身辺ごたついてたのでご容赦ください。
今回から本編が進みます。
-FUTARINOKANKEI-
酒屋デッドリーポイズンに到着。
酒場と言えば情報収集を行う絶好の場所。
私とゆんゆんが付き合ってるなどと言うふざけた噂を流してくれた犯人を突き止めよう。
犯人は分かったのかとねりまきに聞きたかったけれど、まだ帰ってないみたいだ。
「めぐみん。今日は仲間と一緒じゃないのか?」
料理が出来るまでに調査しようと思っていた所にぶっころりーがやってきた。
「一緒ですよ?ってカズマ?あれ?」
「そこの坊主ならお手洗いに行ったぞ。ほい。めぐみんと彼氏さんの分だ」
頼んでいたオムライスが出来た。
彼氏か。
本当にカズマがまた恋人になる日は何時になるのだろか?
「ありがとうございます。我が父から聞いたのですか?私達はまだ付き合ってませんからね」
「あのひょいざぶろーが会に来たから何事かと想ってたが、娘自慢で面食らったぞ。そうか。まだか」
「ええ、まだです。いずれは」
いずれはカズマとお付き合いをして、今度こそはファーストキスを私のモノに!
「何がまだなんだ?おっ、もう料理出来てるのか。あと、あんたは確かぶっころりーだっけ?」
危ない危ない。
帰ってくるのがもう少し早かったら聞かれる所だった。
「えっと、めぐみん?この人がめぐみんのか、じゃなくて仲間だってことは、この人があのカズマさん?」
「そうそう。俺がカズマさんだ」
ぶっころりー所か周りにいた全員がド肝を抜かれていた。
紅魔族なら性転換のポーションの存在を知ってる人もいるだろうに。
「・・・やっぱり、ねりまきの言ってたのは所詮、想像の産物だったわけか」
「ねりまきですか?」
「ああ、アイツが同時期に彼氏が出来たって親父さんが言ってて、パーティー構成が同じ二人は付き合っていて、お互いを男の子のメンバーとして報告してるってな」
何が小耳に挟んだ程度だ。
まさか犯人がねりまきだったとは。
次会ったら絶対に泣いて謝ることをしよう。
「・・・まあ、お互い頭数から消してたのは事実ですけどね。ゆんゆんと組んでるとは知らせたくなかったので」
「お前が書きたくないのは分かるけど、どうしてゆんゆんもめぐみんのこと伏せてたんだ?」
「あの子も族長の娘として、一人で頑張っていると族長を安心させたかったのではないですか?」
紅魔族同士でペアを組むのは里にいれば普通のことだ。
とは言え、外に出て修行する者は違う。
一人で己を鍛え、外でゼロから作った仲間とともに戦績を上げる。
これが基本中の基本。
誰だって外で同族と組んでるのは隠したいはず。
「なるほど。それが祟ってめぐみんとゆんゆんが付き合ってるなんて噂がたったわけか」
「ああ。二人が帰ってくるまで、里中の話題だったからな。まあ、帰って来たら帰ってきたで別の噂がたったがな」
店主の言葉に疑問点がある。
別の噂?
それは一切聞いてない。
「と言うと?」
「二人は互いの名前を伏せて、かつ、仲間の女の子を好きなったけど、隠す為に男の子として報告してたってな」
「・・・私のせいですね」
私とゆんゆんがカズマの護衛の為に引っ付き過ぎた。
あと、私とカズマはずっと一緒にいたからだ。
「いや、俺が男性恐怖症にならなきゃあんなことにはなってねえよ」
「にしても君があの子とは信じ難いな」
「俺も目覚めたら好みどストライクな容姿になっててビビったからな」
私はカズマが女性になったら美人になると分かっていた。
だって、元が可愛いのだから!
「ぶっころりーなんて見惚れてましたからね」
「だっ、誰が!」
「うんうん。俺の胸見てたの覚えてるぞ」
そう言えば元に戻ってからのカズマは胸を見なくなった。
視線に気付かれると実体験で分かったからだろう。
「・・・おっちゃん。俺を殺してくれ」
「気持ちは分かるが、生きろよ少年」
ぶっころりーが虫の息。
男相手に惚けていたと実感させられたらこんなものだろう。
「でもまあ、男性恐怖症になっても恐怖心覚えなかったの仲間の家族除いたらぶっころりーだけなんだよな」
「えっと、そう言えば普通に話してたっけか」
「ニート同士のシンパシーでしょうね」
「「ニートじゃない!」」
息までピッタリで、やはり親和性が高い二人だ。
里で親友になってた二人だから当然か。
「そんなことよりねりまきを絞めに行くので心当たりのある場所教えて貰えませんか?今日この店で宴会するつもりなんですけど?」
「ウチの娘ならちぇけらの店に行くとか朝言ってたぞ。めぐみん、貸切とは随分金持ちになったな」
「魔王軍幹部やデストロイヤーを倒しましたからね」
私の華やかな戦績をカッコイイポーズと共に宣言したのに、対して周りが反応してくれない。
何でだろう?
「いくらめぐみんでも無理だろ」
「所がどっこい。事実なんだなこれが」
「・・・え?」
カズマの発言で急にみんなザワつき始めた。
みんながいかにホラ吹きしてるのかがよく分かる。
外のカズマが言うのだから、事実だろうとそういう意味だろう。
「まあ、カズマの作戦があったからですけどね」
「何言ってんだよ。お前の爆裂魔法があったから倒せたんだろうが」
「いえいえ、カズマのおかげですよ」
「だからめぐみんがだな」
カズマと功労者の譲り合いをしていたけど、店主の咳払いで私達は黙った。
「コホン。話はそこまでにして、冷める前に食べてくれないか?」
「「はい」」
この後は静かに食べ終わると、ねりまきに私刑を下すためにカズマを引っ張ってちぇけらの店へと向かうこととなった。
「いらっしゃい」
「お久しぶりです。急で悪いですが、ねりまき見てませんか?」
「久しぶり、めぐみん。あの子ならさっき出て行った所だよ」
くっ、一足遅かった。
服屋で行先なんて言わないだろうし、ねりまきは次何処に行く?
「まあ、いいです。とりあえず紅魔ローブ買うので」
「どのタイプだ?あと、後ろのは里の外の人かい?」
「ええ」
ちぇけらはカズマをじろりと見て、一呼吸置くと、名乗りを始めた。
カズマが若干緊張してるのが分かるけど、その必要はないから安心して欲しい。
「我が名はちぇけら!アークウィザードにして紅魔の里随一の服屋の店主!」
「我が名はカズマ!最弱職冒険にして、数多の魔王軍幹部と渡り歩きし者!里一って凄いですね」
また、カズマの名乗りを見られて私は大満足。
ねりまきへの制裁が少しどうでも良くなってきた。
「めぐみん、いい仲間を持ったな。因みにウチ一軒しかこの里には服屋がないからね」
「ナメてんのか!」
カズマのツッコミがまたも炸裂。
「この里は同じ業種やってるの魔道具関係と農業だけで、他の店は全部一軒づつで、ライバル店なんてないよ」
「・・・」
私に何かを訴える目で見てくるけど、私にはどうしようもない。
嘘偽りのない事実なのだから。
「それよりも、これと同じのありますか?このゆんゆんから貰った一着だけで、替えがなくて不便だったのですよ」
「そのタイプは確か、今染色が終わって干してそろそろ出来上がるのがあるよ」
ローブが干された裏に案内された。
そして、私はある事実に気付いた。
レールガンがないと言うことに。
「めぐみん?どうした?お腹痛いのか?」
「いえ、ちょっと考え事してただけです。とりあえず、ここにあるの全部ください」
ど、どうしよう。
レールガンが物干し竿に使われていないなら何処に?
アレがなければ魔術師殺しと同化したシルビアへの対抗手段がなくなってしまう。
いや、魔術師殺しに辿り着く前に倒せば、あるいは……。
「全部?ほほお。あのめぐみんが、随分とブルジョアになって……。さては大物を倒したな?」
「ええ、その内私の活躍を耳にしますよ。きっと。それにアクセルだとこのローブ売ってませんし、予備はいくらあってもいいですからね。・・・カズマ、支払い頼みます」
しまった。
財布を持ってくるのも忘れてた。
こっちはそもそものミスだけど、レールガンについては本当にどうしよう。
これでは打つ手なしではないか。
「えっ、俺が払うの?」
「私の貯金分でお願いします」
「あっ、そういう事か」
納得して、支払いを済ませてくれた。
こんなつもりじゃなかったのに。
「毎度あり。ひょっとして噂のめぐみんの彼氏ってのはお客さんか?」
「まあ、そうですね。俺ら付き合ってないですけど」
凄い疑いの目を向けられた。
お金の管理を任せるのは普通、仲間でもしないから当然か。
ローブを全て受け取って、私達は一度家に戻り、観光を続行していた。
「すみません。観光をと言っていたのに私の買い物で一度戻ることになって」
「俺が性別変わってた時のお礼だと思ってくれ」
「元はと言えば私が勝手にやったことですよ?」
「俺の事守ろうと動いてくれた結果だろ?感謝しかないって、貞操の危機を免れたんだから」
カズマがこう言ってくれてるのだから、気に病むことはないのかもしれない。
今は、観光しつつレールガンを探そう。
「ここが『猫耳神社』です」
「・・・なんだこれ。猫耳娘のフィギュアじゃん」
アクアが作った私のフィギュアからして、この御神体もニホン人が作ったフィギュアなのだろう。
ご先祖さまはどうしてこんな物を祀ったのだろう。
「それは御神体です」
「・・・この里はどうなってんだよ」
「どうもなってませんよ?この御神体はかつて里近くにいた旅人がモンスターに襲われているのを、我らのご先祖さまが助けた時に、これは自分の命よりも大切な御神体だからと言って渡されたらしく、その後祀られることになったそうです」
「・・・次行くか」
カズマは多分アクアのことを思い出してか、深いため息をついてから言った。
同郷の者のせいなのは確かな事実なのだから。
続いて訪れたのは、紅魔の里名物、勇者の聖剣。
まあ、勇者の聖剣はカズマが来てから勝手に名付けたもので、今はただの聖剣だけど。
「この如何にも抜いた者が勇者だと言わんばかりの剣はなんだ?」
「ええ、この剣を抜いた者に強力な力を与えるという聖剣ですよ。カズマもやってみますか?多分抜けないでしょうけど。そこに挑戦料を入れるとできますよ」
と煽ってみる。
カズマのことだからここまで言ったら挑戦すると思う。
「俺が魔王倒せるとは思ってないけど、そんな言い方されたらやるしかないよな。結構硬いな。おらあああああ!!おい見ろよ!抜けたぞめぐみん!」
期待に満ち溢れたカズマを見ていると罪悪感がある。
これただの剣ですと言うのはさすがにショックが強すぎるから段階的に行こう、
「おお、抜けましたか。やはりカズマは運がいいですね」
「・・・運がいい?」
「千人目の人が引くと抜けるように設定されてるんですよ。この剣はカズマの物ですよ。あと、鍛冶屋のおじさんに連絡しないとですね」
これで勘のいいカズマは気付いただろう。
カズマが里に住むようになってからはカズマが入れ替えするようになってたっけ。
挑戦料だけで、暮らしていけるなと言いながらもカズマはゆんゆんの補佐をしたりと色々頑張ってくれてたっけ。
「てことはこれはあれか?ただの観光用のやつか?」
「はい。鍛冶屋のおじさんの作った、お高いよく切れる普通の剣です」
「俺の感動を返せ」
その内自身も加担することになるのに・・・
「この剣を売れば挑戦料の数十倍のお金が入りますよ」
「・・・次行こう」
次にやってきたのは例の泉。
ここはアクアがいた方が楽しかったと思う。
「この泉は『願いの泉』と呼ばれる場所です」
「ここにお金投げたら願いが叶うとかそう言う言い伝えがあるのか?」
「少し違います。ここにお金や斧なんかの鉄材を供物として投げ入れると金銀を司る女神を召喚できると言う噂が流れてからと言うもの時折投げ入れる人がいるんですよ。親切な鍛冶屋のおじさんが回収していなければ今頃コインと鉄材で溢れ返ってますよここは」
「・・・なあ、その噂立てたやつって」
「カズマ、それ以上言ってはいけませんよ。次行きましょう」
カズマが世界の真理に気付く前に、場所を移すことにした。
これだから勘のいい人は困る。
「ここは『謎施設』です」
「謎施設って何だ?」
「使用用途も立てられた理由も分からないのです。中には古代文字しかないので」
古代文字がまさかカズマの国の言語だなんて思いもしなかった。
アクアと三人で中に入った時の私の驚き用は、今思うと凄く恥ずかしい。
「めぐみんは古代文字読めるのか?」
「古代文字が解読されていたら謎施設じゃないですよ」
今やカズマに教わってある程度読み書き出来るけど、それを教える訳にはいかない。
「そりゃそうだ」
「分かっているのは、この施設の中に『世界を滅ぼしかねない兵器』が入ってるとかそう言う伝承レベルの話です」
「神さま拉致って封印するとか世界を滅ぼしかねない兵器持ってるとかこの里は危険過ぎるだろ」
「その方が、カッコイイじゃないですか」
可哀想な子を見る目で見られてる。
何故だろう。
「・・・他に行く所ないのか?」
「後は、魔王の娘の部屋を見られる望遠施設とか見晴らしのいい丘ですがどっちがいいですか?」
「望遠施設はなんか呪われそうだから、見晴らしのいい丘で」
呪いの力があるのは丘の方だとは言えなかった。
途中で団子屋に寄ることにした。
「こうやって花を見ながらゆっくりするのもいいな」
「癒されますね」
ここで子供たちと一緒によく遊んでたなあ。
カズマが団子を買って、あの子たちは食べ終わると駆け回って、二人でそれを見ながら他愛もない話をして、そんな日々がまたこっちでも過ごせるように頑張らなくては。
その為にも、一刻も早くレールガンを見つけだして、対シルビア戦の準備を整えなければ。
加えてカズマから告白して貰えるように惚れさせないと!
「みんなでまた来て花見するか」
「そうしましょう。その方が楽しいですよきっと」
「だな。夕飯の時にでも話すか」
と、ここで食べ終わったので、最終目的地に向かうことにした。
あそこでカズマに仕掛けよう。
「ここは『魔神の丘』で、カズマが私に告白した丘です」
「・・・そ、そうか。こんなに見晴らしのいい所でするとは俺も中々やるじゃん」
「因みにここで結ばれたカップルは一生別れられなくなる魔神の呪いがかかります」
ここでカズマにプロポーズされたのは二度目。
前回の結婚の申し出、それと今回のカズマちゃん。
もしまたここでプロポーズされたら、三度目になるのか。
「・・・俺はそのこと知ってたのか?」
「多分、知らないと思います」
そけっとが占ってここが良いと言っただけだろう。
呪いがあると聞いていればここは選ばない可能性がある。
呪いで元に戻れなくなるかもしれないのだから。
「・・・めぐみんはどう思ったんだ?」
「凄く嬉しかったです。それと同時に少し残念で悲しかったです」
「残念?」
「カズマちゃんじゃなくてカズマだったらそのまま付き合うことも出来たわけですから」
これだ。
これが今出来る最大限のカズマへのアプローチ。
カズマちゃんからの告白が嬉しくて付き合いたかったとも取れるし、カズマからの告白だったら喜んで受けられたと言ってるようにも取れる。
まあ、どちらも正解なのは置いておこう。
「・・・えっと・・・」
「そろそろ戻りましょう。早くしないとこめっこが何か食べて夕飯食べられなくなります」
「お、おう」
この後、お互い話すことなく帰宅し、こめっこを連れてゆんゆんの家へと向かうのであった。
次回は来週の月曜日更新予定です。
来週こそは間に合わせて週一投稿にします!
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