知ってて当然か。
「ゆいゆいさん達が帰ってこなかったら俺動けなかったぞ」
「寝相が悪くてすみません」
「そう言えば出会った日の翌朝も今日みたいな感じだったよな」
アクア曰く私とゆんゆんがカズマに抱き着いて寝ていたとか言うあれか。
あの時は本気でゆんゆんがカズマの寝起きを襲ったのかと思った。
「でもまあ、慣れてるし気にしてないけどな」
そう。日々の添い寝でカズマは慣れっ子なのである。
慣れてしまったが故に意識されてない気もするのが痛い所ではある。
母が朝食を食べ始めたこともあり、話が落ち着いて来たと思ったその時、誰よりも早く食べ終わったこめっこがカズマの袖を引っ張って言った。
「兄ちゃんはこめっこの兄ちゃんになった?」
「ゴホッゴホッ」
ご飯を喉に詰まらせて噎せるカズマ。
こめっこに仕込み過ぎだと思う。
「兄ちゃん大丈夫?」
「だ、大丈夫だ」
「カズマ、そろそろゆんゆんの家に行きましょう」
これ以上の滞在は不味い。
カズマが持ちそうにない。
「あ、ああ。こめっこ、また後でな。ゆいゆいさんご馳走様でした」
「いいのよ。息子にご飯を出すのは当然だもの」
「・・・行ってきます」
「「行ってらっしゃい」」
二人に見送られながら私達は気まずい空気の中ゆんゆんの家へ向かうのであった。
「・・・なあ、俺もゆんゆんの家に泊まっていいか?」
「私もゆんゆんの家に泊まりたいですよ」
「そうだよな。俺だけ逃げるのは良くないよな」
我が母よ。
あなたの援護射撃は全部裏目に出てる。
「カズマが嫌なら別に気にしなくてもいいんですよ?」
「嫌って程でもないって言うか、こめっこの面倒見るのも楽しいし」
「ですが、勝手に私の恋人扱いされるのも嫌でしょう?」
自分で言ったものの、肯定されたらそれはそれで凹む。
「嫌じゃねえよ。むしろ・・・」
「むしろ?」
「な、なんでもないからな!」
ここで追及したい所ではあるけど、カズマが完全に喋らなくなると困るので、聞くのはまたの機会に。
それなりには意識してもらえてるようで安心した。
「おはよう!めぐみんその男の人誰?」
「おはようございます。この人はカズマです」
昨日と同じくねりまきに遭遇した。
この時間帯に散歩する習慣なのかもしれない。
「カズマさんね。それじゃあ自己紹介を・・・え?カズマ?」
「我が名はカズマ!一昨日まで女であり、今は男に戻りし者!」
「・・・ちょっ、ちょっとめぐみん。こっち来て」
状況理解が追いつかなかったのか、一旦カズマから離れて説明を求められた。
「あの人がひょいざぶろーさんの言ってためぐみんの彼氏なの?」
「まあ、そうなりますね。残念ながらまだ彼氏ではないですけど」
「・・・一つ確認したいんだけど、あの美人なお姉さんがあの冴えない男の人で本当にあってるの?」
何を言ってるのだろうか?
元々かわいいカズマを女の子にしたら美人になるに決まってる。
「私の男を悪く言うのはやめてもらおうか。カズマはそもそも可愛くてカッコいいです」
「・・・ごめん」
「分かってもらえればそれでいいです。所で私とゆんゆんが付き合ってるとか言う噂が流れてるらしいのですが、誰が流したか知ってます?見つけたら絞めるので教えて欲しいのですが」
居酒屋ともなれば情報の宝庫。
発信源を知ってる可能性は高い。
ねりまきを見ると困ったような顔をして言った。
「え、えっと、ウチの店で盗み聞きした程度だから分からないなあ・・・」
「そうですか。分かったら教えてくださいね」
「もちろん。協力は惜しまないよ!確認は終わったから自己紹介してくるね」
カズマへの自己紹介を終えたねりまきは野暮用を思い出したと言って走り去って行った。
犯人探しをしてくれるのかもしれない。
「あの子の店に今日行って宴会とかどうだ?」
「それいいですね。家に着いたら提案してみましょう」
ねりまきのおかげで気まずい雰囲気はなくなった。
やはり持つべき友だ。
「それよりお前とゆんゆん付き合ってたのか」
「なわけないでしょう!カズマが一番分かってるはずですよ!」
「冗談だって、でもお前らの仲ってなんか百合百合しさ感じる時あるし」
こんな風に思われていたとは・・・
私の好意も感じ取って貰いたいものだ。
と言うかいつから盗み聞きしていたのだろうか。
「でもまあ、美少女二人がくっつくとか人類の損失だからな」
「何言ってるんですか?」
「だってさ、美少女二人の血がそこで止まってしまうんだぞ?」
前にもこんなことを言っていた気がする。
「・・・何を言ってるのか分からないですが、ともかく私はノーマルで、男の人が好きなので、ゆんゆんは好きじゃないです」
「なるほど。って待て、お前好きな人いるのか?」
言い方が不味かった。
とは言え隠す必要もなく、アクア達も知ってることだから隠さないことにした。
「いますよ?みんな知ってます」
「・・・え?俺だけ知らないのか?」
これは隠した方がいいかもしれないと言うレベルにカズマが落ち込んでしまった。
まさか自分のことだなんて考えもしてないカズマには鈍器で殴るのと同じことをしたに等しい。
幼馴染のトラウマもあるし、失敗だ。
上手く誤魔化さないと。
「なんて、嘘ですよ。好きな人はいません」
嘘は言ってない。
私はカズマを好きなのではなく、愛しているのだから。
「焦らすなよ。俺だけ除け者にされてるのかと思ったぞ。そういやめぐみんって気になる人とかいないのか?」
「ないですよ。私には愛するものしかないです」
「ホント爆裂魔法好きだよなお前」
いい感じに解釈して貰えた。
もちろん私の意図としてはカズマのことを指している。
「爆裂魔法をこよなく愛するアークウィザードですから」
「そういやそうだったな」
ここからは特に話すことなく歩いてゆんゆんの家に着いた。
着いたのだが、カズマは立ち止まらずに進んで行った。
何かあるのかもと黙ってついて来たけれど、ボォーっとしているように思えたので、声をかけてみた。
「カズマカズマ」
「なんだ?」
「ゆんゆんの家通り過ぎてますよ」
「・・・早く言えよ」
振り返り、ゆんゆんの家へと戻る。
やっといつものメンバーで揃うことが出来る。
昨日も揃ってはいるけど、あれは短かったのでノーカンというやつです。
「二人ともおはよう。何しに来たの?」
「何しに来たとは随分なご挨拶じゃないか!」
「落ち着けって、昨日飯だけ食って居なくなったこと考えろ。えっと、みんなで観光しようと思ってな」
言われて見れば、勝手な行動をしていたのだと思い出した。
とは言え、カズマとイチャイチャできる数少ないチャンス活かさずにいられようか?
いや、ない!
「昨日アクアさんたちと観光したばかりだから二人で観光してくればいいと思う」
「私達も既に観光してますし、この後はどうしますか?」
「ちょっと待て、俺は観光してないぞ」
何を言い出すのか一瞬思ったけれど、よく考えたら観光一緒にしたのカズマちゃんだ。
「・・・そう言えば一昨日の記憶はないのでしたね」
「観光しますか?」
「ゆんゆんは来ないのか?」
二人きりは嫌なのか、それとも単に人が多い方が良いと考えているのか、どちらにせよゆんゆんが二人でと先程言っていたのに、確認するとは。
二人きりの状況をカズマが望んでいないのがわかる。
「私はやらないといけないことがあって行けないから二人で楽しんできて」
「じゃあ二人で行くか」
特に嫌そうな顔をしてないから、人数を増やしたかっただけだろう。
さて、何処から回ろうか。
とそんなことを考えていると今回帰ってから初めての警報が鳴り響いた。
『魔王軍警報。魔王軍警報。ニートは直ちに正門前に集合。その他は順次参加。敵の数は五百程度と見られます。森林部辺りにも不審な反応があるため、基本ニートしゅうだ、お前さっさと行けって言ってツーーーー。ええ、ニート集団ではなく、魔王軍遊撃部隊の同志諸君は正門前に集合。その他手隙の者は陽動の可能性を考慮し、各々警戒を厳にしてください』
何やってるんだと言いたい。
ニートなのは間違いないと思うのだけども。
何故こうもまとまりがないのだろうか。
私達のパーティーが言える立場にはないけれど。
「今のなんだ?ニート集団と魔王軍遊撃部隊ってなんだ?あと五百って多すぎないか?」
「魔王軍遊撃部隊の構成員は殆ど無職なのですよ。だからニート集団とも呼ばれてます。まあ、そけっとのように働いてる人もいるにはいるのですが少数です。因みにこの里では五百なんて少ない方ですよ」
前回来た時は千匹程度だったし、今回はその部隊が別行動しているなら、放送の通り陽動の可能性がある。
今回はカズマを連れ去られないように気をつけなければ。
「・・・紅魔族って凄いな」
「見に行きますか?族長が魔王軍迎撃を観覧する場として観光地化しようとしてましたから安全地帯もありますよ」
「特にあてもないし、行くか」
という訳で、観覧場所に着いたのだが、いつ見てもワンサイドゲームだなあと思う。
『衛生兵!衛生兵は何処にうわあああ』
負傷し、助けを求めるも火炎魔法で焼かれるゴブリン。
『だからこんな所嫌だって異動願いをだ・・・』
希望が通らず、里に配属された上に氷結魔法で冷凍されるゴブリン。
『撤退!撤退!全滅だ!てったぶへぇ』
戦力の半数を失ったことに気付き号令をかけるも、撤退する仲間に踏み潰されて絶命するゴブリン。
戦地はいつだって理不尽である。
「なあ。俺あのゴブリン達助けたくなってきたんだが」
「何言ってるんですか、カズマが出て行ったら捕まって、人質にされて終わりですよ」
「やっぱいい。にしても上級魔法って凄いな。ゆんゆんの見てるけど全員が上級魔法使える紅魔族ってチート種族じゃねえか」
ここにその例外がいるのだが、カズマはどう思っているのだろうか。
「でもまあ、めぐみんは違う意味でチートだよな」
「何がです?」
「未来のことわかってるし、爆裂魔法でデストロイヤーとかも倒せるし、普通のカエルとかだとオーバーキルだろ?」
ネタ魔法使いとか言い出すものかと思っていたがどうやら違うらしい。
どちらかと言えば褒めている部類で驚きだ。
「未来のことはそけっとから聞いてるだけです。デストロイヤーもカズマの指揮とかアクアとウィズの魔法がなければ無理でしたよ」
「でもめぐみんのおかげでここまでこれたからな。めぐみんは凄いと思ってる」
完全に褒められてる。
どうしよう。
カズマからなんの前触れもなく褒められるのは慣れてない。
「まあ、頭のおかしい爆裂娘って言われるくらいには変なところもあるけど」
「おい!」
上げて落とすとは中々やってくれるでは無いか!
こうなったら反撃に・・・
「そんな所も含めて凄いと思う」
「はい?」
「頭のおかしいってある種褒め言葉だと思うけどな。普通はやらないようなことをやるからそう呼ばれる訳だろ?めぐみんの場合はそれが爆裂魔法と仲間のために喧嘩売るって所だな」
今のところ貶されてるようにしか感じない。
とは言えカズマが言いたいことも何となくわかる気がする。
「仲間と言うか殆どカズマですけどね」
「・・・なあ、前々から気になってたんだけど、俺ってギルドでどんな風に言われてんだ?」
「そうですね。パーティー結成当初はおんぶにだっこされていいご身分だとかそう言った類ですね」
リーンやその他交流のある冒険者や、身をもって大変さを知ったダストが中心となり悪評が少なくなった。
加えて魔王軍幹部とデストロイヤーの討伐もあり、カズマを貶す者は今やいなくなった。
「お前、その頃からやってたのか」
「いえ、あの時は初犯は許そうと黙ってました」
「初犯って・・・」
確かに傍から見ればカズマがハーレムパーティーに見えるし、加えて上級職揃いの中に最弱職一人という事実から勘違いする人が出ても仕方ないのだから。
「でギルドでの理解が進んでいくに連れて、おんぶにだっことか抜かすバカはいなくなりましたが、運だけの弱い男とか言い出す輩も増えまして、同じ人達だったので裁きを下したまでです」
「・・・そうか」
カズマを妬んでる冒険者達が言っていたことで、こう言った輩は私以外にも止めてくれる人が何人もいた。
大抵がカズマに奢ってもらったことのある人とかだけど、カズマの評判はいい方に振れている。
警察署暴動がいい例だ。
「最近だと、私とゆんゆんで二股してるクズ男とか言うのもあって、度し難いです」
私だけなら許すのに、ゆんゆんと一緒と言うのが許せない。
「それは俺も知ってるし、何ならお前ら公認で二股してるとか言ってるのもあった」
「・・・カズマにそんな甲斐性ないと思いますけど」
「・・・反論したいが肯定だ」
「でカズマは好きな人いるんですか?」
聞いてみたものの、答えが怖い。
ゆんゆんが好きだとか、他に好きな人がいるとか言われたら私は今後何のために生きていけばいいのだろうか?
爆裂魔法とて、カズマの採点なしには楽しめないのだから。
「さあな。よく分からん」
「と言うと?」
「気になってるやつはいるけど、ただ振り回されてるだけな気もするし」
それって好きな人がいるのと同義な気がする。
誰なのだろうか?
せめて知っている人ならばと思う。
「私の知ってる人ですか?」
「ああ、めぐみんが誰よりも詳しく知ってて、誰よりも詳しく知らない人だ」
「誰ですかそれ?教えてくださいよ。気になります」
気になると言うか見つけて尋問しなければならない。
そしてどうやってカズマの気を惹いたのかを聞き出す。
「まあ、そのうち教えるから気長に待ってろ」
「今すぐ知りたいのですが」
「俺にも心の準備ってもんがあんだよ。勘弁してくれ」
心の準備とか言ってる時点で完全に意識してる相手ではないか。
これは何としても探らなければ。
「じゃあいつ教えてくれますか?」
「準備出来た時って言うか、気持ちの整理が着いたらな」
「早く準備してください」
「お前が言うか。はぁ、次何処行く?」
私が言うとダメらしい。
何故だろうか?
カズマの認識として魔性のめぐみんだからだろうか?
どの道答えてくれそうにないし、諦めるしかない。
「お昼食べに行きましょう」
「まだ昼飯の時間じゃないだろ?」
「朝言ってたねりまきの店まで時間がかかるのですよ。宴するなら予約しなきゃですし、ついでに食べましょう」
こうなったらお酒の力を借りるしかない。
酔った勢いで話す可能性はある。
「酔わせて言わせようとか考えてるなら甘いぞ。つか昼飯のあとも観光するのに酔うほど飲まねえよ」
「なぜ分かったのですか?」
「見てれば分かるっての。それより昼食の後どこ行くか決めよう」
そんなに顔に出していたのだろうか?
必死になり過ぎたのかもしれない。
今日の観光はデートと思っていたが、カズマの調査に使おう。
来週もこのシリーズを投稿します。
イチャイチャ出来てないとまた命狙われてないと良いのですが。
カズマさんの誕生日話は誰視点が良いかについて
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ヒロインズの誰か視点(天界)
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