この素晴らしい世界に●●を!めぐみんのターン   作:めむみん

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一日遅れですが完成しました。
今回は盗賊団の出番です!


女神のおしごと

-MEGAMINOOSIGOTO-

 

カズマさんがめぐみん似の女の子と婚約したこと以外は多分、今の所順調に進んでいると思います。

現在は、神器のある屋敷に到着し、無事に潜入も成功。

と言っても正面玄関から普通に入ったわけですが。

後はパーティーの最中、どうやって神器の場所を探すかが重要となって来ます。

 

「クリス、この酒凄く美味い」

「お酒は控えるようにと私は言ったはずですよ?」

「飲まないと怪しまれるだろ?」

 

確かにこの会で飲んでない人は少ない。

とは言えお酒に弱いフリとか色々方法はあるのに。

 

「全く、屁理屈を言ってる暇があったら何か案を出してくださいよ」

「俺がタダ呑んでただけと思ったら大間違いですよ」

「何かあるんですか?」

 

カズマさんが自信満々な時は、ろくなことじゃないか、凄いことを成して来るかの二択だけど、多分今回は前者な気がする。

 

「この屋敷、地下があるらしいって話なのに、何処にも入口がないんだとか」

「それは怪しいですね」

 

なるほど、何処かに秘密の隠し通路があって、そこに神器隠してあると。

今度からはカズマさんには、諜報活動でも動いてもらうのもいいかもしれない。

 

「で、今日はその地下室のお披露目会らしい」

「私の期待を返してください」

「・・・?」

 

なんの事かさっぱりと首を傾げるカズマさん。

今日のパーティーが何のためかくらい私は把握している。

はっきり言って今の所、何の役にも立たないうちに酔ったことになる。

屋敷での会議でやっぱりちゃんと話しておくべきだった。

 

「あなたは何処にあると思いますか?」

「案外、隠すつもりはなく、お披露目会で見せるとか有り得そうかなと」

 

神器を見せびらかしたいが為の会である可能性。

確かに十分有り得ます。

展示されているとしたら、探す手間は省けますが、盗み出すのには少し面倒になりますね。

 

「私は少し、お花を摘みに行ってきます」

「了解です。ダスネスと話しておきます」

 

さて、御手洗に行くついでにサーチをかけておきましょう。

お宝は何処にあるのでしょう。

私もカズマさんの意見が八割方だと思うのですが、これはやってみないと分からない。

下の方から反応があれば私たちの予想があっている。

その他だと、何かアクシデントを発生させて混乱に乗じて、そこから取りにいかないといけなくなる。

まあ、アクシデントを起こすのは何処の場所にあっても同じなのですが。

・・・。

なるほど、やはり下にありますか。

これは少し楽に行けるかもしれません。

 

「ごきげんよう」

 

まさか、声をかけられるとは。

こういう社交界だと、知り合い以外にはあまり声をかけられないように、魔法をかけてるのに。

 

「ごきげんよう」

「あなたも神器を狙ってるのね」

「・・・はい?」

 

何故バレた!?

まさか、さっきのサーチを見られていたとか?

いや、そもそも人が居ないか確認してからやったのに、この人どうしてここに?

 

「惚けても無駄よ。さっきサーチしてたでしょう?」

「・・・今日のお披露目会でどれ程の物が見られるのか気になって、このお屋敷の中でどれくらいの物か確認したくなっただけですよ?」

 

やっぱり見られてる・・・

どうしよう。

同業者に見つかるなんて、しかも盗られて依頼主とかに持って行かれたら更に厄介な事に・・・

 

「あくまでもシラを切るのね」

「ですから私は」

「って、よく見たらあんたエリスじゃない」

 

急に声が変わった。

よく聞いた声だ。

しかも私の名前を知っている人。

 

「えっ、もしかしてアクア先輩?」

「何でエリスがここにいるのよ」

「先輩こそどうしてここに?」

 

今頃は自室でのんびり日本のアニメでも見てる頃だろうに。

私の記憶から知り合いを持ち出して、変装してる偽物とか?

でも、そんなこと出来る人なんていないでしょう。

 

「神器回収に決まってるじゃない」

「・・・ですからどうして先輩がそんなことしてるんですか?」

「どうしてってこれが仕事なんだもん。もしかして、現地に助っ人送ったってのは、エリスのことなの?」

 

なんて事を言われても知らないものは知らない。

先輩が神器回収するのが仕事?

そんなこと有り得るのだろうか?

日本担当なのに。

 

「私も何も聞いてないですけど」

「これだからあんたはダメなのよ。ちゃんと情報集めしとかないとダメでしょう?」

 

何だろうこの先輩。

本当に先輩してる。

でも何故だろう。

先輩から言われるとちょっとイラッとしてしまう。

 

「クリス、話してる所悪いけど、ちょっといいか?」

「う、うん」

 

カズマさんが丁度いいタイミングで現れたから、一旦先輩から離れて状況整理しようと思ったけど、そうは問屋が卸さなかった。

 

「って何でお前がここにいるんだ?」

「クリスの協力者だから許すけど、初対面の人にお前って言うのはどうなのかしら?」

 

・・・あっ、分かった。

この先輩、ここの時空の先輩ですね。

ハルが持ってきた案件だってことを忘れてました。

ちゃんと私の偽名呼びに変えてくれてますし、こっちの先輩は仕事ができる人なのかもしれない。

 

「・・・お前も記憶に制限かかってるのか?」

「記憶に制限?そんな危ないことしてないわよ。てかあんた誰なのよ?あんたは私の事知ってるみたいだけど」

 

カズマさんが転生するよりも遥か昔の話ですからね。

先輩が知らないのも頷けます。

 

「今はメグミカズマを名乗ってる。本名はサトウカズマだ」

「やっぱり日本人なのね。自分の管轄だからって死んだ子に協力させるのはどうかと思うわよ?」

 

こっちだと私が日本担当なんですね。

私達の世界だと先輩がその仕事してるわけですが。

 

「・・・実は私達、別の世界から来てるので、情勢が違うんですよ」

「ああ、だから他所に借りを作ってるから絶対に成功しろって言われたのね。理解したわ」

 

ハルに依頼された仕事だったけど、部署間の貸し借りがある訳ですか。

私は最近よくハルと先輩の仕事手伝ってるから、これは貸しのはずなのに、多分、返ってくることはないと思う。

 

「一つ聞いてもいいですか?」

「何でも聞いてちょうだい」

「こちらの私はどんな人物ですか?率直なのをお願いします」

 

先輩がこんなにも仕事が出来る感じなら、多少私も自分と異なる所があるはず。

そこが凄く気になる。

 

「そうねえ。能力はあるけど、おっちょこちょいでドジっ子かな?私がいないと直ぐにやらかすのよね」

 

ここだけ聞くと、いつも先輩が言ってる私の紹介と変わらないような・・・

 

「例えば?」

「申請漏れがあったり、仮死状態の人を間違って案内しちゃったりとか色々あるわよ?あっ、そう言えばこの前なんて、うっかり日本に降りちゃって大変だったのよ?」

「ご迷惑おかけしてます」

 

本当にやらかしてますねこっちの私・・・

間違ってということはそのまま降臨しちゃったのでしょう・・・

 

「いいのよ。後輩の面倒を見るのも先輩の務めだもの」

 

何だろう。

こう言う先輩がいて欲しいけど、アクア先輩がこれだと違和感が強すぎて逆に困る。

 

「でもあなたはしっかりしてるみたいね。所でこの協力者とはどういう関係なの?」

「実は、カズマさん勇者なんですよ」

「・・・え?」

 

このパッとしないのが勇者?って心の声が聞こえて来るほど分かりやすくカズマさんの事を疑いの眼差しで先輩が見てます。

カズマさんも気付いてるのかイライラしてます。

険悪な雰囲気を変えないといつ取っ組み合いが始まってもおかしくない状況です。

 

「魔王を倒した勇者が亡くなったので、その後、天界で働いてもらってます」

「そっちの日本はファンタジー系なのね」

 

確かに魔王がいるということは悪しき魔族どもがいたり、魔法と剣の世界だと思うのも頷ける。

 

「いえ、若くして亡くなった日本人の転生計画が実施されてます」

「・・・そんなことして日本と言うか地球の魂は大丈夫なの?」

 

こちらの魂が足りなくなったからこその移住計画。

地球は正直な話、ほっておいても問題がないと判断されてます。

富める国で裕福と言えないまでも普通の生活を送ったならば、ゼロからのリスタートを求める人が多いのが地球。

戦火の耐えない地域であっても、次こそは勝つとか幸せな暮らしをとか、何なら戦争のないジャパンに!と言って転生する人がいるくらいには、皆さん絶望はしていません。

加えて、ただでさえ人が足りなくなってるのにアクシズ教徒は日本に転生出来るなんてシステムを自分の管轄だからって先輩は全く何してるんでしょう。

 

「先輩がその逆を信者達でやってるので、多分、大丈夫です」

「私が日本担当なのね。あそこ戦ばっかりだから担当になりたくないわ」

「俺のいた日本は平和そのものだけどな」

 

カズマさんの言う通り、今の日本は平和そのもの。

社会問題とか、揉め事とか常に何処かで起こってはいるけど、戦争とは無縁の状態。

私の世界も何れ、どこの国も戦争を放棄してくれればいいのに。

悪魔を殲滅した後に。

 

「えっ、何処の国が統一したの?あなたは何処の国出身なの?」

「・・・内戦なんてとっくの昔に終わってる」

「じゃあ外敵はどうなのよ。内戦がなくなって一つのまとまった国になったら大陸国が黙ってないでしょ?」

 

先輩が知的な話してるの違和感が凄い。

何度も先輩がもうちょっと賢かったらとか考えてた時もあったのに、いざ目の当たりにすると引いてしまう・・・

 

「そりゃまあ、俺らの前の世代に世界大戦やるくらいには警戒されてたと思う。負けたけども」

「戦争に負けたのに平和なの?」

 

普通、敗戦国は貧しくなる。

そして、治安もまた然り。

いや、日本とて敗戦直後は貧しく荒れていたと先輩が言ってたっけ。

その後の急速な復興と発展を私の運の良さが発揮されたとか何とか自慢してたな先輩は。

 

「敗戦後は一度の戦争も起こさずに七十年くらい経ってる」

「・・・私、この仕事終わったらエリスに仕事変わってあげる話しよ」

 

やっぱり先輩は先輩だった。

楽したい性分は同じらしい。

何だか少し安心してしまった。

 

「こっちでもそうなるとは限らなくないか?」

「それもそうね。何なら私の担当する日本は全戦全勝してくれてもいいわね」

「逆に全戦全敗するかもだけどな」

 

こればかりは誰にも分からない。

時間を司る神は分かるけど、それはおいておこう。

 

「・・・あんたちょっとは夢とか持てないわけ?」

「可能性の話しただけだ。てか神様なら戦争起こらないようにとか思わないのか?」

「それは人間が努力することであって私達には関係ないわよ。そりゃまあ戦争なんてない方がいいに決まってるけどね」

 

人間が努力することか。

実際、私たちに出来ることは何も無いからそうなるのか。

 

「・・・えっと、そろそろ戻りませんか?」

「そうしましょう。あんた足引っ張らないでよ?」

「お前こそ足引っ張るなよ」

 

この二人はいがみ合わないといけないように出来てるのだろうか・・・

喧嘩するほど仲がいいの典型例のような二人であるのは、間違いないですが。

 

「二人とも何処に行っていたのだ?」

 

パーティールームに向かっていると控え室から出て来たダスネスに声をかけられて、話が長くなりそうと察してくれたのか部屋へと誘導された。

 

「この人と話してた」

「お初にお目にかかります。アリアと申しまって、二人の協力者ならこんな堅苦しい挨拶じゃなくてもいいわね」

 

こう言う形式張ったことが嫌いなのも同じですね。

つまり、知力が高いか低いかの差くらいしかないのかもしれない。

偽名は私と同じで一文字違いにしてるのか、それともア〇エリアスの中から……いや、何でもないです。

 

「えっと、私はダスネスだ。クリスとはどういう関係なのだ?」

「私の先輩です」

「でもってこっちが後輩の従者だから私の従者でもある」

 

この説明、絶対二人が揉めるやつですね。

それにカズマさんは私の従者じゃないですよ先輩!

 

「誰が従者だ!一応、俺はクリスの婚約者だからな!」

「・・・クリス、相手は選んだ方がいいわよ?」

 

わざわざ耳打ちで言わなくても・・・

先輩なりにカズマさんへ配慮したのだろうか?

 

「これは役作りですよ」

「なるほどね。で、あの子のことどう思ってるの?」

「頼れる相棒です」

 

最近はめぐみんさん関係で色々と面倒なこと引き起こしてくれてますが、その他は替えのきかないカズマさんだからこそ頼めた案件がいくつもあって、一人で回収するのが少し不安に思うくらいには頼ってしまってる自覚があります。

やはり、あの時カズマさんに気を使わず、めぐみんさんに居場所を教えれば、今回だってあんなバカなマネはしなかったはず・・・

 

「カズマとか言ったわね?」

「ああ」

「この子、奥手だけどあんたが押せばいけるわよ!」

「先輩何言ってるんですか!カズマさんもそんな期待の目で見ないでください!」

 

本当にこの人何言ってくれてるんだろうか。

先輩とカズマさん所かダスネスまでニヤニヤしてこちらを見てますよ!

ああ、私の幸運値って本当に何なのだろう・・・

 

「とまあ、冗談はこの辺にして。今日は神器の無効化が目的よ。回収出来なくても無効化さえ出来ればそれで問題ないわ」

「無効化なんて出来るのか?」

「私の手にかかればちょちょいのちょいよ。でもそのためには一度触らないといけないのよね」

 

そう言えば前に先輩が神器を無効化してたことがありました。

あの時はどこに行ったのか何日も探したのに見つからなくて焦ってた記憶があります。

 

「私たちは適当に仕掛けた爆竹を鳴らして、混乱が生じた隙に回収するつもりです」

「・・・それってこれのことかしら?」

「・・・おい、何やってんだこら」

 

いいですよ!

カズマさんもっと言ってください!

 

「だ、だって、賊が仕掛けたトラップだと思って先に回収したのよ。それに回収すれば自分の武器になるし、後で報告する時の手柄になるんだから」

「はぁ、分かったけど、どうすんだよ。お披露目会まであと十分しかないぞ?今から再設置とか無理だろ」

 

カズマさんの言う通り、今から発券の送れるような場所に再設置するのは難しい。

ちょっとでも到着が遅れれば、怪しまれかねない。

 

「・・・大丈夫よ。私これでもこの屋敷の警備責任者だから」

「それ俺たち必要なのか?」

「責任者だからって展示品に触れるわけないじゃないわ。そこら辺をクリアするためのあなた達でしょう?」

 

警備責任者になるってことは相当時間かけて、潜入してるってことで・・・

先輩がそんな長時間潜入続けられるなんて、やっぱりここの世界の先輩は仕事のできる人です。

 

「いや、ほら。偽物と置き換わってるなんてことがあっては行けないので確かめさせてくれとか何とか言って」

「あなたがクリスと組んでる理由がよく分かったわ。会が始まるこの直前なら怪しまれないと思うから行ってくるわね」

「・・・あいつ、大丈夫かな?」

 

元気よく飛び出して行った先輩を心配そうにカズマさんは見ていた。

いつもなら先輩がやる気出すとよからぬ事が起こっていたから、気になるのも仕方ないですね。

 

「でも先輩しっかりしてましたし、大丈夫かなと」

「いや、ほら、あいつ運悪いだろ?」

「上手く潜入して責任者にまでなってるのは運がいいのではないか?」

 

ダスネスの言葉にカズマさんは納得した様子。

 

「それもそうか。・・・この際部屋に置いといて、自然発火した事故にしよう。余興に持ってきていたとかなら疑われないだろ?それに今回は回収じゃないし」

「その案でいきましょう。そろそろ私達も行きますか」

 

カズマさんの言ってた通り、結局、行き当たりばったりな作戦になってしまった。

二人とも幸運値高いはずなのに、計画通りに進んだことはないのはおかしいと思います!

 

 

 

部屋に着くと地下への入口のような穴が出来ていた。

スライド式の扉を作っていたみたいです。

誰も気付かないわけだ。

地下へ移動が済むと、先輩が縛られていた。

 

「この者は当家の秘宝を盗み出そうとした賊ですが、捕らえました」

 

カズマさんの言う通り全然大丈夫じゃない展開になってしまいました。

他の貴族の方たちがザワついてるし、各貴族の用心棒たちの警戒レベルがさっきまでと違う。

先輩のせいで神器回収が簡単に出来なくなったと言っても過言じゃないでしょう。

 

「皆さん。ご安心ください。実は、賊じゃなくて、余興ですので」

「「「は?」」」

 

期せずして、声が揃った。

先輩のバカああああああと叫びたい所ですが、何とか抑えて見守りましょう。

これで用心棒達の警戒がここに来るまでよりも緩んでる。

 

「今からここにいる当家の警備責任者が縄抜けを行います」

「・・・やっぱりアイツは宴会芸の神様なんだな」

「あれは先輩の趣味ですよ・・・」

 

宴会芸の新作が出来たら私とハルがいつも呼び出されて感想を聞かれてました。

最近はカズマさんが連れられてますが。

 

「趣味で本業の人の心折ってるってアイツどんなだよ」

「・・・まあ、それで結果的にその方の御家族は喜んでましたから、アレで幸せを齎してるんですよ先輩は」

「・・・」

 

凄く疑いの目を向けられてる・・・

そんなに先輩って信用ないのでしょうか?

 

「なあ、二人ともアリアの芸を見ないのか?」

「おっと、そうだった。って、殆どもう解けてんじゃんか」

「皆様どうです?私の華麗な解術は」

 

参加者全員が拍手喝采で先輩の芸を称えている。

にしても、あのぐるぐる巻の状態からどうやって抜け出してるのでしょう?

 

「これって上手くいったってことだよな?」

「恐らくな」

 

担ぎが終わって、先輩が私たちの所へやって来た。

 

「作戦成功よ。念の為に回収出来るように、根回しもしておいたわ」

「と言うと?」

「緊急時は私が運ぶことになったのよ」

 

こっちの先輩は優秀過ぎる。

私達は必要なかったと思う。

 

「で、途中で盗まれたことにするわけな」

「まあ、そういうことよ。さっき確認したら神器はあんた達が持って帰ることになってるから、本当に私から奪い取りに来なさいよ?バレないように本気で警備するから」

「アクアとガチバトルか。やる気湧いて来たわ」

「何処でやる気出てんのよあんたは」

 

普段の先輩なら望む所よ!とか言ってそうなのに、呆れたようにカズマさんを見てる。

こんな頼れるお姉さんな先輩がいるなんて、こっちの私が羨ましい……。

 

「言い合っているところ悪いのだが、そろそろ時間だぞ?」

「じゃあ私は警護に戻るわね」

「はい。先輩も頑張ってください」

「任せなさい!」

 

先輩をここまで心強く思う時が来るとは・・・

頼れる時は何度もあったけど、ここまで裏打ちされた安心感はなかった。

と思っていると爆竹に添加されたのか炸裂音が聞こえてきた。

 

「「「きゃあああああ」」」

「何事だ!?」

「爆発物が仕掛けられてるのかもしれません。ゲストの皆さんは当館から出て詰所まで、お逃げください!」

「おい、離せ!私が先だ!」

「あんた私より格下のクセに先に行くの!」

「うっせえ!止まってないで、さっさと進め!」

「落ち着いてください!譲り合って!」

 

どこの世界も緊急時に人間の本性が現れるもの。

なんと醜い争いでしょう。

警備の人も大変ですね。

 

「ダスネスは手筈通り、戻ってくださいね」

「ああ、頑張れよ二人とも」

「じゃ行きますか。お頭」

「行こうか。助手君」

 

一度、離れた所でいつもの服装に着替えて、ドレスなんかはダスネスに持って帰ってもらう。

これが私達の計画。

後は先輩から奪い取るだけ!

 

 

 

「アイツにいつ襲いかかるかが問題だよな」

「今は周りの護衛も多いからね。あたしとしては二、三人先輩が打つ手なくやられたって証言してくれる人がいればいいかな」

「あと六人減らせってことだな。なら、これをこうして」

 

助手君が何かを引っ張った瞬間、大広間の方から爆発音がした。

 

『何事だ!?』

『また攻撃か?』

『あなた達、三班は爆発物を探して無力化をお願い。こっちは一班と二班で対処するわ』

『『『了解』』』

 

これで三人が居なくなり、残りは六人。

あと三人を別行動に移すことが出来ればいいんだけど。

 

『これ大丈夫ですか?』

『私達はこれを何としても守らなきゃいけないのよ』

『じゃあ、こんな風に奪われたら終わっ・・・』

 

警備の一人が先輩に襲いかかろうとして、合わせて他の二人も先輩目掛けて飛びかかろうとしていたけど、さっき居なくなったはずの三班の人達によって二人は気絶、話してた人が捕縛された。

 

『あんた達がパチモンなのはバレてるわよ。あの子たちを何処にやったのか吐きなさい!』

『ちっ、バレてたか。安心しろヤツらは居酒屋のテーブルで酔っ払いみたいに伸びてるだけだ』

『で、爆弾はあと幾つある訳?』

 

なるほど、コイツらに罪を着せて他の警備を油断させるわけか。

 

『アレは俺らじゃねえよ。別の同業者だろ』

『ホント、厄介ね。三班はコイツらを衛兵に渡してしてきてちょうだい。爆弾が別口だとここに置いといて爆死されても困るからね。私終えたら一班の子たちを探して保護をよろしく』

 

・・・どうしよう。

二班の人達の警戒さっきから変わってない。

先輩が警護は本気でやるって言ってたの忘れてた。

 

『リーダー、二班。どうかご無事で』

『あんたたちも気を付けなさい。爆弾仕掛けた連中に襲われんじゃないわよ?』

 

先輩、超カッコイイ。

アクション映画の戦うヒロインみたい。

あたしもあんな感じで、助手君を引っ張るつもりだったんだけどなあ。

何故か振り回されてばかりで困ってしまう。

 

「いい感じに三人なったし、そろそろ」

「うん」

 

近くにあった、更衣室から拝借した服をきて、助手君が参加者を装い近付く。

声を変える宴会芸スキルを使ってるから先輩も気付かないだろう。

 

「すみません。警備の人ですよね?道迷ったんですけど、出口どっちですか?手洗いに行ってる間にこんな惨状で」

「出口ならそこを真っ直ぐに進んで、上に上がったら右に向かって歩いて行くと他の警備の者がいるから誘導に従えば出られますよ」

 

全く、怪しまれてない。

さすが、助手君。

やっぱり、今度諜報任務任せて見ようかなあ。

 

「ちょっと分からないんで地図書いて貰えます?」

「仕方ないな。ここが『ダメよ!』今いる?」

「今すぐそいつから離れなさい!」

 

本気で来るというのはそういう意味か。

一切の手は抜かないと。

先輩と戦うことなんて今までなかったからこれこれで楽しくなってきた。

先輩もよく気付けたなと思う。

でも、気付くのが少し遅かった。

 

「今更離れても遅いぜ。『ドレインタッチ』ッ!」

「ぐあああああ!!」

 

・・・なんだろう。

助手君がただの悪役に見えてしまった。

いや、まあ、義賊とは言え盗みは悪いことなんだけど、なんて言うかこう。

本当の悪役って感じが・・・

 

「貴様!何者だ!」

「どうやってここに入り込んだ!」

「三班の子達は無事かしら?」

「何だかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情け。世界の破壊を防ぐため!世界の平和を守るため!我ら仮面盗賊団参上!」

 

助手君は何やってるんだろ。

調子のいい時は仮面盗賊団って名乗るよね。

まあ、助手君に気が向いてる間にもう一人無力化出来たけど。

 

「ふざけんな!」

「誰もふざけてねえよ!あとお前らがこっちみてる間に、また一人お仲間が倒れたぜ」

 

こんな初歩的な陽動に引っかかるようじゃ先輩の仕込みもまだまだ足りてないねここの警備員達は。

 

「なにっ!仲間がいたのかくそっ!」

「まあ、安心しな。俺らはもう帰るんで」

「「は?」」

「「『スティール』ッ!」」

 

よし、盗れた。

今回もあたしの勝ちみたい。

助手君は、また、アレをとったみたい。

 

「あんたら。何盗ってくれてんの?」

「すまん。これは返す。ちゃんと受け取れよ!」

 

パンツを投げると同時に走り出す。

先輩は自分の下着を追い、唯一立ってる部下は自分の上司のパンツが空を飛んでる光景を見て、呆気に取られていた。

 

「上手くいってよかった」

「ここまで来れば大丈夫だよね?転移頼むよ」

「『テレポート』ッ!」

 

何とか任務完了。

これで終わりだ。

こういう時の助手君を見てるとめぐみんがカズマくんのこと好きになったのが分かる気がする。

まあ、あたしはカズマくんのことなんとも思ってないけど。

・・・本当だからね!

 

 

 

「二人ともお疲れ様。カズマは後で絞めあげるから覚悟してください」

「何で俺が絞めあげられなきゃいけないんだよ。功労者だぞ?」

「自分の胸に聞いてみることです」

 

わざわざコピー作らないといけなったら、怒るのも無理はない。

 

「はあ?何言ってんだ。俺がめぐみんぽい子好きになるの当たり前だろうが」

 

毎度の事ながら、カズマさんは開き直ってる。

それにしても、ここまで愛してもらえるめぐみんさんは幸せ者ですね。

 

「わざわざカズマのコピー作る私の身にもなってくださいよ!私には出来ないから、苦手な先輩に貸し作る形になっちゃったじゃないですか!」

「・・・それはすまん。ってアレ?俺のだけなのか?」

「カズマの弄ってたエリスへの好意を元に戻した今のカズマをコピーすれば、まぐみんさんを選んだカズマにはクリスは必要ないですからね。加えて借りは少ない方がいいので」

 

無駄な手間は省きたいのはよく分かります。

超法規的措置が取られると言っても、天界規定に関わる事案を扱う時は申請書類がいくつも必要になるから出来れば避けたい所ですからね。

 

「マジか。てか俺めちゃくちゃ損してんじゃん」

「何がですか?」

「天界戻ってエリス様とイチャイチャするつもりだったのに、戻ったら戻ったでめぐみんとイチャイチャしたい飢えを感じてるんだぞ?」

 

今のカズマさんは任務地で願望が叶い、任務中のカズマさんは天界に戻れば願望が叶うかもしれない。

いや、任務中のカズマさんも任務地の方が叶う可能性がありましたね。

自分で棒に降りましたが。

 

「仕方ないですね。私が代わりにデートしてあげますよ」

「何でハルとデートする話になんだよ」

「アクア先輩に魔法かけて貰って、声と姿をめぐみんさんにすれば、口調や体躯は同じなので大丈夫でしょう」

 

ハルなりにカズマさんのこと気にかけているようですね。

さっき絞めあげると言ってた人とは思えない。

 

「気持ちはありがたいけど、百パーセントの確率で押し倒す自信があるからやめとけ」

「・・・じゃあ、やめときます」

 

確かに、めぐみんさんに飢えてるカズマさんなら理性吹っ飛んでしまってもおかしくない。

 

「にしても勿体ないことしたな。側室制度あるならまぐみんの案に乗ればよかったのに」

「そんなこと言って良いんですか?」

「だって、まぐみんの案だぞ?」

「私が嫌です。ということで、この話は終わりにします」

 

仮に付き合うとして、私は一途な人がいい。

・・・まあ、カズマさんはめぐみんさんを一途に想ってるわけですが、それはそれ、これはこれです。

 

「そういや、あの後アクアはどうなったんだ」

「一応、潜り込んでた賊一組は撃破していたからお咎めなしとはいかないまでも、減給で済んだみたいですね。あとカズまぐはダスネス家の使用人として働きながら幸せな家庭を築いてます」

「人をカップリング呼びすんな」

 

いつもの雰囲気に戻ってきましたね。

このまま二人が言いやって気付いたら、私も巻き込まれている気がします。

 

「折角教えてあげたのにその態度は何ですか?」

「・・・すまん」

 

これで話は終わりですかね。

巻き込まれずに済んで良かったです。

 

「カップリング呼びと言えば、先輩がカズエリ本書いたから今度日本に降りてコミケでオリジナル作品として応募するとか何とか言ってましたよ」

 

自分でも分かります。

フラグ立てたからですねこれ。

でもこの情報は私の知ってるものと違う。

 

「え?私はカズハル本を出すって聞いた気が・・・」

「ちょっと待て!あいつ何勝手に人のことネタにしてんだ!それに書くならカズめぐ本か俺のハーレム本書けや!」

 

カズマさんが怒るのも当然と思いかけましたけど、最後の方に変なこと言ってた気がします。

 

「自分でカズめぐって言いましたね、この男」

「いや、今のは流れというか」

 

自分のカップリング名呼ぶのってどんな気持ちなんだろう。

私もカズマさんとの本を先輩に書かれてるみたいだから、複雑な気持ちです。

 

「それにしれっとハーレムもと言ってましたね」

「・・・聞かなかったことにしてください」

 

欲望のままに行動してしまったのはなんともカズマさんらしいです。

この後、期せずして私達の言葉は揃った。

 

「「何か奢ってくださいね」」

「はい……」




今回で閑話終了です。次回から本編に戻ります。
カズマさんガチ勢のとある魔法使いからの圧力かかってるので、調子がよかったら今日本編も上げます。

カズマさんの誕生日話は誰視点が良いかについて

  • カズマ視点(天界)
  • カズマ視点(討伐後)
  • ヒロインズの誰か視点(天界)
  • ヒロインズの誰か視点(討伐後)

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